1. Overview
金伏ウーゴは、1989年5月22日にブラジルのパラナ州アルト・パラナで生まれた、日系三世の元プロ野球選手である。左投げ左打ちの投手として、日本のプロ野球(NPB)では東京ヤクルトスワローズと読売ジャイアンツに、独立リーグでは栃木ゴールデンブレーブスに所属した。また、野球ブラジル代表の一員として、複数のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)予選および本戦に出場するなど、国際舞台でも活躍した。現役引退後は、読売ジャイアンツの国際部で通訳として勤務し、その後ブラジルへ帰国した。本記事では、彼の多文化的な背景、野球選手としての経歴、そして引退後の活動について詳細に記述する。
2. 経歴(プロ入り前)
金伏ウーゴは、ブラジルで野球を始め、日本での高校・大学を経てプロ入りを果たした。
2.1. 生い立ちと幼少期の野球
金伏ウーゴは、ブラジルのパラナ州アルト・パラナで日系三世として誕生し、ブラジル国籍を有する。5歳から野球を始め、14歳までに硬式野球の世界大会でブラジル代表に4度選出された。特に2004年に日本で開催された世界大会では、チームが3位に入賞し、自身もベストナインに選出される活躍を見せた。この大会でのパフォーマンスが日本のスカウトの目に留まり、来日するきっかけとなった。
2.2. 高校・大学時代
来日後、佐野日大高に進学したが、寮生活に馴染むことができず、高校2年時には左肘の手術を経験した。結局、高校在学中に公式試合で登板することは一度もなかった。なお、後に読売ジャイアンツでチームメイトとなる澤村拓一は、佐野日大高の1年先輩であり、寮で同じ部屋で生活した経験がある。
高校卒業後、白鷗大学に進学し、関甲新学生野球連盟に加盟する同校の野球部に入部した。大学2年時の春には全日本大学野球選手権大会で初めて全国の舞台で投球を経験した。4年時の春には大学での初勝利を挙げ、同年の秋には1部リーグで優勝を果たすなど、大学野球で実績を積んだ。
2011年10月27日に行われたプロ野球ドラフト会議では、東京ヤクルトスワローズから育成選手として2位指名を受けた。日本国内の大学に4年間在籍したため、NPBでは外国人枠が適用されず、日本人選手と同じ扱いを受けた。白鷗大学野球部は部員数50人程度の規模であったが、この年のドラフトでは金伏の他に、塚田正義が福岡ソフトバンクホークスから、岡島豪郎が東北楽天ゴールデンイーグルスから指名され、3人の選手がプロ入りを果たした。
3. プロ野球選手時代
金伏ウーゴは、日本プロ野球の東京ヤクルトスワローズと読売ジャイアンツ、そして独立リーグの栃木ゴールデンブレーブスでプロ野球選手として活動した。
3.1. 東京ヤクルトスワローズ時代
2012年、金伏は育成選手として東京ヤクルトスワローズに入団した。同年7月30日に支配下選手契約へ移行し、背番号も119から91に変更された。そして10月3日の対横浜DeNAベイスターズ戦(横浜スタジアム)で、2番手投手としてプロ入り後初となる一軍デビューを果たした。
シーズン終了後、彼はチームメイトで自身と同じブラジル出身の松元ユウイチやラファエル・フェルナンデスとともに、第3回WBCのブラジル代表に選出された。
2013年のWBCでは、福岡ヤフオクドームで開催された1次リーグA組(福岡ラウンド)において、3月3日のキューバ戦と3月5日の中国戦に救援で登板した。しかし、大会終了後、NPBシーズン開幕後の7月17日に左肘内側側副靱帯の再建手術(通称:トミー・ジョン手術)を受けた。この手術の影響で、2014年までの2年間は一軍公式戦への登板機会がなかった。
2015年には、7月28日の対広島東洋カープ戦(神宮球場)で、4番手投手として自身3年ぶりとなる一軍公式戦登板を果たした。しかし、この年の一軍での登板機会はこの1試合のみに終わり、10月2日に球団から戦力外通告を受けた。
3.2. 読売ジャイアンツ時代
2015年11月10日、金伏は草薙球場で行われた12球団合同トライアウトに参加した。彼はストレートで最速146 km/hを計測し、シートバッティング形式での打者3人との対戦を三者凡退に抑えた。この結果を受け、同年11月13日に読売ジャイアンツが育成選手として金伏と契約したことを発表した。この時の登録名は再び「ウーゴ」となり、背番号は025が与えられた。
2016年3月28日、金伏は長谷川潤と共に支配下選手登録へ移行し、背番号も95に変更された。しかし、この年も一軍公式戦での登板には至らず、10月2日に球団から戦力外通告を受けた。
金伏はNPB他球団での現役続行を希望し、同年11月12日には2年連続で12球団合同トライアウトに参加した。前年と同じ形式の対戦で、打者3人に対して1奪三振、1被安打、1与四球という結果を残した。
3.3. 栃木ゴールデンブレーブス時代(独立リーグ)
2016年12月2日、金伏は独立リーグであるベースボール・チャレンジ・リーグに翌年から参加する栃木ゴールデンブレーブスへの入団が発表された。
2018年10月31日、金伏は栃木ゴールデンブレーブスから自由契約となり、退団した。
4. 代表歴
金伏ウーゴは、ブラジル野球国家代表チームの一員として、国際大会に複数回参加している。
彼は2013 ワールド・ベースボール・クラシック・ブラジル代表および2017 ワールド・ベースボール・クラシック・ブラジル代表に選出され、両大会の予選および本戦に出場した。また、2019年パンアメリカン競技大会予選にも参加した。
5. 選手としての特徴
金伏ウーゴは、左腕から投げ込む最速148 km/hの速球を最大の持ち味とする投手であった。変化球としては、主にカーブ、スライダー、チェンジアップを投じた。課題としては、コントロールの不安定さが挙げられていた。
6. 現役引退後
栃木ゴールデンブレーブス退団時、金伏は「まだ先のことは決まっていない状態」とコメントしていた。しかし、2019年より読売ジャイアンツの国際部に通訳として就任した。同年は主に三軍の通訳として、日本語、スペイン語、ポルトガル語を駆使して選手とコーチ間のコミュニケーションを担った。
2023年11月27日、自身のX(旧Twitter)を更新し、2023年限りで読売ジャイアンツを退団し、ブラジルへ帰国することを発表した。
7. 詳細情報
7.1. 年度別投手成績 (NPB)
年度 | 球団 | 登板 | 勝利 | 敗戦 | セーブ | ホールド | 完投 | 完封 | 無四球 | 勝率 | 打者 | 投球回 | 被安打 | 被本塁打 | 奪三振 | 与四球 | 与死球 | 失点 | 自責点 | 暴投 | ボーク | 防御率 | WHIP | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2012年 | ヤクルト | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 6 | 0.2 | 0 | 0 | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 13.50 | 6.00 |
2015年 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 9 | 1.0 | 4 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 4 | 36.00 | 5.00 | |
通算:2年 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 15 | 1.2 | 4 | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 5 | 27.00 | 5.40 |
7.2. 独立リーグでの投手成績
年度 | 球団 | 登板 | 勝利 | 敗戦 | セーブ | 完投 | 勝率 | 投球回 | 打者 | 被安打 | 被本塁打 | 奪三振 | 与四球 | 与死球 | 失点 | 自責点 | 暴投 | ボーク | 防御率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2017年 | 栃木 | 16 | 2 | 8 | 0 | 1 | .200 | 97.2 | 428 | 114 | 11 | 66 | 27 | 3 | 50 | 44 | 6 | 0 | 4.05 | 1.45 |
2018年 | 20 | 2 | 8 | 0 | 1 | .200 | 106.1 | 479 | 119 | 8 | 83 | 41 | 5 | 60 | 56 | 4 | 2 | 4.74 | 1.51 | |
通算:2年 | 36 | 4 | 16 | 0 | 2 | .200 | 204.0 | 907 | 233 | 19 | 149 | 68 | 8 | 110 | 100 | 10 | 2 | 4.41 | 1.48 |
7.3. 記録
- 初登板:2012年10月3日、対横浜DeNAベイスターズ24回戦(横浜スタジアム)、6回裏に2番手として救援登板、2/3を1失点4四球
8. その他の情報
8.1. 背番号
- 119 (2012年 - 2012年7月29日)
- 91 (2012年7月30日 - 2015年)
- 025 (2016年 - 同年3月27日)
- 95 (2016年3月28日 - 同年終了)
- 66 (2017年 - 2018年)
8.2. 登録名
- ウーゴ (2012年、2016年 - 2018年)
- 金伏 ウーゴ(かなぶし ウーゴ、2013年 - 2015年)