1. Overview

ルイ=クロード・ダカン(Louis-Claude Daquinルイ=クロード・ダカンフランス語、1694年7月4日 - 1772年6月15日)は、フランスの作曲家であり、卓越したオルガンおよびチェンバロ奏者であった。彼はバロック音楽からギャラント様式への過渡期に活躍し、その作品は当時の聴衆に広く受け入れられた。特に、オルガンとチェンバロのためのノエル集や、チェンバロ組曲の傑作「かっこう」などで知られ、その音楽は今日でも高く評価されている。ダカンは、その類稀なる演奏技術と独創的な作曲によって、フランス音楽史において重要な足跡を残し、大衆的な人気を博した。
2. Life
ルイ=クロード・ダカンは、幼少期から音楽の才能を発揮し、パリの主要な教会でのオルガニストとしてのキャリアを確立した。彼の生涯は、音楽家としての輝かしい成功に彩られていた。
2.1. Birth and Family Background
ダカンは1694年7月4日にパリで生まれた。洗礼名のひとつ「クロード」は、義理の叔母エリザベト=クロード・ジャケ=ド=ラ=ゲールの名声にちなんでいる。彼の家族はイタリアに起源を持ち、曽祖父はアクイーノの町でカトリックに改宗した後、「ダキーノ」(D'Aquino、d'Aquin、d'Acquin)という姓を名乗ったとされる。父は画家クロード・ダカン、母は著名な作家フランソワ・ラブレーの大姪にあたるアンヌ・ティエルサンであった。また、彼の伯叔父の一人はコレージュ・ド・フランスのヘブライ語教授を務め、もう一人はルイ14世の侍医長を務めるなど、ダカンの家系には学術的・宮廷的な著名人が多数存在した。
2.2. Childhood and Education
幼少期から音楽の神童として知られ、わずか6歳でルイ14世 (フランス王)の宮廷で御前演奏を披露した。彼は一時的に著名なオルガニストであるルイ・マルシャンに師事し、音楽的才能をさらに磨いた。8歳の時には自身の合唱曲『Beatus Virベアトゥス・ヴィルラテン語』を指揮したと伝えられている。
2.3. Early Career
12歳でサント・シャペルのオルガニストの職を打診されたが、これを辞退し、その翌年にはプチ・サンタントワーヌ教会でオルガニストの職に就任した。1722年にはデニーズ=テレーズ・キロと結婚した。彼のオルガニストとしてのキャリアは順調に始まり、その後の輝かしい活躍の基礎を築いた。
3. Organist Career
ダカンは生涯を通じてオルガニストとしての職に恵まれ、パリの主要な教会や王室礼拝堂でその才能を存分に発揮し、その名声を確立した。
3.1. Appointments at Parisian Churches
1727年には、ジャン=フィリップ・ラモーも候補者であったにもかかわらず、サン・ポール教会のオルガニストに任命された。その5年後、ダカンは師であるマルシャンの後任としてコルドリエ教会のオルガニストに就任した。さらに1755年には、ギヨーム=アントワーヌ・カルヴィエールの後を継ぎ、ノートルダム大聖堂のオルガニストの称号を得た。
3.2. Royal Organist Appointment
1739年、ダカンはルイ15世のシャペル・ロワイヤル(王室礼拝堂)のオルガニストに任命された。この栄誉ある職は、彼の演奏家としての地位を確固たるものにした。
3.3. Reputation as a Performer
鍵盤楽器奏者としてのダカンの評判は高く、その目覚ましい演奏は貴族たちからも引く手あまたであった。彼のオルガン演奏に対する卓越した専門知識は、多くの聴衆を惹きつけ、彼の演奏会には大勢の人々が詰めかけた。彼はチェンバロとオルガンの両方において、「揺るぎない正確さと均一性」を持つ演奏で知られていた。
4. Compositions
ダカンの作曲活動は多岐にわたり、特にノエル集は今日でも広く演奏されている。彼の作品は、技術的な革新と独創性によって特徴づけられる。
4.1. Major Works
ダカンの現存する主要な作品には、4つのチェンバロ組曲、1757年頃に出版されたオルガンとチェンバロのための『Nouveau livre de noëlsヌーヴォー・リーヴル・ド・ノエルフランス語』(クリスマス・キャロルの編曲集で、彼のチェンバロ即興演奏の一部も含まれる)、カンタータ、そして『air à boireエール・ア・ボワールフランス語』(酒飲み歌)がある。また、2つのミサ曲、テ・デウム、ミゼレーレ、そして『Leçons de Ténèbresルソン・ド・テネブルフランス語』の手稿譜も残されている。
4.2. Nouveau livre de noëls
12曲からなるノエル作品集『Nouveau livre de noëlsヌーヴォー・リーヴル・ド・ノエルフランス語』は、ダカンの最も重要な作品群の一つである。これらの作品には、それぞれ古いテキストが用いられており、ジャン=クロード・デュヴァルによって以下のテキストが特定されている。
- I. Noel, sur les jeux d'Anches sans tremblantフランス語: 『À la venuë de Noëlフランス語』
- II Noel, en dialogue, Duo, Trio, sur le cornet de récit, les tierces du positif et la pédalle de Flûteフランス語: 『Or nous dites Marieフランス語』
- III Noel en Musette, en Dialogue, et en Duoフランス語: 『Une bergère jolieフランス語』
- IV Noel en Duo, sur les jeux d'Anches, sans tremblantフランス語: 『Noël, cette journéeフランス語』
- V Noel en Duoフランス語: 『Je me suis levéフランス語』 または 『Ô jour glorieuxフランス語』
- VI Noel, sur les jeux d'Anches, sans tremblant, et en Duoフランス語: 『Qu'Adam fut un pauvre hommeフランス語』
- VII Noel, en Trio et en Dialogue, le cornet de récit de la main droitte, la Tierce du Positif de la main gaucheフランス語: 『Chrétiens qui suivez l'Égliseフランス語』
- VIII Noel Étranger, sur les jeux d'anches sans tremblant et en Duoフランス語: 『?フランス語』(外国のキャロル、おそらくイタリアのもの)
- IX Noel, sur les Flûtesフランス語: 『Noël pour l'amour de Marieフランス語』 および 『Chantons, je vous prieフランス語』
- X Noel, Grand jeu et Duoフランス語: 『Quand Dieu naquit à Noëlフランス語』 または 『Bon Joseph, écoutez-moiフランス語』
- XI Noel, en Récit en Taille, sur la Tierce du Positif, avec la Pédalle de Flûte, et en Duoフランス語: 『Une jeune Pucelleフランス語』
- XII Noel Suisse, Grand jeu, et Duoフランス語: 『Il est un p'tit l'angeフランス語』 または 『Ô Dieu de clémenceフランス語』
4.3. Other Notable Works
彼の作品の中で特に有名なものとしては、1735年のチェンバロ組曲『Pièces de clavecin, Troisième Suiteピエス・ド・クラヴサン、第3組曲フランス語』からの一曲である『かっこう』(Le Coucouル・クークーフランス語)や、ノエル集の第12番に収録されている『スイスのノエル』(Noël Suisseノエル・スイスフランス語)が挙げられる。
4.4. Musical Innovations
ダカンのチェンバロ作品には、技術的な革新が見られる。特に、彼の『Trois cadencesトロワ・カダンスフランス語』には、トリルを3回連続で演奏する「トリプル・トリル」という独創的な技法が用いられており、当時の鍵盤楽器演奏における表現の幅を広げた。
5. Personal Life
ダカンの個人的な側面については、公にされている情報は限られている。
5.1. Marriage
1722年、ダカンはデニーズ=テレーズ・キロと結婚した。
6. Death
ルイ=クロード・ダカンは1772年6月15日に死去した。
7. Assessment and Legacy
ルイ=クロード・ダカンは、その卓越した演奏技術と作曲によって、後世に大きな影響を与え、フランス音楽史における重要な遺産を残した。
7.1. Performer's Assessment
ダカンは鍵盤楽器奏者として非常に高い評価を受けていた。彼の演奏は「揺るぎない正確さと均一性」を特徴とし、その目覚ましい技巧は聴衆を魅了した。彼は貴族たちからも重用され、彼のオルガン演奏の専門知識は多くの人々を教会へと引き寄せ、その名声はパリ中に響き渡った。
7.2. Composer's Assessment
作曲家としてのダカン、特に彼のノエル集は、その大衆的な人気と音楽的重要性から高く評価されている。彼のノエルは、伝統的なクリスマス・キャロルを洗練された芸術音楽へと昇華させたものであり、今日でも多くの演奏家によって愛され続けている。
7.3. Discography
ダカンの作品は数多く録音されており、特にオルガン作品の全集がリリースされている。
- 『Louis Claude Daquin, l'œuvre intégrale pour orgue / Louis Claude Daquin, Complete organ worksフランス語』(マリーナ・チェブルキナによるヴェルサイユ宮殿王室礼拝堂大オルガンでの演奏、Natives、2004年。EAN 13 : 3760075340049)
8. External links
- [https://imslp.org/wiki/Category:Daquin,_Louis-Claude IMSLP: ルイ=クロード・ダカンの作品]
- オルガンによる3つのノエルを聴くには、以下のリンクをクリックしてください。
- [http://www.guibray.org/gui/Sons/daquinnoelanches.mp3 Noël sur les anches (No. VI)]
- [http://www.guibray.org/gui/Sons/daquinnoelflutes.mp3 Noël sur les flûtes (No. IX)]
- [http://www.guibray.org/gui/Sons/daquinnoelsol.mp3 Noël en sol (No. X)]