1. 生い立ちと背景
マリナ・ゴルバハリは1989年3月10日にカブールで生まれた。幼少期、彼女はカブールの路上で物乞いをしながら生活していた。彼女が女優として抜擢されたのは、こうした路上での生活中に、映画監督のシディク・バルマクによって見出されたことがきっかけであった。バルマクは彼女を映画『オサマ』の主役に選んだ。
2. 俳優としてのキャリア
マリナ・ゴルバハリの俳優としてのキャリアは、国際的に評価された作品での主要な役柄から始まった。
2.1. 『オサマ』でのブレイク
彼女が主演した映画『オサマ』は、2003年のゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞し、国際的な映画祭で高い評価を受けた。ゴルバハリの演技は批評家から絶賛され、『The Arizona Republic』のリチャード・ニルセンは「マリナ・ゴルバハリの演技には何ら欠点がない」と評している。彼女のこの役は、アフガニスタンの女性が直面する厳しい現実を世界に伝える上で重要な役割を果たした。
2.2. その他の俳優活動
『オサマ』での成功後も、ゴルバハリは他の映画や演劇活動に参加した。2005年には、シェイクスピアの『恋の骨折り損』のダリー語版がカブールで上演される「シェイクスピア・イン・カブール」プロジェクトに参加し、翌2006年にはアフガニスタン各地で上演された。このプロジェクトの詳細は、2012年に出版されたカイス・アクバル・オマルとスティーヴン・ランドリガンによる書籍『シェイクスピア・イン・カブール』に大きく取り上げられている。彼女はその後も複数の映画に出演している。
3. フィルモグラフィ
マリナ・ゴルバハリが出演した主な映画作品は以下の通り。
年 | 題名 |
---|---|
2003 | 『オサマ』 (Osama) |
2006 | 『ゾリカーの秘密』 (Zolikhah's Secret) |
2008 | 『アヘン戦争』 (Opium War) |
2015 | 『ミナ・ウォーキング』 (Mina Walking) |
4. 受賞歴
マリナ・ゴルバハリは、その演技に対して以下の賞を受賞している。
- 2003年:モロディスト国際映画祭 最優秀若手俳優賞(『オサマ』)
5. 私生活と亡命
マリナ・ゴルバハリの私生活は、アフガニスタンで女性芸術家が直面する固有の困難、特に表現の自由と人権に関する脅威に深く影響されている。
5.1. 結婚
ゴルバハリはヌールッラー・アジジと結婚している。彼もまたアフガニスタンの映画およびテレビ制作業界に関わっており、夫婦で映画産業に従事している。
5.2. 脅威と亡命
2015年、マリナ・ゴルバハリは韓国の映画祭に出席した際、ヒジャブ(頭を覆う布)を着用していない姿が報じられた。この出来事が原因で、彼女はアフガニスタン国内で多数の殺害予告を受けることとなった。保守的な社会規範に反する行動と見なされたことが、彼女と夫を祖国から逃亡せざるを得ない状況に追い込んだ。現在、彼女と夫はフランスの亡命者保護施設で暮らしている。彼女の経験は、表現の自由や女性の人権が抑圧される社会において、特に女性芸術家が直面する厳しい現実と、それに伴う個人的な犠牲を浮き彫りにしている。