1. 概要
山本鈴美香(山本 鈴美香やまもと すみか日本語)は、1949年6月17日生まれの日本の漫画家である。特にテニスをテーマにした代表作『エースをねらえ!』で知られ、この作品は少女漫画の枠を超えて幅広い読者層に支持され、複数回にわたるアニメ化やテレビドラマ化も実現した。
漫画家としての活動が一段落した後、1981年頃からは故郷である山梨県甲州市(旧塩山市)に移住し、「神山会」という新興宗教の巫女、そして後に教祖として宗教活動に専念するようになった。晩年は体調面から執筆活動よりも宗教活動や療養を主軸とした生活を送っている。
2. 経歴
山本鈴美香は、漫画家としてのキャリアを築き、その後の人生で精神的な探求へと移行していった。
2.1. 出生と初期の人生
山本鈴美香は、1949年(昭和24年)6月17日に山梨県塩山市(現在の甲州市)で生まれ、その後、埼玉県浦和市(現在のさいたま市)で育った。
2.2. 学歴
埼玉県立浦和西高等学校を卒業後、1970年(昭和45年)に武蔵野美術短期大学商業デザイン科を卒業した。この美術大学での学びが、彼女の漫画家としての基礎を築いたと考えられる。
2.3. デビューと初期キャリア
1971年(昭和46年)、『その一言がいえなくて...』(その一言がいえなくて...日本語)が週刊マーガレット新人賞に入選し、同誌に掲載されて漫画家としてプロデビューを果たした。その後、1973年(昭和48年)にテニスを題材とした『エースをねらえ!』の連載を週刊マーガレットで開始し、この作品で大きな成功を収めることとなる。
3. 作品
山本鈴美香は、そのキャリアを通じて数々の漫画作品を発表したが、中でも『エースをねらえ!』は彼女の代名詞ともいえる存在である。
3.1. エースをねらえ!
『エースをねらえ!』は、1973年から1980年にかけて週刊マーガレットで連載されたテニスをテーマにした長編漫画作品である。この作品は、主人公の岡ひろみがテニスの才能を開花させていく過程を描き、その情熱的なストーリーと登場人物たちの成長が、メイン読者層である女性だけでなく、男性層にも爆発的な人気を博し、社会現象を巻き起こした。
作品の人気は絶大で、連載期間中に数度にわたるアニメ化やテレビドラマ化が実現した。漫画評論家の米沢嘉博は、『ベルサイユのばら』とともに『週刊マーガレット』の黄金期を築き上げた作品であると評しており、発表から長い年月を経た現在でも、日本の少女漫画を代表する作品の一つとしての地位を保ち続けている。テニスというスポーツを題材にしながら、登場人物の心理描写や成長を深く掘り下げたことで、多くの読者に共感を呼び、その後のスポーツ漫画や少女漫画に多大な影響を与えたとされる。
3.2. その他の主要作品
山本鈴美香は、『エースをねらえ!』以外にも複数の作品を発表している。
- 集英社**
- 『恋しちゃおかナ?』(恋しちゃおかナ?日本語) 1972年
- 『キッスにご用心!』(キッスにご用心!日本語) 1973年
- 『ひっくりかえったおもちゃ箱』(ひっくりかえったおもちゃ箱日本語) 1978年
- 『H2O!前代未聞!!』(H2O!前代未聞!!日本語) 1979年
- 『7つの黄金郷』(7つの黄金郷日本語) 1975年 - 1977年(未完)
- 16世紀のヨーロッパを舞台にした長編作品。
- 小学館**
- 『白蘭青風』(白蘭青風日本語) 1983年 - 1984年(未完)
- 『愛の黄金率』(愛の黄金率日本語) 1983年(未完)
- 『早見大介奮戦記』(早見大介奮戦記日本語) 1983年(全2巻)
- 学研プラス**
- 『ムー』1985年5月号付録『山本鈴美香霊視画 勝利を呼ぶ諏訪大社の竜神 』ポスター
- この原画は諏訪大社宝物殿に奉納されている。
- 『ムー』1985年5月号付録『山本鈴美香霊視画 勝利を呼ぶ諏訪大社の竜神 』ポスター
4. 晩年の活動と私生活
漫画家としての活動が落ち着いた後、山本鈴美香は精神的な探求へと人生の軸を移していった。
4.1. 宗教活動
1981年(昭和56年)頃から、山本鈴美香は家族と共に故郷である山梨県塩山市(現在の甲州市)に移住した。この頃から「神山会」という新興宗教に関わるようになり、その巫女となった。その後、彼女は神山会の教祖を務めるようになったとされる。
以降は体調が不安定なこともあり、メディア出演や執筆活動よりも、宗教活動や療養を生活の中心に置いている。神山会の公式ウェブサイトは現在消滅しており、2020年の時点で神山会は宗教法人の登録からも外れているため、既に解散・消滅した可能性も指摘されている。
4.2. 趣味と関心事
山本鈴美香は、個人的な趣味として歌舞伎、オペラ、バレエの鑑賞を好んでいたと語っている。これらの文化的な関心事が、彼女の作品や人生観に影響を与えた可能性も考えられる。
5. 評価と影響
山本鈴美香の作品、特に『エースをねらえ!』は、日本の漫画界に大きな足跡を残し、文化全体にも影響を与えた。
漫画評論家の米沢嘉博は、『エースをねらえ!』が『ベルサイユのばら』と並び、週刊マーガレットの黄金期を築き上げた作品であると高く評価している。また、同作は発表から長い年月が経過した後も、日本の少女漫画の代表作としての地位を維持しており、その影響力は世代を超えて続いている。テニスというスポーツを題材にしながら、登場人物の心理描写や成長を深く掘り下げたことで、多くの読者に共感を呼び、その後のスポーツ漫画や少女漫画に多大な影響を与えたとされる。
6. 関連事項
- 少女漫画
- 武蔵野美術大学の人物一覧
- エースをねらえ!