1. 概要
日向 未南(ひなた みなみ)は、日本の女性声優である。福島県出身で、アクセルワンに所属している。2023年には第17回声優アワードで新人声優賞を受賞した。
日向は、テレビアニメ『王様ランキング』の主人公・ボッジ役で広く知られるようになった。口数の少ないボッジの感情を「あう」という限られたセリフで表現するその演技は高く評価され、彼女のキャリアにおける大きな転機となった。また、自身の低めの地声を活かし、少年役を演じることを得意としている。
彼女は、幼少期にアニメから受けた影響をきっかけに声優を志し、憧れの先輩声優が所属するアクセルワンの付属養成所アクセルゼロで研鑽を積んだ。読書やゲーム、イラスト制作を趣味とし、宇宙の広大さに思いを馳せることで自身の悩みを相対化するというユニークな価値観を持つ。共演者である村瀬歩からは演技面で多大な助言を受け、その成長は周囲からも高く評価されている。
2. 人物・生い立ち
日向未南は福島県の出身である。幼少期にアニメ『ロミオの青い空』を視聴した際、作中に登場する少年キャラクターへの憧れを抱いた。この経験から、女性である自分でも声優になれば、いつまでも少年の心を持ち続け、その考えを表現できるのではないかという思いに至り、声優を志すきっかけとなった。
3. 教育・養成所
専門学校を卒業した後、声優の森川智之が代表を務める声優事務所アクセルワンの付属養成所であるアクセルゼロに入所した。日向がアクセルゼロを志望した理由は、森川のほか、憧れの声優である折笠愛と三瓶由布子の3名がアクセルワンに在籍していたからである。
アクセルゼロのオーディションでは、森川に自身をアピールしたいという強い思いから、アカペラで歌を披露した。これに対し森川は、日向の歌の才能と熱意を認め、直接指導したいと感じたという。アクセルゼロでは、森川らから声優として考えながら演技する力を養う指導を受け、2019年よりアクセルワンに所属し、声優としての活動を開始した。デビューした年には、「自分の意志を貫くキャラクター」を演じることを目標に掲げた。
4. 経歴
日向未南は2020年に声優としての活動を開始し、キャリア初期には様々な役柄を経験した。
4.1. デビューと初期の活動
2020年に声優としてデビューした後、約一年間にわたりアニメ番組で様々なモブ役を演じ、経験を積んだ。この期間を通じて、声優としての基礎を固めていった。
4.2. 主要な役柄と転機
2021年4月、同年10月からフジテレビ系列で放送されるテレビアニメ『王様ランキング』の主人公・ボッジ役に抜擢されたことが発表された。これは日向にとって初めての主演役であり、彼女のキャリアにおける大きな転機となった。
日向は『王様ランキング』のコミックスを本屋で偶然手に取ったことで作品と出会い、その人間関係の複雑さや重厚なストーリーに深く引き込まれたという。主人公のボッジは、日向自身が声優としての目標として掲げていた「自分の意志を貫くキャラクター」と合致していた。
『王様ランキング』のオーディションでは、ボッジの口数が少ないことや、物語の牽引役が準主人公のカゲであることから、先にカゲ役の選考が行われ、村瀬歩に決定していた。ボッジ役の選考には多数の応募があり、セリフが「あう」ばかりであったため、プロデューサーの岡田麻衣子は選考が難しかったと語っている。「あうあう」というセリフだけで喜怒哀楽の感情を表現する一次審査、そしてカゲ役の村瀬との掛け合いを試す二次審査が行われた。日向にとって人生で2回目のスタジオオーディションであり、本人によると非常に緊張し、手応えもなかったという。掛け合いを行った村瀬も、日向の緊張が伝わってきたと述べている。しかし、掛け合いで示された村瀬との相性の良さなどが評価され、日向は合格を勝ち取った。合格を知った際、原作の愛読者であった日向は、喜びだけでなく、プレッシャーや恐怖心も感じ、3か月ほどは実感が湧かなかったという。
また、同年にはテレビアニメ『賢者の弟子を名乗る賢者』でルミナリア役を務めることも発表された。
2023年には、第17回声優アワードにおいて新人声優賞を受賞した。
4.3. 演技スタイルとアプローチ
日向未南の地声は低めであり、アニメでは自ら少年役を希望している。
2021年に主演を務めた『王様ランキング』では、原作を読み込みつつも「アニメのボッジは私がつくらなきゃ」という強い気持ちで演技に臨んだと語る。役を演じる際には、可愛らしさと格好良さを併せ持つボッジのキャラクター性を表現することに加え、耳の聞こえない役であるため、耳で相手の声を聞いて即座に反応してはいけないという点を特に大切にしたという。ハンデキャップを持つキャラクターを演じるのは初めての経験であり、聴覚障碍者の発声方法を学ぶために手話番組を視聴して勉強した。また、うまく話せないキャラクターであるため、「あう」という限られたセリフに感情を乗せることの難しさを感じていたと明かしている。言いたいことを察してくれるカゲが相手の場合と、それ以外の人物が相手の場合とで会話のテンションを変えるといった工夫も行った。
アニメプロデューサーの岡田麻衣子は、『王様ランキング』の主人公・ボッジ役に日向を抜擢した理由として、日向の声が耳に残ったこと、そして共演者の村瀬歩との相性が良かったことを挙げている。特に、日向の低めの声は村瀬の声とのバランスが良く、ボッジらしさを引き出していたと評した。シリーズ構成を担当する岸本卓は、岡田のコメントに加えて「第1話の段階でハマっていた」と日向の演技を高く評価している。同作で共演した村瀬は、オーディションの段階で既に日向に可能性を感じていたと述べ、キャラクターの真っ直ぐさなどを大切にしながら演技をしていることを評価した。また、村瀬は同作の収録が進む中での日向の変化として、最終話あたりの収録で日向がふと発した声がボッジの感情を非常に自然に表現できていたことを挙げ、日向が努力を重ねてきた成果がよく見えたと語っている。
映像作品のレビューを手掛けるウェブメディア「リアルサウンド映画部」は、『王様ランキング』における日向の演技について、「発している言葉はほとんどないにもかかわらず、ボッジの感情の動きとピュアさがしっかり伝わってくる」と述べ、「見事な演技」であると高く評価した。
5. 主な出演作
日向未南が担当した主な出演作品を以下に列挙する。
5.1. テレビアニメ
年 | タイトル | 役名 |
---|---|---|
2020年 | クレヨンしんちゃん | 園児B |
2020年 - 2021年 | 妖怪学園Y ~Nとの遭遇~ | 矢追ジュンジ、清田テツ、前野ゼン、二ノ宮ヒロ、横分ヒロノリ、ほか |
2021年 | スーパーカブ | 生徒 |
2021年 | スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました | ブルードラゴンC |
2021年 | マジカパーティ | スメル |
2021年 - 2023年 | メガトン級ムサシ | 日下部早紀、茅野佳子、猫 - 番組レギュラー、リウ・タネン |
2021年 - 2023年 | 王様ランキング | ボッジ |
2021年 | TSUKIPRO THE ANIMATION 2 | 大(幼少) |
2022年 | 賢者の弟子を名乗る賢者 | ルミナリア |
2022年 | 終末のハーレム | 黒服A |
2022年 - 2023年 | SPY×FAMILY | イーデン校生徒 |
2022年 | オーバーロードIV | フロストヴァージン |
2022年 | 勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強種の猫耳少女と出会う | 子供C |
2022年 | 農民関連のスキルばっか上げてたら何故か強くなった。 | 少年 |
2023年 | 人間不信の冒険者たちが世界を救うようです | ジョナサン |
2023年 | ツルネ -つながりの一射- | 桐先高校部員 |
2023年 | 地獄楽 | 幼い弔兵衛 |
2023年 | 僕の心のヤバイやつ | 木下 |
2023年 | 七つの魔剣が支配する | 女子生徒B |
2023年 | AIの遺電子 | クラスメイトA |
2023年 | うちの会社の小さい先輩の話 | トモ |
2023年 | 柚木さんちの四兄弟。 | 柚木尊(幼少期) |
2023年 | ひきこまり吸血姫の悶々 | レインズワース(少年) |
2024年 | 真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました2nd | 女 |
2024年 | 悪役令嬢レベル99 ~私は裏ボスですが魔王ではありません~ | 子供 |
2024年 | リンカイ! | 熊本愛 |
2024年 | ヴァンパイア男子寮 | 子供ルカ |
2024年 | 杖と剣のウィストリア | ウィル・セルフォルト(幼少期) |
2024年 | 義妹生活 | 田端由美 |
2024年 - 2025年 | ひみつのアイプリ | 来栖れい |
2024年 - 2025年 | アオのハコ | (役名なし) |
2025年 | 帝乃三姉妹は案外、チョロい。 | 綾世優 |
5.2. 劇場アニメ
年 | タイトル | 役名 | |
---|---|---|---|
2023年 | 劇場版 ポールプリンセス | 南曜スバル | |
2025年 | メイクアガール | 幼少期の水溜明 |
5.3. Webアニメ
年 | タイトル | 役名 | |
---|---|---|---|
2022年 | コタローは1人暮らし | とのさまんの息子 | |
2023年 | ポールプリンセス | 南曜スバル | |
2023年 | トミカヒーローズ ジョブレイバー 特装合体ロボ | ジョブロイド Day |
5.4. ビデオゲーム
年 | タイトル | 役名 |
---|---|---|
2021年 | メガトン級ムサシ | 日下部早紀、茅野佳子、灰色の猫、弘人 |
2022年 | 城とドラゴン | チビグリ |
2022年 | 陰陽師本格幻想RPG | 影鰐 |
2023年 | モンスターストライク | サンザルク |
2023年 | トワツガイ | ツバメ |
5.5. ドラマCD
年 | タイトル | 役名 | |
---|---|---|---|
2023年 | ポールプリンセス | Starlight challenge | 南曜スバル |
5.6. オーディオドラマ
年 | タイトル | 役名 | |
---|---|---|---|
2023年 | ポールプリンセス | スペシャルボイスドラマ | 南曜スバル |
5.7. 吹き替え
年 | タイトル | 役名 |
---|---|---|
2023年 | キャット ~私のママは首相~ | マーフィー |
6. ディスコグラフィ
日向未南が参加した音楽関連の活動を以下にまとめる。
6.1. キャラクターソング
発売日 | 商品名 | 歌唱キャラクター(担当声優) | 楽曲 | 備考 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
2023年 | ||||||
6月10日 | トワツガイ Original Soundtrack | カラス(近藤玲奈)、ハクチョウ(立花理香)、エナガ(立花日菜)、スズメ(高橋李依)、フクロウ(小泉萌香)、フラミンゴ(和氣あず未)、ツル(上田麗奈)、ハチドリ(富田美憂)、モズ(鬼頭明里)、ツバメ(日向未南) | 「トワノユメ」 | ゲーム『トワツガイ』関連曲 | ||
7月26日 | ポールプリンセス | Starlight challenge | 星北ヒナノ(土屋李央)、西条リリア(鈴木杏奈)、東坂ミオ(小倉唯)、南曜スバル(日向未南) | 「Starlight challenge」 | Webアニメ『ポールプリンセス | 』主題歌 |
7月26日 | ポールプリンセス | -Solo Pole Song Album- | 南曜スバル(日向未南) | 「リメイン」 | Webアニメ『ポールプリンセス | 』挿入歌 |
2024年 | ||||||
3月27日 | 劇場版 ポールプリンセス | -Complete Album- | 西条リリア(鈴木杏奈)、南曜スバル(日向未南) | 「Burning Heart」 | 劇場アニメ『劇場版 ポールプリンセス | 』挿入歌 |
3月27日 | 劇場版 ポールプリンセス | -Complete Album- | 星北ヒナノ(土屋李央)、西条リリア(鈴木杏奈)、東坂ミオ(小倉唯)、南曜スバル(日向未南)、御子白ユカリ(南條愛乃)、紫藤サナ(日高里菜)、蒼唯ノア(早見沙織) | 「Starlight challenge -allstar ver.-」 | 劇場アニメ『劇場版 ポールプリンセス | 』エンディングテーマ |
5月22日 | Override! | 伊東泉(川村海乃)、平塚ナナ(葵あずさ)、弥彦巫子(長谷川玲奈)、那古屋紗智(北守さいか)、高松絹早(杉山里穂)、熊本愛(日向未南) | 「Override!」 | テレビアニメ『リンカイ!』エンディングテーマ | ||
7月17日 | 罪と罰 | ツバメ(日向未南)、モズ(鬼頭明里) | 「罪と罰」 | ゲーム『トワツガイ』関連曲 |
7. 受賞歴
日向未南は声優としての功績を認められ、以下の賞を受賞している。
- 2023年:第17回声優アワード新人声優賞
8. 人物像・趣味・特技
日向未南は、趣味として読書、ゲーム、イラスト制作(水彩とデジタル)を挙げている。特にゲームに関しては、『王様ランキング』への出演が決定した際、自分へのご褒美としてゲームアプリに高額の課金を行ったエピソードがある。
高校時代から現在に至るまで、宇宙に関する本を読むことを「自分流の勇気の出し方」として続けている。宇宙の広大さと比較することで、自身の失敗や悩みを小さく感じ、気持ちを切り替えることができると語っている。また、毎年読み返す漫画作品として『おおきく振りかぶって』を挙げている。
特技は歌であり、自身の歌声には自分にしか出せない個性があると自負している。身長は160 cm、血液型はB型である。
9. 影響・共演
『王様ランキング』で共演した村瀬歩とは深い交流があり、第1話の収録の際に台本の読み方を教わって以来、メッセージアプリなどで演技に関するアドバイスを求める間柄となっている。村瀬は、自身が初めて主演を務めた際に、日向と同じアクセルワンに所属する日野聡に支えられた経験があり、その時の自身の葛藤や学びを振り返りながら、日向が自ら考える姿勢を身につけられるように接していたと語っている。日向は村瀬のことを、道標のように明かりを灯してくれた「守り神のような存在」と表現し、村瀬からの長文のアドバイスをスマートフォンの待ち受け画面に設定していたというエピソードも披露している。
また、女子競輪を題材としたテレビアニメ『リンカイ!』で熊本愛役を務めていることから、競輪専門サイト「[https://keirin.netkeiba.com/ netkeirin]」では『リンカイ!』とのコラボレーション企画として、ガールズケイリン選手(元選手も含む)へのインタビューを漫画化し、「リンカイ!コラボ漫画」として掲載している。