1. 幼少期とアマチュア経歴
リッチー・マーティンはプロ野球選手となる以前から、その高い能力と学業への真剣な姿勢を示していた。
1.1. 出生と家族背景
マーティンは1994年12月22日にミシガン州デトロイトで生まれた。彼の父親が学校教師を引退した後、家族はフロリダ州タンパ郊外に移住した。
1.2. 高校・大学時代
マーティンはフロリダ州バルリコにあるブルーミングデール高校に通った。高校最終学年時には打率.438を記録した。高校卒業後、彼はフロリダ大学に進学し、フロリダ・ゲイターズ野球チームで大学野球をすることを確約した。
2012年のMLBドラフトで、シアトル・マリナーズは38巡目(全体1151位)で彼を指名したが、マーティンはフロリダ大学への進学を選択し、契約しなかった。大学では土木工学を専攻し、3シーズン全てでSECアカデミック・オナーロールに選出された。大学時代のチームメイトにはハリソン・ベイダーがいた。
1.3. 大学野球キャリア

マーティンはフロリダ大学のフロリダ・ゲイターズ野球チームにおいて、1年生の2013年には遊撃手としてレギュラーに定着し、44試合で打率.300、51安打を記録した。同年夏にはケープコッド野球リーグのファルマス・コモドアーズに所属し、打率.193、19得点、11盗塁を記録した。
2年生の2014年には、打率.265を記録し、ゲイターズで最多の打席数(249)、盗塁数(18)、得点数(49)を記録した。シーズン終了後、再びケープコッド野球リーグに戻り、ボーン・ブレーブスでプレーした。彼は打率.364を記録し、これはブレーブス史上最高打率であり、リーグ全体でも2位の成績だった。また、リーグ最多の59安打と36得点を記録し、リーグのオールスターゲームにも選出された。
2015年には、プレシーズンでゴールデン・スパイクス賞のウォッチリストに選出された。シーズンを打率.291で終え、キャリアハイとなる77安打、63得点、36打点、20盗塁を記録した。彼はブルックス・ウォレス賞のファイナリストにも選ばれた。大学での3シーズンを通じて、マーティンは176試合に出場し、通算打率.284、193安打、136得点、81打点、45盗塁、27二塁打、7本塁打、7三塁打を記録した。
2. プロ経歴
リッチー・マーティンはMLBドラフトでの指名を経てプロ入りし、マイナーリーグで着実に経験を積み、メジャーリーグでのプレー機会を得た。しかし、度重なる負傷に悩まされ、所属チームを転々とすることとなった。
2.1. オークランド・アスレチックス傘下時代
2015年のMLBドラフトにおいて、オークランド・アスレチックスは全体20位でマーティンを1巡目指名し、彼はアスレチックスと契約してプロ入りした。同年は傘下のA-級バーモント・レイクモンスターズでプレーし、51試合に出場して打率.237、2本塁打、16打点、7盗塁を記録した。
2016年はA+級ストックトン・ポーツとAA級ミッドランド・ロックハウンズでプレーし、両チーム合計で91試合に出場して打率.235、3本塁打、38打点、14盗塁を記録した。
2017年もA+級ストックトンとAA級ミッドランドでプレーし、両チーム合計で109試合に出場して打率.234、4本塁打、33打点、13盗塁を記録した。
2018年にはAA級ミッドランドで118試合に出場し、打率.300、出塁率.368、長打率.439、6本塁打、42打点、25盗塁という好成績を収めた。
2.2. ボルチモア・オリオールズ時代
2018年12月13日に行われたルール・ファイブ・ドラフトで、ボルチモア・オリオールズが全体1位でマーティンを指名し、移籍が決定した。彼はオリオールズの開幕ロースター入りを果たし、ニューヨーク・ヤンキースとの開幕戦でメジャーデビューを果たした。この試合では「9番・遊撃手」として先発出場したが、3打数無安打だった。
2019年3月30日には、ジェームズ・パクストンからメジャー初安打となるシングルヒットを記録し、キャリア初の盗塁も決めた。同年5月22日には、ヤンキース戦でCC・サバシアからキャリア初のホームランを放ったが、試合は7対5で敗れた。ルーキーシーズンとなった2019年は、120試合に出場して打率.208、6本塁打、29得点、23打点、10盗塁を記録した。遊撃手としては90試合に先発出場し、これはオリオールズの新人遊撃手としては歴代3位の多さだった。
2020年7月15日、手首の骨折のため手術を受け、2~3ヶ月の離脱となり、シーズンを全休することとなった。
2021年1月下旬には、トレーニング中に左手の有鉤骨を骨折し、再び手術が必要となった。同年5月19日には、左手首の橈骨に非転位性骨折を負ったことが発表され、8~12週間の離脱が見込まれた。5月31日には60日間の負傷者リストに登録された。同年8月2日に負傷者リストから復帰し、メジャーリーグのロースターに加わった。8月3日のヤンキース戦で2年ぶりにメジャー復帰を果たした。同年11月30日、オリオールズは彼を40人枠から外し、傘下のAAA級ノーフォーク・タイズへ配属した。
2022年シーズンはAAA級ノーフォークで開幕を迎えたが、同年6月11日にボルチモアへメジャー昇格した。6月12日に行われたカンザスシティ・ロイヤルズ戦では、5打数3安打、2三塁打、2打点という活躍を見せた。しかし、同年9月1日にDFA(メジャーリーグでの出場登録を抹消する手続き)となり、AAA級に降格した。その後、同年10月6日にフリーエージェント(FA)となった。
2.3. オリオールズ退団後のキャリア
ボルチモア・オリオールズ退団後、マーティンはメジャーリーグ復帰を目指して複数の球団の傘下や独立リーグでプレーした。
2023年1月17日、シンシナティ・レッズとマイナーリーグ契約を結び、スプリングトレーニングには招待選手として参加することとなった。彼は傘下のAAA級ルイビル・バッツに配属されたが、同年3月28日にレッズから放出されFAとなった。
2023年4月14日、ワシントン・ナショナルズとマイナーリーグ契約を結び、傘下のAAA級ロチェスター・レッドウイングスに配属された。ロチェスターでは113試合に出場し、打率.217、出塁率.329、長打率.314、3本塁打、36打点、29盗塁を記録した。シーズン終了後の11月6日にFAとなった。
2024年1月8日、ロサンゼルス・エンゼルスとマイナーリーグ契約を結んだ。しかし、スプリングトレーニングで10打数1安打、5三振に終わった後、同年3月3日にエンゼルスから放出されFAとなった。
2024年7月5日、アトランティックリーグのガストニア・ゴーストペッパーズと契約した。ガストニアでは37試合に出場し、打率.244、出塁率.326、長打率.430、5本塁打、15打点、22盗塁を記録した。
3. プレースタイル
リッチー・マーティンは、その高い守備能力と俊足が大きな特徴である。遊撃手として堅実な守りを見せ、打撃面では長打力よりも安打や盗塁で貢献するタイプである。メジャーリーグのルーキーシーズンには遊撃手として90試合に先発出場するなど、守備の信頼性は高い。
4. 詳細情報
4.1. 年度別打撃成績
年 度 | 球 団 | 試 合 | 打 席 | 打 数 | 得 点 | 安 打 | 二 塁 打 | 三 塁 打 | 本 塁 打 | 塁 打 | 打 点 | 盗 塁 | 盗 塁 死 | 犠 打 | 犠 飛 | 四 球 | 死 球 | 三 振 | 併 殺 打 | 打 率 | 出 塁 率 | 長 打 率 | OPS | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2019 | BAL | 120 | 309 | 283 | 29 | 59 | 8 | 3 | 6 | 91 | 23 | 10 | 1 | 5 | 1 | 14 | 0 | 6 | 83 | 6 | .208 | .260 | .322 | .581 |
2021 | 37 | 105 | 98 | 9 | 23 | 2 | 0 | 1 | 28 | 8 | 0 | 2 | 1 | 1 | 4 | 0 | 1 | 28 | 1 | .235 | .269 | .286 | .555 | |
2022 | 13 | 33 | 30 | 4 | 5 | 0 | 2 | 0 | 9 | 3 | 3 | 1 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 10 | 0 | .167 | .242 | .300 | .542 | |
MLB:3年 | 170 | 447 | 411 | 42 | 87 | 10 | 5 | 7 | 128 | 34 | 13 | 4 | 6 | 2 | 21 | 0 | 7 | 121 | 7 | .212 | .261 | .311 | .572 |
- 2022年度シーズン終了時
4.2. 年度別守備成績
年 度 | 球 団 | 遊撃(SS) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
試 合 | 刺 殺 | 補 殺 | 失 策 | 併 殺 | 守 備 率 | ||
2019 | BAL | 117 | 108 | 224 | 10 | 46 | .971 |
2021 | 37 | 49 | 77 | 6 | 10 | .955 | |
MLB | 154 | 157 | 301 | 16 | 56 | .966 |
- 2021年度シーズン終了時
4.3. 背番号
- 1(2019年、2021年 - 2022年)
5. 私生活
リッチー・マーティンの母方の祖父はウォルター・トーマス(Walter Lewis Thomas)という人物で、かつてニグロリーグでプロ野球選手として活躍した。祖父のウォルター・トーマスは、カンザスシティ・モナークスの選手として、サチェル・ペイジやジャッキー・ロビンソンといった歴史的な選手たちともチームメイトだった。