1. 概要
伊東美咲(いとう みさき、Misaki Ito英語、1977年5月26日 - )は、日本の元モデル、女優、タレントである。本名は安斉智子(あんざい ともこ)で、結婚後は榎本智子(えのもと ともこ)となる。かつては数々のテレビドラマや映画に出演し、CMでも活躍したが、現在は主に子育てのため女優業は無期限休止中であり、ハワイに居住している。
2. 初期生い立ちと背景
伊東美咲は、その幼少期から学生時代にかけて、学業と私生活の両面で多様な経験を積んだ。
2.1. 出身地と学歴
伊東美咲は日本の福島県いわき市で生まれ育った。幼少期から背が高く、小学校6年生の時には身長が162 cmから163 cmに達し、学年で最も背が高かったという。
学歴としては、福島県立遠野高等学校を中退した後、千代田高等学校に途中編入し卒業。その後、大阪千代田短期大学幼児教育科を卒業している。高校への編入から短大在学期間は、大阪府の親戚宅で過ごした。短大2年生の夏前に大阪市心斎橋でスカウトされたことが、芸能界入りのきっかけとなった。
学生時代には、中学校でソフトボール部に所属し、短大ではバレーボール部に所属していた。また、短大在学中には幼稚園教諭二種免許状や社会福祉主事任用資格などを取得しており、着付けの準師範の資格も持っている。特技はピアノ、水泳、バレーボールで、趣味はドライブである。家族構成は、姉、弟、妹がいる。
3. キャリア
伊東美咲のキャリアは、モデル活動から始まり、その後女優としてテレビドラマや映画で幅広く活躍し、数多くのCMやその他のメディアにも出演した。
3.1. モデル活動とデビュー
伊東美咲は1999年にアサヒビールのイメージガールに選ばれ、同年にはファッション雑誌『CanCam』の専属モデルも務めた。これらの活動を通じて、彼女の知名度は高まっていった。
モデル活動と並行して、ゲートウェイやチョーヤ梅酒などのテレビCMにも出演し、その美貌と存在感で注目を集めた。この時期のCM出演は、彼女が後に女優として本格的に活動する足がかりとなった。
3.2. 女優としての活動
伊東美咲は、2000年のフジテレビ系ドラマ『らぶ・ちゃっと』で女優としてテレビドラマデビューを果たした。同年には『ラブコンプレックス』(フジテレビ)で連続ドラマ初のレギュラー出演を果たすなど、着実に女優としてのキャリアを築き始めた。
3.2.1. テレビドラマ
女優としての伊東美咲は、数々のテレビドラマで主要な役柄を演じ、その演技力と存在感を示した。
2002年には、人気ドラマ『ごくせん』(日本テレビ)に出演し、知名度を大きく上げた。同年にはテレビ朝日系ドラマ『逮捕しちゃうぞ』で初のドラマ主演を務め、その演技の幅広さを見せた。
主な出演作には、2002年の『ランチの女王』(フジテレビ)、2003年の『東京ラブ・シネマ』(フジテレビ)、『クニミツの政』(関西テレビ・フジテレビ系)がある。2004年には『愛し君へ』(フジテレビ)や『ホットマン2』(TBS)に出演。
2005年には、ヒット作となった『タイガー&ドラゴン』(TBS)に出演。特に、オタク文化を題材にした社会現象を巻き起こしたドラマ『電車男』(フジテレビ)では、主人公が憧れるお嬢様「エルメス」こと青山沙織役を演じ、ヒロインとして絶大な人気を獲得した。同年には『危険なアネキ』(フジテレビ)でも主演を務め、この作品のヒットによりゴールデン・アロー賞の放送賞ドラマ部門を受賞した。
その後も、2006年の『サプリ』(フジテレビ)、2007年の『山おんな壁おんな』(フジテレビ)、2008年の『エジソンの母』(TBS)で主演を務めるなど、コンスタントに活躍を続けた。
その他のテレビドラマ出演には、『新・お水の花道』(2001年)、『ビューティ7』(2001年)、『水曜日の情事』(2001年)、『ブラックジャックによろしく ~涙のがん病棟編~』(2004年)、『弟』(2004年)、『電車男デラックス~最後の聖戦~』(2006年)、『めぞん一刻』(2007年、2008年)、『ロト6で3億2千万円当てた男』(2008年)、『恋うたドラマSP』(2008年)、『世にも奇妙な物語 ~2009春の特別編~』(2009年)などがある。
3.2.2. 映画
伊東美咲は映画界でもその才能を発揮し、数々の作品に出演した。
2002年には、宮部みゆき原作、森田芳光監督の『模倣犯』で映画デビューを果たした。この作品では謎の失踪を遂げるOL・古川鞠子役を演じ、スクリーンでも鮮烈な印象を残した。
同年には香港映画『The Snows英語』(邦題『The Snow』)にも出演し、瑠璃子役を演じた。また、『黄泉がえり』(2003年)では斉藤幸子役を、『呪怨』(2003年)では徳永仁美役を演じた。
2004年には、再び森田芳光監督と組んだ『海猫』で映画初主演を務めた。この作品では、昔堅気な漁師の夫と心優しい義弟の間で揺れ動く人妻・野田薫役を演じ、初のベッドシーンにも挑戦した。この演技が評価され、第28回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。
その他の映画出演には、『ダメジン』(2002年、公開は2006年)、『ナインソウルズ』(2003年)、『いぬのえいが』(2005年)、『映画 電車男』(2005年)では若い女役を、『釣りバカ日誌16 浜崎は今日もダメだった♪♪』(2005年)では河口美鈴役を、『About Love英語』(邦題『about love アバウト・ラブ/関於愛』、2005年)では美智子役を、『椿山課長の七日間』(2006年)では和山椿役を、『ラストラブ』(2007年)では上原結役を、『Life 天国で君に逢えたら』(2007年)では飯島寛子役を演じた。
3.3. CM・広報活動
伊東美咲は、その人気と清潔感のあるイメージから、数多くの企業CMや広報活動に起用された。
資生堂の『ピエヌ』や『MAQuillAGE』(2005年には初代イメージキャラクターに就任)、『HAKU』のCMに出演し、美容業界での存在感を示した。また、日立製作所のパソコン『Prius』やauの携帯電話、トヨタ自動車の『ナディア』、マツダの『デミオ』など、大手メーカーの顔として活躍した。
飲料関連では、チョーヤ梅酒の『さらりとした梅酒』、ネスレ日本の『ネスカフェ サンタマルタオレ』や『ネスカフェ "匠"』、ダイドードリンコの『デミタスコーヒー』、アサヒグループ食品の『パーフェクトアスタコラーゲン』(2018年 - )のCMに出演した。
その他にも、森永製菓の『アマンド・グリエ』や『ICE BOX』、オンワード樫山の『組曲』、ボシュロム・ジャパンの『メダリストワンデー』、日清食品の『Spa王』や『ごんぶと』、JR東日本の『LOVE TYO』、キャドバリー・ジャパンの『リカルデントガム』、ボーダフォン(現・ソフトバンクモバイル)の『家族通話定額』や『メール定額』、大和証券、大和ハウス工業の『Dルーム』、グンゼ、みずほ銀行の『ロト6』や『ミニロト』など、多岐にわたるCMに起用された。
彼女は2006年のタレントCM起用社数ランキングで年間首位を獲得するなど、CM業界における高い評価を得た。
また、スポーツイベントの広報活動にも積極的に参加し、2003年にはフジテレビのバレーボール中継における「全日本・勝利の女神」として『ワールドカップ』のイメージキャラクターに就任。2004年には『アテネ五輪世界最終予選』、2005年には『ワールドグランプリ』のサポーターを務めた。
3.4. その他のメディア出演
伊東美咲は、女優業やモデル業以外にも、様々なメディアで活動を展開した。
2004年にはNHKで放送されたテレビアニメ『アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル』の「エンドハウス怪事件」(全3回)でニック・バックリー役の声優を務めた。また、2004年に発売されたPlayStation 2用ゲーム『007 エブリシング オア ナッシング』では、Qの助手であるミス・ナガイのルックと声を担当した。
2007年には、ニッポン放送のラジオドラマ『伊東美咲Spring Special~あなたへと続く道~』に出演した。
書籍分野では、2007年にエッセイ『Twinkle Girls 美咲と女の子たちのガールズトーク。』を出版。また、『Brilliant』(1999年)、『美』(2001年)、『美咲』(2003年)、『Fruits』(2004年)、『伊東美咲in映画『海猫』』(2004年)といった写真集も刊行している。
ドキュメンタリーや特別番組への出演もあり、2005年には日本テレビ系『Tokyo美人物語~本当のキレイを探す旅~』に出演。2022年9月1日にはテレビ朝日系『徹子の部屋』に初出演し、久々にテレビに登場した。
4. 受賞歴
伊東美咲は、そのキャリアを通じて数々の賞を受賞し、その才能と人気が評価された。
年 | 賞の名称 | 部門 | 受賞作品/備考 |
---|---|---|---|
2003年 | ベストスマイル・オブ・ザ・イヤー | - | - |
2004年 | 日本ジュエリーベストドレッサー賞 | 20代部門 | - |
2005年 | エランドール賞 | 新人賞 | 『電車男』、『ホットマン2』 |
2005年 | 日本アカデミー賞 | 新人俳優賞 | 『海猫』 |
2005年 | ベストドレッサー賞 | 芸能部門 | - |
2006年 | ゴールデン・アロー賞 | 放送賞(ドラマ部門) | 『電車男』、『危険なアネキ』 |
2006年 | DVDでーた大賞 | ベスト・タレント賞 | 『電車男』 |
2007年 | DTCダイヤモンド・パーソナリティ賞 | - | - |
5. 私生活
伊東美咲の私生活は、結婚と出産を機に大きな変化を経験し、現在は子育てを中心とした生活を送っている。
5.1. 結婚と家族
伊東美咲は2009年11月18日、大手パチンコ機器メーカー京楽産業.の社長である榎本善紀(えのもと よしのり、1968年9月27日生)と入籍した。二人は2008年11月にハワイで行われた友人の結婚式で出会った。結婚式は2009年11月24日にハワイで執り行われた。
2010年3月15日、自身の公式ウェブサイトで妊娠6ヶ月であることを発表し、同年6月27日に第1子となる長女を出産した。この出産を機に、子育てのため当面の間芸能活動を無期限休止した。
2015年3月4日には第2子の妊娠を発表し、同年6月23日に第2子となる長男を出産した。この際も、子育てのため女優業のみ無期限休止を継続した(他の芸能活動は継続)。
さらに、2019年5月1日には、前年末に第3子となる女児を出産していたことが公表された。
5.2. 居住地
伊東美咲一家は、2020年現在、ハワイに居住している。
5.3. 活動休止と再開
伊東美咲は、2010年の第1子出産を機に、子育てを優先するため芸能活動を無期限休止した。
しかし、2011年7月27日には、所属事務所である研音が主催した東日本大震災の復興支援チャリティーイベント『Message 2011』に出演し、久々に公の場に姿を見せた。
2014年5月13日には、芸能活動を再開することを発表し、公式ブログも開設した。しかし、2015年の第2子出産を機に、再び子育てのため女優業のみ無期限休止に入った。
その後も、2021年8月18日放送のフジテレビ系『突然ですが占ってもいいですか?』で約12年ぶりにテレビ出演を果たし、2022年9月1日にはテレビ朝日系『徹子の部屋』に初出演するなど、散発的にメディアに登場している。