1. 概要
ファブリシオ・アゴスト・ラミレス、通称ファブリは、1987年12月31日にスペインのカナリア諸島、ラス・パルマス・デ・グラン・カナリアで生まれた。主にゴールキーパーとして活躍し、スペインのラ・リーガで6シーズンにわたり計56試合に出場した。そのキャリアの中で、デポルティーボ・ラ・コルーニャ(2度の在籍)、レアル・バリャドリード、レアル・ベティス、RCDマヨルカといったクラブでプレーした。また、トルコとイングランドでもプロとして活動し、ベシクタシュJKでは2016-17シーズンにスュペル・リグの優勝を経験している。スペインのU-20代表としての出場経験も持つが、後にウルグアイ代表入りを希望するなど、その国際的なキャリアに関する意向も注目された。彼のプロとしての側面は、安定したパフォーマンスだけでなく、特定の試合における感情的な反応や監督との確執といった論争の対象となる出来事も含んでいる。
2. 生い立ちとユース経歴
ファブリは、スペインのカナリア諸島に位置するラス・パルマス・デ・グラン・カナリアで誕生した。サッカーのキャリアは、2003年から2年間、地元のベシンダリオでユース時代を過ごすことから始まった。この時期は彼がプロサッカー選手としての基礎を築く上で重要な期間となった。2005年にはデポルティーボ・ラ・コルーニャのユースアカデミーに入団し、その育成プログラムの中で才能を磨いた。デポルティーボでは約18歳まで集中的なトレーニングを受け、後にプロデビューを果たすための準備を整えた。
3. クラブ経歴
ファブリのプロサッカー選手としてのキャリアは、スペインの複数のクラブで経験を積んだ後、トルコやイングランドへとその活躍の場を広げた。
3.1. スペインでの初期経歴
ファブリはカナリア諸島のラス・パルマスで生まれ、ほぼ18歳で地元のUDベシンダリオから移籍し、デポルティーボ・ラ・コルーニャでサッカー選手としての育成を完了した。

2006-07シーズンにデポルティーボのBチームであるデポルティーボ・ファブリルでプロデビューを果たし、54試合に出場した。その後、2007-08シーズンにトップチームへ昇格する。この昇格は、当時のチームのGKであったドゥドゥ・アワットとグスタボ・ムヌアが練習中に乱闘騒ぎを起こし、出場停止処分を受けたという異例の状況下で実現した。これにより、ファブリは急遽ファーストチョイスとなり、2008年1月13日のビジャレアルCF戦でラ・リーガデビューを飾ったが、試合は3-4で敗北した。この乱闘に関わった両選手は同月末にはチームに復帰し、ファブリは再びBチームへと戻った。2008年1月には、アーセナルが「スペインで最も輝かしい才能の一人」と称し、ファブリの獲得に関心を示したと報じられた。
2008-09シーズンには、ムヌアとアワットがどちらも構想外とされたため、正式にバックアップGKに昇格し、コパ・デル・レイにも出場した。しかし、アワットがRCDマヨルカへ移籍した後、ムヌアが再びセカンドチョイスに復帰したため、ファブリは再びリザーブチームに戻ることとなった。
2009年7月13日、ファブリはデポルティーボから放出され、同日にレアル・バリャドリードと2+2年契約を結んだ。翌年8月19日には、セグンダ・ディビシオンのレクレアティーボ・ウエルバへ1年間の期限付き移籍をした。レクレアティーボでは2010-11シーズンに40試合に出場するなど、経験を積んだ。
2011-12シーズンにはレアル・ベティスへ移籍し、再びトップリーグでのプレーに戻った。ベティスでの初年度は公式戦17試合に出場し、レアル・サラゴサ戦(アウェイで2-0)、マラガ戦(アウェイで2-0)、オサスナ戦(エスタディオ・ベニート・ビジャマリンで1-0)でクリーンシートを達成するなど、安定したパフォーマンスを見せた。しかし、監督のペペ・メルとの間に確執が生じ、彼はサードチョイスに降格した。最終的に2013年夏にベティスを退団し、再びデポルティーボへと復帰した。
デポルティーボに復帰した2度目の在籍期間では、最初の年である2013-14シーズンはヘルマン・ルクスのバックアップを務めたが、その後は先発の座を勝ち取った。しかし、2015-16シーズンは、過去に経験した脛骨の負傷が再発したため、ほぼ全ての試合を欠場することとなった。2011年にはベティス在籍中に、選手生命を脅かす可能性のある肩の疾患も患っている。
3.2. ベシクタシュJK
2016年7月、ファブリは初めて海外でのプレーを経験するため、トルコのスュペル・リグ王者であるベシクタシュJKと契約した。
UEFAチャンピオンズリーグの2016-17シーズングループステージ、2016年12月6日に行われたFCディナモ・キーウとのアウェイゲームで、ベシクタシュは6-0で大敗した。この試合でファブリは前半に4失点目を喫した後、感情を抑えきれずに涙を流す場面が見られた。
しかし、この困難な経験にもかかわらず、ベシクタシュでの彼のパフォーマンスは安定しており、2016-17シーズンは34試合中わずか2試合を欠場したのみであった。チームはこのシーズンに2年連続、クラブ史上15回目のリーグ優勝を果たし、ファブリもその貢献者の一人としてタイトル獲得に貢献した。
3.3. フラムFCおよびその後の経歴
2018年7月24日、ファブリはプレミアリーグに所属するフラムFCと3年契約(4年目のオプション付き)を締結し、イングランドでの新たな挑戦を開始した。フラムのゴールキーパーコーチであるホセ・サンバデ・カレイラとはデポルティーボ時代にも共に働いており、旧知の仲であった。フラムでのプレミアリーグデビューは、2018年8月11日のクリスタル・パレス戦で、ホームゲームであったが0-2で敗戦を喫した。
2019年9月2日、ファブリは1年間の期限付き移籍でRCDマヨルカに加入し、再びスペインでプレーすることになった。マヨルカでの公式戦出場は4試合にとどまり、バリャドリード戦での唯一のリーグ戦出場では期待されたパフォーマンスを下回った。
ファブリは2023年からはCDヌマンシアに所属している。
4. 代表経歴
ファブリはスペインのユース代表としてプレーした経験を持つ。2007年にはスペインU-20代表として1試合に出場した。
2018年2月には、自身のルーツがウルグアイにあることを公表し、同年開催される2018 FIFAワールドカップでウルグアイ代表としてプレーしたいという意向を表明した。この発言は、彼の国際的なキャリアにおける選択肢と、所属クラブでの活躍が代表選出に繋がり得るという期待を示唆するものであった。
5. 記録
| クラブ | シーズン | リーグ | カップ戦 | その他 | 合計 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ディビジョン | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | ||
| デポルティーボ・ラ・コルーニャ | 2006-07 | ラ・リーガ | 0 | 0 | 0 | 0 | - | 0 | 0 | |
| 2007-08 | ラ・リーガ | 6 | 0 | 0 | 0 | - | 6 | 0 | ||
| 2008-09 | ラ・リーガ | 0 | 0 | 4 | 0 | 2 (UEFAインタートトカップ出場) | 0 | 6 | 0 | |
| 合計 | 6 | 0 | 4 | 0 | 2 | 0 | 12 | 0 | ||
| バリャドリード | 2009-10 | ラ・リーガ | 1 | 0 | 2 | 0 | - | 3 | 0 | |
| レクレアティーボ (loan) | 2010-11 | セグンダ・ディビシオン | 40 | 0 | 1 | 0 | - | 41 | 0 | |
| ベティス | 2011-12 | ラ・リーガ | 15 | 0 | 2 | 0 | - | 17 | 0 | |
| 2012-13 | ラ・リーガ | 2 | 0 | 0 | 0 | - | 2 | 0 | ||
| 合計 | 17 | 0 | 2 | 0 | - | 19 | 0 | |||
| デポルティーボ・ラ・コルーニャ | 2013-14 | セグンダ・ディビシオン | 6 | 0 | 2 | 0 | - | 8 | 0 | |
| 2014-15 | ラ・リーガ | 31 | 0 | 0 | 0 | - | 31 | 0 | ||
| 2015-16 | ラ・リーガ | 0 | 0 | 0 | 0 | - | 0 | 0 | ||
| 合計 | 37 | 0 | 2 | 0 | - | 39 | 0 | |||
| ベシクタシュ | 2016-17 | スュペル・リグ | 32 | 0 | 1 | 0 | 11 (UEFAチャンピオンズリーグとUEFAヨーロッパリーグでの出場を含む) | 0 | 44 | 0 |
| 2017-18 | スュペル・リグ | 34 | 0 | 2 | 0 | 6 (UEFAチャンピオンズリーグでの出場を含む) | 0 | 42 | 0 | |
| 合計 | 66 | 0 | 3 | 0 | 17 | 0 | 86 | 0 | ||
| フラム | 2018-19 | プレミアリーグ | 2 | 0 | 0 | 0 | - | 2 | 0 | |
| マヨルカ (loan) | 2019-20 | ラ・リーガ | 1 | 0 | 0 | 0 | - | 1 | 0 | |
| 通算 | 169 | 0 | 14 | 0 | 19 | 0 | 201 | 0 | ||
6. タイトル
ファブリは、プロキャリアにおいて以下の主要なタイトルを獲得している。
ベシクタシュJK
- スュペル・リグ: 2016-17
7. 評価と論争
ファブリのキャリアには、彼のプロとしての評価に影響を与えた注目すべき出来事や論争がいくつか存在する。
彼のプロデビューは、デポルティーボ・ラ・コルーニャにおいて、当時の正ゴールキーパーであったドゥドゥ・アワットとグスタボ・ムヌアが練習中に激しい乱闘を起こし、出場停止となった異例の状況下で訪れた。これによりファブリは急遽出場機会を得たが、チームの内紛が彼のキャリアの始まりに影を落とした形となった。この事件は、プロサッカークラブにおける選手間の関係性や規律の重要性を浮き彫りにするものであり、ファブリのデビューはそうした社会的な側面と密接に結びついていた。
ベシクタシュJKに所属していた2016年12月6日のUEFAチャンピオンズリーグ、FCディナモ・キーウ戦では、6-0で大敗する中、ファブリは前半だけで4失点を喫した後、ピッチ上で感情を抑えきれずに涙を流す場面が見られた。この様子は広くメディアで報じられ、彼の精神的な強さやプレッシャーへの耐性について様々な議論を呼んだ。一方で、この出来事は、プロアスリートが直面する極限の状況下での感情の表出として、多くの人々に共感を呼ぶ側面も持ち合わせていた。
また、レアル・ベティス在籍時には、当時の監督であるペペ・メルとの間で確執が生じたと報じられ、これが彼のチーム内での序列降格につながった。監督と選手の関係はチームの成績に直結する重要な要素であり、この確執はファブリの出場機会を奪うだけでなく、チーム全体の士気にも影響を与えかねない出来事として注目された。
これらの出来事は、ファブリのプロとしての技術や能力だけでなく、彼の人間性や感情的な側面、そしてチーム内での立ち位置がどのように彼のキャリアに影響を与えたかを示す例として挙げられる。