1. 経歴
豊川悦司の俳優としてのキャリアは、彼の生い立ちと教育、そして初期の舞台活動からテレビ・映画への進出を経て、数々の話題作でのブレイクによって確立されていった。
1.1. 生い立ちと教育
豊川悦司は1962年3月18日に大阪府八尾市で生まれた。両親は商売をしており、3歳年上の姉がいた。両親が仕事で忙しく夜遅くまで帰宅しなかったため、幼少期は自由に菓子などを食べることができ、その結果、肥満児で地味な性格だったという。小学生時代の将来の夢は畳職人であり、近所の畳職人の作業に魅了され、入り浸っていた時期もあった。
親の仕事の関係で引っ越しが多く、学校に馴染んだ頃に転校を繰り返したため、友達作りに苦労した。いじめはなかったものの、言葉(方言)にも苦労し、中学生の頃に大阪から千葉県に引っ越した後、再び大阪に戻った際には、その都度同級生に話し方をからかわれた経験を持つ。姉とは仲が良く、高校生の頃まで同部屋で二段ベッドで寝起きしていた。また、姉の影響で『りぼん』や『別冊マーガレット』などの少女漫画を読んで育った。
高校在学中、進路を考える時期に、姉が京都の同志社大学に通っていたことから、父親から「お前も同志社大学に行け、(姉と)二人で京都で下宿していいぞ」と言われた。しかし、高校卒業後も姉と一緒に暮らすことに抵抗を感じたため、兵庫県にある関西学院大学文学部に進学した。本人は本来、大学進学は考えておらず、高校卒業後に世界を放浪したいと考えていたが、親の猛反対により大学に進学することになった。大学では寮生活を始め、演劇部の部室が寮の目の前にあったことから、ある日練習を眺めていたところ部員に誘われ、何気なく入部した。7月に入部し、8月か9月の公演に端役として出演。台詞はわずかだったものの、この舞台で人前に立つ快感を感じ、芝居にのめり込んでいった。
1.2. 初期キャリアとデビュー
本格的に演劇を志すようになった豊川悦司は、大学2年生で関西学院大学を中退し、上京した。その後、渡辺えり(現・えり子)が主宰する演劇集団「劇団3○○」の舞台を観て感動し、公演直後に「劇団に入れて下さい」と直訴して入団。1983年に渡辺作・演出による『瞼の母』で初舞台を踏み、1989年に退団するまで7年間在籍し、数々の舞台に出演した。
劇団退団後は、渡辺えりの紹介で現在の所属事務所であるアルファエージェンシーに移籍。1989年には渡邊孝好監督の映画『君は僕をスキになる』のオーディションに合格し、加藤雅也の同僚役で映画初出演を果たした。以後、多数の映画やテレビドラマに出演するようになる。1990年にはフジテレビのテレビドラマ『あいつがトラブル』の最終回にゲスト出演し、NHKの『赤頭巾快刀乱麻』(1991年)など、いくつかの作品で顔を見せていた。映画では、1990年に北野武監督の『3-4X10月』にも出演している。
1.3. ブレイクと人気確立
豊川悦司が俳優として広く注目を集めるきっかけとなったのは、1992年にフジテレビで放送されたテレビドラマ『NIGHT HEAD』である。この作品では武田真治と共に主演を務め、超能力を持つ兄弟を演じた。深夜枠での放送にもかかわらず、カルト的な人気を博し、豊川の存在感を強く印象付けた。同年には松岡錠司監督の映画『きらきらひかる』で岸田睦月役を演じ、日本アカデミー賞、ヨコハマ映画祭など多数の新人賞を受賞し、エランドール賞新人賞も受賞した。これにより、特に20代女性を中心に絶大な人気を獲得し、ブレイクを果たした。
1994年にはテレビドラマ『この世の果て』や『この愛に生きて』といった話題作に出演し、一般層にもその名が広く知られるようになった。1995年には岩井俊二監督の映画『Love Letter』で秋葉茂役を演じ、第19回日本アカデミー賞で優秀助演男優賞と話題賞を受賞した。同年にはテレビドラマ『愛していると言ってくれ』で耳の不自由な青年画家役を演じ、障害を乗り越えて愛を深めていく姿が多くの視聴者の共感を呼び、最高視聴率28.1%を記録する大ヒットとなった。
1997年にはテレビドラマ『青い鳥』でヘアメイクを担当していた一般女性と結婚し、一男一女をもうけたが、2005年12月31日に離婚。子供たちは妻が引き取った。1999年に放送されたテレビドラマ『危険な関係』に出演し、再び話題を呼んだ。2001年には中山美穂とW主演を務めたテレビドラマ『Love Story』が平均視聴率20%超えを達成。その後も2003年のテレビドラマ『Et Alors-エ・アロール-』や2006年のテレビドラマ『弁護士のくず』などに出演を続けた。
2008年には自宅でカキ鍋を食べていたところ、アナフィラキシーショックを起こし救急搬送されるという出来事があったが、症状は軽度で済んだ。2011年には第36回湯布院映画祭で、彼が出演した『必死剣鳥刺し』、『犯人に告ぐ』、『傷だらけの天使』、『今度は愛妻家』の4作品が特集上映され、上映後には行定勲監督とのトークショーも開催された。同年、NHK大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』で織田信長役を演じた。2015年5月には元エステティシャンの一般女性との再婚と女児の誕生を公表した。
2. 俳優としてのキャリアと主な作品
豊川悦司は、映画、テレビドラマを中心に、Vシネマ、舞台、アニメ声優、ゲーム、ドキュメンタリーのナレーションなど、多岐にわたるメディアで活動を展開している。また、俳優業以外にも原案、脚本、演出を手掛けた作品も発表している。
2.1. フィルモグラフィー:映画
年 | 映画 | 役名 | 特記事項 |
---|---|---|---|
1989 | 『君は僕をスキになる』 | ||
1990 | 『3-4X10月』 | 沖縄連合組長 | |
『病院へ行こう』 | |||
1991 | 『12人の優しい日本人』 | 陪審員11号 | |
1992 | 『課長島耕作』 | 樫村健三 | |
『きらきらひかる』 | 岸田睦月 | 主演(トリプル主演) | |
1993 | 『釣りバカ日誌6』 | 立花記者 | |
1994 | 『undo』 | 由紀夫 | 主演(W主演) |
『エンジェル・ダスト』 | トモオ | ||
『居酒屋ゆうれい』 | 杉本延也 | ||
『NIGHT HEAD 劇場版』 | 霧原直人 | 主演(W主演) | |
1995 | 『Love Letter』 | 秋葉茂 | |
『NO WAY BACK 逃走遊戯』 | ユウジ・コバヤシ | 主演(W主演)、アメリカ映画 | |
『トイレの花子さん』 | 坂本雄二 | 別名『School Mystery』 | |
1996 | 『男たちのかいた絵』 | 鶴丸杉夫、鶴丸松夫 | 主演 |
『八つ墓村』 | 金田一耕助 | 主演 | |
1997 | 『傷だらけの天使』 | 木田満 | 主演 |
『MISTY』 | 多襄丸 | 主演(トリプル主演) | |
『Lie lie Lie』 | 相川真 | 主演(トリプル主演) | |
1998 | 『愚か者 傷だらけの天使』 | 木田満 | |
1999 | 『千年旅人』 | ツルギ | 主演(トリプル主演) |
2000 | 『顔』 | 中上洋行 | |
『ざわざわ下北沢』 | |||
『新・仁義なき戦い。』 | 門谷甲子男 | 主演 | |
2002 | 『DOG STAR/ドッグ・スター』 | シロー | 主演(W主演) |
『命』 | 東由多加 | 主演(W主演) | |
『さヾなみ』 | 玉水龍男 | ||
2003 | 『MOON CHILD』 | ルカ | 吸血鬼ルカ |
2004 | 『丹下左膳 百万両の壺』 | 丹下左膳 | 主演 |
『レイクサイド マーダーケース』 | 津久見勝 | ||
2005 | 『ハサミ男』 | 安永 | 主演(W主演) |
『北の零年』 | アシリカ | ||
『妖怪大戦争』 | 加藤保憲 | ||
『LOFT ロフト』 | 吉岡誠 | ||
『大停電の夜に』 | 木戸晋一 | 主演 | |
『疾走』 | 神父 | ||
2006 | 『やわらかい生活』 | 橘祥一 | |
『日本沈没』 | 田所雄介博士 | ||
『フラガール』 | 谷川洋二朗 | ||
『ありがとう』 | |||
2007 | 『愛の流刑地』 | 村尾菊治 | 主演(W主演) |
『魂萌え!』 | 野田 | ||
『サウスバウンド』 | 上原一郎 | 主演 | |
『犯人に告ぐ』 | 巻島史彦 | 主演 | |
2008 | 『椿三十郎』 | 室戸半兵衛 | 黒澤明監督作品のリメイク |
『接吻』 | 坂口秋生 | ||
『犬と私の10の約束』 | 斉藤祐市 | ||
『石内尋常高等小学校 花は散れども』 | 山崎良人 | ||
2009 | 『本格科学冒険映画 20世紀少年 <第1章> 終わりの始まり』 | オッチョ(落合長治) | |
『20世紀少年 <第2章> 最後の希望』 | オッチョ | ||
『20世紀少年 <最終章> ぼくらの旗』 | オッチョ | ||
2010 | 『今度は愛妻家』 | 北見俊介 | 主演(W主演) |
『必死剣鳥刺し』 | 兼見三左エ門 | 主演 | |
『一枚のハガキ』 | 松山啓太 | 主演 | |
2013 | 『プラチナデータ』 | 浅間玲司 | |
『人類資金』 | ハリー遠藤 | ||
2014 | 『ジャッジ!』 | 大滝一郎 | |
『春を背負って』 | 多田悟郎 | ||
『娚の一生』 | 海江田醇 | 主演 | |
2016 | 『後妻業の女』 | 柏木亨 | |
2017 | 『3月のライオン』 | 幸田柾近 | |
『3月のライオン 後編』 | 幸田柾近 | ||
『The Blue Hearts』 | 秋山達也 | ||
2018 | 『のみとり侍』 | 清兵衛 | |
『ラプラスの魔女』 | 甘粕才生 | ||
『パンク侍、斬られて候』 | 内藤帯刀 | ||
2019 | 『パラダイス・ネクスト』 | 島 | 主演(W主演)、台湾・日本合作映画 |
『ミッドウェイ』 | 山本五十六 | アメリカ映画 | |
『サムライマラソン』 | 五百鬼祐虎 | ||
2020 | 『ラストレター』 | 阿藤 | |
『一度も撃ってません』 | 周雄 | ||
2021 | 『子供はわかってあげない』 | 藁谷友充 | |
『いとみち』 | 相馬耕一 | ||
『鳩の撃退法』 | 倉田健次郎 | ||
2022 | 『弟とアンドロイドと僕』 | 桐生薫 | 主演 |
『キングダム2 遥かなる大地へ』 | 麃公 | ||
『あちらにいる鬼』 | 白木篤郎 | 主演(W主演) | |
2023 | 『そして僕は途方に暮れる』 | 菅原浩二 | |
『仕掛人・藤枝梅安』 | 藤枝梅安 | 主演 | |
『仕掛人・藤枝梅安2』 | 藤枝梅安 | 主演 | |
『リボルバー・リリー』 | 細見欣也 |
2.2. フィルモグラフィー:テレビドラマ
年 | タイトル | 役名 | 特記事項 | |
---|---|---|---|---|
1989 | 『木曜ゴールデンドラマ 嫁・姑・大姑3』 | |||
1990 | 『あいつがトラブル』最終回 | 犯人の一人 | ||
1991 | 『火曜ミステリー劇場 西村寿行スペシャル 犬笛』 | |||
『代表取締役刑事』第16話「泥棒日記」 | ||||
『金曜ドラマ 赤頭巾快刀乱麻』 | ||||
1991 | 『夢みるくらい、いいじゃない』 | |||
『木曜劇場 しゃぼん玉』 | 榊晃次 | |||
『大河ドラマ 太平記』 | 吉次 | |||
『七人の女弁護士』第2シリーズ 第7話 | ||||
『さすらい刑事旅情編IV』第5話 | ||||
『世にも奇妙な物語「受験生」』 | 高田浩平 | |||
『本当にあった怖い話「幽霊刑事」』 | ||||
1992 | 『さよならをもう一度』 | |||
『裏刑事-URADEKA-』第3話 | 中西 | |||
『いとこ同志』 | 三矢夏彦 | |||
1993 | 『青春牡丹灯篭』 | 新三郎 | 主演(W主演) | |
『お茶の間』 | 長崎 | |||
『NIGHT HEAD』 | 霧原直人 | 主演(W主演) | ||
『NIGHT HEAD THE OTHER SIDE』 | 霧原直人 | |||
『RUN』 | 石原裕一 | |||
『大河ドラマ 炎立つ』 | 清原家衡 | |||
1994 | 『月10枠サスペンス・魔「燃える秘密」』 | 京一 | ||
『月10枠 特選!黒のサスペンス「喪失」』 | 九島守一 | |||
『海が見たいと君が言って』 | 澤木祐介 | 声の出演 | ||
『この世の果て』 | 神矢征司 | |||
1995 | 『世にも奇妙な物語 冬の特別編「ルナティック・ラヴ」』 | 僕 | 主演 | |
『木曜劇場 この愛に生きて』 | 植草聖一 | |||
『金曜ドラマ 愛していると言ってくれ』 | 榊晃次 | 主演(W主演) | ||
1997 | 『金曜ドラマ 青い鳥』 | 柴田理森 | 主演 | |
1999 | 『兄弟 ~兄さん、お願いだから死んでくれ~』 | 中西禮三 | 主演(W主演) | |
『木曜劇場 危険な関係』 | 魚住新児 | 主演 | ||
2001 | 『新春ヒューマンドラマスペシャル「17年目のパパへ」』 | 唐木新次 | 主演(W主演) | |
2001 | 『女と愛とミステリー「松本清張特別企画・わるいやつら」』 | 戸谷信一 | 主演 | |
『東芝日曜劇場 Love Story』 | 永瀬康 | 主演 | ||
『土曜特集ドラマ「至上の恋 愛は海を越えて」』 | 師岡 | 主演 | ||
2002 | 『ビートたけし原作ドラマ「少年」』第2話「星の巣」 | 主演 | ||
2003 | 『失われた約束 引き裂かれた愛の行方』 | 篠原淳一 | 主演 | |
『エ・アロール』 | 来栖貴文 | 主演 | ||
2005 | 『ドラマW「自由戀愛」』 | 磐井優一郎 | 主演(トリプル主演) | |
『青春の門-筑豊篇-』 | 伊吹重蔵 | |||
『太宰治物語』 | 太宰治 | 主演 | ||
2006 | 『弁護士のくず』 | 九頭元人 | 主演 | |
2011 | 『大河ドラマ 江~姫たちの戦国~』 | 織田信長 | ||
2012 | 『ビューティフルレイン』 | 木下圭介 | 主演(W主演) | |
2016 | 『連続ドラマW「荒地の恋」』 | 北沢太郎 | 主演 | |
『漱石悶々 夏目漱石最後の恋 京都祇園の二十九日間』 | 夏目漱石 | 主演(W主演) | ||
2018 | 『連続テレビ小説 半分、青い。』 | 秋風羽織 | 朝ドラ | |
2020 | 『逃亡者』 | 保坂正巳 | ミニシリーズ | |
2021 | 『ウチの娘は、彼氏が出来ない | 』第7話 - 最終話 | 一ノ瀬風雅 | |
2021-2024 | 『No Activity/本日も異状なし』 | 時田信吾 | 主演、2シーズン | |
2024 | 『地面師たち』 | ハリソン山中 | 主演 |
2.3. その他のメディア出演
豊川悦司は映画やテレビドラマ以外にも、Vシネマ、舞台、アニメーション、ゲーム、ドキュメンタリー番組など、幅広いメディアで活動している。
- Vシネマ**
- 『タフ PART Ⅰ 誕生篇』(1990年)
- 『女教師・濡れたピアノの下で』(1991年) - 郷田竜 役
- 『獣のように 完結編』(1992年)
- 舞台**
- 『あわれ彼女は娼婦』(1993年) - 主演(W主演:深津絵里)
- 新宿梁山泊 第77回公演『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』(2024年)
- テレビアニメ**
- 『アーヤと魔女』(2020年、NHK総合) - マンドレーク 役(声優)
- ゲーム**
- 『ロストオデッセイ』(2007年) - カイム・アラゴナー 役(声優)
- ドキュメンタリー**
- 『ハイビジョン特集 もっと知りたいギリシャ「エーゲ海 紺碧の迷宮」』(2004年8月8日、NHK総合) - 旅人
- 『世界・時の旅人「ルパンに食われた男 モーリス・ルブラン」』(2005年11月18日、NHK BSプレミアム) - リポーター
- 『NHKスペシャル 昔 父は日本人を殺した~ピュリツァー賞作家が見た沖縄戦~』(2011年6月19日、NHK総合) - デール・マハリッジのモノローグを朗読
- 『バルテュスと彼女たちの関係』(2014年5月17日、NHK BSプレミアム) - ナビゲーター
- 『プラネットアースII』(2016年12月25日 - 2017年2月19日、NHK BSプレミアム) - ナレーション
- NHKスペシャル『ブループラネット』(2018年5月6日 - 7月7日、NHK総合 / 完全版:2018年12月18日 - 2019年3月28日) - ナレーション
- 『NHKスペシャル "夜の街"で生きる~歌舞伎町 試練の冬~』(2021年1月30日、NHK総合) - 語り
- 『NHKスペシャル 新・ドキュメント太平洋戦争「1941 第1回 開戦」(前編・後編)』(2021年12月4日・5日、NHK総合) - 朗読
- 『NNNドキュメント'24「釜ヶ崎の肖像 明日への3000枚」』(2024年2月25日、読売テレビ) - ナレーション
- 教育番組**
- 『さすらいのとどうふ犬 シロウ』(2024年8月21日、NHK Eテレ) - シロウの声 役
2.4. CM出演
豊川悦司はこれまでに数多くのテレビCMに出演している。
- キッコーマン トライアングル
- JT セブンスター
- アウディ
- KDDI
- サッポロビール「黒ラベル」(共演:山﨑努)
- キリンビール
- 「円熟」発泡酒、「澄みきり」新ジャンル(2013年5月 - )
- 「キリン一番搾り生ビール」『おいしいビールへ篇』(2021年 - )
- 「キリン一番搾り 糖質ゼロ」『庭仕事のあと篇』・『フライドポテト篇』(2023年7月 - )
- 「キリン一番搾り 糖質ゼロ」『いい時代篇』(2024年7月 - )(共演:常盤貴子)
- 「キリン一番搾り 糖質ゼロ」『代弁する娘』・『認めたくない父』篇(2025年1月 - )
- Apple Computer - ナレーション
- 大日本除虫菊 キンチョール
- 大塚製薬 SOYJOY(2007年 - )
- 日産・ティアナ
- ACジャパン WFP国際連合世界食糧計画「hope」(2008年) - ナレーション
- アサヒビール「クールドラフト」発泡酒
- リクルートエージェント
- NTT西日本
- トヨタ自動車
- カローラスパシオ
- クラウン(2015年)
- ダイハツ工業「タントカスタム」(2010年 - 2013年、菅野美穂、綾野剛と共演)
- 豊田通商(2015年 - )
- 日清食品「日清ラ王」(2011年5月 - )
- ジャパンゲートウェイ / ラボーテ・ジャポン「Rigaos」
- 味の素「鍋キューブ」『うまさ溶け出す篇』・『ひとりにひとつ篇』(2015年 - )
- 三井住友VISAカード 『最高が似合う人篇』(三井住友プラチナカード)(2016年1月 - )
- 花王「アタックNeo抗菌EX Wパワー」(2017年5月 - )
- プラスアルファ・コンサルティング タレントパレット 科学的人事戦略 「モチベーション」篇「未来」篇 (2019年11月 -)
- GYAO!(2019年 - 2020年)
- サイボウズ「Kintone」『たのしそうな部長篇』・『一筋縄ではいかない業務篇』(2023年10月 - )
2.5. 原案・脚本・演出作品
豊川悦司は俳優業の傍ら、自ら原案、脚本、または演出を手掛けた作品も発表している。
- つげ義春ワールド『退屈な部屋』(1998年、テレビ東京) - 演出
- つげ義春ワールド『懐かしいひと』(1998年、テレビ東京) - 演出
- 美少女H『父、帰る...』(1998年、フジテレビ) - 演出
- 世にも奇妙な物語 2000春の特別編『冷やす女』(2000年、フジテレビ) - 演出
- 賢者の贈り物『賢者の行進』(2001年、広島ホームテレビ) - 原案のみ
- 夫婦漫才(2001年、TBS) - 演出
- LOVERS『聖セバスチャンヌの掌』(2003年、TBS) - 演出
- スペシャルドラマ『恋愛小説 十八の夏』(2006年、TBS) - 演出
テレビ演出家としての豊川悦司は、初期の作品において、監督やテレビ演出家をあえて重要な役柄に配役する特徴があった。例えば、『父、帰る...』ではヒロインの父親役に『この愛に生きて』や『星になった少年』の河毛俊作を、『冷やす女』ではヒロインが冷凍する亡き恋人役に『千年旅人』の辻仁成を、そして『退屈な部屋』や『懐かしいひと』では主人公・津部役に『二十才の微熱』や『ぐるりのこと。』の橋口亮輔を起用している。また、『夫婦漫才』では、ヒロインの中山美穂の晩年役に吉本新喜劇の女優・中山美保を起用するなど、遊び心も見られた。
3. 演技への姿勢と哲学
豊川悦司は、役へのアプローチや演技に対する独自の哲学を持っている。実在の人物(実在の人物をモデルにしたフィクションの作品も含む)を演じる際には、できるだけ事前に本人に会っておくことを自身の「癖」としている。本人によると、その人が本当に存在していた証を確かめたくなるのだという。故人を演じる場合でも、織田信長のようにその人の墓参りに行くなどして、役作りに臨んでいる。
自身の演技スタイルについては、「役者としてはわりと役に"飛び込む"のをウジウジ考えてから演じるタイプ」と自己分析している。ここでいう「飛び込む」とは、クセのある役や濡れ場などの役を思い切って演じることを、水に飛び込むことに例えた表現である。
役者をする上で最も大事にしていることは、「自分の気持ちが冷めないよう、各作品の出演期間に一定の"温度"を保つこと」だと語る。また、内容が似たような作品にはなるべく連続で出演しないように心掛けており、常に新しい挑戦を求めている姿勢がうかがえる。
4. 私生活
豊川悦司は、そのミステリアスな公的イメージとは対照的に、私生活では家族や趣味を大切にする一面を持つ。
4.1. 家族と人間関係
豊川悦司は1997年にテレビドラマ『青い鳥』のヘアメイクを担当していた一般女性と結婚し、一男一女をもうけた。しかし、2005年12月31日に離婚し、子供たちは元妻が引き取った。その後、2015年5月には元エステティシャンの一般女性と再婚し、女児が誕生したことを公表している。
幼少期には3歳年上の姉と非常に仲が良く、高校生の頃まで二段ベッドで同部屋で寝起きしていた。また、共演の多い女優である寺島しのぶ(豊川によると、2022年10月時点で映画『あちらにいる鬼』を含めて6、7回共演)からは、畏怖とも呼べる印象を抱かれているという。豊川自身は、寺島しのぶについて「役への飛び込み方がカッコよく、尊敬しています。役者として刺激ももらえるし、やりやすい。"この人とだったら一緒に役に飛び込めるな"みたいな雰囲気を作ってくれる」と高く評価している。
4.2. 趣味と公的イメージ
豊川悦司の趣味の一つはサーフィンであり、40歳を過ぎた頃から始めて2022年現在で15、6年になるという。彼はサーフィンを単なるスポーツとは異なるものと捉えており、「板にまたがって波を待つ"波待ち"の時間が一番好き」と語っている。波待ちの時間は、役者、父親、社会人、男といった様々な「コスチューム」を全て脱ぎ捨てて、本来の「裸」の自分になれる時間だと感じている。
また、豊川は公私混同を非常に嫌い、バラエティ番組には滅多に登場しないことでも知られている。マスコミからの取材も断ることが多く、そのミステリアスなイメージを堅守してきた。しかし、2016年9月2日にはNHKのトーク番組『あさイチ』内の「プレミアムトーク」に出演し、これが初の生トーク番組出演となった。
彼はNHKの番組をこよなく愛しており、19時から22時過ぎまでほとんど総合テレビの番組を視聴していると公言している。特にお気に入りの番組は、映画『後妻業の女』で共演した笑福亭鶴瓶の冠番組『鶴瓶の家族に乾杯』である。また、『NHKニュース7』のメインキャスターを務めた武田真一アナウンサーのファンであることも公言しており、将来ニュースキャスターの役が来た際には武田アナウンサーを参考にしたいとも述べている。
5. 評価と影響
豊川悦司は、その唯一無二の存在感と演技力で、長年にわたり日本映画・ドラマ界に多大な影響を与え、高い評価を得ている。
5.1. 肯定的な評価
豊川悦司は、その圧倒的な演技力と、作品選択のセンス、そして俳優としての確固たる存在感によって、各方面から非常に肯定的な評価を受けている。1990年代のブレイク以降、『NIGHT HEAD』や『Love Letter』、『愛していると言ってくれ』といった作品で社会現象を巻き起こし、その人気は幅広い層に及んだ。特に『愛していると言ってくれ』では、耳の不自由な青年画家という難役を繊細かつ力強く演じ切り、その演技は視聴者から絶賛され、高視聴率の原動力となった。
共演者からの評価も高く、特に頻繁に共演している寺島しのぶは、彼の役への「飛び込み方」を「カッコよく、尊敬している」と評し、豊川が共演者に与える刺激と、共に役を深めていける雰囲気作りの巧みさに言及している。彼は数々の映画賞やテレビドラマ賞を受賞しており、その演技は批評家からも高く評価されている。日本アカデミー賞では新人俳優賞、優秀助演男優賞、優秀主演男優賞を複数回受賞するなど、その実力は広く認められている。彼の出演作は、日本映画やテレビドラマの多様性と深みを増すことに貢献し、多くの観客に感動を与え続けている。
5.2. 批判と論争
豊川悦司のキャリアや活動において、公に大きな批判や論争が報じられた事例は、提供された情報源からは確認されていない。
6. 受賞歴
豊川悦司は、その俳優としてのキャリアを通じて、数多くの映画賞やテレビドラマ賞を受賞している。
年 | 賞の名称 | 区分 | 対象作品 | 備考 |
---|---|---|---|---|
1992 | 第14回ヨコハマ映画祭 | 最優秀新人賞 | 『きらきらひかる』『課長島耕作』『12人の優しい日本人』 | |
1992 | 第18回おおさか映画祭 | 助演男優賞 | 『きらきらひかる』 | |
1993 | 第16回日本アカデミー賞 | 新人俳優賞 | 『きらきらひかる』『課長島耕作』 | |
1993 | エランドール賞 | 新人賞 | 『NIGHT HEAD』『きらきらひかる』 | |
1995 | 第20回報知映画賞 | 最優秀助演男優賞 | 『Love Letter』 | |
1995 | 第10回高崎映画祭 | 最優秀助演男優賞 | 『Love Letter』 | |
1995 | ゴールデン・アロー賞 | グランプリ | 『愛していると言ってくれ』『Love Letter』 | |
1995 | 第6回ザテレビジョンドラマアカデミー賞 | 主演男優賞 / ベストドレッサー賞 | 『愛していると言ってくれ』 | |
1996 | 第17回ヨコハマ映画祭 | 主演男優賞 | 『Love Letter』 | |
1996 | 第19回日本アカデミー賞 | 優秀助演男優賞 / 話題賞 | 『Love Letter』 | |
1997 | 第20回日本アカデミー賞 | 優秀主演男優賞 | 『八つ墓村』 | |
1997 | 第12回高崎映画祭 | 最優秀主演男優賞 | 『傷だらけの天使』 | |
1999 | 第23回ザテレビジョンドラマアカデミー賞 | 主演男優賞 | 『危険な関係』 | |
2000 | 第15回高崎映画祭 | 最優秀主演男優賞 | 『新・仁義なき戦い。』 | |
2002 | 第26回日本アカデミー賞 | 優秀主演男優賞 | 『命』 | |
2005 | 第29回日本アカデミー賞 | 優秀助演男優賞 | 『北の零年』 | |
2007 | 第3回おおさかシネマフェスティバル | 助演男優賞 | 『魂萌え!』『椿三十郎』 | |
2008 | 第48回ACC CM FESTIVAL | ベスト演技賞 | 大塚製薬「SOYJOY」 | |
2008 | 第23回高崎映画祭 | 最優秀助演男優賞 | 『接吻』 | |
2010 | 第35回報知映画賞 | 最優秀主演男優賞 | 『必死剣鳥刺し』『今度は愛妻家』 | |
2010 | 第32回ヨコハマ映画祭 | 主演男優賞 | 『必死剣鳥刺し』『今度は愛妻家』 | |
2011 | 第84回キネマ旬報ベスト・テン | 主演男優賞 | 『必死剣鳥刺し』『今度は愛妻家』 | |
2011 | 第20回東京スポーツ映画大賞 | 主演男優賞 | 『今度は愛妻家』 | |
2011 | 第34回日本アカデミー賞 | 優秀主演男優賞 | 『必死剣鳥刺し』 | |
2011 | TAMA映画祭 | 最優秀作品賞 | 『一枚のハガキ』 | |
2020 | TAMA映画祭 | 最優秀作品賞 | 『ラストレター』 | |
2021 | TAMA映画祭 | 特別賞 | 『いとみち』 |