1. 生涯とアマチュア経歴
ロバート・コエロは1984年11月23日、アメリカ合衆国ニュージャージー州ベイヨンで生まれた。フロリダ州のレイクリージョン高校とノースウェストフロリダ州立大学で野球を続けた。
2004年のMLBドラフト20巡目(全体588位)でシンシナティ・レッズから捕手として指名を受け、8月17日に契約しプロ入りした。しかし、2005年は肋骨の負傷によりシーズンを全休した。その後、一度もレッズ傘下でのプレー機会がないまま、2006年3月27日に放出された。
2. プロ経歴
ロバート・コエロは、捕手としてプロ入りした後、投手に転向し、複数のMLB傘下球団や独立リーグ、そしてKBOリーグでキャリアを築いた。
2.1. 初期キャリアとマイナーリーグ
レッズから放出された後、コエロは2006年9月7日にロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイムとマイナー契約を結んだ。2007年に捕手から投手へ転向し、ルーキー級アリゾナリーグ・エンゼルスで20試合に登板、1勝1敗、防御率1.37の成績を残した。同年10月29日にFAとなった。
2008年には独立リーグのゴールデンベースボールリーグに所属し、カルガリー・ヴァイパーズで12試合に登板、1勝1敗、防御率5.74を記録した。同年7月3日にはエドモントン・キャピタルズへ移籍し、20試合に登板して2勝0敗、防御率1.78の好成績を残した。
2.2. メジャーリーグ (MLB) 時代
独立リーグでの活躍後、ロバート・コエロは再びMLB球団との契約を果たし、複数のチームでメジャーリーグでの登板機会を得た。
2.2.1. ボストン・レッドソックス
2008年11月10日、ボストン・レッドソックスとマイナー契約を結んだ。2009年はAAA級ポータケット・レッドソックスで開幕を迎えたが1試合の登板に留まり、4月下旬にA+級セイラム・レッドソックスへ降格した。A+級では33試合に登板し、5勝3敗2セーブ、防御率2.05を記録した。
2010年はAA級ポートランド・シードッグスで開幕を迎え、14試合に登板して4勝1敗1セーブ、防御率3.32の成績を残した。同年6月にはAAA級ポータケットへ昇格し、18試合で3勝5敗、防御率4.22を記録した。
2010年9月5日にメジャー初昇格を果たし、翌日のタンパベイ・レイズ戦でメジャーデビューした。この試合では9点リードの7回表に登板したが、3安打3失点2四球と乱調し、わずか1死しか取れないまま降板した。この年は6試合に中継ぎとして登板し、防御率4.76だった。レッドソックス傘下では3年間で通算13勝10敗、防御率2.91のマイナーリーグ成績を残している。2011年2月9日にDFA(Designated For Assignment)となった。
2.2.2. シカゴ・カブス
2011年2月15日、コエロはトニー・トーマスとのトレードでシカゴ・カブスへ移籍した。カブス傘下ではAAA級アイオワ・カブスで開幕を迎え、30試合に登板して6勝6敗1セーブ、防御率4.45を記録した。同年5月27日にDFAとなり、6月4日にはAA級テネシー・スモーキーズへ降格した。テネシーでは4試合に登板し1勝2敗、防御率3.00の成績を残した。同年11月2日にFAとなった。
2.2.3. トロント・ブルージェイズ
2011年12月1日、トロント・ブルージェイズとマイナー契約を結んだ。2012年のほとんどの期間をブルージェイズ傘下のAAA級ラスベガス・フィフティワンズで過ごし、19試合(3先発)に登板して4勝1敗、防御率3.00を記録した。
同年5月31日に40人枠入りし、メジャー昇格を果たした。6月7日にはAAA級へ降格したが、6月16日に再昇格。6月18日のミルウォーキー・ブルワーズ戦では6回2死から登板したが、7回裏に1失点を喫し、これが決勝点となりメジャー初黒星を喫した。6月26日に再びAAA級へ降格した。2012年はブルージェイズで6試合に登板し、12回で12自責点を許した。
7月20日には右肘の故障のため故障者リスト入りした。10月9日に故障者リストから外れ、40人枠から外れる措置(outright)を受けたが、これを拒否してFAを選択した。
2.2.4. ロサンゼルス・エンゼルス
2013年1月28日、古巣であるロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイムとマイナー契約を結び、メジャーのスプリングトレーニングに招待された。同年はAAA級ソルトレイク・ビーズで開幕を迎え、15試合に登板し1勝0敗4セーブを記録した。
5月11日にメジャー昇格。5月18日のシカゴ・ホワイトソックス戦では1点ビハインドの5回1死から登板し、1.2回を無安打無失点3奪三振に抑え、メジャー初勝利を挙げた。メジャーでは主にリリーフとして起用された。同年6月11日、右肩の故障のため15日間の故障者リスト入りし、8月21日には60日間の故障者リストに異動した。9月2日にはAA級アーカンソー・トラベラーズで1試合に登板した。この年、メジャーでは16試合に登板し、2勝2敗1セーブ、防御率3.71の成績を残した。10月8日に40人枠から外れ、10月10日にFAとなった。
2.2.5. その他MLB傘下球団
エンゼルス退団後も、コエロは複数のMLB傘下球団と契約を繰り返した。
- ニューヨーク・ヤンキース: 2014年1月8日にマイナー契約を結んだ。同年7月2日に契約を解除され、FAとなった。
- ボルチモア・オリオールズ: 2014年7月11日にマイナー契約を結んだ。
- サンフランシスコ・ジャイアンツ: 2015年2月17日にマイナー契約を結び、6月1日までのオプトアウト条項(契約解除条項)が付帯していた。コエロはこの条項を行使し、同年6月1日にFAとなった。ジャイアンツ傘下のAAA級リバーキャッツでは、放出前に先発投手として11試合に登板していた。
- テキサス・レンジャーズ: 2015年8月11日にマイナー契約を結んだ。
2.3. KBOリーグ時代
コエロは2015年に韓国プロ野球(KBOリーグ)の球団と契約し、アジアの舞台でもプレーした。
2.3.1. ネクセン・ヒーローズ
2015年12月3日、KBOリーグのネクセン・ヒーローズと1年総額55.00 万 USDで契約を結んだ。これは、同年オフに日本へ移籍したアンディ・バンヘッケンの代替選手として獲得されたものであった。
2016年シーズンは先発投手として起用され、4月2日のロッテ・ジャイアンツ戦で初登板・初先発し、5回1失点で勝利投手となった。4月21日のSKワイバーンズ戦では6回3失点(自責点2)でシーズン初のクオリティ・スタートを記録した。
彼の投球は、シン・ジェヨンやパク・ジュヒョンといった他の国内先発投手陣がほとんど四球を与えない投球を見せるのに対し、四球が多い傾向にあった。しかし、その投球内容にもかかわらず、少なくとも5イニングを投げきるケースが多く、「コックヨク」(韓国語で「鼻をかむ」を意味する「コプルダ」と、粘り強く続ける「クヨククヨク」を合わせた造語で、粘り強い投球を揶揄したニックネーム)という渾名で呼ばれることもあった。
最終的に2016年6月16日、ヒーローズはコエロをウェーバー公示し、退団となった。これは2016年シーズンにおいて、コリン・ベレスターに次ぐ2人目の退団外国人選手であった。退団の背景には、被安打率や勝利数こそそこそこであったものの、シーズンを通しての制球難による四球の増加が懸念され、それによりブルペンへの負担増や野手の疲労蓄積が懸念されたことが挙げられる。2016年シーズンは12試合に登板し、6勝5敗、防御率3.77の成績を残した。彼の後任としてスコット・マクレガーが獲得された。
3. 投球スタイルと球種
ロバート・コエロは、主にファストボールとチェンジアップを投げるが、最も特徴的だったのは、彼が「The WTF」と名付けたフォークボールである。このフォークボールは、無回転で不規則に揺れ動くことから、しばしばナックルボールに似ていると評された。韓国の報道では、この球種を「フォークボールのグリップを持つ無回転ナックルボール」と表現されており、その珍しい動きで打者を幻惑した。彼のファストボールは重く、球速は時速150 km/hに迫ることもあった。
4. 年度別成績
4.1. メジャーリーグ成績
年 度 | 登 板 | 先 発 | 完 投 | 完 封 | 無 四 球 | 勝 利 | 敗 戦 | セ 丨 ブ | ホ 丨 ル ド | 勝 率 | 打 者 | 投 球 回 | 被 安 打 | 被 本 塁 打 | 与 四 球 | 敬 遠 | 与 死 球 | 奪 三 振 | 暴 投 | ボ 丨 ク | 失 点 | 自 責 点 | 防 御 率 | W H I P | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2010 | BOS | 6 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 26 | 5.2 | 4 | 0 | 5 | 0 | 0 | 5 | 1 | 0 | 3 | 3 | 4.76 | 1.59 |
2012 | TOR | 6 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | .000 | 33 | 6.1 | 10 | 2 | 4 | 0 | 1 | 11 | 0 | 0 | 9 | 9 | 12.79 | 2.21 |
2013 | LAA | 16 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 2 | 1 | 0 | .500 | 73 | 17.0 | 14 | 1 | 8 | 0 | 0 | 23 | 0 | 0 | 7 | 7 | 3.71 | 1.29 |
MLB:3年 | 28 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 3 | 1 | 1 | .400 | 132 | 29.0 | 28 | 3 | 17 | 0 | 1 | 39 | 1 | 0 | 19 | 19 | 5.90 | 1.55 |
4.2. KBOリーグ成績
年 度 | 登 板 | 先 発 | 完 投 | 完 封 | 無 四 球 | 勝 利 | 敗 戦 | セ 丨 ブ | ホ 丨 ル ド | 勝 率 | 打 者 | 投 球 回 | 被 安 打 | 被 本 塁 打 | 与 四 球 | 敬 遠 | 与 死 球 | 奪 三 振 | 暴 投 | ボ 丨 ク | 失 点 | 自 責 点 | 防 御 率 | W H I P | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2016 | ネクセン | 12 | 12 | 0 | 0 | 0 | 6 | 5 | 0 | 0 | .545 | 271 | 62.0 | 50 | 6 | 42 | 0 | 2 | 46 | 0 | 0 | 29 | 26 | 3.77 | 1.48 |
KBO:1年 | 12 | 12 | 0 | 0 | 0 | 6 | 5 | 0 | 0 | .545 | 271 | 62.0 | 50 | 6 | 42 | 0 | 2 | 46 | 0 | 0 | 29 | 26 | 3.77 | 1.48 |
4.3. マイナーリーグ成績
ロバート・コエロは6年間のマイナーリーグキャリアにおいて、171試合(31先発)に登板し、通算防御率3.33を記録した。9イニングあたりの奪三振率は9.9、9イニングあたりの与四球率は3.9、そしてWHIPは1.23であった(2014年7月時点)。
5. 背番号
- 68(2010年) - ボストン・レッドソックス
- 56(2012年) - トロント・ブルージェイズ
- 59(2013年) - ロサンゼルス・エンゼルス
- 23(2016年) - ネクセン・ヒーローズ
6. 引退とその後
ロバート・コエロのプロ野球選手としての引退時期や、引退後の活動、現在の状況については、現時点(入手可能な情報に基づく)で明確な情報が記述されていない。