1. 個人史
1.1. 出生と家族
花田十輝は1969年に生まれた男性である。彼の名前「十輝」(十輝じゅっき日本語)は、祖父である作家・文芸評論家の花田清輝によって名付けられた。名前の由来については、祖父が名付けたこと以外に詳細は明かされていない。
1.2. 学歴
花田は法政大学に在学していた。学生時代からアニメ脚本家を志しており、卒業後に脚本家として生計を立てることが難しいだろうという考えから、計画的に貯金を行い、節約した生活を送っていた。これは、シナリオライターとして生活できずに他の仕事に手を出し、そのまま廃業していった多くの人々を見てきた経験から、自身がそうならないようにとの思いがあったためである。大学卒業後、実際に脚本家としての仕事がない時期には、この貯金を切り崩しながら生活していた。彼は、現在プロとして生活できている状況を「運が良かった」と語っている。
1.3. 個人的関心事
花田は少年時代からアニメを深く愛しており、特に富野由悠季監督のファンである。好きなロボットとしてイデオンを挙げている。また、日本プロ野球の熱心なファンであり、広島東洋カープを応援している。自身の[https://twitter.com/oitan125/status/948847617001140224 花田十輝Twitter]でもカープ関連の投稿が多く、時間があれば関東を中心に球場に足を運び観戦している。さらに、野球ゲームで自身が脚本を担当したアニメキャラクターを作成して遊ぶなど、多趣味な一面も持つ。
2. 経歴
2.1. 初期キャリアと師事
花田は大学生の時にアニメ脚本家を志し、小山高生が主宰する脚本家集団「ぶらざあのっぽ(アニメシナリオハウス)」に師事した。脚本家としての初めての仕事は、1992年に放送されたテレビアニメ『ジャンケンマン』の第46話「ジャンケン村の宝を探せ!」である。この作品は、小山門下生だった時に唯一プロットが採用されたものであった。
若手時代には、『勇者シリーズ』の企画コンペに参加し、多くの企画案を提出したが、いずれも採用には至らなかった。1990年代初め頃にあかほりさとるの事務所に入ったことをきっかけに、アニメ業界について多くのことを学んだ。この時期には、ゲーム『サクラ大戦』の文芸にも携わっていた。
数年にわたって仕事がない時期が続いたが、2002年に放送されたテレビアニメ『アベノ橋魔法☆商店街』でシリーズ構成に参加したあたりから、徐々にアニメ関連の仕事が増加していった。アニメ制作の都合上、放送よりもかなり前に脚本を書き終えることが多いため、放送を確認する際に「今回はどんな話だったかな」と思ってしまうこともあるという。しかし、実際に放送を見ると、どこがオリジナルの部分で、どこを書き足したかといった記憶が鮮明に蘇るとしている。
2.2. 脚本活動
2.2.1. テレビアニメシリーズ
2.2.2. OVA・短編アニメ
花田十輝はOVA(オリジナルビデオアニメーション)やその他の短編アニメーション作品においても脚本・シリーズ構成を担当している。
- 『苺ましまろ』(2007年)
- 『Sola: A Different Route』(2007年)
- 『Sola: Towards the Dawning Sky』(2007年)
- 『あきそら』(2009年)
- 『あきそら~夢の中~』(2010年)
- 『日常の0話』(2011年)
- 『Steins;Gate: Egoistic Poriomania』(2012年)
- 『Love, Chunibyo & Other Delusions: Glimmering...Explosive Festival (Slapstick Noel)』(2013年)
- 『Love, Chunibyo & Other Delusions -Heart Throb-: Playback of...the Wicked Eye's Apocalypse (The Rikka Wars)』(2014年)
- 『Beyond the Boundary: Daybreak』(2014年)
- 『Beyond the Boundary: Idol Trial!』(2013年 - 2014年)
- 『Sound! Euphonium: Dash, Monaka』(2015年)
- 『Steins;Gate 0 - Valentine's of Crystal Polymorphism: Bittersweet Intermedio』(2018年)
- 『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~』(2023年)
2.2.3. 劇場アニメ
花田十輝が脚本・シリーズ構成として参加した主要な劇場アニメ作品は以下の通りである。
- 『劇場版 STEINS;GATE 負荷領域のデジャヴ』(2013年)
- 『小鳥遊六花・改 ~劇場版 中二病でも恋がしたい!~』(2013年)
- 『劇場版 境界の彼方 -I'LL BE HERE- 過去編』(2015年)
- 『劇場版 境界の彼方 -I'LL BE HERE- 未来編』(2015年)
- 『ラブライブ!The School Idol Movie』(2015年)
- 『劇場版 響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~』(2016年)
- 『劇場版 艦これ』(2016年)
- 『ノーゲーム・ノーライフ ゼロ』(2017年)
- 『劇場版 響け!ユーフォニアム~届けたいメロディ~』(2017年)
- 『映画 中二病でも恋がしたい! -Take On Me-』(2018年)
- 『ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow』(2019年)
- 『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』(2019年)
- 『数分間のエールを』(2024年)
2.3. その他の創作活動
2.3.1. ライトノベル
花田十輝が執筆したライトノベル作品は以下の通りである。
- 『ときめきメモリアル』(電撃G's文庫)
- ときめきメモリアル (1)(1997年8月)
- ときめきメモリアル (2)(1997年10月) - 共著:山田靖智
- ときめきメモリアル (3)(1997年12月) - 共著:山田靖智
- ときめきメモリアル (4)(1999年4月) - 共著:あおしまたかし
- ときめきメモリアル (5)(1999年7月) - 共著:山田靖智
- ときめきメモリアル (6)(1999年11月) - 共著:あおしまたかし
- 『お嬢様特急』(電撃G's文庫)
- お嬢様特急 (1)(1998年6月)
- お嬢様特急 (2)(1998年9月) - 共著:成田良美
- お嬢様特急 (3)(1998年12月) - 共著:成田良美
- 『無敵王トライゼノン ガイアゼノン』(富士見ファンタジア文庫)
- 無敵王トライゼノン ガイアゼノンI 暁の兄妹(2000年9月)
- 無敵王トライゼノン ガイアゼノンII 裏切りのサウスオーシャン(2001年1月)
- 無敵王トライゼノン ガイアゼノンIII 暁の彼方に(2001年4月)
- 『大嫌いな、あの空に。』(2001年1月 スーパーダッシュ文庫)
- 『くるりくる! ~でする来襲~』(2001年9月 スーパーダッシュ文庫)
- 雑誌掲載作品
- 『SECOND STAGE』(『月刊ドラゴンマガジン』2001年9月号)
- 『Twice X'mas』(『Cobalt』2001年12月号)
2.3.2. 漫画
花田十輝は漫画作品において原作提供や脚本担当の経歴を持つ。
- 『セイバー・マリオネットJ』(1996年 - 1999年) - 脚本担当。原作:あかほりさとる、作画:琴義弓介。
- 『お嬢様特急』(1998年 - 1999年) - 原案担当。作画:勝又礼夫。
- 『くるりくる!』(2001年 - 2005年) - 作画:ひよひよ。
- 『ホーロロギオン』(2009年 - 2010年) - 原作担当。作画:乃花タツ。
2.3.3. ゲーム
花田十輝はビデオゲームのシナリオ原案・構成などにも携わっている。
- 『宇宙の騎士テッカマンブレード オービタルリング奪還作戦』(1994年) - ゲームシナリオ構成担当。
- 『お嬢様特急』(1998年) - ストーリー原案・構成担当。
- 『IDOLY PRIDE』(2019年 - ) - 原案担当。
2.3.4. その他
花田十輝は、アニメ・ゲーム・漫画・小説以外にも、ラジオドラマやドラマCDの分野で活動している。
- ラジオドラマ『もっと!ときめきメモリアル』(1995年 - 1996年)
- ドラマCD『「響け!ユーフォニアム」5th Anniversary Disc ~きらめきパッセージ~』(2021年)
3. 創作哲学・執筆手法
花田十輝は、作品執筆に取り組む上で独自の哲学と具体的な執筆手法を持っている。彼は、元のシナリオがデータとして存在する場合でも、コピー・アンド・ペーストを「絶対にしない」と語っている。その理由として、一字一句をきちんと自分の手で打ち込まなければ、その作品に沿ったテンポ(句読点の打ち方も含む)やセリフを掴むことができないと述べている。この手法は、作品への深い没入と、細部へのこだわりを示すものである。
4. 受賞歴
花田十輝は、脚本家、作家としての活動において、以下の賞を受賞している。
| 年 | 賞 | カテゴリ | 結果 |
|---|---|---|---|
| 2015 | 東京アニメアワード | アニメ オブ ザ イヤー 個人賞:原作・脚本賞 | - |
| 2019 | 東京アニメアワード | アニメ オブ ザ イヤー 個人賞:原作・脚本賞 | - |
5. 影響力
花田十輝は、その多岐にわたる作品と独特の執筆哲学を通じて、アニメ業界とファンに大きな影響を与えている。特に『ラブライブ!』シリーズや『響け!ユーフォニアム』シリーズなど、多くの人気作品のシリーズ構成を手がけたことで、その名を知られている。彼の作品は、キャラクターの心情を丁寧に描き出す繊細な描写や、物語のテンポ感、そして視聴者の心に響くセリフ回しに定評がある。
また、2015年と2019年に東京アニメアワードの個人賞(原作・脚本賞)を受賞していることは、業界内での彼の功績と評価の高さを示している。若手時代に仕事がない時期を経験しながらも、地道な努力と独自の創作哲学を貫き、現在では第一線で活躍する脚本家として、後続のクリエイターたちにも影響を与え続けている。彼の作品は、アニメファンにとってはもちろんのこと、アニメ制作を志す人々にとっても、重要な手本となっている。