カタリナ・ヴィット

2.2.1. 1984年サラエボオリンピック

1984年、ヴィットは東ドイツの新聞『ユンゲ・ヴェルト』の読者によって「東ドイツ年間最優秀女性アスリート」に選出された。1984年サラエボオリンピックでは、コンパルソリーフィギュアを3位で通過し、ショートプログラムで暫定1位に浮上した。当時の世界チャンピオンであるアメリカのロザリン・サムナーズはコンパルソリーフィギュアで1位だったが、ショートプログラムで両足着氷のミスを犯し、ショート単独では5位に後退した。フリースケーティングは総得点の50パーセントを占める重要な局面であり、ヴィットとサムナーズはトップ2の座を争うことになった。ヴィットはフリースケーティングで3つの3回転ジャンプを成功させ、最終的に審判1人の採点で0.1点差という僅差でサムナーズを破り、金メダルを獲得した。ヴィットは18歳77日で金メダリストとなり、フィギュアスケートのオリンピックチャンピオンとしては最年少の一人となった。この後、彼女は1984年世界フィギュアスケート選手権でも3つのフェーズ全てで勝利し、圧倒的な強さで初のワールドタイトルを獲得した。

2.2.2. 「カルメン対決」と1988年カルガリーオリンピック

ヴィットは1985年世界フィギュアスケート選手権で世界タイトルを防衛した。この大会では、3つのフェーズ全てで堅実な演技を見せ、コンパルソリーフィギュアでは2人の主要なライバルであるキーラ・イワノワとティファニー・チンに次ぐ3位だった。しかし、ショートプログラムではイワノワとチンの完璧な演技を上回り、説得力のある勝利を収めた。フリースケーティングでは、イワノワが難しい3回転ループジャンプを含む完璧な3回転ジャンプ3回を成功させ、金メダルに迫る強い演技を見せたが、ヴィットは4つの3回転ジャンプでこれに打ち勝った。ヴィットの優雅な芸術性はイワノワを凌駕し、フリースケーティングと総合の両方で6対3の審判支持を得た。チンにはフリースケーティングと大会全体で優勝する余地が残されていたが、残念ながらダブルアクセルで転倒し、3回転サルコウも未完成に終わり、銅メダルに終わった。

ヴィットの長きにわたる金メダル支配は、翌年の1986年世界フィギュアスケート選手権でアメリカのデビ・トーマスに破れ、初の敗北を喫したことで一時的に中断された。この大会では、トーマスと同じ内容のフリースケーティングで、芸術点で2つの6.0を記録し、フリースケーティング自体はトーマスに勝利したものの、ショートプログラムでコンビネーションジャンプのミスにより4位に終わり、金メダルを逃した。これは、1980年以来、世界選手権のショートプログラムで初めて首位を逃したことであった。この敗北に奮起したヴィットは、タイトル奪還とカルガリーオリンピックへの出場を誓った。

1987年、ヴィットは1987年世界フィギュアスケート選手権で3度目の世界タイトルを獲得した。コンパルソリーフィギュアでは5位に終わったものの、トーマスがショートプログラムで2回転アクセルで軽く手をつくミスを犯し7位に後退したため、両者のフリースケーティングでの対決は互角の状況となった。実際、フリースケーティングではキーラ・イワノワ、ヴィット、トーマス、エリザベス・マンリー、キャリン・カダビーの5人のスケーターが金メダル獲得の有力候補であった。最後に演技し、カダビーとトーマスが素晴らしい演技を披露した後という極度のプレッシャーの中で、ヴィットは3回転ループジャンプを含む5つの3回転ジャンプを成功させ、勝利を手にした。トーマスは3回転ループの試みを両足着氷し、カダビーは2つの3回転ループを成功させたものの、いくつかの3回転または2回転アクセルの試みを失敗していた。多くの有力選手が素晴らしい演技を見せた夜であったが、ヴィットは技術点と芸術点の両方で最高の評価を得て、9人の審判のうち7人から1位に評価され、観客から喝采を浴びながら世界タイトルを奪還した。

1988年、ヴィットは6年連続となる欧州選手権優勝を飾り、女子シングルにおけるソニア・ヘニーの欧州選手権最多優勝記録に並んだ。ヴィットとヘニーの欧州選手権タイトル数は後にイリーナ・スルツカヤに抜かれるが、ヴィットはヘニーと共に連続欧州選手権優勝記録を保持している。

1988年カルガリーオリンピックでは、ヴィットとデビ・トーマスの両者が優勝候補として注目された。両者がフリースケーティングでジョルジュ・ビゼーのオペラ『カルメン』の音楽を選んでいたことから、彼女たちのライバル関係は「カルメン対決」として知られるようになった。

規定とショートプログラムを終えた時点で、ヴィットとトーマスがトップ2の座を占めていた。ヴィットは規定でイワノワとトーマスに次ぐ3位だったが、ショートプログラムでトーマスを抑えて1位となり、トーマスは2位だった。フリースケーティングでは、ヴィットは4つの3回転ジャンプを成功させたが、計画していた3回転ループジャンプを2回転ループにダウングレードした。これにより、トーマスにフリースケーティングで勝利する余地が残されたが、トーマスは計画していた5つの3回転ジャンプのうち3つを失敗してしまった。

フリースケーティングではカナダのエリザベス・マンリーがヴィットを圧倒的に上回る演技を見せ(審判9人中7人がマンリーに1位票)、フリースケーティング単独で1位となった。しかし、ヴィットは規定とショートプログラムでマンリーより上位だったため、総合得点でオリンピックタイトルを防衛した(総合順位点：ヴィット4.2、マンリー4.6、トーマス6.0)。これにより、ヴィットはフィギュアスケート史上、ソニア・ヘニーに次いで2人目となるオリンピックタイトル連覇を達成した女子選手となった。

もしマンリーがショートプログラムでトーマスにわずかに2位を奪われなかったら、あるいはヴィットがフリースケーティングで伊藤みどりに対し僅差で2位を維持できなかったら(6対3の採点だったため)、マンリーが総合金メダルでヴィットを破っていた可能性もあった。ヴィットのカルガリーでの勝利を称え、北朝鮮はヴィットの3枚の大きな写真が描かれた小型シートを発行した。『タイム誌』は彼女を「社会主義の最も美しい顔」と評した。

1988年のブダペストで開催された世界フィギュアスケート選手権で、ヴィットはアマチュアキャリアを締めくくる4度目の世界タイトルを獲得した。この大会でのフリースケーティングは、計画していた3回転ループと3回転サルコウを失敗するなど、オリンピックでの演技に比べてやや精彩を欠いていた。しかし、他のトップ選手たちもカルガリーオリンピック後の疲労からか、ほとんどが不調であったため、ヴィットは規定での勝利(世界選手権またはオリンピックで規定を制したのは1984年世界選手権以来2度目)、ショートプログラムでのデビ・トーマスに次ぐ2位、そしてフリースケーティングでの勝利により金メダルを獲得した。彼女のライバルの一人である銀メダリストのエリザベス・マンリーは、この大会での審判の判定や、マンリーのショートプログラムの音楽が適切に再生されなかったことなど、疑わしい不正行為があったと後に不満を述べている。