1. 幼少期と教育
ロバート・レッキーは1920年12月18日にペンシルベニア州フィラデルフィアで、8人兄弟のアイルランド系カトリック教徒の家庭に生まれました。彼はニュージャージー州ラザフォードで育ち、セント・メアリー高校に通いました。
2. 軍歴
レッキーは第二次世界大戦中にアメリカ海兵隊に所属し、太平洋戦線で機関銃手および偵察員として数々の激戦に参加しました。
2.1. 初期キャリアと入隊
レッキーは高校時代にニュージャージー州ハッケンサックの『The Bergen Evening Recordバーゲン・イブニング・レコード英語』紙でスポーツ記者として働き始め、文筆活動のキャリアをスタートさせました。真珠湾攻撃後の1942年1月18日、彼はアメリカ海兵隊に入隊しました。彼は第1海兵師団の第1海兵連隊第2大隊H中隊(H/2/1)に配属されました。
2.2. 戦闘経験
レッキーはガダルカナル島の戦いにおけるテナルーの戦い、ガダルカナル戦役、グロスター岬の戦いで戦闘を経験しました。特にペリリューの戦いでは、爆風による負傷を負い、ラッセル諸島の陸軍野戦病院に後送されました。この負傷により、彼の戦闘経歴は終了しました。彼は沖縄戦には参加していません。1945年3月にアメリカ合衆国に帰国し、その直後に名誉除隊となりました。
2.3. 軍事勲章
ロバート・レッキーが受章した勲章および表彰は以下の通りです。
勲章名 | リボン |
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パープルハート章 | |
海軍・海兵隊功績章 with Combat V | |
海軍コンバット・アクション・リボン | |
海軍大統領部隊表彰 with アワードスター | |
アメリカ戦役章 | |
太平洋戦線従軍章 with 3つのブロンズキャンペーンスター | |
第二次世界大戦戦勝章 |
3. 戦後と執筆活動
第二次世界大戦後、ロバート・レッキーはジャーナリストとして活動した後、作家へと転身し、多岐にわたるジャンルで精力的に執筆活動を行いました。
3.1. ジャーナリズムのキャリア
軍務を終えた後、レッキーはAP通信、『Buffalo Courier-Expressバッファロー・クーリエ=エクスプレス英語』紙、『ニューヨーク・ジャーナル・アメリカン』紙、『ニューヨーク・デイリーニュース』紙、そして『The Star-Ledgerザ・スター・レッジャー英語』紙などの報道機関で記者として働きました。
3.2. 作家としてのキャリアと着想
1951年、レッキーはブロードウェイでミュージカル『南太平洋』を観劇しました。彼は途中で劇場を立ち去り、「私は本当は何があったのかを話さなければならない。人々に戦争はミュージカルではなかったことを知らせなければならない」と語ったと、妻のヴェラが証言しています。この経験が彼の回想録執筆の大きな動機となりました。
彼の最初の著書でありベストセラーとなった戦争回想録『Helmet for My Pillowヘルメット・フォー・マイ・ピロー英語』は1957年に出版されました。レッキーは生涯で40冊以上の著書を世に送り出し、その内容はフレンチ・インディアン戦争(1754年 - 1763年)から湾岸戦争(1991年)に至るまで、アメリカの主要な戦争や戦闘を広範に網羅しています。
4. 著書
ロバート・レッキーは、軍事史、自伝、カトリック史、フィクション、そして若い読者向けの書籍など、多様なジャンルで数多くの著作を残しました。
4.1. 軍事史に関する著書
- 『March to Gloryマーチ・トゥ・グローリー英語』(1960年)
- 『Conflict: The History of the Korean War, 1950-53コンフリクト:朝鮮戦争の歴史、1950年-53年英語』(1962年)
- 『Strong Men Armed: The United States Marines Against Japanストロング・メン・アームド:対日アメリカ海兵隊英語』(1962年)
- 『Challenge for the Pacific: Guadalcanal, the Turning Point of the War太平洋への挑戦:ガダルカナル、戦争の転換点英語』(1965年)
- 『The Battle for Iwo Jima硫黄島の戦い英語』(1967年)
- 『Challenge for the Pacific: The Bloody Six-Month Battle of Guadalcanal太平洋への挑戦:ガダルカナルの血みどろの6ヶ月の戦い英語』(1968年)
- 『Great American Battles偉大なアメリカの戦い英語』(1968年)
- この本は、フレンチ・インディアン戦争から朝鮮戦争までのアメリカの主要な戦争を概観し、特にケベックの戦い、トレントンの戦い、ニューオーリンズの戦い、メキシコシティの戦い、チャンセラーズビルの戦い、アポマトックス・コートハウスの戦い、サンティアゴ・デ・クーバ海戦、ベロー・ウッドの戦い、ガダルカナルの戦い、ノルマンディー上陸作戦、釜山と仁川の11の重要な戦闘に焦点を当てています。
- 『The Wars of Americaアメリカの戦争英語』(1968年、1998年改訂版)
- 『Delivered from Evil: The Saga of World War II悪からの解放:第二次世界大戦の物語英語』(1987年)
- 『None Died in Vain: The Saga of the Civil War無駄死にはなかった:南北戦争の物語英語』(1990年)
- 『The General将軍英語』(1991年)
- 『George Washington's War: The Saga of the American Revolutionジョージ・ワシントンの戦争:アメリカ独立革命の物語英語』(1992年)
- 『From Sea to Shining Sea: From the War of 1812 to the Mexican-American War, the Saga of America's Expansion海から海へ:1812年戦争から米墨戦争まで、アメリカ拡大の物語英語』(1994年)
- 『Okinawa: The Last Battle of World War II沖縄:第二次世界大戦最後の戦い英語』(1995年)
- 『The Wars of America: From 1600 to 1900アメリカの戦争:1600年から1900年まで英語』(1998年)
- 『A Few Acres of Snow: The Saga of the French and Indian Warsわずかな雪の土地:フレンチ・インディアン戦争の物語英語』(2000年)
- 『Warfare: A Study of War戦争:戦争の研究英語』
4.2. 自伝
- 『Helmet for My Pillowヘルメット・フォー・マイ・ピロー英語』(1957年)
- 『Lord, What a Family!主よ、なんて家族だ!英語』(1958年)
4.3. カトリック史に関する著書
- 『These Are My Heroes: A Study of the Saintsこれこそ私の英雄たち:聖人たちの研究英語』
- 『A Soldier-Priest Talks to Youth兵士司祭が若者たちに語る英語』
- 『American and Catholicアメリカ人とカトリック英語』
4.4. フィクション
- 『Ordained叙階英語』
- 『Marines!海兵隊員たち!英語』(1960年)
- 『The Bloodborn血統英語』
- 『Forged in Blood血で鍛えられた英語』
- 『Blood of the Seventeen Fires十七の炎の血英語』
4.5. 若年層向け著書
- 『The Battle for Iwo Jima硫黄島の戦い英語』(1967年)
- 『The Story of Footballフットボールの物語英語』(1965年)
- 『The Story of World War Two第二次世界大戦の物語英語』
- 『The Story of World War One第一次世界大戦の物語英語』
- 『The War in Korea朝鮮戦争英語』
- 『Great American Battles偉大なアメリカの戦い英語』(1968年)
- 『The World Turned Upside-Down逆さまになった世界英語』
- 『1812: The War Nobody Won1812年:誰も勝たなかった戦争英語』
- 『The Big Game大きな試合英語』
- 『Keeper Playキーパープレイ英語』
- 『Black Treasure黒い宝物英語』(1959年、Roger Barlowロジャー・バーロウ英語名義、サンディ・スティールシリーズ第1巻)
- 『Danger at Mormon Crossingモルモン・クロッシングの危険英語』(1959年、Roger Barlowロジャー・バーロウ英語名義、サンディ・スティールシリーズ第2巻)
- 『Stormy Voyage嵐の航海英語』(1959年、Roger Barlowロジャー・バーロウ英語名義、サンディ・スティールシリーズ第3巻)
- 『Fire at Red Lakeレッドレイクの火事英語』(1959年、Roger Barlowロジャー・バーロウ英語名義、サンディ・スティールシリーズ第4巻)
- 『Secret Mission to Alaskaアラスカへの秘密任務英語』(1959年、Roger Barlowロジャー・バーロウ英語名義、サンディ・スティールシリーズ第5巻)
- 『Troubled Waters荒れた水域英語』(1959年、Roger Barlowロジャー・バーロウ英語名義、サンディ・スティールシリーズ第6巻)
5. 私生活
ロバート・レッキーはヴェラ・ケラーと結婚し、デヴィッド、ジェフ、ジョアンの3人の子供をもうけました。妻のヴェラは2024年に100歳で亡くなりました。
6. 死去
ニュージャージー州バイラム郡区に長年居住していたレッキーは、アルツハイマー病との長い闘病生活の末、2001年12月24日に81歳の誕生日を迎えたわずか6日後に死去しました。彼は55年間連れ添った妻、3人の子供、2人の姉妹、そして6人の孫に看取られました。彼の遺体はニュージャージー州ニュートンのセント・ジョセフ霊廟に埋葬されました。
7. 影響と評価
ロバート・レッキーの回想録『Helmet for My Pillowヘルメット・フォー・マイ・ピロー英語』は、ユージーン・スレッジの著書『With the Old Breedウィズ・ジ・オールド・ブリード英語』と共に、2010年に放送されたHBOのミニシリーズ『ザ・パシフィック』の主要な原作となりました。このシリーズでは、俳優のジェームズ・バッジ・デールがレッキーを演じ、彼の戦争体験が広く一般に知られるきっかけとなりました。レッキーの著作は、第二次世界大戦における海兵隊員の視点から、戦争の過酷さと人間性を深く掘り下げたものとして高く評価されています。
8. 関連人物
- ユージーン・スレッジ:同じくアメリカ海兵隊の第1海兵師団に所属し、太平洋戦線の体験を回想録『ペリリュー・沖縄戦記』(原題:With the Old Breedウィズ・ジ・オールド・ブリード英語)に記しました。彼の著作もまた『ザ・パシフィック』の原作の一つとなりました。
- シドニー・フィリップス:レッキーと同じくH中隊に所属した海兵隊員で、彼の回想録も『ザ・パシフィック』に影響を与えました。