1. 概要
風張蓮(かざはり れん、1993年2月26日 - )は、岩手県九戸郡九戸村出身の元プロ野球選手(投手)。右投右打。最速152 km/hのストレートを武器に、東京ヤクルトスワローズ、横浜DeNAベイスターズ、そして米国のアトランティックリーグに所属するワイルドヘルス・ゲノムズでプレーした。九戸村出身者としては初のプロ野球選手であり、女優の松岡亜由美を妻に持つ。プロキャリアを通じて危険球による退場を経験するなどの困難にも直面したが、2018年にはプロ初勝利を挙げるなど、リリーフ投手としてチームに貢献した。
2. 幼少期およびアマチュア時代
風張蓮は幼少期から野球に打ち込み、学生野球で優れた成績を残した。
2.1. 生い立ちと教育
風張は小学3年生の時に地元の野球クラブで野球を始めた。その後、岩手県立伊保内高等学校に進学し、高校を卒業した。高校在学中には甲子園球場での全国大会へ出場することはできなかったものの、3年時にはNPB球団のスカウトから注目を集める存在となった。しかし、この時点ではプロ志望届を提出せず、北海道網走市にキャンパスを擁する東京農業大学生物産業学部へ進学した。
2.2. アマチュア野球経歴
大学では1年春から北海道学生野球連盟の公式戦に登板を開始。リーグ戦では通算16勝3敗、防御率1.69という好成績を記録した。特に2・3年時には大学日本代表候補に選出され、将来を嘱望された。4年秋のリーグ戦では5勝を挙げ、リーグ最優秀投手とベストナインを受賞。チームは明治神宮野球大会に出場したが、風張自身は1回戦で1回を投げて降板。しかし、同期の玉井大翔や1年下の井口和朋らの活躍もあり、チームは準々決勝まで駒を進めた。
3. プロ野球経歴
風張蓮のプロ野球選手としてのキャリアは、東京ヤクルトスワローズでの入団から始まり、横浜DeNAベイスターズを経て、米国の独立リーグでの挑戦に至るまで、様々な経験を積んだ。
3.1. 東京ヤクルトスワローズ時代
2014年のNPBドラフト会議で、東京ヤクルトスワローズから2位指名を受け、契約金7000.00 万 JPY、年俸1200.00 万 JPY(金額は推定)という条件で入団した。背番号は32。九戸村出身者としては初めてのプロ野球選手となった。担当スカウトは八重樫幸雄が務めた。
- 2015年**は、3月29日のイースタン・リーグ対北海道日本ハムファイターズ戦(ヤクルト戸田球場)で先発投手として公式戦デビュー。初回に一死を取ったものの、11球目に危険球宣告を受け退場となった。同年5月3日には、対広島東洋カープ戦(明治神宮野球場)で先発投手として一軍の公式戦にもデビュー。先頭打者の田中広輔を凡退させたが、続く2番打者の菊池涼介の頭部への死球となり、8球目で危険球宣告を受け退場処分となった。NPB一軍公式戦への初登板で危険球による退場を宣告された投手は史上3人目であったが、先発登板での宣告および、二軍公式戦への初登板でも宣告された事例は史上初めてであった。また、対戦打者数としては最速の2人目で退場となった。一軍公式戦への登板機会はこの試合だけだったが、6月29日に神宮球場で開催された「侍ジャパン大学日本代表 対 NPB選抜」には、NPB選抜の8番手投手として登板した。イースタン・リーグ公式戦では、通算12試合に登板し、1勝6敗、防御率5.02という成績を残した。
- 2016年**は、一軍公式戦で8試合に救援登板したが、勝敗は付かず、防御率は8.10であった。イースタン・リーグ公式戦では、通算41試合に登板し、3勝4敗3セーブ、防御率3.42を記録した。また、シーズン中の8月8日に女優の松岡亜由美と結婚した。
- 2017年**は、一軍で3試合に登板し、防御率6.75の成績に終わった。オフに背番号を64に変更した。
- 2018年**は、4月3日に一軍に昇格した。4月7日の対読売ジャイアンツ戦では、先発の石川雅規が崩れた後、4回から登板。2回無失点と好投し、チームが逆転した結果、プロ初勝利を挙げた。この試合での結果が評価され、シーズンを通して登板機会が増加。シーズン中盤に一度登録を抹消されたが、再昇格後はホールドが付く場面での登板も増え、最終的に53試合に登板するなど、飛躍のシーズンとなった。
- 2019年**と**2020年**はいずれも、イースタン・リーグでは防御率1点台と結果を残しながらも、一軍では打ち込まれる試合が続き、2年続けて10試合あまりの登板で防御率7点台に終わった。2020年11月2日、球団から戦力外通告を受けたことが発表された。この結果、2014年のドラフト会議でスワローズから指名された8選手(うち育成指名1選手)全員が、わずか6シーズンの間に退団することとなった。同年12月7日には神宮球場で行われた12球団合同トライアウトに参加。12月の屋外球場という厳しい条件の中、参加全投手の中で最速となる149 km/hを記録するとともに、打者3人を三振、一邪飛、三振に抑える好結果を残した。
3.2. 横浜DeNAベイスターズ時代
2020年12月10日、横浜DeNAベイスターズとの契約に合意したことが発表された。推定年俸は1200.00 万 JPYで、背番号はヤクルト時代と同じ64に決まった。
- 2021年**7月10日、イースタン・リーグの対千葉ロッテマリーンズ戦(野手が足りないため、DHを使わず投手も打順に入った)において、3回裏の打席で二塁打を放った。一軍では5試合に登板し、防御率7.71を記録した。同年10月5日に、2年連続となる戦力外通告を受けた。
3.3. 独立リーグ時代
2021年12月8日にメットライフドームで行われた12球団合同トライアウトに2年連続で参加。打者3人を一ゴロ・遊ゴロ・四球に抑えた。NPBからは声がかからなかったが、ルートインBCリーグ・茨城アストロプラネッツGMの色川冬馬が企画・運営するアリゾナ・スカウティング・リーグ(ASL)に参加。日米各リーグのスカウトを前に紅白戦形式のトライアウトに臨み、3試合計4回で3失点、6奪三振、最速92マイル(約148 km/h)と結果を残した。
- 2022年**2月23日には米独立リーグ・アトランティックリーグのワイルドヘルス・ゲノムズと契約した。ゲノムズでは開幕から4試合(4.2イニング)に登板し、0勝0敗、防御率9.64、5奪三振という成績であった。NPBへのトレード期限となる7月末までにオファーがなかったため、8月1日付でチームを退団し帰国した。
4. 選手としての特徴
風張蓮の最大の武器は、最速152 km/hを計測する力強いストレートである。この速球に加えて、変化球としては主に鋭く落ちるフォークや横に滑るスライダーなどを投じる。
5. 私生活
風張蓮は、2016年8月8日に女優の松岡亜由美と結婚した。
6. 現役引退
風張蓮は、2022年10月8日に開催されたトークイベントにおいて、現役引退を発表した。
7. 記録と表彰
以下の記録は、風張蓮のプロ野球キャリアにおける主要な「初」の出来事である。
7.1. 初記録
- 投手記録**
- 初登板・初先発登板:2015年5月3日、対広島東洋カープ7回戦(明治神宮野球場)、1/3回無失点
- 初奪三振:2016年4月19日、対阪神タイガース4回戦(阪神甲子園球場)、8回裏に江越大賀から空振り三振
- 初勝利:2018年4月7日、対読売ジャイアンツ2回戦(明治神宮野球場)、4回表に2番手で救援登板、2回無失点
- 初ホールド:2018年6月16日、対北海道日本ハムファイターズ2回戦(札幌ドーム)、6回裏に2番手で救援登板、1回無失点
- その他の記録**
- プロ初登板での危険球退場:2015年5月3日、対広島東洋カープ戦、1回表に5球目を菊池涼介へ頭部死球 ※史上3人目、先発登板では史上初
7.2. 年度別投手成績
年 | 球団 | 登板 | 先発 | 完投 | 完封 | 無四球 | 勝利 | 敗戦 | セーブ | ホールド | 勝率 | 打者 | 投球回 | 被安打 | 被本塁打 | 与四球 | 敬遠 | 与死球 | 奪三振 | 暴投 | ボーク | 失点 | 自責点 | 防御率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2015 | ヤクルト | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 2 | 0.1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.00 | 0.00 |
2016 | ヤクルト | 6 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 53 | 10.0 | 18 | 2 | 5 | 0 | 0 | 10 | 0 | 0 | 9 | 9 | 8.10 | 2.30 |
2017 | ヤクルト | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 16 | 4.0 | 3 | 1 | 1 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 3 | 3 | 6.75 | 1.00 |
2018 | ヤクルト | 53 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 4 | 0 | 4 | .333 | 241 | 57.2 | 48 | 11 | 22 | 0 | 1 | 61 | 4 | 0 | 30 | 28 | 4.37 | 1.21 |
2019 | ヤクルト | 14 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | ---- | 95 | 19.0 | 23 | 5 | 15 | 0 | 2 | 17 | 1 | 0 | 15 | 15 | 7.11 | 2.00 |
2020 | ヤクルト | 11 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 75 | 14.2 | 22 | 2 | 9 | 0 | 1 | 11 | 2 | 0 | 13 | 13 | 7.98 | 2.11 |
2021 | DeNA | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 33 | 7.0 | 12 | 2 | 0 | 0 | 0 | 6 | 0 | 0 | 6 | 6 | 7.71 | 1.71 |
通算:7年 | 93 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | 4 | 0 | 5 | .333 | 515 | 112.2 | 126 | 23 | 52 | 0 | 5 | 108 | 7 | 0 | 76 | 74 | 5.91 | 1.58 |
- 2021年度シーズン終了時
7.3. 年度別守備成績
年度 | 球団 | 試合 | 刺殺 | 補殺 | 失策 | 併殺 | 守備率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2015 | ヤクルト | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- |
2016 | ヤクルト | 6 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1.000 |
2017 | ヤクルト | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1.000 |
2018 | ヤクルト | 53 | 2 | 11 | 0 | 0 | 1.000 |
2019 | ヤクルト | 14 | 3 | 3 | 0 | 0 | 1.000 |
2020 | ヤクルト | 11 | 0 | 5 | 0 | 0 | 1.000 |
2021 | DeNA | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- |
通算 | 93 | 6 | 20 | 0 | 0 | 1.000 |
- 2021年度シーズン終了時
7.4. 背番号
- 32(2015年 - 2017年)
- 64(2018年 - 2021年)
7.5. 登場曲
- 「Calling All Hearts」DJ CassidyDJキャシディ英語(2015年 - 2018年)
- 「The Wizard's Last Rhymes」ラプソディー・オブ・ファイア(2019年 - )