1. 概要
ダビト・バルフェット・イ・ボフィル(David Barrufet i Bofillカタルーニャ語、1970年6月4日 - )は、スペイン・バルセロナ出身の元ハンドボール選手(ゴールキーパー)であり、現在は指導者・役員として活動している。彼はキャリアの全てをFCバルセロナで過ごし、その卓越した技術と長年の貢献により、史上最高のゴールキーパーの一人と広く評価されている。
バルフェットは1988年にFCバルセロナのプロチームでデビューし、引退する2010年までの22年間、同クラブ一筋でプレーした。この間、彼はEHFチャンピオンズリーグ7回、リーガASOBAL11回など、70以上のクラブタイトルを獲得した。個人としても、2001年と2002年には国際ハンドボール連盟(IHF)によって世界最優秀ゴールキーパーに選出され、2001年の世界年間最優秀選手投票では2位に輝いた。
スペイン代表としては1990年から2009年までプレーし、通算280試合に出場した。これはかつてスペイン代表の最多出場記録であったが、後にアルベルト・エントレリオスによって更新された。国際大会では、2005年の世界男子ハンドボール選手権大会での金メダル、2000年シドニーオリンピックと2008年北京オリンピックでの銅メダル、そして複数の欧州選手権でのメダル獲得に貢献した。引退後もFCバルセロナのマネージャーやスペイン代表のスタッフ、CSディナモ・ブカレストのスポーツディレクターを務めるなど、ハンドボール界に深く関わり続けている。
2. 選手としてのキャリア
ダビト・バルフェットは、プロハンドボール選手として輝かしいキャリアを築き、その全てをFCバルセロナで過ごした。
2.1. FCバルセロナでのキャリア
バルフェットは、FCバルセロナのハンドボール部門において、その歴史上最も象徴的な選手の一人として記憶されている。
2.1.1. クラブキャリアと主な功績
バルフェットは8歳でバルセロナのSAFAオルタ学校でハンドボールを始め、6年後の14歳でFCバルセロナのユースカテゴリーに加入した。1988年、18歳でプロチームに昇格して以来、2009-2010シーズン終了をもって引退するまでの22年間、一貫してFCバルセロナに在籍し続けた。この期間に、彼はクラブ史上最多となる70以上のタイトルを獲得した。
主な獲得タイトルは以下の通りである。
- EHFチャンピオンズリーグ: 7回 (1990-1991, 1995-1996, 1996-1997, 1997-1998, 1998-1999, 1999-2000, 2004-2005)
- EHFカップウィナーズカップ: 2回 (1993-1994, 1994-1995)
- EHFカップ: 1回 (2002-2003)
- 欧州スーパーカップ: 5回 (1996-1997, 1997-1998, 1998-1999, 1999-2000, 2003-2004)
- リーガASOBAL: 11回 (1988-1989, 1989-1990, 1990-1991, 1991-1992, 1995-1996, 1996-1997, 1997-1998, 1998-1999, 1999-2000, 2002-2003, 2005-2006)
- コパ・デル・レイ: 8回 (1989-1990, 1992-1993, 1993-1994, 1996-1997, 1997-1998, 1999-2000, 2003-2004, 2006-2007)
- スペイン・スーパーカップ: 11回 (1988-1989, 1989-1990, 1990-1991, 1991-1992, 1993-1994, 1996-1997, 1997-1998, 1999-2000, 2000-2001, 2003-2004, 2006-2007)
- ASOBALカップ: 6回 (1994-1995, 1995-1996, 1999-2000, 2000-2001, 2001-2002, 2009-2010)
- ピレネーリーグ: 8回 (1997-1998, 1998-1999, 1999-2000, 2000-2001, 2001-2002, 2003-2004, 2005-2006, 2006-2007)
- カタルーニャリーグ: 6回 (1990-1991, 1991-1992, 1992-1993, 1993-1994, 1994-1995, 1996-1997)
2.1.2. 個人タイトルと評価
バルフェットは、そのキャリアを通じて数々の個人栄誉に輝き、ハンドボール史上最高のゴールキーパーの一人としての地位を確立した。2000-2001シーズンと2001-2002シーズンには、国際ハンドボール連盟(IHF)によって世界最優秀ゴールキーパーに選出された。また、2001年の世界年間最優秀選手投票では2位にランクインするなど、その卓越した技能は国際的に高く評価された。彼のプレーは、安定したセービング能力と、試合の流れを読む戦術眼に裏打ちされており、チームの勝利に不可欠な存在であった。
2.2. スペイン代表でのキャリア
バルフェットはスペイン代表チームでも長きにわたり活躍し、国際舞台で多くの成功を収めた。
2.2.1. 代表経歴
ダビト・バルフェットは1990年にスペイン代表にデビューし、2009年までの間に通算280試合に出場した。これは、かつてスペイン代表の最多出場記録であったが、後にアルベルト・エントレリオスによって更新された。彼は2008年北京オリンピック後に一度代表を引退することを表明したが、当時の代表監督であったバレロ・リベラの説得により、代表に復帰し、その後もチームに貢献した。
2.2.2. 国際大会での成績
バルフェットはスペイン代表として、以下の主要な国際大会でメダルを獲得した。
- 世界選手権
- 金メダル: 2005年 チュニジア大会
- オリンピック
- 銅メダル: 2000年 シドニー大会
- 銅メダル: 2008年 北京大会
- 欧州選手権
- 銀メダル: 1996年 スペイン大会
- 銀メダル: 1998年 イタリア大会
- 銀メダル: 2006年 スイス大会
- 銅メダル: 2000年 クロアチア大会
- 地中海ゲーム
- 金メダル: 1993年 ラングドック=ルシヨン大会
3. 指導者・役員としてのキャリア
選手生活を引退した後も、ダビト・バルフェットはハンドボール界に貢献し続けている。
3.1. FCバルセロナ マネージャー
2015年10月から2020-2021シーズン終了まで、バルフェットはFCバルセロナのハンドボール部門でマネージャーを務めた。この期間、彼はクラブの運営とチームの強化に尽力し、選手時代に培った経験と知識をクラブの発展のために活用した。
3.2. スペイン代表スタッフ
2021年9月には、スペイン代表チームのスタッフの一員として加わった。この役割を通じて、彼は若手選手の育成やチーム全体のパフォーマンス向上に貢献している。
3.3. CSディナモ・ブカレスト スポーツディレクター
2022年2月、バルフェットはルーマニアのクラブであるCSディナモ・ブカレストのスポーツディレクターに就任した。この職務では、クラブのスポーツ戦略の立案と実行、選手の獲得や育成など、幅広い業務を担当している。
4. 私生活
ダビト・バルフェットには息子がおり、イアン・バルフェットもまたハンドボール選手として活躍している。イアンはウィングのポジションでプレーしており、父の足跡を追ってハンドボールの道を歩んでいる。
5. 評価と遺産
ダビト・バルフェットは、その長きにわたる輝かしいキャリアと数々の功績により、ハンドボール界に不朽の遺産を残した。
5.1. 現役時代の評価
バルフェットは、その現役時代を通じて、ハンドボール史上最高のゴールキーパーの一人として広く認識されていた。彼のプレースタイルは、類まれな反射神経と、相手のシュートコースを正確に読む洞察力に特徴づけられた。特に、重要な局面での決定的なセービングは、数え切れないほどの試合でチームを勝利に導いた。彼は、ゴールキーパーというポジションにおいて、単なるシュートストッパーに留まらず、チームの守備を統率し、時には攻撃の起点となる戦術的な役割も果たした。国際ハンドボール連盟による世界最優秀ゴールキーパーの複数回選出や、世界年間最優秀選手投票での高順位は、彼の技術と影響力が世界レベルで認められていた証である。
5.2. 引退と記念
2010年2月8日、バルフェットは2009-2010シーズン終了をもって現役を引退することを発表した。彼の長年の貢献と偉業を称え、FCバルセロナは彼の背番号「16」を永久欠番とすることを決定した。これは、クラブが選手に与える最高の栄誉の一つであり、バルフェットがFCバルセロナの歴史においていかに重要な存在であったかを物語っている。彼の引退はハンドボール界にとって一つの時代の終わりを告げるものであったが、その功績と伝説は、後世の選手たちに大きな影響を与え続けている。