1. 概要

玉井陸斗(玉井 陸斗たまい りくと日本語)は、2006年9月11日生まれの日本の飛込競技選手である。兵庫県宝塚市出身。身長は160 cm、体重は55 kg。
玉井は飛込競技において、数々の歴史的な功績を打ち立ててきた。特に、2024年パリオリンピックの男子10mプラットフォームで銀メダルを獲得し、日本飛込競技史上初のオリンピックメダリストとなる快挙を達成したことは、日本の飛込競技界に新たな時代をもたらした。また、2019年には史上最年少で国内の室内飛込競技選手権大会および日本選手権を制覇し、その才能を早くから示していた。2020年東京オリンピックでは、日本人選手団の中で最も若い選手の一人として出場し、その将来性が大いに期待された。彼の活躍は、日本の飛込競技が国際舞台で飛躍するための大きな原動力となっている。
2. 生い立ちとキャリア初期
玉井陸斗は、幼少期からその才能の片鱗を見せ、飛込競技の道へと進んだ。
2.1. 誕生と幼少期
玉井陸斗は2006年9月11日、兵庫県宝塚市で誕生した。2人兄弟の次男として育ち、「大陸のように広い心を持ってほしい」という両親の願いから「陸斗」と名付けられた。
2.2. 飛込競技との出会いと初期訓練
3歳の頃から水泳を始め、小学1年生の時に飛込競技教室に参加したことをきっかけに飛込競技の魅力に触れた。その後、数々のオリンピック選手を育てた馬淵崇英コーチの指導のもと、その技術を磨き始めた。馬淵コーチの指導は、玉井の基礎を築き、その後の目覚ましい成長の礎となった。
3. 競技経歴
玉井陸斗の飛込競技選手としてのキャリアは、数々の国内記録を塗り替え、国際舞台での躍進を遂げてきた。
3.1. キャリア初期の成果
2019年4月、玉井はシニアデビュー戦となる日本室内選手権飛込競技大会で、12歳7ヶ月という史上最年少での優勝を果たした。同年9月には日本選手権でも優勝を飾り、ここでも史上最年少記録を更新した。この日本選手権では、世界選手権で4位に相当する498.50点を記録し、その実力が国際レベルに達していることを示した。
2019年11月には、飛込ワールドカップのクアラルンプール大会で男子10mプラットフォームで銀メダル(456.20点)、シンガポール大会でも銀メダル(452.75点)を獲得した。
2020年9月の日本選手権では、男子10mプラットフォームでリオデジャネイロオリンピック3位相当の528.80点を記録し、この種目での連覇を達成した他、3m板飛び込みでも優勝を飾った。
3.2. 主要国際大会
玉井は、若くして数々の主要な国際大会に出場し、目覚ましい成績を収めている。
3.2.1. オリンピック競技大会
玉井は、2020年東京オリンピックにおいて、日本選手団の最年少選手の一人として注目を集めた。ワールドカップ兼最終予選では準決勝で9位に入り、本大会への出場権を獲得。決勝では8位を記録し、431.95点を出して7位入賞という成果を収めた。これは、日本勢としては21年ぶりの飛込競技におけるオリンピック決勝進出および入賞という歴史的な快挙であった。
そして、2024年パリオリンピックでは、男子10mプラットフォームにおいて507.65点をマークし、見事銀メダルを獲得した。このメダルは、日本の飛込競技史上初のオリンピックメダルであり、彼のキャリアにおける最大の功績の一つとして歴史に刻まれた。パリオリンピックを前にした同年5月のオリンピックテスト大会では、東京オリンピック金メダリストの曹縁を抑えて優勝するなど、すでにその好調ぶりを示していた。
3.2.2. 世界水泳選手権
2022年7月にブダペストで開催された2022年世界水泳選手権では、男子10mプラットフォームの決勝で488.30点を記録し、銀メダルを獲得した。これは、日本勢がこの種目で獲得した初のメダルであり、オリンピックに先立つ国際的な舞台での玉井の実力を証明する結果となった。同大会では、1m板飛び込みにも出場し、11位の成績を残している。
2023年7月の第20回世界水泳選手権大会(福岡市)では、1m板飛び込みで31位、10mプラットフォームで12位の成績であった。
3.2.3. アジア競技大会およびワールドカップ
アジア競技大会や飛込ワールドカップでも、玉井は優れた成績を収めている。
2023年4月、飛込ワールドカップ2023の西安大会(第1レグ)男子10mプラットフォーム決勝で銅メダル(433.80点)を獲得。同年5月のモントリオール大会(第2レグ)では、男子10mプラットフォームで銀メダル(513.45点)を獲得した。
また、2022年アジア競技大会(杭州市で2023年開催)では、男子10mプラットフォーム決勝で480.50点を記録し、銅メダルを獲得した。
4. 人物
玉井陸斗選手は、その競技成績だけでなく、個性的な側面でも知られている。
4.1. プロフィール
玉井は2人兄弟の次男である。彼の名前「陸斗」は、「大陸のように広い心を持ってほしい」という両親の願いを込めて名付けられた。憧れの選手としては、同じ飛込競技の先輩である寺内健を挙げている。目標意識が高く、2020年東京オリンピックではメダル獲得を目標としていた。好きな食べ物は牛タンである。
5. 主な戦績
玉井陸斗の主な戦績を以下の表にまとめる。
年 | 大会 | 開催地 | 種目 | スコア | 順位 |
---|---|---|---|---|---|
2019 | 日本室内選手権飛込競技大会 | 東京 | 10mプラットフォーム | 474.25点 | 優勝 |
第95回日本選手権水泳競技大会飛込競技 | 金沢 | 10mプラットフォーム | 498.50点 | 優勝 | |
飛込グランプリ2019 - 第4レグ | マドリード | 3m板飛び込み | 200.60点 | 34位 | |
10mプラットフォーム | 377.85点 | 4位 | |||
飛込グランプリ2019 - 第8レグ | クアラルンプール | 10mプラットフォーム | 456.20点 | 準優勝 | |
飛込グランプリ2019 - 第9レグ | シンガポール | 10mプラットフォーム | 452.75点 | 準優勝 | |
2020 | 第96回日本選手権水泳競技大会飛込競技 | 新潟 | 3m板飛び込み | 439.35点 | 優勝 |
10mプラットフォーム | 528.80点 | 優勝 | |||
2021 | 飛込ワールドカップ | 東京 | 10mプラットフォーム | 424.00点 | 8位 |
第97回日本選手権水泳競技大会飛込競技 | 宇都宮 | 3m板飛び込み | 395.55点 | 3位 | |
10mプラットフォーム | 516.85点 | 優勝 | |||
2020年東京オリンピック | 東京 | 10mプラットフォーム | 431.95点 | 7位 | |
2022 | つばさジャパンダイビングカップ | 静岡 | 3m板飛び込み | 413.70点 | 4位 |
10mプラットフォーム | 516.85点 | 優勝 | |||
2022年世界水泳選手権 | ブダペスト | 1m板飛び込み | 326.60点 | 11位 | |
10mプラットフォーム | 488.00点 | 準優勝 | |||
第98回日本選手権水泳競技大会飛込競技 | 宇都宮 | 3m板飛び込み | 413.55点 | 3位 | |
10mプラットフォーム | 511.60点 | 優勝 | |||
2023 | つばさジャパンダイビングカップ | 東京 | 10mプラットフォーム | 480.10点 | 優勝 |
飛込ワールドカップ2023 - 第1レグ | 西安 | 10mプラットフォーム | 433.80点 | 3位 | |
飛込ワールドカップ2023 - 第2レグ | モントリオール | 10mプラットフォーム | 513.45点 | 準優勝 | |
2023年世界水泳選手権 | 福岡市 | 1m板飛び込み | 298.60点 | 31位 | |
10mプラットフォーム | 401.50点 | 12位 | |||
2022年アジア競技大会 | 杭州市 | 10mプラットフォーム | 480.50点 | 3位 | |
2024 | 2024年パリオリンピック | パリ | 10mプラットフォーム | 507.65点 | 準優勝 |
全国高等学校総合体育大会(インターハイ) | 不明 | 10mプラットフォーム | 672.80点 | 優勝 | |
日本選手権水泳競技大会飛込競技 | 不明 | 10mプラットフォーム | 524.50点 | 優勝 |
6. 評価とレガシー
玉井陸斗は、その卓越した才能と歴史的な功績により、日本の飛込競技界に計り知れない影響を与えている。
6.1. 日本の飛込競技への影響
玉井の功績は、日本の飛込競技史において画期的なものとして評価されている。特に、2024年パリオリンピックでの男子10mプラットフォームでの銀メダル獲得は、日本飛込競技史上初のオリンピックメダルという偉業であり、このスポーツの認識と人気を飛躍的に高めた。彼は、2020年東京オリンピックで日本人選手として21年ぶりに飛込競技の決勝に進出し、入賞を果たしたことでも、その才能と将来性を国内外に示した。
彼の若くして達成した数々の「史上最年少」記録や、世界レベルでのメダル獲得は、若い世代の飛込競技選手にとって大きな目標となり、日本の飛込競技の発展を力強く牽引している。玉井陸斗の存在は、日本が世界の飛込競技大国となるための重要な一歩であり、そのレガシーは今後も長く語り継がれるだろう。