1. 概要
リンナル(Rinnalリンナルアイルランド語)は、時にリンダル(Rindalリンダルアイルランド語)、リオナル(Rionnalリオナルアイルランド語)、リンナン(Rinnanリンナンアイルランド語)とも表記される、アイルランド神話に登場するフィル・ボルグ族のアイルランド上級王である。彼はゲナンの息子としてその系譜に連なり、前任のフィアハ・ケンフィンナンを倒して王位に就いた。リンナルは、アイルランドにおいて初めて槍の穂先を武器として用いた王として知られ、これは当時の軍事技術における重要な革新であった。彼は5年間または6年間(資料により異なる)にわたってエリンを統治した後、従兄弟であるフォドブゲンによって王位を追われた。
2. 背景と系譜
リンナルは、古代アイルランドの神話的歴史において、アイルランドの初期の支配者とされるフィル・ボルグ族の重要な一員である。彼の父親はフィル・ボルグ族の王の一人であるゲナンであり、この血統はアイルランドの初期の王統に深く関わっている。リンナル自身の息子はエルクであり、その孫には後にアイルランド上級王となるオーハドがいる。このように、リンナルの系譜は後の世代に受け継がれ、アイルランドの歴史と伝説の中で重要な役割を担っている。
3. アイルランド最高王としての統治
リンナルは、前任の上級王であったフィアハ・ケンフィンナンを打倒し、アイルランドの最高権力者としての地位を獲得した。彼の統治期間中における最も注目すべき功績の一つは、アイルランドの王として初めて槍の穂先を実戦で導入したことである。この革新は、当時の戦闘技術に大きな影響を与えたと考えられている。この出来事は、古代アイルランド語の「rind」や「rinn」(いずれも「(槍の)先端」の意)という言葉の語源に関連付けられることもある。
リンナルの統治期間は史料によって異なり、5年間または6年間とされている。具体的な年代としては、『アイルランド年代記』(Annals of the Four Mastersアナルズ・オブ・ザ・フォー・マスターズ英語)では紀元前1917年から紀元前1911年まで、ジェフリー・キーティングが著した『アイルランド史』(Foras Feasa ar Érinnフォラス・フェサ・アル・エーリンアイルランド語)では紀元前1497年から紀元前1491年までと記録されている。最終的に、リンナルは彼の従兄弟であるフォドブゲンによって王位から追放された。

4. 文献記録
リンナルに関する情報は、主に中世アイルランドの歴史と神話を記述した複数の重要な原典文献に記されている。これらの文献は、彼の存在とアイルランド上級王としての役割を後世に伝える貴重な資料となっている。
- 『アイルランド征服記』(Lebor Gabála Érennレヴォル・ガバーラ・エーレンアイルランド語):アイルランドの創世から様々な民族の移住、そして初期の王たちの歴史を神話的に詳述した文献であり、リンナルの系譜や上級王としての即位に関する記述が含まれている。
- 『アイルランド四部作の年代記』(Annals of the Four Mastersアナルズ・オブ・ザ・フォー・マスターズ英語):アイルランドの歴史を年代順に編纂した包括的な記録であり、リンナルの統治期間や関連する出来事についての詳細な年代情報を提供している。
- 『アイルランド史』(Foras Feasa ar Érinnフォラス・フェサ・アル・エーリンアイルランド語):17世紀に歴史家ジェフリー・キーティングによって書かれたアイルランドの通史で、神話時代から続く王たちの系譜や功績の中にリンナルの記録が見られる。
これらの文献は、リンナルがアイルランドの伝説的な歴史において重要な位置を占める人物であったことを裏付けている。