1. 概要
本稿では、ギリシャの著名な政治家であるエヴァンゲロス・メイマラキスの生涯と主要な政治活動、そして彼の政治的キャリアがギリシャ社会に与えた影響について詳述する。メイマラキスは長年にわたりギリシャの政治舞台で活躍し、新民主主義党の幹部として国防大臣やギリシャ議会議長といった重要な役職を歴任した。2015年には同党の臨時党首として総選挙を戦い、現在は欧州議会議員として国際的な舞台で活動している。彼の経歴は、ギリシャの現代政治史において、特に保守派の視点から重要な位置を占める。

2. 生涯
エヴァンゲロス・メイマラキスの生涯は、彼の政治的キャリアと密接に結びついており、幼少期から欧州議会議員としての現在に至るまで、多岐にわたる経験を積んできた。
2.1. 幼少期と教育
メイマラキスは1953年12月14日にアテネで生まれた。彼の家系はクレタ島にルーツを持つ。父親もまた、かつて国民急進連合に所属し、イラクリオン県選出のヘレニック議会議員を務めた政治家であり、メイマラキスの政治的背景の基盤を築いた。
彼はパンテイオン大学在学中の1974年に、学生として新民主主義党に参加した。同年、彼は新民主主義党青年組織(ONNED)の設立にも尽力した。
2.2. 初期政治経歴
メイマラキスの初期の政治キャリアは、新民主主義党青年組織(ONNED)における活動から始まった。
彼は1984年にONNEDの執行委員会議長に任命され、1987年3月に開催された組織の第1回大会を主導した。1986年の新民主主義党第2回党大会以降、彼は同党の中央委員会委員を務めている。
1989年6月と11月の総選挙で、彼はアテネB選挙区から新民主主義党のヘレニック議会議員として初当選を果たした。その後、1990年、1993年、1996年、2000年の選挙でも再選されている。
1991年から1992年にかけては新民主主義党の議会代表の一人を務め、1992年から1993年にはスポーツ担当副大臣として活動した。2001年3月、新民主主義党第5回党大会で、彼は党の中央委員会書記に選出され、この役職に就いた最初の人物となった。2004年7月には書記に再選され、2006年2月15日にコスタス・カラマンリス内閣で国防大臣に任命されるまでこの職を務めた。
3. 主要な活動と業績
メイマラキスはギリシャの政界において、国防大臣、ヘレニック議会議長、新民主主義党臨時党首、そして欧州議会議員といった主要な役職を歴任し、その政治キャリアにおいて重要な貢献を果たしてきた。
3.1. 国防大臣
メイマラキスは2006年2月15日から2009年まで、コスタス・カラマンリス政権下で国防大臣を務めた。この期間中、彼はギリシャの防衛政策の策定と実施において中心的な役割を担った。具体的な政策内容については詳細な情報がないが、国防予算の管理や軍の近代化、国際的な軍事協力など、国家安全保障に関わる広範な責任を負っていた。
3.2. ヘレニック議会議長
2012年6月29日、メイマラキスはギリシャ議会議長に就任した。彼はこの職を2015年1月に次期議会が選出されるまで務めた。議会議長として、彼は議会の運営を監督し、法案の審議や採決を円滑に進めるための議事進行を担った。この役割は、ギリシャの立法プロセスにおける中立性と効率性を確保する上で極めて重要である。
3.3. 新民主主義党臨時党首
2015年7月、ギリシャの経済危機に関する国民投票で「反対」票が多数を占めたことを受け、当時の新民主主義党党首であったアントニス・サマラスが辞任した。これに伴い、メイマラキスが党の臨時党首に就任した。この立場で、彼は2015年9月20日に実施された2015年9月ギリシャ総選挙において党を率いた。この選挙で新民主主義党は、わずか9ヶ月の間に二度もSYRIZAに敗れた。しかし、メイマラキスは新民主主義党の得票率を27.8%から28.1%へとわずかに増加させることに成功したものの、獲得議席数は76から75へと減少した。
9月の選挙後も彼は臨時党首を務め続け、年末までに党首選挙を実施し、自身も候補者として立候補することを表明した。しかし、11月24日、メイマラキスは新民主主義党議会グループの書記であったイオアニス・プラキオタキスを党の副党首に任命した後、辞任し、プラキオタキスが新たな臨時党首となった。
3.4. 欧州議会議員
メイマラキスは2019年欧州議会議員選挙以降、欧州議会議員を務めている。彼は欧州議会外交委員会およびその下にある安全保障・防衛小委員会に所属している。2021年からは、欧州の未来に関する会議における欧州議会の代表団の一員として活動している。
中道右派の欧州人民党グループ(EPP)内では、マンフレート・ウェーバー議長の副議長の一人を務めている。
4. 個人生活
メイマラキスはギリシャの女優ニツァ・マルーダの娘であるイオアンナ・コロコタと結婚しており、二人の娘がいる。彼は英語に堪能である。
5. 評価と影響
メイマラキスは、政治家として非常に地に足の着いた人物と見られている。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのヴァシリス・モナスティリオティスは、彼が「労働者階級の有権者には『国民の男』として、そして伝統的な高所得の新民主主義党支持者には『ツィプラスに手厳しい攻撃を仕掛けることができる狡猾な策士』として、幅広い層にアピールする」と評している。この評価は、彼の政治的手腕が多様な有権者層に浸透し、彼が単なるエリート政治家ではなく、庶民感覚も持ち合わせていると見なされていることを示している。彼のこのような国民に寄り添う姿勢と、厳しい政治局面での交渉能力が、彼の政治的影響力を形成している。