1. クラブ経歴
ミッチェル・ニコルスは、オーストラリア国内外の複数のクラブでキャリアを築き、そのプレースタイルと得点能力で評価された。
1.1. ブリスベン・ロアー
ニコルスは、2007年5月11日にパームビーチ・シャークスでの活躍が評価され、ブリスベン・ロアーと2年契約を結んだ。彼はゴールドコースト・プレミアリーグの開幕7試合でミッドフィールダーながら得点ランキング首位に立つなど、その能力を印象づけた。当時のロアーの監督であったフランク・ファリーナは、契約記者会見でニコルスを「将来性のある選手」と評した。
Aリーグでのキャリアは、多くの途中出場から堅実に始まった。2007年10月7日にはU-20オーストラリア代表のトレーニングキャンプに初招集された。2008-09シーズン中盤のパース・グローリー戦でブリスベン・ロアーでの初得点を挙げ、チームは4対1で勝利した。2011-12シーズンにはプレシーズンの期待を上回る活躍を見せ、主にロングシュートから10得点を記録した。このシーズン、彼はチームメイトのトーマス・ブロイッヒやベサルト・ベリーシャと共にAリーグ年間ベストイレブンに選出された。
1.2. メルボルン・ビクトリー
メルボルン・ビクトリーに加入する前には、デンマークのクラブ、ラナースFCでのトライアルに参加した。2013年5月13日、メルボルン・ビクトリーはニコルスがクラブと2年契約を交わしたことを発表した。これにより、彼はブリスベン・ロアー時代の監督であるアンジェ・ポステコグルーと再びタッグを組むこととなった。ニコルスは、2013-14シーズンに向けたポステコグルー監督の最初の新戦力となった。
1.3. セレッソ大阪およびパース・グローリーへの期限付き移籍
2014年1月の移籍期間中、J1リーグのクラブであるセレッソ大阪はニコルス獲得に向けて複数回のオファーを出した。最高額は40.00 万 USDに達したものの、当初メルボルン・ビクトリーはニコルスが移籍に興味を示していたにもかかわらず、そのオファーを固辞していた。しかし、最終的にはニコルスの移籍への意欲と、トム・ロギッチがメルボルン・ビクトリーに加入する見込みがあったことから、セレッソ大阪への移籍が実現した。ニコルスは2014年1月20日にセレッソ大阪に加入した。セレッソ大阪でのデビュー戦は、2014年3月11日のAFCチャンピオンズリーグにおける山東魯能泰山戦で、途中出場したがチームは1対3で敗れた。
2014年6月23日、ニコルスはパース・グローリーに1年間の期限付き移籍で加入することが発表された。しかし、2015年4月9日にはパース・グローリーとの契約が解除された。
1.4. ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ
2015年7月3日、ニコルスはAリーグのウェスタン・シドニー・ワンダラーズと2年契約を結んだ。2015年10月8日のブリスベン・ロアー戦でワンダラーズでのデビューを果たし、試合開始13分に初得点を記録したが、チームは1対3で敗れた。2017年5月11日、ワンダラーズはニコルスとの契約を更新しないことを発表した。
1.5. パース・グローリーへの復帰
薬物所持を認めていたにもかかわらず、2017年6月13日、パース・グローリーはニコルスと2年契約を結んだ。しかし、個人的な理由により、ニコルスとパース・グローリーは2018年2月20日に双方合意の上で契約を解除した。この逮捕事件により、ニコルスはヨーロッパでプレーするという夢を断念することになった。
1.6. ウェリントン・フェニックス
2018年7月23日、ニコルスはAリーグに留まるため、ウェリントン・フェニックスと2年契約を結んだことが発表された。しかし、2019年1月15日には、ニコルスとフェニックスが契約を解消したことが発表された。
1.7. 後期のクラブ経歴
2019年3月15日、ニコルスはナショナル・プレミアリーグス・クイーンズランドに所属するゴールド・コースト・ナイトと契約した。同クラブでは75試合に出場し、6得点を記録した。2022年6月23日には同じくナショナル・プレミアリーグス・クイーンズランドのオリンピックFCに加入した。さらに2023年1月9日にはゴールド・コースト・ユナイテッドFCへの移籍が発表された。
2. 代表経歴

ニコルスは、AFC U-19選手権2008が開催されたサウジアラビアで、U-20オーストラリア代表として出場した。この大会の準々決勝の北朝鮮戦では、延長戦での見事なオーバーヘッドキックを含む2得点を挙げた。U-23オーストラリア代表としては2010年に初のキャップを記録した。シニアのサッカルーズとしての初キャップは、2009年3月4日に行われたAFCアジアカップ予選のクウェート戦である。
3. 統計
ミッチェル・ニコルスのクラブおよび国家代表チームでの公式戦出場記録と得点記録を以下に示す。
3.1. クラブ統計
| クラブ | シーズン | ディビジョン | リーグ戦1 | カップ戦 | アジア2 | 合計 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | |||
| パームビーチ | 2007 | クイーンズランド・プレミアリーグ | 8 | 9 | 0 | 0 | 0 | 0 | 8 | 9 |
| ブリスベン・ロアー | 2007-08 | Aリーグ | 10 | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 | 12 | 0 |
| 2008-09 | 13 | 5 | 2 | 0 | 0 | 0 | 17 | 6 | ||
| 2009-10 | 20 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 20 | 1 | ||
| 2010-11 | 32 | 6 | 0 | 0 | 0 | 0 | 32 | 6 | ||
| 2011-12 | 24 | 10 | 0 | 0 | 5 | 1 | 29 | 11 | ||
| 2012-13 | 26 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 27 | 2 | ||
| 合計 | 125 | 24 | 7 | 0 | 6 | 1 | 138 | 25 | ||
| メルボルン・ビクトリー | 2013-14 | Aリーグ | 14 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 14 | 3 |
| セレッソ大阪 | 2014 | J1リーグ | 6 | 0 | 0 | 0 | 4 | 0 | 10 | 0 |
| パース・グローリー | 2014-15 | Aリーグ | 14 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 17 | 0 |
| ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ | 2015-16 | 29 | 10 | 3 | 0 | 0 | 0 | 32 | 10 | |
| 2016-17 | 24 | 1 | 3 | 1 | 4 | 1 | 31 | 3 | ||
| 合計 | 53 | 11 | 6 | 1 | 4 | 1 | 63 | 13 | ||
| パース・グローリー | 2017-18 | Aリーグ | 13 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 13 | 1 |
| ウェリントン・フェニックス | 2018-19 | 7 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 8 | 0 | |
| キャリア通算 | 240 | 48 | 17 | 1 | 14 | 2 | 271 | 51 | ||
1リーグ戦にはAリーグフィナルシリーズの記録を含む
2アジアの記録にはFIFAクラブワールドカップの記録を含む。AFCチャンピオンズリーグの記録はグループステージ後に開始したシーズン(例: ACLとAリーグのシーズンなど)に含まれる。
3.2. 代表統計
| オーストラリア代表 | ||
|---|---|---|
| 年 | 出場 | ゴール |
| 2009 | 1 | 0 |
| 2010 | 0 | 0 |
| 2011 | 0 | 0 |
| 2012 | 0 | 0 |
| 2013 | 3 | 0 |
| 2014 | 1 | 0 |
| 合計 | 5 | 0 |
3.2.1. 代表戦出場試合
| # | 日付 | 対戦相手 | スコア | 結果 | 大会 | 出場時間 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2009年5月1日 | クウェート | 0-1 | 負 | AFCアジアカップ2011 予選 | 途中出場(70分) |
| 2 | 2013年7月20日 | 韓国 | 0-0 | 分 | 東アジアカップ2013 | 途中出場(65分) |
| 3 | 2013年7月25日 | 日本 | 2-3 | 負 | 東アジアカップ2013 | 途中出場(57分) |
| 4 | 2013年7月28日 | 中国 | 3-4 | 負 | 東アジアカップ2013 | 途中交代(74分) |
| 5 | 2014年11月18日 | 日本 | 1-2 | 負 | キリンチャレンジカップ | 途中出場(63分) |
4. 獲得タイトル
ミッチェル・ニコルスが選手キャリアを通じて獲得した主なタイトルを以下に示す。
- クラブ**
- ブリスベン・ロアー**:
- Aリーグ プレミアシップ: 2010-2011
- Aリーグ チャンピオンシップ: 2010-2011, 2011-12
- ゴールド・コースト・ナイト**:
- NPLクイーンズランド チャンピオンシップ: 2019
- 代表**
- オーストラリア**:
- AFF U-19ユース選手権: 2008
- インターナショナル・コー・グロエンウェゲン・トーナメント (U-20): 2009
- 個人**
- PFAチーム・オブ・ザ・シーズン: 2011-12, 2015-16
- オーストラリア**:
- ブリスベン・ロアー**:
5. 私生活と論争
2017年5月18日、シドニー市内のナイトクラブでコカインを所持していたことが発覚し、ニコルスは逮捕された。この薬物所持の容疑を認めたことで、彼はキャリアに大きな影響を受け、特にヨーロッパでプレーするという長年の夢を断念せざるを得なくなった。この事件は彼の公的なイメージに悪影響を与え、契約解除やクラブからの退団など、その後の選手キャリアに影響を及ぼした。
6. 引退後の経歴
選手としてのキャリアを終えた後、ミッチェル・ニコルスは指導者の道に進んだ。現在はブリスベン・ロアー・アカデミーのアシスタントコーチを務めており、NPLクイーンズランドで若手選手の育成に貢献している。
7. 評価と影響
ミッチェル・ニコルスのサッカーキャリアは、その才能と同時に、いくつかの大きな困難を経験したことで特徴付けられる。彼はブリスベン・ロアー時代にAリーグ年間ベストイレブンに2度選出されるなど、その中盤での得点能力と貢献は高く評価された。特に、2011-12シーズンにはAリーグで10ゴールを挙げ、チームの成功に大きく貢献した。セレッソ大阪での短期間のプレー経験は、彼が国際的な舞台で活躍する可能性を示した。
しかし、2017年に発覚した薬物所持事件は、彼のキャリアにおける転換点となった。この事件は彼のプロとしての信頼性と個人的な評価に深刻な影響を与え、ヨーロッパでのプレー機会を失うなど、その後のキャリアの選択肢を狭める結果となった。この論争は、プロスポーツ選手が直面しうる私生活の課題とその影響を浮き彫りにした。
引退後、彼が古巣ブリスベン・ロアーのアカデミーコーチとして後進の指導にあたっていることは、過去の経験を活かし、オーストラリアサッカー界に貢献しようとする姿勢を示している。ニコルスのキャリアは、輝かしい実績と個人的な試練が共存するものであり、オーストラリアサッカー界において、その才能と同時に、困難を乗り越えようとする姿勢が記憶されるだろう。
8. 外部リンク
- [http://www.national-football-teams.com/player/30199/Mitch_Nichols.html National Football Teams]