1. 人物・経歴
橋本帆乃香は、その卓球キャリアを通じて、日本の卓球界に確かな足跡を残してきた選手である。
1.1. 生い立ちと初期の卓球
橋本帆乃香は1998年7月5日に愛知県名古屋市熱田区に生まれた。彼女の家族は卓球との深い繋がりを持つ。祖父の允至と父の明正は、卓球用品店「タクシンスポーツ」を経営している。橋本は5歳の時から小学6年生まで、実家が経営する卓伸クラブで祖父の指導を受け、卓球の基礎を築いた。幼少期から卓球に親しむ環境に身を置き、その才能を開花させていった。
1.2. 学生時代の主な活躍
タクシンスポーツでの初期の訓練を経て、橋本はミキハウスJSCでさらに実力を磨いた。その後、四天王寺羽曳丘中学校を卒業し、卓球の名門である四天王寺高校に進学した。高校時代には全国的な大会で目覚ましい活躍を見せた。2015年の全日本卓球選手権大会(ジュニアの部)では準優勝を飾り、同年夏の全国高等学校総合体育大会では女子シングルスで田口瑛美子に敗れて準優勝となったものの、団体戦では優勝、女子ダブルスでは塩見紗希とのペアで優勝を達成した。また、第70回国民体育大会の少年女子の部でも優勝に貢献した。2016年の全国高等学校総合体育大会では、女子シングルスで早田ひなに敗れ、2年連続で準優勝に終わったが、団体戦では再び優勝し、女子ダブルスでも塩見紗希とのペアで優勝を飾った。
1.3. ミキハウス入社とプロとしての歩み
2015年頃からITTFワールドツアーへ参戦し始めたが、当初はシングルスでの実績は少なかった。しかし、同じカット主戦型の佐藤瞳との女子ダブルスでは早くから頭角を現した。2016年には、ITTFワールドツアーのオーストラリアオープン、ベラルーシオープン、オーストリアオープンで佐藤瞳とのペアで優勝を果たすなど、国際舞台での存在感を高めた。
2017年には、平成28年度全日本卓球選手権大会で高校生カットマンとしては30年ぶりに女子シングルスベスト4に進出する快挙を成し遂げた。同年4月に四天王寺高校を卒業し、ミキハウスに入社しプロ選手としてのキャリアを本格的にスタートさせた。同月にはアジア卓球選手権の日本代表に選出され、女子ダブルスで佐藤瞳とのペアで銅メダルを獲得した。


同年5月に開催されたITTFチャレンジシリーズクロアチアオープンでは、女子シングルスと佐藤瞳との女子ダブルスでともに優勝し、2冠を達成した。
2019年4月開催の第55回世界卓球選手権個人戦には女子ダブルスで出場し、佐藤瞳とのペアで準決勝まで駒を進めた。準決勝では日本の同士討ちとなり、伊藤美誠と早田ひなのペアに2-4で敗れたものの、銅メダルを獲得した。
Tリーグでは、2021-22シーズンに九州アスティーダに佐藤瞳とともに加入。翌2022-23シーズンには日本ペイントマレッツへ佐藤瞳とともに移籍した。2024年には、日本卓球リーグにデンソーのゴールド選手として参戦し、プロとしての活動を続けている。
2. プレースタイル
橋本帆乃香のプレースタイルは、相手の攻撃を巧みにいなすカット主戦型を基盤としている。バックハンドサービスから試合を組み立て、相手のミスを誘う堅実なカットでラリーを展開する。また、機を捉えて強力なフォアハンドやバックハンドの強打に転じる能力も兼ね備えており、その緩急をつけた攻撃は相手選手にとって非常に厄介な戦術となる。
使用する用具は、ラケットが『剛力男子』、フォアハンド面には『キョウヒョウ3国狂ブルー』、バックハンド面には表ソフトラバーの『ドナックル』を採用している。これらの用具の組み合わせが、彼女のカットと攻撃のバランスの取れたプレースタイルを支えている。
3. 主な戦績
橋本帆乃香は、国内外の様々な大会で数多くの優れた成績を残している。ここでは、彼女の主要な戦績をまとめる。
3.1. ITTFツアーおよび主要国際大会
国際卓球連盟(ITTF)主催の各種ツアー大会および主要な国際選手権大会において、橋本帆乃香が参加し、顕著な成績を収めた記録を詳述する。
3.1.1. シングルス成績
橋本帆乃香のITTFサーキットにおける女子シングルス競技での主な成績を以下に示す。
| 年 | 大会 | レベル | 決勝対戦相手 | スコア | 順位 | 
|---|---|---|---|---|---|
| 2017 | ベラルーシオープン | ITTFチャレンジシリーズ | 佐藤瞳 | 1-4 | 準優勝 | 
| タイオープン | 1-4 | 準優勝 | |||
| クロアチアオープン | Sofia Polcanovaドイツ語 | 4-0 | 優勝 | ||
| 2018 | ポーランドオープン | Yang Ha-eun梁夏銀韓国語 | 1-4 | 準優勝 | |
| タイオープン | Liu Shiwen劉詩雯中国語 | 1-4 | 準優勝 | ||
| ベルギーオープン | 芝田沙季 | 0-4 | 準優勝 | ||
| 2019 | ポルトガルオープン | 早田ひな | 3-4 | 準優勝 | |
| パラグアイオープン | 2-4 | 準優勝 | |||
| 2020 | スペインオープン | Yang Xiaoxin中国語 | 4-1 | 優勝 | 
3.1.2. ダブルス成績
主に佐藤瞳選手とのペアを中心に、女子ダブルス競技で達成した主要な成績と優勝記録を以下に示す。
| 年 | 大会 | レベル | パートナー | 決勝対戦相手 | スコア | 順位 | 
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2016 | オーストラリアオープン | ITTFチャレンジシリーズ | 佐藤瞳 | Jian Fang Lay中国語 Miao Miao中国語  | 3-1 | 優勝 | 
| ベラルーシオープン | Jung Yu-mi韓国語 Park Se-ri韓国語  | 3-1 | 優勝 | |||
| オーストリアオープン | ITTFワールドツアー | 加藤美優 早田ひな  | 3-2 | 優勝 | ||
| 2017 | タイオープン | ITTFチャレンジシリーズ | Doo Hoi Kem中国語 Mak Tze Wing中国語  | 3-0 | 優勝 | |
| クロアチアオープン | Nadezhda Bogdanovaロシア語 Daria Trigolosベラルーシ語  | 3-0 | 優勝 | |||
| オーストリアオープン | ITTFワールドツアー | Chen Xingtong陳幸同中国語 Sun Yingsha孫穎莎中国語  | 2-3 | 準優勝 | ||
| ベルギーオープン | ITTFチャレンジシリーズ | Lee Zi-on韓国語 Song Ma-eum韓国語  | 3-2 | 優勝 | ||
| 2018 | スペインオープン | Sarah De Nutteltz Ni Xialianltz  | 3-0 | 優勝 | ||
| クロアチアオープン | Matilda Ekholmスウェーデン語 Georgina Pótaハンガリー語  | 3-1 | 優勝 | |||
| オーストラリアオープン | ITTFワールドツアー | 早田ひな 伊藤美誠  | 0-3 | 準優勝 | ||
| 2019 | オマーンオープン | ITTFチャレンジシリーズ | 芝田沙季 大藤沙月  | 1-3 | 準優勝 | |
| クロアチアオープン | 木原美悠 長﨑美柚  | 2-3 | 準優勝 | |||
| パラグアイオープン | 塩見紗希 | Adriana Díaz Melanie Díaz  | 3-1 | 優勝 | ||
| ポーランドオープン | Lee Eun-hye韓国語 Shin Yu-bin韓国語  | 3-1 | 優勝 | |||
| カナダオープン | 佐藤瞳 | Che Xiaoxi中国語 Li Jiayi中国語  | 3-0 | 優勝 | ||
| 2020 | スペインオープン | 塩見紗希 | 芝田沙季 大藤沙月  | 0-3 | 準優勝 | |
| 2024 | 全日本卓球選手権大会 | 国内 | 佐藤瞳 | 不明 | 準優勝 | 
3.1.3. 世界選手権およびアジア選手権でのメダル
橋本帆乃香は、世界卓球選手権およびアジア卓球選手権といった権威ある国際大会でメダルを獲得している。
- 2019年 世界卓球選手権(ブダペスト)女子ダブルス - 銅メダル(パートナー: 佐藤瞳)
 - 2017年 アジア卓球選手権(無錫)女子ダブルス - 銅メダル(パートナー: 佐藤瞳)
 
3.2. Tリーグでの活動
橋本帆乃香は日本のプロ卓球リーグであるTリーグにおいても積極的に活動している。2021-22シーズンには九州アスティーダに所属し、チームに貢献した。翌2022-23シーズンには、同じミキハウス所属の佐藤瞳とともに日本ペイントマレッツへ移籍し、引き続きTリーグの舞台で活躍している。彼女のTリーグでの活動は、チームの重要な一員として、リーグ戦の成績に貢献している。
3.3. 近年の活動とWTT成績
橋本帆乃香は近年も精力的に活動しており、特に2024年以降はWTTシリーズで目覚ましい成績を収めている。
2022年には、WTTフィーダーヨーロッパ夏季シリーズの女子シングルスで準優勝を果たした。2024年には、日本卓球リーグにデンソーのゴールド選手として参戦するなど、国内リーグでも存在感を示している。
国際大会では、2024年のWTTフィーダーカッパドキア、WTTコンテンダーリオデジャネイロ、WTTスターコンテンダーバンコク、WTTフィーダーオロモウツにおいて、いずれも女子ダブルスで佐藤瞳とのペアで優勝を飾るなど、ダブルスでの強さを見せつけた。特にWTTフィーダーオロモウツでは女子シングルスでも優勝し、2冠を達成している。
また、2024年のWTTフィーダーパナギュリシテでは女子シングルスで準優勝、女子ダブルスで優勝(パートナー: 佐藤瞳)という成績を残し、WTTフィーダードーハでは女子ダブルスで準優勝(パートナー: 佐藤瞳)となった。そして、2024年に福岡で開催されたWTTファイナルズでは、佐藤瞳とのペアで女子ダブルスに出場し、見事優勝を飾った。
4. 世界ランキングの推移
橋本帆乃香の国際卓球連盟(ITTF)世界ランキングの歴史的な変動を以下に示す。彼女の最高世界ランキングは、2017年9月に記録した13位である。
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2016年 | - | 43 | 46 | 47 | 50 | 43 | 48 | 47 | 48 | 46 | 45 | 34 | 
| 2017年 | 30 | 25 | 34 | 22 | 22 | 16 | 16 | 15 | 13 | 14 | 13 | 21 | 
| 2018年 | 28 | 29 | 23 | 23 | 26 | 27 | 24 | 27 | 31 | 30 | 29 | 26 | 
| 2019年 | 26 | 24 | 25 | 26 | 23 | 23 | 23 | 32 | 36 | 36 | 34 | 46 | 
| 2020年 | 46 | 39 | 42 | 36 | - | - | - | - | - | - | 36 | 36 | 
2024年10月22日時点での世界ランキングは31位である。