1. 経歴
小林尽の漫画家としてのキャリアは、新人賞受賞から始まり、数々の連載作品を手がける中で確立されていった。
1.1. 生い立ちと背景
小林尽は1977年5月25日に千葉県で生まれ、現在は東京都新宿区に在住している。血液型はB型である。彼は大学時代から本格的に漫画を描き始めた。
1.2. 初期キャリアとデビュー
2000年、第65回週刊少年マガジン新人漫画賞において佳作を受賞した。この受賞が大きな転機となり、2002年からは彼の代表作となる『スクールランブル』を『週刊少年マガジン』で連載し、漫画家としてデビューした。
2. 人物
小林尽は、その創作スタイルだけでなく、公衆との交流のあり方や社会貢献活動においても特筆すべき人物である。
2.1. 創作スタイルと哲学
小林尽の作品では、登場人物の名前に近畿地方の地名を多く用いる傾向がある。これは、彼の親を通じて京都に縁故があったためである。
代表作『スクールランブル』は、不良少年が恋に落ちるという発想が面白いと感じたことから描き始められた。彼は、自身のお気に入りの登場人物である播磨拳児について、約30%が自身の反映であり、多様な友人の要素を組み合わせて創造されたと述べている。女性キャラクターには自身の個人的な感情を多く込めているが、脇役の菅隆平が最も自伝的なキャラクターであるとも語っている。他の多くのキャラクターは、高校時代の同級生の記憶に基づいて創造された。
キャラクターを描いている間は、彼らの声が具体的に分からず、アニメ化の際に声優の演技を聞いて初めて、彼らがどのように聞こえるべきかを理解したという。特定のキャラクター(例えば高野晶)については、作者自身も親近感を抱きつつも、その恋愛をゆっくりと展開させる計画だった。物語の展開は、意図的に誤解を中心に据え、それを解決することで面白さを生み出すスタイルを確立している。彼は「誤解がなければ面白い物語にはならない」と語る。また、自身の物語が実体験に基づいているわけではないと主張するが、一部には類似点がある可能性も認めつつ、具体的な詳細を明かすことは避けている。
2.2. 公開活動と声優業
小林尽は自身の素顔を公開していない。過去には、『スクールランブル二学期 ウィークエンド』のウェブサイトに顔だけを隠した写真が掲載されたことがある。『スクールランブル二学期』DVD Vol.9の特典映像「清水香里のスクラン☆オフ会」に出演した際も、カメラに背を向けた状態で対談を行っている。また、漫画『帰ってきた変態仮面』であんど慶周と対談した際には、「変態仮面」に扮して上半身裸にパンティーを被った姿で登場し、大きな話題を呼んだ。現在、自身のYouTubeチャンネルでは、時折カツラとサングラスで変装して配信を行っている。
彼はアニメ『スクールランブル』に声優としても参加しており、「船員F」役(第1期および二学期)、「先生」役、「小林先生」役(二学期)などを務めた。ドラマCDでは「番組ディレクター」役も担当している。ラジオ番組『スクラン☆お茶会!』および『スクラン二学期 ウィークエンド』には多数ゲスト出演しており、アニメ『スクールランブル』第1期最終話では原画も担当した。さらに、杉田智和のラジオ番組『杉田智和のアニゲラ!ディドゥーーン』第13回(2009年9月24日放送)には、「SP嵐山小夜子」という変名で安元洋貴とともにゲスト出演した。
2.3. 関係者と影響
漫画家の有馬啓太郎とは深い親交がある。また、TYPE-MOONとの交流もあり、同社の作品『Fate/hollow ataraxia』では壁紙イラストを提供した。さらに、同ブランドのメインシナリオライターである奈須きのこが原作を手がけた映画『空の境界』のパンフレットには、描き下ろしイラストとメッセージを寄稿している。
2.4. 社会貢献
小林尽は東日本大震災の被災地支援に積極的に取り組んだ。他の漫画家と共同で制作された東日本大震災チャリティ同人誌『pray for Japan』で執筆に参加するなど、社会貢献活動にも力を入れている。
3. 作品
小林尽は漫画作品のほか、アニメやビジュアルノベル、画集など多岐にわたるメディアで作品を発表している。
3.1. 漫画
小林尽が手がけた漫画作品には、長期連載作から短編、そして原作を担当した作品まで幅広い。
3.1.1. 連載作品
- 『スクールランブル』
- 『週刊少年マガジン』(2002年47号 - 2008年34号)および『マガジンSPECIAL』(2003年2月号 - 2008年5月号)にて連載。全22巻。テレビアニメ化などメディアミックス展開がなされ、大ヒットを記録した。
- 連載完結後、彼は「『スクールランブル』はもっと描きたい大切な作品だが、他にもやりたいことがあって終わらせた。時間ができたら、青年誌で大人になった彼らを描きたい」と語っている。
- 『スクールランブルZ』
- 『マガジンSPECIAL』(2008年9月号 - 2009年6月号)にて連載。全1巻。
- 『夏のあらし!』
- 『月刊ガンガンWING』(2006年10月号 - 2009年5月号)と、その後『月刊ガンガンJOKER』(2009年5月号 - 2010年10月号)にて連載。全8巻。
- 『一路平安!』
- 『別冊少年マガジン』(2011年6月号 - 2012年6月号)にて連載。全2巻。
- 『放課後ましまし倶楽部』
- 原作:目黒ひばり。4コマ漫画。
- 『ジャンプLIVE』2号(2013年12月 - 2014年1月)にて配信。全9話。
- 続編の『声優ましまし倶楽部』第3巻に収録されている。
- 『声優ましまし倶楽部』
- 原作:目黒ひばり。4コマ漫画。
- 『少年ジャンプ+』(2014年9月 - 2016年2月)にて連載。全3巻。
3.1.2. 短編・読み切り作品
- 『帰ってきた変態仮面』
- 原作:あんど慶周。
- 『ジャンプSQ』(2008年2月号)に掲載。
- 『歌舞伎町そのころ』
- 原作:ユータ。
- 東日本大震災チャリティ同人誌『pray for Japan』(2011年)に執筆。
- 『別冊 スクールランブル WHAT'S UP DOC』
- 『別冊少年マガジン』(2010年3月号)に掲載。
- 『スクールランブル Diamonds on the Inside』
- 『週刊少年マガジン』(2016年53号)に掲載。
- 『スクールランブル Give it away』
- 『週刊少年マガジン』(2017年15号)に掲載。
- 『スクールランブル We Are the Champions』
- 『マガジンポケット』(2017年)に掲載。
3.1.3. 原作担当作品
- 『恋歌』
- 漫画:つやまよしべ(1話目)、江本温(2話目)。
- 『マガジンドラゴン』1号(2007年12月)および2号(2009年1月)に掲載。
- 『週刊少年マガジン』(2008年2・3合併号)には、小林尽自身が執筆した宣伝漫画が掲載された。
3.2. その他の作品
漫画作品以外にも、アニメ制作への参加、ビジュアルノベルのイラストレーション、キャラクターデザインなど、多岐にわたる分野で活動している。
3.2.1. アニメ関連作品
- 『夏のあらし!』
- アニメ第2期『夏のあらし! 春夏冬中』第12話にて脚本協力および絵コンテを担当。
- アニメ第1期の第13話ではエンドカードイラストを提供。
- 『スクールランブル』
- テレビアニメ版第1期OVA『スクールランブル - 一学期補習』にて、原始時代パートのナレーションを担当。
- 『ぱにぽにだっしゅ!』
- 第21話エンドカードイラスト。
- 『ひだまりスケッチ×365』
- 第11話エンドカードイラスト。
- 『ef - a tale of melodies.』
- 第9話予告イラスト。
- 『まりあ†ほりっく』
- 第2話エンドカードイラスト。
- 『化物語』
- 第3話エンドカードイラスト。
- 『ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド』
- 第2話エンドカードイラスト。
- 『はなまる幼稚園』
- 第1話エンドカードイラスト。
- 『荒川アンダー ザ ブリッジ×ブリッジ』
- 第1話エンドカードイラスト。
- 『魔法少女まどか☆マギカ』
- 第4話予告イラスト。
- 『UQ HOLDER!』
- 第10話エンドカードイラスト。
3.2.2. ビジュアルノベル・画集
- 『第24TOKYO区』
- ビジュアルノベル作品。イラストレーターとして参加。
- 『京都、春。』
- 2009年発行の画集。武内崇との共作。
3.2.3. キャラクターデザインとその他の貢献
- 『サンデー×マガジン クロスライン』
- キャラクターデザインを担当。
- 『チェインクロニクルV』
- カードイラスト(莫大な脅威カナーン、幼き老婆ユカチ)を提供。
- 『Fate/hollow ataraxia』
- 壁紙イラストを提供。
- 映画『空の境界』
- パンフレットに描き下ろしイラストとメッセージを寄稿。
4. アシスタント
小林尽の作品制作を支援した主なアシスタントは以下の通り。
- 江尻立真
- 奈央晃徳
- 木下由一