1. 概要
雪妃真矢(ゆきひ まや、1月9日生まれ)は、日本のプロレスラーである。愛知県名古屋市に生まれ、千葉県出身。現在はフリーランスとして活動している。身長は164 cm、体重は55 kg、血液型はA型。
彼女は、アイスリボンにおいてICE×∞王座に2度、インターナショナル・リボンタッグ王座に4度、トライアングルリボン王座に1度輝き、同団体史上4人目のトリプルクラウン達成者となった。また、OZアカデミーでもOZアカデミー認定無差別級王座を2度、OZアカデミー認定タッグ王座を2度獲得している。さらに、全日本プロレスやDDTプロレスリング、暗黒プロレス組織666、TTTプロレスリングといった様々な団体でもタイトルを獲得しており、その多岐にわたる活躍は女子プロレス界において高い評価を得ている。
2. 幼少期と背景
本セクションでは、雪妃真矢の生い立ち、学歴、プロレスデビュー前の経歴について詳述する。
2.1. 生い立ち、学歴、プロレスデビュー前の経歴
雪妃真矢は1月9日に愛知県名古屋市で生まれ、千葉県で育った。彼女はフェリス女学院大学英文学科を卒業している。大学卒業後は銀行に勤務していたが、プロレスラーを目指すために、勤めながらプロレスサークルに通っていた。
彼女の語学能力は高く、日本語のほか、英語、韓国語、スペイン語を流暢に話すマルチリンガルである。
3. プロレスキャリア
雪妃真矢のプロレスラーとしてのキャリアは、主にアイスリボンでの活動から始まり、その後フリーランスとして多岐にわたる団体で活躍している。彼女はそのキャリアを通じて、様々なタイトルを獲得し、女子プロレス界において確固たる地位を築き上げた。

3.1. アイスリボン時代 (2014-2021)
雪妃真矢は2014年7月12日に「ユキ(仮)」という練習生としてアイスリボンに紹介された。同年11月24日、横浜リボンV大会で正式に雪妃真矢としてデビュー。デビュー戦ではつくしと組み、宮城もちと中川ともかのタッグと対戦したが、中川の唸れ豪腕で敗れた。この試合は中川にとって7年ぶり最後のアイスリボン参戦となった。同年12月28日の後楽園ホール大会では、パートナーのチェリーから直伝されたスワントーンボムで弓李に勝利し、デビュー約1か月で自力初勝利を飾った。
2015年2月には試合中に中指を骨折し欠場。その後、自宅で足薬指を骨折し復帰が延期されたが、5月4日に復帰。同年11月28日には世羅りさとのタッグを「アジュール・レボリューション」と命名し、以降、継続的なタッグチームとして活動した。
2016年3月12日の後楽園大会から、OZアカデミーの協力を得て7番勝負を開始した。対戦相手には豊田真奈美、尾崎魔弓、ダイナマイト・関西、木村響子、松本浩代、世羅りさ、高橋奈七永といった強豪が名を連ね、最終的に1勝6敗で終えた。特に尾崎魔弓との試合後には、尾崎から正危軍入りの誘いを受け、強くなるために受諾。同年4月9日夜のOZアカデミー横浜大さん橋ホール大会で、正危軍の「雪妃魔矢」としてヒールデビューを果たした。7月18日にはICE×∞王座に初挑戦したが、藤本つかさに敗れた。同年12月29日には「レジェンド女子プロレス~ファイティングガールズ~」に出場し、デビュー曲『Azure skyアズール・スカイ英語』を歌唱した。
2017年1月9日、タッグマッチでアジャ・コングと対戦後、7番勝負で実現しなかったシングルマッチを直訴し、同年1月29日の両国KFC大会でアジャ・コングと対戦するも垂直落下式ブレーンバスターで完敗した。3月26日の後楽園大会では、正危軍の前身である尾崎軍に在籍していた井上貴子とタッグを組み、「新旧正危軍」タッグが実現した。8月27日には、パートナーの世羅りさが持つICE×∞王座に挑戦したが敗れた。同年10月29日、アイスリボン後楽園大会で世羅りさと共にインターナショナル・リボンタッグ王座の第42代王者決定トーナメントに優勝。同日夜のOZアカデミー横浜文化体育館大会では尾崎魔弓と組み、AKINOと小林香萌が持つOZアカデミー認定タッグ王座も獲得し、1日でタッグ2冠を達成した。
2018年7月1日、アジュール・レボリューションはインターナショナル・リボンタッグ王座を失い、245日間の保持と7度の防衛記録を終えた。同年12月9日、ICE×60王座の次期挑戦者決定トーナメントで尾崎妹加を破り優勝。12月31日のRibbonManiaで藤本つかさを破り、ICE×60王座を初戴冠した。
2019年3月17日、アジュール・レボリューションはGEKOKU娘(くるみと尾崎)を破り、インターナショナル・リボンタッグ王座を2度目の獲得。同年5月1日、横浜リボン2019GWI横浜プロレスまつり2019で、藤本つかさとバニー及川を含む3WAYマッチ形式で争われるトライアングルリボン王座を獲得し、アイスリボン史上4人目のトリプルクラウン達成者となった。6月22日、トライアングルリボン王座を藤本つかさに、7月15日にはインターナショナル・リボンタッグ王座をジュリアとテキーラ沙弥のタッグにそれぞれ失った。8月3日には、ICE×60王座を藤本つかさと防衛戦を行ったが、30分時間切れ引き分けとなり、王座は自動的に空位となった。しかし、9月14日に空位となったICE×60王座を巡るトーナメントで世羅りさを破り、2度目のICE×60王座を獲得した。11月23日、アジュール・レボリューションはインターナショナル・リボンタッグ王座をドロップキッカーズ(藤本つかさ、つくし)に失った。
2020年2月24日、ICE×60王座を防衛後、尾崎、ラム会長、山下りなと共に自身のユニット「Rebel X Enemy」を結成した。8月9日、横浜文化体育館の閉館前の最終興行で、鈴季すずにICE×60王座を失い、330日間の2度目の王座期間と6度の防衛記録を終えた。12月31日のRibbonManiaでは、尾崎魔弓と共にフランキーシスターズ(柊くるみと宮城もち)を破り、インターナショナル・リボンタッグ王座を獲得した。
2021年12月1日、雪妃真矢は年内をもってアイスリボンを退団し、今後はフリーランスとして活動するが、アイスリボンへの継続参戦も発表された。

3.2. フリーランス時代 (2022-現在)
アイスリボン退団後、雪妃真矢はフリーランスのプロレスラーとして多岐にわたる団体で活動を展開している。
2022年4月15日には『後楽園ホール60周年還暦祭』に雪妃魔矢として出場。尾崎魔弓、スターライト・キッドと組み、メインイベントの6人タッグマッチで活躍した。同年9月23日には666Vol.120新木場大会で、尾崎妹加と共に3WAYのラダーマッチ形式で行われた666認定きかんしゃ級王座選手権試合に挑戦し、王座を獲得した。
2023年1月22日、横浜アリーナで開催されたプロレスリング・ノアの興行『GREAT MUTA FINAL " BYE-BYE"』に、夏すみれとのタッグで出場。安納サオリ&ジャングル叫女組と対戦した。プロレスリング・ノアのビッグマッチにおいて、特殊な興行を除いて女子選手の参戦がなかった中、初めて試合を行った女子プロレスラーとなった。これ以降もノアで行われるビッグマッチで女子プロレスの試合が組まれる度に、彼女はレギュラー的な形で出場している。
2024年12月6日、左尺骨および左橈骨の骨幹部骨折のため、長期欠場に入ることが発表された。
3.3. リングネームとスタイル
3.3.1. ペルソナとリングネーム
雪妃真矢は、主に2つの異なるリングネームとペルソナを使い分けている。通常のリングネームは「雪妃真矢」で、クールビューティーなイメージで知られる。一方、ヒールユニット「正危軍」に所属する際には「雪妃魔矢」のリングネームを使用し、凶悪なキャラクターを演じる。
「真矢」の「真」の字は元アイスリボンの成宮真希から、「魔矢」の「魔」は尾崎魔弓からそれぞれ拝借している。雪妃魔矢としての活動では、一本鞭を凶器として使用する。この一本鞭は、正危軍に加入する際に引退する西尾美香から継承したものである。
3.3.2. 入場曲
雪妃真矢のそれぞれのリングペルソナには、異なる入場曲が用意されている。
- 雪妃真矢:Crystal snow entrance themeクリスタル・スノー・エントランス・テーマ英語
- 雪妃魔矢:Dark snow entrance themeダーク・スノー・エントランス・テーマ英語
3.3.3. 主要な得意技
雪妃真矢は、そのキャリアを通じて多彩な技を披露しており、特に以下に挙げる技は彼女の代名詞となっている。
; フィニッシュ・ホールド
- 垂直落下式タイガー・ドライバー
- 相手を回転させ切らずに腰をクラッチし、シットダウンしながらマットに突き刺す変形タイガー・ドライバー。2019年5月のジュリアとのICE×∞王座戦で危険な角度となったため、一時封印された。
- スノウトーンボム
- コーナー最上段からダイブし、背筋を伸ばした状態で前方回転しながら落下し、背中から体重を浴びせる技。チェリーの「チェリトーン・ボム」の使用を直訴して伝承された。
- ウィールウィンド
- 首固めから変形のジャックナイフ固めに移行する丸め込み技。「つむじ風」の意味を持つ。
- スノウストーム
- ウィールウィンドの入りから移行する変形十字架固め。
- アイシクル バックトライアングル
- 横三角締めから相手をうつ伏せにし、腕固めに移行して極める関節技。アイシクルは「つらら」の意味。
- 雪の結晶
- フロント・パワースラムの体勢で相手を右肩に担ぎ上げ、両手で相手の二の腕を掴んでリフトアップし、シットダウンと同時に相手を180°前方回転させて背中からマットに叩きつける変形ボム。ランス・アーチャーのブラックアウトと同型。
- TSULALA
- 紫雷美央から継承した「紫閃光」。
- ホワイトアウト
- 両腕と首を極めるジャベ。
; その他の主要技術
- 御神渡り
- ハーフダウン状態の相手に対し、走り込んでから両手で肩を掴んでジャンプし、振り子の形で勢いよく顔面に右膝を叩き込む変形ニー・アタック。技名は冬の寒冷地で湖面に一部盛り上がった氷堤が見られる現象に由来する。雪妃魔矢として活動する際にはフィニッシュ技としても使用される。
- 絡め蹴り
- 回し蹴りで相手を絡めとってからのレッグドロップ。
- ダブルアーム・スープレックス
- チョークスラム
- サーフボードストレッチ
- STO
- トラース・キック
- バズソーキック
- キャプチュード
4. 獲得タイトルと実績
雪妃真矢は、そのプロレスキャリアを通じて数々のタイトルを獲得し、個人賞も受賞している。
団体 | タイトル | 獲得回数 | パートナー(タッグ王座の場合) | 備考 |
---|---|---|---|---|
雪妃真矢 | ||||
アイスリボン | ICE×∞王座 | 2回 | - | 29代、30代 |
インターナショナル・リボンタッグ王座 | 4回 | 世羅りさ (3回)、尾崎魔弓 (1回) | 42代、45代、47代、50代 | |
トライアングルリボン王座 | 1回 | - | 30代 | |
アイスリボン4人目のトリプルクラウン達成者 | 1回 | - | - | |
暗黒プロレス組織666 | 666認定きかんしゃ級王座 | 1回 | 尾崎妹加 | - |
TTTプロレスリング | TTT認定インディー統一6人タッグ王座 | 1回 | バナナ千賀、竹田光珠 | 3代 |
雪妃魔矢 | ||||
OZアカデミー | OZアカデミー認定無差別級王座 | 2回 | - | 26代、27代 |
OZアカデミー認定タッグ王座 | 2回 | 尾崎魔弓 (1)、安納サオリ (1) | 27代、30代 | |
全日本プロレス | 全日本プロレスTV認定6人タッグ王座 | 1回 | 諏訪魔、尾崎魔弓 | 7代 |
DDTプロレスリング | アイアンマンヘビーメタル級王座 | 1回 | - | 1612代 |
; トーナメント
- アイスリボン
- ICE×60王座 次期挑戦者決定トーナメント (2018)
- ICE×60王座決定トーナメント (2019)
- インターナショナル・リボンタッグ王座決定トーナメント (2017) - 世羅りさとのタッグで優勝
; アワード
- アイスリボン 年間表彰 (7回)
- ベストバウト賞 (2019) - 9月14日 vs. 世羅りさ
- ベストバウト賞 (2020) - 8月9日 vs. 鈴季すず
- ベストドレッサー賞 (2016)
- ベストタッグチーム賞 (2017) - 世羅りさとのタッグで受賞
- ハッピーカメラ賞 (2016)
- MVP賞 (2019)
- 新人賞 (2016)
- OZアカデミー ベストウィザード賞 (4回)
- ベストバウト賞 (2017) - 10月29日 尾崎魔弓とのタッグ vs. AKINOと小林香萌
- ベストバウト賞 (2021) - 8月18日 vs. 尾崎魔弓、安納サオリ、桜花由美
- ベストバウト賞 (2024) - 8月18日 vs. 尾崎魔弓
- MVP賞 (2021)
; Pro Wrestling Illustrated
- 2019年 PWI 女子レスラー100人中82位
- 2021年 PWI 女子レスラー150人中105位
5. その他の活動
雪妃真矢はプロレスラーとしての活動以外にも、多岐にわたる分野で活躍している。
5.1. 作品
- 写真集『COLOR OF SNOWカラー・オブ・スノー英語』(2016年11月23日、プリヴェコミュニケーションズ、撮影:野川イサム)
- CD『Azure skyアズール・スカイ英語』(2016年、neoplus)
5.2. メディア出演
- 雑誌**
- 『週刊大衆』(2016年12月12日号、双葉社) - グラビア掲載
- 『週刊プレイボーイ』(2017年24号、集英社)
- 「週プレ グラビアスペシャル増刊SUMMER2017」(2017年8月9日、集英社)
- テレビ**
- 『ザ・ノンフィクション』(2016年10月30日)
- 『Momm!!』(2016年11月14日)
- 『お願いランキング第2部』(2017年2月17日、テレビ朝日)
- ウェブテレビ**
- 『お願いランキング#AbemaTV』(2017年2月17日、AbemaTVスペシャル2) - 美女レスラー対決
- 『セレクト女子~優柔不断な私にドロップキック~』(2019年2月1日配信開始、YouTube、ALPHABOAT) - 悲しみ 役
- 舞台**
- 2.5次元プロレス『夢幻大戦』(2017年11月27日、新宿FACE) - 羅生門エミー 役
- モデル**
- IDOL WRESTLER EXHIBITION アイドル×レスラー展(2018年3月13日 - 25日、銀座・ヴァニラ画廊)
6. 人物
雪妃真矢は、そのマルチリンガル能力だけでなく、多才な趣味や興味を持つ人物として知られている。スポーツ歴はダンスで、小学生時代に社交ダンス、その後はガールズ・ヒップホップを習っていた。また、歌も得意であり、テレビ番組で披露したほか、CDデビューも果たしている。
一時期、ニコニコ動画のアイスリボンchのニコ生「週刊アイスリボン」でMCを務め、ファンとの交流を深めていた。
好きな芸能人としては、宇佐美里香、高橋大輔、羽生結弦を挙げている。
7. 健康と負傷
雪妃真矢はプロレスラーとしてのキャリアにおいて、いくつかの負傷とそれに伴う欠場を経験している。
2015年2月には試合中に中指を骨折し、2月23日に手術を受けた。その後、同年3月21日に復帰が予定されていたが、自宅で足薬指を骨折したため復帰が見送られた。
2024年12月6日には、左尺骨・左橈骨骨幹部骨折という重傷を負い、長期欠場に入ることが発表された。
8. 評価と影響
雪妃真矢は、その高い身体能力と独創的なキャラクター、そして流麗なプロレススタイルで、女子プロレス界に大きな影響を与えてきた。クールビューティーな「雪妃真矢」と、凶悪なヒール「雪妃魔矢」という二つのペルソナを巧みに使い分けることで、幅広いファン層を魅了し、彼女の試合は常に観客の期待を集めてきた。特に「正危軍」での活動は、その一本鞭を使った凶器攻撃や、尾崎魔弓との連携を通じて、ヒールとしての存在感を確立した。
彼女はアイスリボンでトリプルクラウンを達成し、OZアカデミーでも主要タイトルを獲得するなど、トップレスラーとしての実力を証明している。また、プロレスリング・ノアのビッグマッチに初めて女子選手として出場するなど、女子プロレスの新たな扉を開く役割も担った。マルチリンガルとしての能力や、歌やダンスといったリング外での多才な活動も、彼女の魅力を一層際立たせ、プロレスラーとしての枠を超えた活躍を見せている。雪妃真矢は、技術、キャラクター、そして実績の全てにおいて、現代女子プロレスシーンを代表する選手の一人として高く評価されている。