1. 幼少期とユース経歴
安俊洙はサッカー選手として恵まれた才能を発揮し、幼少期からその実力を培ってきた。
1.1. サッカーを始めた経緯と成長背景
安俊洙は7歳でサッカーを始めた。父親の知人であり、忠毅中学校サッカー部の監督を務めていたミン・ジェホンに師事し、指導を受けた。ミン・ジェホンは、安の守備時の集中力の高さや、ボールに対して物怖じしない性格を見て、ゴールキーパーとして育てることを決意したという。小学校在学中には、浦項スティーラース傘下の浦項製鉄中学校サッカー部から獲得のオファーがあったが、安はこれを辞退し、専門的なGKコーチが在籍し、フィールドプレーヤーとしての技術習得にも努められる環境の忠毅中学校に進学した。
2013年には、U-15韓国代表に選出された。この際、忠毅中学校サッカー部のチームメイトでもある従兄弟と共に選出されたため、安の父親は「不正な方法で息子が代表入りしたのではないか」と慌てたというエピソードも残っている。中学校3年生の夏休みには、後に自身が加入することになる日本のセレッソ大阪へ短期留学し、経験を積んだ。
1.2. ユースクラブでの活動
忠毅中学校卒業後、安俊洙はFC議政府のU-18チームに加入した。FC議政府U-18は、他の学校のサッカー部とは異なり、正規の高校課程で学業を終えてから放課後に活動するクラブであった。それでも、安はその後も年代別代表チームに招集され続けた。U-17代表チームのゴールキーパーコーチであったチャ・サングァンに師事するようになってから、安はさらなる成長を遂げた。この時期に、AFC U-16選手権2014と2015 FIFA U-17ワールドカップに出場している。特にU-17ワールドカップでは背番号1を背負い、チームの全3試合に出場し、将来を期待される選手として注目を集めた。
2. クラブ経歴
安俊洙はこれまでに複数のクラブでプレーし、そのキャリアを積み重ねてきた。
2.1. セレッソ大阪
2016年7月、安俊洙は日本のJ1リーグに所属するセレッソ大阪に入団し、18歳でプロキャリアをスタートさせた。しかし、当時のトップチームでは金鎮鉉が主力として活躍しており、安俊洙は経験不足のため、主にJ3リーグに所属するセレッソ大阪U-23チームで活動した。2016年9月10日にはJ3リーグでデビューを果たしている。2020シーズンにはトップチームで金鎮鉉のバックアップゴールキーパーを務めた。
2.2. 鹿児島ユナイテッドFC (期限付き移籍)
2017シーズン終了後、安俊洙はJ3リーグの鹿児島ユナイテッドFCへ期限付き移籍することが発表され、2018シーズンからチームに加わった。2018シーズンのJ3リーグでは29試合に出場し、チームのJ3リーグ準優勝と翌シーズンのJ2リーグ昇格に貢献した。この活躍が認められ、2019シーズンも期限付き移籍期間を延長して鹿児島に在籍。2019シーズンはJ2リーグで36試合に出場したが、チームは21位となり、1シーズンでのJ3リーグ降格となった。鹿児島ユナイテッドFCでの2シーズンで、合計65試合に出場した。
2.3. 釜山アイパーク
2020シーズンをセレッソ大阪で過ごした後、2021シーズンを前に、安俊洙はプロデビューから5年目にして母国である韓国へ帰国し、Kリーグ2の釜山アイパークへ移籍した。2021シーズンは公式戦16試合に出場し、24失点、2クリーンシートを記録した。2022シーズンも引き続き釜山アイパークの主力ゴールキーパーとして活躍し、チームに貢献した。
2.4. 全南ドラゴンズ
2023シーズンも釜山アイパークの主力ゴールキーパーとして活動していた安俊洙は、同年6月23日にミッドフィールダーのチョン・スンミンとのトレードにより、全南ドラゴンズへ移籍した。全南ドラゴンズでは2023シーズンに18試合に出場し、リーグ後半戦でチームの躍進に貢献した。この活躍が評価され、2023年のKリーグ2ベストイレブンに選出された。
2.5. 水原FC
安俊洙は2024シーズンからKリーグ1の水原FCに所属している。2024年3月9日時点で9試合に出場しており、水原FCの主力選手としてチームの守備を支えている。
3. 代表チーム経歴
安俊洙は、各年代の韓国代表チームで活躍し、国際舞台での経験を積んできた。
3.1. 年齢別代表チーム (U-17、U-20)
安俊洙はU-17韓国代表の一員として、2014年に開催されたAFC U-16選手権2014に参加し、チームの準優勝に貢献。この結果、U-17ワールドカップ本大会への6年ぶりの出場権獲得に寄与した。翌2015年には2015 FIFA U-17ワールドカップ本大会にも出場し、グループステージの3試合すべてに先発出場した。しかし、チームはベルギーとのラウンド16で0-2と敗れ、惜しくも8強進出はならなかった。
その後、安俊洙はU-20韓国代表に選出され、2017年に自国で開催された2017 FIFA U-20ワールドカップの最終メンバーに名を連ねた。しかし、チームはラウンド16で強豪ポルトガルに1-3で完敗し、4年ぶりの8強進出の夢は叶わなかった。
3.2. U-23代表チームとオリンピック参加
2019年3月、安俊洙はU-23韓国代表に選出され、プノンペンで開催された2020年AFC U-23選手権予選のH組2次戦(カンボジア戦)と最終戦(オーストラリア戦)に続けて先発出場した。
翌2020年にはタイで開催された2020年AFC U-23選手権本大会のメンバーに選出された。この大会では、主戦ゴールキーパーのソン・ボムグンが中国とのグループリーグ初戦からサウジアラビアとの決勝までフルタイム出場したため、安俊洙の出場機会はなかった。しかし、チームは韓国サッカー史上初のU-23アジアカップ優勝を飾り、同時に9回連続となるオリンピック本大会出場を決め、安俊洙も優勝の喜びをチームメイトと分かち合った。
2021年6月末に発表された2020年東京オリンピック(2021年開催)の18人の最終メンバーにも選ばれた。同年7月には、2008年北京オリンピック王者であるアルゼンチンとの親善試合に先発出場し、2-2の引き分けに貢献した。本大会ではバックアップゴールキーパーとして出場したが、チームは準々決勝で2012年ロンドンオリンピック王者であり北中米の強豪であるメキシコに3-6で大敗し、9年ぶりのオリンピック準決勝進出は叶わなかった。
4. プレースタイルと評価
安俊洙は、恵まれた体格と反射神経の鋭さを活かした守備が特徴である。これに加えて、FC議政府U-18の監督を務めていたチョン・ソンフンや、U-17韓国代表のゴールキーパーコーチであったチャ・サングァンは、ゴールマウス前での冷静さを彼の長所として挙げている。
また、PK阻止率の高さも特筆すべき点であり、中学・高校サッカー関係者からは「PK戦の神」という異名で呼ばれるほど、その能力は高く評価されている。
5. 経歴統計
クラブ成績 | リーグ | カップ戦 | リーグカップ | 合計 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
シーズン | クラブ | リーグ | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 |
日本 | リーグ | 天皇杯 | Jリーグカップ | 合計 | ||||||
2016 | セレッソ大阪 | J2リーグ | 0 | 0 | 0 | 0 | - | 0 | 0 | |
2016 | セレッソ大阪U-23 | J3リーグ | 5 | 0 | - | - | 5 | 0 | ||
2017 | セレッソ大阪 | J1リーグ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2017 | セレッソ大阪U-23 | J3リーグ | 13 | 0 | - | - | 13 | 0 | ||
2018 | セレッソ大阪 | J1リーグ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2018 | 鹿児島ユナイテッドFC | J3リーグ | 29 | 0 | - | - | 29 | 0 | ||
2019 | 鹿児島ユナイテッドFC | J2リーグ | 36 | 0 | - | - | 36 | 0 | ||
2020 | セレッソ大阪 | J1リーグ | 0 | 0 | 1 | 0 | - | 1 | 0 | |
2020 | セレッソ大阪U-23 | J3リーグ | 12 | 0 | - | - | 12 | 0 | ||
キャリア通算 (日本) | 95 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 96 | 0 | ||
韓国 | リーグ | FAカップ | - | 合計 | ||||||
2021 | 釜山アイパーク | Kリーグ2 | 16 | 0 | - | - | - | 16 | 0 | |
2022 | 釜山アイパーク | Kリーグ2 | 16 | 0 | - | - | - | 16 | 0 | |
2023 | 釜山アイパーク | Kリーグ2 | - | - | - | - | - | 0 | 0 | |
2023 | 全南ドラゴンズ | Kリーグ2 | 18 | 0 | - | - | - | 18 | 0 | |
2024 | 水原FC | Kリーグ1 | 9 | 0 | - | - | - | 9 | 0 | |
キャリア通算 (韓国) | 59 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 59 | 0 | ||
キャリア総通算 | 154 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 155 | 0 |
6. 受賞歴
安俊洙は選手生活において、所属クラブや代表チームでいくつかのタイトルを獲得し、個人としても栄誉に輝いている。
6.1. クラブでの受賞
- セレッソ大阪
- Jリーグカップ:1回(2017年)
- 天皇杯:1回(2017年)
- スーパーカップ:1回(2018年)
- 鹿児島ユナイテッドFC
- J3リーグ:準優勝(2018年)
6.2. 国際大会での受賞
- 韓国U-17代表
- AFC U-16選手権:準優勝(2014年)
- 韓国U-23代表
- AFC U-23選手権:優勝(2020年)
6.3. 個人での受賞
- Kリーグ2:ベストイレブン(2023年)