1. 経歴
今野龍太の野球キャリアは、アマチュア時代からプロ入り後に至るまで、多くの変遷と特筆すべき出来事を伴っている。
1.1. プロ入り前
プロ入り前、今野は地元のスポーツ少年団で野球を始め、学生時代を通じてその才能を育んだ。
1.1.1. 学歴・アマチュア時代
今野龍太は、小学校2年生の時に地元の岩出山フェニックスで野球を始めた。大崎市立岩出山中学校時代には軟式野球部に所属した。宮城県岩出山高等学校へ進学後は、1年時から野球部のベンチに登録された。
2013年には、わずか11人の部員数ながら春季宮城県北部地区大会で準優勝を飾り、チームを30大会ぶり(東日本大震災直後で春の大会が中止された2011年を含めると31年ぶり)に春季宮城県大会出場へと導いた。宮城県大会の初戦では宮城県鹿島台商業高等学校打線から19奪三振を記録するなど、地区・県大会を通じて登板6試合中4試合で二桁奪三振を達成。通算53イニングで43安打24失点を許しながらも、69奪三振を記録した。また、全6試合を一人で投げ抜き、1完封を含む4完投勝利を挙げた。
3年夏の宮城県大会では、宮城県米谷工業高等学校との初戦(2回戦)で6者連続を含む16奪三振とノーヒットノーランを達成。許した走者は四球1、死球3、味方の失策5人であったが、チーム5年ぶりの県大会初戦突破に貢献した。しかし、3回戦の聖和学園高等学校戦では毎回の12奪三振を記録するも、8回9安打5失点で完投負けを喫した。この3回戦進出が在校中の最高成績であり、春夏ともに甲子園での全国大会出場の経験はない。なお、高校時代の今野とバッテリーを組んでいた同級生の主将・山田裕之は、卒業後の2015年春から宮城県高等学校野球連盟所属の現役最年少審判として活動している。
2013年10月24日に行われたドラフト会議では、東北楽天ゴールデンイーグルスから9位指名を受けた。出来高分1000.00 万 JPYを含めた契約金1500.00 万 JPY、推定年俸440.00 万 JPYという条件で入団契約を結んだ。背番号は99。支配下登録選手としての入団が前提の指名選手としては最後(76番目)の指名であったが、会議前日に今野の投球をビデオで見た当時の楽天一軍監督・星野仙一が、「面白い。ええやないか」と高く評価したことで指名が実現したと言われている。
1.2. プロ入り後
プロ入り後、今野龍太は東北楽天ゴールデンイーグルスでの初期キャリアをスタートさせ、後に東京ヤクルトスワローズへ移籍し、再び楽天へ復帰するキャリアを歩んだ。
1.2.1. 第1次楽天時代 (2014年 - 2019年)
2014年は、最速150 km/hの速球を投げることを最初の目標に掲げ、ウエイトトレーニングや下半身強化に精力的に取り組んだ。その結果、入団時から体重が7 kg増加。イースタン・リーグ公式戦では、4月19日の北海道日本ハムファイターズ戦で150km/hを、その後には自己最速となる153 km/hを計測した。新人・若手選手を積極的に起用する星野監督の方針により、8月17日にプロ入り後初となる一軍昇格を果たした。一軍公式戦では、8月21日の対日本ハム戦(旭川スタルヒン球場)での救援登板を皮切りに、通算5試合に登板した。特に、4人の新人投手だけで継投した8月27日の対埼玉西武ライオンズ戦(楽天koboスタジアム宮城)では、先発の松井裕樹、2番手の相原和友に次ぐ3番手として8回表一死から登板し、ソロ本塁打で1点を失いながらも二死を取り、西宮悠介へと繋いだ。
2015年は、イースタン・リーグ公式戦で17試合に登板し4勝を記録。一軍公式戦でも2試合に登板したが、二軍調整中の7月に右膝外側の半月板を痛め、10月14日に患部の縫合手術を受けた。これを受けて、球団は10月26日に今野の支配下選手契約を解除し、11月19日に育成選手として再契約した。この際、翌2016年シーズンから監督へ就任する梨田昌孝が希望した背番号99を譲る形で、当初予定されていた背番号69を着用しないまま、背番号を090に変更した。
2016年は、前年に受けた手術のリハビリに専念し、実戦への登板は見送られた。育成選手に関するNPBの規約に沿い、10月31日にいったん自由契約選手として公示されたが、後に育成選手として再契約した。
2017年、オープン戦を3試合続けて無失点で凌いだことを受け、レギュラーシーズン開幕直後の4月6日に、球団から支配下登録選手への復帰と出場選手登録が発表された。背番号は98となった。4月12日の対西武戦(Koboスタ宮城)で一軍公式戦2年ぶりの登板を果たしたが、この試合がこの年の一軍唯一の登板となった。しかし、イースタン・リーグの公式戦では、17試合に登板し1勝3セーブ、防御率1.71という好成績を残した。この年の6月には、楽天への入団1年目から交際していた高校時代の同級生と結婚している。
2018年は、6月8日の対広島東洋カープ戦で、3回表無死満塁というピンチからの救援でシーズン初登板を迎え、3つの三振を奪うなどの好投で2イニングを無失点に抑えた。7月14日には、第100回全国高等学校野球選手権記念宮城大会の開幕戦(楽天生命パーク宮城)で始球式に臨んだ。楽天球団による野球普及活動の一環であり、宮城大会の始球式を務めた現役のプロ野球選手は今野が初めてであった。最終的に、一軍公式戦では3試合に登板し、勝敗は付かなかったものの、防御率は1.80を記録した。イースタン・リーグ公式戦では、チームトップの46試合に登板し、2勝2敗1セーブ、防御率4.76を記録した。
2019年は、5月15日の対日本ハム戦(楽天生命パーク宮城)で、4点ビハインドの5回表に一軍公式戦のシーズン初登板を果たすと、3回無失点の好投でチームのサヨナラ勝利につなげた。5月18日の対千葉ロッテマリーンズ戦(ZOZOマリンスタジアム)で、自身および、宮城県のアマチュア球界から直接楽天へ入団した投手としての一軍公式戦初勝利を記録した。5月25日には第一子(長男)を授かった。しかし、最終的に一軍公式戦には4試合への登板にとどまり、レギュラーシーズン終了後の10月18日に球団から戦力外通告を受けた。「家族のためにももう少し野球を続けたい」という意向で、NPB他球団での現役続行を希望していたが、11月12日の12球団合同トライアウトには参加しなかった。
1.2.2. ヤクルト時代 (2020年 - 2024年)
2019年11月13日、東京ヤクルトスワローズへ入団し、翌14日から秋季松山キャンプに合流することが発表された。キャンプ終了後の12月2日付でNPBから自由契約選手として公示され、12月4日にヤクルトとの間で支配下選手契約を正式に結んだ。推定年俸は600.00 万 JPYで、背番号は楽天時代に着用できなかった69となった。
2020年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕が遅れたものの、オープン戦で好投し、自身初の開幕メンバー入りを果たした。6月19日に行われた中日ドラゴンズとの開幕戦では、延長10回に移籍後初登板したが、1回2失点(自責点0)で敗戦投手となった。その後もビハインドの場面で登板を重ねたが、8月31日に登録抹消。10月6日に再登録されると、そのままシーズン終了まで一軍に帯同した。最終的に、一軍公式戦で20試合に登板し0勝1敗、防御率2.84の成績を残した。奪三振率はクローザーの石山泰稚を超える12.79を記録した(25回1/3で奪三振36)。オフには200.00 万 JPY増となる推定年俸800.00 万 JPYで契約を更改した。
2021年は、4月23日の対中日戦で移籍後初勝利を挙げた。清水昇、スコット・マクガフに繋ぐ勝ちパターンを任され、最終的にチーム3位の64試合登板で35HP(7勝28ホールド)を記録し、球団6年ぶりの優勝に貢献した。日本シリーズの第5戦でポストシーズン初登板を果たした。オフには2400.00 万 JPY増となる推定年俸3200.00 万 JPYで契約を更改した。
2022年は、2年連続となる50試合以上登板を達成。シーズン後半に調子を落とし、前年より成績を落とすも、チームの連覇に貢献した。オフには推定年俸4200.00 万 JPYで契約を更改。来季は「勝ちパターンで投げたい」と語った。
2023年8月13日の対阪神タイガース戦(京セラドーム大阪)の5回裏の登板中に、梅野隆太郎に死球を与えてしまい、梅野は左手首を骨折する重傷を負った。この事件に加え、ヤクルト球団ホームページが当日の今野の投球を絶賛するかのような記事を掲載したため、球団に対する批判の声が上がった(この件については論争と評価で詳細)。以降、今野は一軍登録を抹消され、他のリリーフ陣も不調に陥るなど、チーム全体に影響が及んだ。このシーズン、今野の登板は26試合にとどまった。
2024年は移籍後最少となる6試合の登板にとどまった。11月28日、700.00 万 JPY減となる推定年俸2700.00 万 JPYで契約を更改した。この際、「もう1度キャリアハイを目指して」と抱負を語った。
1.2.3. 第2次楽天時代 (2025年 - )
2024年12月6日、金銭トレードにて古巣の楽天に復帰することが両球団から発表された。背番号は第1次楽天時代に使用した99をひっくり返した66となり、入団会見では「180度変わった姿をお見せできるように頑張っていきたい」と語った。
2. 選手としての特徴
今野龍太は、最速153 km/hの速球を武器とする。変化球はカットボール、フォーク、カーブを中心に投げ、稀にスライダーも投げる。
3. 個人生活
今野龍太は、東北楽天ゴールデンイーグルス入団1年目から交際していた高校時代の同級生と2017年6月に結婚している。2019年5月25日には第一子となる長男を授かった。
4. 受賞・記録
今野龍太のプロキャリアには、いくつかの重要な初記録や特筆すべき記録がある。
4.1. 初記録
- 初登板：2014年8月20日、対北海道日本ハムファイターズ16回戦(旭川スタルヒン球場)、8回裏に3番手で救援登板、1回無失点
- 初奪三振：2014年9月10日、対オリックス・バファローズ20回戦(楽天Koboスタジアム宮城)、9回表に原拓也から空振り三振
- 初勝利：2019年5月18日、対千葉ロッテマリーンズ8回戦(ZOZOマリンスタジアム)、6回裏に2番手で救援登板、2回無失点
- 初ホールド：2021年4月22日、対広島東洋カープ6回戦(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)、6回裏に3番手で救援登板、1回無失点
- 初セーブ：2022年6月9日、対オリックス・バファローズ3回戦(京セラドーム大阪)、9回裏に6番手で救援登板・完了、1回無失点
4.2. その他の記録
- 1球勝利：2021年10月1日、対広島東洋カープ20回戦(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)、7回裏二死に2番手で救援登板、1/3回無失点 ※史上45人目46度目
- 東鉄工業 presents 燕の下の力持ち賞(2021年9・10月度)
5. 背番号
今野龍太がプロキャリアで使用した背番号は以下の通り。
- 99(2014年 - 2015年)
- 090(2016年 - 2017年4月5日)
- 98(2017年4月6日 - 2019年)
- 69(2020年 - 2024年)
- 66(2025年 - )
6. 登場曲
今野龍太が試合登場時に使用した登場曲は以下の通り。
- 「君に贈る詩」DUFF(2014年 - 2015年)
- 「太陽に向かって咲く花」N.O.B.U!!!(2016年 - 2017年)
- 「いま、太陽に向かって咲く花」NOBU(2018年 - 2019年)
- 「プライド」高橋優(2020年 - )
7. 経歴統計
今野龍太のプロキャリアにおける年度別の詳細な統計は以下の通りである。
7.1. 年度別投手成績
| 年 度 | 球 団 | 登 板 | 先 発 | 完 投 | 完 封 | 無 四 球 | 勝 利 | 敗 戦 | セ 丨 ブ | ホ 丨 ル ド | 勝 率 | 打 者 | 投 球 回 | 被 安 打 | 被 本 塁 打 | 与 四 球 | 故 意 四 球 | 死 球 | 奪 三 振 | 暴 投 | ボ 丨 ク | 失 点 | 自 責 点 | 防 御 率 | WHIP |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2014 | 楽天 | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 25 | 5.1 | 9 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 5 | 5 | 8.44 | 1.69 |
| 2015 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 17 | 3.1 | 4 | 1 | 3 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 4 | 4 | 10.80 | 2.10 | |
| 2017 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 6 | 1.0 | 2 | 1 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 | 3 | 27.00 | 3.00 | |
| 2018 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 22 | 5.0 | 4 | 0 | 4 | 1 | 0 | 6 | 0 | 0 | 1 | 1 | 1.80 | 1.60 | |
| 2019 | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1.000 | 44 | 9.0 | 13 | 1 | 3 | 0 | 1 | 7 | 1 | 0 | 10 | 10 | 10.00 | 1.78 | |
| 2020 | ヤクルト | 20 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | .000 | 113 | 25.1 | 23 | 1 | 13 | 2 | 0 | 36 | 4 | 0 | 10 | 8 | 2.84 | 1.42 |
| 2021 | 64 | 0 | 0 | 0 | 0 | 7 | 1 | 0 | 28 | .875 | 268 | 62.0 | 55 | 1 | 25 | 0 | 3 | 63 | 2 | 0 | 19 | 19 | 2.76 | 1.29 | |
| 2022 | 51 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 1 | 16 | .333 | 198 | 46.0 | 45 | 4 | 16 | 1 | 2 | 37 | 2 | 1 | 22 | 19 | 3.72 | 1.33 | |
| 2023 | 26 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 1.000 | 133 | 31.0 | 31 | 4 | 10 | 1 | 2 | 13 | 1 | 0 | 13 | 13 | 3.77 | 1.32 | |
| 2024 | 6 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | ---- | 28 | 6.1 | 7 | 0 | 3 | 1 | 0 | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.00 | 1.58 | |
| 通算：10年 | 182 | 0 | 0 | 0 | 0 | 10 | 4 | 1 | 47 | .714 | 854 | 194.1 | 193 | 15 | 78 | 6 | 9 | 169 | 10 | 1 | 87 | 82 | 3.80 | 1.40 | |
- 2024年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最高
7.2. 年度別守備成績
| 年 度 | 球 団 | 試 合 | 刺 殺 | 補 殺 | 失 策 | 併 殺 | 守 備 率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2014 | 楽天 | 5 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1.000 |
| 2015 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | |
| 2017 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | |
| 2018 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1.000 | |
| 2019 | 4 | 1 | 3 | 0 | 0 | 1.000 | |
| 2020 | ヤクルト | 20 | 2 | 4 | 2 | 0 | .750 |
| 2021 | 64 | 3 | 11 | 1 | 0 | .933 | |
| 2022 | 51 | 1 | 5 | 0 | 0 | 1.000 | |
| 2023 | 26 | 2 | 4 | 0 | 0 | 1.000 | |
| 2024 | 6 | 0 | 2 | 0 | 1 | 1.000 | |
| 通算 | 182 | 9 | 32 | 3 | 1 | .932 | |
- 2024年度シーズン終了時
8. 論争と評価
今野龍太のキャリアにおいては、2023年に発生した死球による相手選手の負傷と、それに続く球団の対応が物議を醸した。
2023年8月13日の対阪神タイガース戦(京セラドーム大阪)において、今野は5回裏の登板中に梅野隆太郎に死球を与え、梅野は左手首を骨折する重傷を負った。この事故に対し、東京ヤクルトスワローズの球団ホームページは、当日の今野の投球を絶賛するような記事を掲載した。この球団の対応は、「被害者への配慮に欠ける」として、世間やメディアから強い批判の声が上がった。
この出来事以降、今野は一軍登録を抹消され、他のリリーフ陣も不調に陥るなど、チーム全体に影響が及んだ。このシーズン、今野の登板は26試合にとどまった。この事件は、選手のプレーだけでなく、球団の広報姿勢や、負傷した相手選手への配慮の重要性について、改めて社会的な議論を提起する契機となった。