1. 来歴
1.1. プロ入り前
稲垣祥は4歳の時にサッカーを始め、練馬区立大泉西小学校在学中の1998年から2001年まで大泉西ハリケーン、2002年から2003年までサウスユーベFCでプレーした。2004年、中学進学に併せて同年新設のFC東京U-15むさしへ加入した。2006年には同期の重松健太郎、碓井鉄平、梅内和磨らと共に高円宮杯U-15で全国準優勝を果たした。体格差をカバーするため、動き出しやボールタッチの技術を学んだが、上位のFC東京U-18への昇格は叶わなかった。
2007年に帝京高等学校へ進学すると、高校入学後に身長を伸ばし、2年時よりボランチに配される機会が増えていった。在学中、2度の全国高校サッカー選手権大会に出場。2008年度大会では自身のPK失敗により初戦敗退を喫し、悔しさを味わった。主将として臨んだ2009年度大会では、大会前に負った骨折の影響で出場時間が限られたが、1得点を挙げたものの初戦敗退となった。
2010年、日本体育大学へ進学。1期先輩の新井純平とボランチでコンビを組み、鈴木政一監督の下で主体的にプレーすることで自身の長所を発揮する術を掴んだ。2年時には関東大学リーグ2部で優勝し1部昇格に貢献。4年時には主将に就き、背番号10を受け継いで、チームの心臓、大黒柱として奮戦したが、攻撃陣の不発により2部降格を喫した。
1.2. ヴァンフォーレ甲府
2014年より、ヴァンフォーレ甲府へ入団。同年3月1日、J1リーグ第1節の鹿島アントラーズ戦(国立競技場)でリーグデビューを果たした。彼は抜群の持久力と献身的なプレーで評価を掴み、攻守に駆け回る活躍を見せた。2015年10月17日、J1リーグ2ndステージ第14節の山形戦でJリーグ初得点となるゴールを62分に記録した。甲府加入以来、粘り強い守備が高く評価され、主にシャドーでのプレーが多かったが、自身はボランチでの起用を志望していた。
1.3. サンフレッチェ広島
2017年シーズン、サンフレッチェ広島へ完全移籍した。同年2月25日、J1リーグ第1節のアルビレックス新潟戦でリーグデビューを果たした。2017年10月11日、J1リーグ第30節の川崎フロンターレ戦では、新監督のヤン・ヨンソンが採用した「4-1-2-3」システムにおいてインサイドハーフとしてその存在感を発揮した。同年11月18日にはヴィッセル神戸戦でクラブでのリーグ戦初得点を記録。さらに11月26日、J1リーグ第33節のFC東京戦ではチームのJ1残留を決める重要な得点を決め、勝利に貢献した。
2018年には広島のレギュラーに定着し、高いボール奪取力と無尽蔵のスタミナでチームに不可欠な存在となった。この年、サンフレッチェ広島はJ1リーグで準優勝を果たした。2019年はシーズン序盤に怪我などにより出遅れたが、その後レギュラーに返り咲いた。同年に行われたホームでの大分戦では、両チームで2位となる83本のパスを供給し、パス成功率100%を記録。J1の試合で80本以上のパスを供給し100%のパス成功率を記録したのは、2017年5月のC大阪戦での森崎和幸以来の快挙であった。
1.4. 名古屋グランパス
2020年シーズンより名古屋グランパスへ完全移籍した。同年2月22日、J1リーグ第1節のベガルタ仙台戦でリーグデビュー。同年9月5日のJ1リーグ第15節鹿島アントラーズ戦で名古屋でのリーグ戦初得点を記録した。2020年シーズンは、リーグ戦全試合に出場し、リーグ最小失点という堅守に大きく貢献。チームのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権獲得に攻守両面で不可欠な存在となった。
2021年3月21日、J1リーグ第6節の鹿島アントラーズ戦では決勝点を決め、この活躍が評価され、その後日本代表に追加招集された。同年8月25日のJ1リーグ第26節北海道コンサドーレ札幌戦では2ゴールを決め、キャリアハイとなる年間8得点という記録を更新した。
名古屋加入以降、2020年から継続してリーグ戦全試合出場を続けており、2022年9月10日に行われたJ1リーグ第29節・ヴィッセル神戸戦で連続出場100試合を達成した。名古屋グランパスでの100試合連続出場は、クラブのレジェンドである楢﨑正剛、ランゲラックに続く3人目の快挙である。2023年シーズン中には、楢﨑正剛の持つクラブ記録「123試合」を更新し、連続出場記録を「139試合」に伸ばしたものの、累積警告により最終節は出場停止となり、彼の連続出場記録は途絶えた。名古屋グランパスでは、2021年と2024年にJリーグカップで優勝しており、特に2021年には同大会の最優秀選手賞(MVP)を獲得している。
2. 日本代表歴
2.1. 主要国際大会出場歴
2021年3月18日、国際親善試合韓国代表戦およびFIFAワールドカップ2022カタールアジア2次予選兼AFCアジアカップ中国2023予選モンゴル代表戦のメンバーとして日本代表に初選出された。同年3月30日に行われたモンゴル代表戦にて代表デビューを果たし、この試合で代表初ゴールを含む2得点を挙げ、日本代表の14-0での大勝に貢献した。彼は2021年には2022 FIFAワールドカップ・アジア予選に出場している。国際Aマッチでは通算1試合に出場し、2得点を記録している(2021年3月30日時点)。
2.2. 代表ゴール
サッカー日本代表として稲垣祥が記録した得点に関する詳細情報は以下の通りである。
# | 開催年月日 | 開催地 | 対戦国 | スコア | 結果 | 大会 |
---|---|---|---|---|---|---|
1. | 2021年3月30日 | フクダ電子アリーナ、千葉、日本 | モンゴル | 7-0 | 14-0 | 2022 FIFAワールドカップ・アジア予選 |
2. | 14-0 |
3. プレースタイル
稲垣祥は、ミッドフィールダーとして、その無尽蔵の持久力と献身的なプレーで知られている。幼少期にFC東京U-15むさしで学んだ動き出しやボールタッチの技術は、プロ入り後も彼の強みとなっている。日本体育大学時代には、当時の監督の下で自身の長所を最大限に発揮する術を掴んだ。
ヴァンフォーレ甲府時代には、抜群の持久力と粘り強い守備が高く評価され、攻守にわたってピッチを走り回った。自身はボランチを志望していたが、チーム事情によりシャドーなど複数のポジションをこなすユーティリティ性も示した。
サンフレッチェ広島では、高いボール奪取力と豊富なスタミナでレギュラーに定着。特にヤン・ヨンソン監督の戦術「4-1-2-3」においては、インサイドハーフとしてその存在感を際立たせた。また、83本のパスを100%の成功率で供給するなど、高いパス精度も持ち合わせている。
名古屋グランパスでは、攻守両面での貢献が際立ち、彼の安定したパフォーマンスがチームの最小失点記録やAFCチャンピオンズリーグ出場権獲得に大きく寄与した。これらの経験を通じて、彼は中盤の複数の役割をこなし、チーム戦術に応じて柔軟に対応できる選手へと成長を遂げた。
4. タイトル・個人タイトル
4.1. クラブ
- 日本体育大学
- 関東大学サッカーリーグ戦2部: 2011年
- 名古屋グランパス
- Jリーグカップ: 2021年、2024年
4.2. 個人
- JリーグカップMVP: 2021年
- Jリーグ優秀選手賞: 2021年
- Jリーグベストイレブン: 2021年
- Jリーグ月間MVP: 2021年2月・3月
5. 年度別成績
5.1. クラブ
稲垣祥のクラブキャリアにおけるリーグ戦、カップ戦、大陸選手権などでの出場試合数、得点に関する詳細な統計を以下に示す。
年 | クラブ | 背番号 | リーグ | リーグ戦 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2014 | 甲府 | 23 | J1 | 19 | 0 | 5 | 0 | 3 | 1 | - | 27 | 1 | |
2015 | 29 | 1 | 5 | 0 | 2 | 0 | - | 36 | 1 | ||||
2016 | 33 | 5 | 6 | 0 | 0 | 0 | - | 39 | 5 | ||||
2017 | 広島 | 15 | 14 | 2 | 6 | 0 | 3 | 0 | - | 23 | 2 | ||
2018 | 33 | 3 | 3 | 0 | 2 | 0 | - | 38 | 3 | ||||
2019 | 24 | 4 | 2 | 0 | 1 | 0 | 5 | 0 | 32 | 4 | |||
2020 | 名古屋 | 34 | 3 | 4 | 0 | - | - | 38 | 3 | ||||
2021 | 38 | 8 | 5 | 4 | 4 | 0 | 8 | 0 | 55 | 12 | |||
2022 | 34 | 2 | 10 | 2 | 1 | 0 | - | 45 | 4 | ||||
2023 | 33 | 3 | 8 | 0 | 4 | 0 | - | 45 | 3 | ||||
2024 | 36 | 6 | 8 | 0 | 0 | 0 | - | 44 | 6 | ||||
総通算 | 328 | 37 | 62 | 6 | 20 | 1 | 13 | 0 | 423 | 44 |
;Jリーグ初出場: 2014年3月1日 J1第1節・鹿島アントラーズ戦(国立競技場)
;公式戦初得点: 2014年8月20日 天皇杯3回戦・関西学院大学戦(山梨中銀スタジアム)
5.2. 日本代表
稲垣祥の国際Aマッチにおける出場試合数、得点に関する詳細な統計を以下に示す。
年 | 国際Aマッチ | |
---|---|---|
2021 | 1 | 2 |
2022 | 0 | 0 |
通算 | 1 | 2 |
6. 評価と影響
稲垣祥は、そのキャリアを通じて、所属するチームに多大な貢献を果たしてきた選手として高く評価されている。若手時代から持久力と献身性を武器に頭角を現し、ヴァンフォーレ甲府では攻守にわたってピッチを奔走した。
サンフレッチェ広島では、その高いボール奪取能力と豊富なスタミナでチームの守備の要となり、パス精度の高さも兼ね備えていることを証明した。特に、チームのJ1残留やJ1リーグ準優勝といった重要な局面で、彼の安定したパフォーマンスと決定的なプレーが貢献した。
名古屋グランパスでは、チームの守備を支えつつ、重要な局面で得点を挙げるなど、攻守両面で欠かせない存在となった。2020年シーズンにはチームのAFCチャンピオンズリーグ出場に貢献し、2021年のJリーグカップ優勝時にはMVPを獲得するなど、彼のリーダーシップと決定的な影響力がクラブの成功に直結した。
長年にわたる連続出場記録は、彼のプロフェッショナリズムと怪我に対する強靭な肉体を物語り、ファンからはその強烈なミドルシュートと共に「ナイスミドル職人!」と称されるなど、広く愛されている。彼のプレーは、常にチームの勝利に貢献することを目指し、見る者に熱い感動を与えるものとして、多くのサッカーファンから支持されている。