1. 概要

髙橋藍(Ran Takahashiたかはし らん英語)は、日本の男子バレーボール選手であり、アウトサイドヒッターとしてプレーするオリンピック出場経験者である。2001年9月2日に京都府京都市で生まれ、現在、日本のプロバレーボールリーグであるVリーグのサントリーサンバーズ大阪に所属している。また、日本代表の一員としても活躍しており、21世紀生まれの選手として初めて日本代表に選出された。
高校時代には東山高等学校のキャプテンとして春高バレーでチームを優勝に導き、自身も最優秀選手賞(MVP)を受賞した。日本体育大学在学中には、イタリアのトップリーグであるセリエAのパッラヴォーロ・パドヴァ、そしてヴェロ・バレー・モンツァでプレーし、国際的な経験を積んだ。日本代表としては、東京2020オリンピックとパリ2024オリンピックに出場したほか、バレーボールネーションズリーグやバレーボールアジア選手権などの国際大会で数々のメダルを獲得している。
2. 生い立ちと家族
2.1. 出生と家族構成
髙橋藍は2001年9月2日に京都府京都市で生まれた。彼の家族はバレーボールに深く関わっている。2歳年上の兄・髙橋塁と、妹の莉々がいる。兄の塁もバレーボール選手であり、日本大学卒業後にはVリーグのサントリーサンバーズ大阪に入団している。妹の莉々もバレーボールをプレーしている。
高橋のルーツは多文化にわたる。母親は日本人とアメリカ人のハーフであり、母方の祖父がアメリカ人であるため、藍自身は日米のクォーターである。さらに、母親の血筋にはイギリスとドイツの要素も含まれていることが明かされている。彼の名前「藍」は、野球好きの父親が「ホームラン」からインスピレーションを得て名付けたものである。
2.2. 幼少期とバレーボールへの入門
高橋藍は小学2年生の時、2歳年上の兄・塁が所属していた小学生バレーボールチームに入り、バレーボールを始めた。この経験が彼のバレーボールキャリアの出発点となった。
京都市立の中学校に進学した頃、彼の身長は158 cmと高くなく、中学1年生の時はリベロとしてプレーしていた。当時、兄の塁がエースを務め、チームは全国大会に出場した。兄が引退した後は、藍自身がアタッカーとして全国大会に出場するようになった。
3. 経歴
3.1. 高校時代
高橋藍は兄の塁と同じ東山高等学校に進学した。高校でも1年生の時に兄とチームメイトとなり、エースの対角を組んでプレーした。しかし、1学年上の大塚達宣が所属する洛南高等学校の壁に阻まれ、1年生と2年生の時には春高バレーに出場することができなかった。洛南高等学校はこの2年間で春高バレーで準優勝(2018年)と優勝(2019年)を達成している。
2019年度、3年生になった高橋はチームのキャプテンに就任した。この年、東山高等学校は念願の春高バレー出場を果たし、2020年1月には見事優勝を飾った。高橋自身もこの大会で最優秀選手賞(MVP)を受賞し、高校バレーボール界のトップ選手としての地位を確立した。また、この時期には「インターハイ」でチームをベスト4に導き、「国民体育大会」でも優勝を果たしている。
3.2. 大学時代
高校での輝かしい活躍の後、高橋藍は2020年4月に日本体育大学に進学し、大学バレーボールでもその才能を発揮した。大学では兄の塁が日本大学に進学したため、兄弟は別々のチームでプレーすることになったが、大学リーグ戦では兄弟対決も実現した。
大学1年生からレギュラーとして出場し、全日本インカレではチームを準優勝に導き、自身もベストスコアラー賞を獲得した。2021年には関東大学男子1部バレーボールリーグでチームを優勝に導き、早稲田大学をストレートで破った。しかし、同年の全日本インカレでは準々決勝で順天堂大学に敗れ、準決勝進出はならなかった。
2024年3月には日本体育大学を卒業した。リーグ戦期間中であったため卒業式には欠席したが、ビデオメッセージを寄せた。同年5月17日には、学長の石井隆憲から学位記を、理事長の松浪健四郎から理事長賞を授与された。
3.3. 日本代表での経歴
高橋藍は、アンダーカテゴリーでの経験がないにもかかわらず、高校3年生の時である2020年2月に日本代表登録メンバーに選出された。これは21世紀生まれの選手としては初めての快挙であり、東京オリンピックを控えた時期での選出であった。しかし、2020年度はコロナ禍により国際大会が軒並み中止となり、東京オリンピックも1年延期となった。
2021年も日本代表に選出され、5月に行われた国際親善試合「東京チャレンジ2021」の2日目の試合ではチームトップの19得点を挙げる活躍を見せた。その後、イタリアのリミニで開催されたネーションズリーグ2021では、ほとんどの試合でスタメンとして出場し、5月29日のオランダ戦では26得点を記録し、その日のベストスコアラーに選ばれた。そして、2020年東京オリンピックに日本代表の最年少メンバーとして出場した。
オリンピック後、千葉市と船橋市で開催されたアジア選手権にも出場し、チームの準優勝に貢献した。
その後も日本代表として国際舞台で活躍を続け、2022年世界選手権、2022年ネーションズリーグに出場。2023年ネーションズリーグではチームの銅メダル獲得に貢献し、2023年アジア選手権ではチームの金メダル獲得に貢献した。また、2023年ワールドカップでは銀メダルを獲得。2024年ネーションズリーグでは銀メダルを獲得した。
2024年パリオリンピックでは2度目のオリンピック出場を果たし、日本代表は準々決勝に進出したが、イタリアに敗れた。
3.4. プロクラブでの経歴
大学在学中から、高橋藍は海外のプロリーグでの挑戦を開始した。
2021年11月、全日本インカレ終了後に、イタリアのセリエAに所属するパッラヴォーロ・パドヴァに2021-22シーズン終了までの期限付きで入団することが発表された。同年12月にイタリアに渡り、背番号は石川祐希がパドヴァでプレーしていた時と同じ14番を選んだ。12月19日にはモデナ・バレー戦で途中出場し、セリエAデビューを果たした。2022年5月には、2022-23シーズンも引き続きパドヴァと契約を更新し、プレーを続けることになった。このシーズンでは、ヴァルサ・グループ・モデナ戦で自身初のリーグ戦MVPに選出された。
2023年6月、イタリア・セリエAのヴェロ・バレー・モンツァとの契約を発表し、2023-24シーズンから同クラブでプレーすることになった。モンツァでは、コッパ・イタリア、CEVチャレンジカップ、そしてイタリア・スーパーレガの全てで準優勝という成績を収めた。
2024年5月には、同年7月から日本のVリーグに所属するサントリーサンバーズ大阪と契約することを発表した。これにより、高校1年生以来となる兄・塁とのチームメイト復帰が実現した。5月28日にはGMの栗原圭介同席のもと入団記者会見が行われ、背番号はイタリア時代と同じ12番に決定した。サントリーサンバーズ大阪では、2024年天皇杯で優勝を果たした。2025年1月22日には、サントリーとの2025-26シーズンの契約更新が発表された。
4. プレースタイルと特徴
高橋藍は、その多彩なプレースタイルと高い技術で知られている。身長は188 cm、体重は84 kgである。スパイクの最高到達点は350 cm、ブロックの最高到達点は325 cmを誇り、アウトサイドヒッターとして高い攻撃力を有する。
彼のプレーの大きな特徴は、小中学校時代に経験したリベロの経験が活かされている点である。この経験により、レシーブやディグといった守備面でも高い能力を発揮し、チームの安定に貢献している。日本代表のキャプテンである石川祐希や、当時の中垣内祐一監督からも、その守備力と総合的なプレーの完成度の高さが評価されている。
5. 私生活
高橋藍は、バレーボール選手としての活動に加え、私生活においても多方面で注目を集めている。
彼はInstagramアカウントを所有しており、200万人以上のフォロワーを抱えるなど、ソーシャルメディア上で非常に高い人気を誇る。また、兄の塁と共に「RanRui」という名前のYouTubeチャンネルとTikTokチャンネルを運営しており、兄弟の日常やバレーボールに関するコンテンツを発信している。
2022年8月22日には、自身のキャリアを振り返る初の写真集『髙橋藍ファースト写真集 RAN 二十歳の肖像』を発売した。
6. 受賞歴
6.1. 個人賞
- 2020年全日本バレーボール高等学校選手権大会 - 最優秀選手賞(MVP)
- 2020年全日本バレーボール大学男子選手権大会 - ベストスコアラー賞
- 2023年バレーボール男子アジア選手権 - ベストアウトサイドスパイカー賞
- 2023年anan AWARD - アスリート部門
- 2023/2024シーズン・スーパーレガ - ベストレシーバー賞
- 2024年天皇杯全日本バレーボール選手権大会 - 最優秀選手賞(MVP)
6.2. チームでの受賞歴
- 高校**
- 2020年全日本バレーボール高等学校選手権大会 -
優勝カップ 優勝(東山高等学校)
- 2020年全日本バレーボール高等学校選手権大会 -
- 大学**
- 2020年全日本バレーボール大学男子選手権大会 -
銀メダル 準優勝(日本体育大学)
- 2021年関東大学男子1部リーグ -
優勝カップ 優勝(日本体育大学)
- 2020年全日本バレーボール大学男子選手権大会 -
- 日本代表**
- 2021年バレーボール男子アジア選手権 -
銀メダル 準優勝
- 2023年バレーボールネーションズリーグ -
銅メダル 3位
- 2023年バレーボール男子アジア選手権 -
優勝カップ 優勝
- 2023年ワールドカップバレーボール -
銀メダル 準優勝
- 2024年バレーボールネーションズリーグ -
銀メダル 準優勝
- 2021年バレーボール男子アジア選手権 -
- プロクラブ**
- ヴェロ・バレー・モンツァ**
- 2023/24 コッパ・イタリア -
銀メダル 準優勝
- 2023/24 CEVチャレンジカップ -
銀メダル 準優勝
- 2023/24 イタリア・スーパーレガ -
銀メダル 準優勝
- 2023/24 コッパ・イタリア -
- サントリーサンバーズ大阪**
- 2024年天皇杯全日本バレーボール選手権大会 -
金メダル 優勝
- 2024年天皇杯全日本バレーボール選手権大会 -
- ヴェロ・バレー・モンツァ**
7. アンバサダー活動
高橋藍は、その人気と影響力を活かし、複数のブランドのアンバサダーを務めている。
フランスの高級ファッションブランドであるDior、日本の化粧品ブランドであるコーセー、そしてフィリピンの電子機器会社であるAkariのアンバサダーとして活動している。また、2025年大阪・関西万博のスペシャルサポーターにも就任することが発表されている。
8. 影響力と評価
高橋藍は、そのコート内外での活躍により、日本国内に留まらず海外でも非常に高い人気を誇り、多くのファンを持つ。彼のプレーはメディアでも頻繁に取り上げられ、特にスポーツアニメ『ハイキュー!!』を彷彿とさせるような華麗な動きは、Twitterなどのソーシャルメディアで話題となり、世界中で注目を集めた。
彼は日本バレーボール界における次世代のエースとして大きな期待を寄せられており、その活躍は若年層のバレーボールファン獲得にも貢献している。
9. 関連情報
高橋藍は、バレーボール選手としての活動以外にもメディアに登場している。
2024年5月19日には、毎日放送のドキュメンタリー番組『情熱大陸』に出演し、その素顔や競技への情熱が紹介された。