1. 概要
宮部藍梨は、兵庫県尼崎市出身の女子バレーボール選手で、主にアウトサイドヒッターおよびミドルブロッカーとしてプレーする。小学3年生でバレーボールを始め、金蘭会高等学校時代には「Team CORE」の一員に選出され、アジアユースバレーボール選手権でMVPを獲得、全日本高校選手権でチームを初優勝に導いた。高校在学中の2015年には高校生で唯一日本代表に初選出され、ワールドグランプリでシニア国際大会デビューを飾った。その後、アメリカの大学に留学し、サウスアイダホ大学ではNJCAAディヴィジョンI全米選手権で全米優勝に貢献しAVCAが制定する年間優秀選手に選ばれるなど、学業と競技の両面で経験を積んだ。2022年にヴィクトリーナ姫路に入団しプロキャリアをスタートさせ、同年には6年ぶりに日本代表に復帰。2024年ネーションズリーグでは銀メダル獲得に貢献し、パリオリンピックにも出場するなど、日本女子バレーボール界における重要な選手の一人として活躍を続けている。
2. 来歴
宮部藍梨は、そのキャリアを通じて、国内の学生時代から海外での挑戦、そしてプロリーグでの活躍に至るまで、着実にステップアップを重ねてきた。
2.1. 幼少期・学生時代
宮部藍梨は兵庫県尼崎市で生まれ、小学3年生の時にバレーボールを始めた。中学時代には、2013年末の全国都道府県対抗中学バレーボール大会において、最も将来有望な選手に贈られるJOC・JVAカップを受賞した。
2014年に金蘭会高等学校へ進学すると、同年には日本バレーボール協会が2020年東京オリンピックへ向けて実施した集中強化対象「Team CORE」(男子10人・女子8人)の一人に選ばれた。同年10月に開催されたアジアユースバレーボール選手権(U-17カテゴリ)では、チームの優勝に大きく貢献し、MVPに選出された。
2015年1月には、1年生エースとして全日本高校選手権に出場。決勝では同じ大阪の大阪国際滝井高校と対戦し、両チーム最多の24得点を挙げる活躍を見せ、金蘭会高校の初優勝に貢献した。
2.2. 大学・海外での挑戦
高校卒業後、宮部藍梨は神戸親和女子大学に進学したが、2017年9月からはアメリカの2年制大学であるサウスアイダホ大学に留学した。2年時にはNJCAAディヴィジョンI全米選手権決勝で最多23得点、サービスエース2本を決め、チームの優勝に貢献。その活躍が評価され、AVCAが制定する2年制大学部門の女子年間優秀選手に選出された。
2019年にはミネソタ大学に編入し、大学院を含め3年間、ヒュー・マッカーチョン監督の指導を受けた。この期間について本人は、「すべてを基本から習い直した」「高いブロックに対してどう戦うかを考えた」と語っている。
2.3. プロ入り
2022年、宮部藍梨はヴィクトリーナ姫路に入団し、プロ選手としてのキャリアをスタートさせた。入団時には「恩返ししたかった」とコメントしている。2023-24シーズンからは、姫路での背番号が29から11に変更された。
2025年1月には、アミューズスポーツエージェンシーとのマネジメント契約が発表された。
3. 代表経歴
宮部藍梨は、ユース世代からシニア世代に至るまで、日本代表として数多くの国際大会に出場し、その才能を発揮してきた。
3.1. ユース・ジュニア時代
宮部藍梨は、2014年からユース代表に選出され、同年開催されたアジアユースバレーボール選手権(U-17カテゴリ)では、チームの優勝に大きく貢献し、MVPに選出された。
3.2. シニア代表として
2015年4月、宮部藍梨は高校生でありながら唯一日本代表に初選出され、ワールドグランプリの登録メンバーにも名を連ねた。同年7月10日のワールドグランプリ・イタリア戦では、第2セットからスターターとして出場し、18得点を挙げてシニア国際大会デビューを果たした。
その後、6年間のブランクを経て、2022年に再び日本代表登録メンバーに選出された。同年にはネーションズリーグ予選ラウンド第3週のカナダラウンドに出場。さらに世界選手権のメンバーにも選出され、大会前の調整試合ではミドルブロッカーとしてのプレーも試された。世界選手権本大会でもベルギー戦でミドルブロッカーとして出場し、チームの貴重な勝利に貢献した。
2023年にはネーションズリーグとワールドカップに出場。そして、2024年ネーションズリーグでは、チームの銀メダル獲得に貢献し、パリオリンピックの日本代表にも選出された。
4. プレースタイルとポジション
宮部藍梨は、身長181 cm、体重66 kgという恵まれた体格を持ち、スパイク到達点313 cm、ブロック到達点290 cmを誇る。
主にアウトサイドヒッターとしてプレーするが、ミドルブロッカーとしても高い能力を発揮する。特に2022年の世界選手権では、ミドルブロッカーとしての起用が試され、ベルギー戦での勝利に貢献するなど、そのユーティリティ性がチームの戦術に多様性をもたらしている。アメリカ留学中にヒュー・マッカーチョン監督の指導を受けたことで、「すべてを基本から習い直した」「高いブロックに対してどう戦うかを考えた」と語っており、その経験がプレースタイルの幅を広げている。
5. 受賞歴
宮部藍梨は、これまでに以下の個人賞を受賞している。
年 | 賞 |
---|---|
2014年 | アジアユースバレーボール選手権 MVP |
2018年 | AVCA 2年制大学部門 女子年間優秀選手 |
2024年 | 2023-24 V.LEAGUE DIVISION2 WOMEN スパイク賞 |
6. 人物・エピソード
宮部藍梨は、バレーボール選手としての顔だけでなく、その人物像や学業への取り組みにおいても注目される存在である。
- 父はナイジェリア人である。妹の宮部愛芽世もバレーボール選手で、金蘭会高等学校、東海大学を経て、現在は大阪マーヴェラスに所属している。2022年の世界選手権では、姉妹揃って日本代表に選出された。
- 本人はもともと、それほど貪欲な性格ではなく、バレーボール自体も高校に入ってから続けるつもりはなかったと語っている。積極的に2020年東京オリンピックへ向けて発言することもなかったという。しかし、中学3年生の時にJOC・JVAカップを受賞したことや、異なる年代の選手と接する機会が多くなるにつれて刺激を受け、少しずつ競技への意欲を膨らませていった。春高優勝時には、当時の主将が「エースの自覚が出てきました」とコメントしている。
- ミネソタ大学では大学院も含め3年間、ヒュー・マッカーチョン監督の指導を受けた。この期間を通じて、「すべてを基本から習い直した」「高いブロックに対してどう戦うかを考えた」と語っており、自身のバレーボールに対する考え方を深めた。
- 大学院の卒業論文のテーマは「オリンピックの経済効果」であった。
7. 所属
宮部藍梨は、学生時代から現在に至るまで、複数のチームに所属し、そのキャリアを築いてきた。
7.1. 所属チーム
期間 | チーム名 |
---|---|
小学校時代 | 尼崎市立金楽寺小学校 |
中学校時代 | 金蘭会中学校 |
高校時代 | 金蘭会高等学校 |
2017年 | 神戸親和女子大学 |
2017年 - 2018年 | College of Southern Idahoサウスアイダホ大学英語 (アメリカ) |
2019年 - 2022年 | ミネソタ大学ゴールデンゴーファーズ (アメリカ) |
2022年 - 現在 | ヴィクトリーナ姫路 |
7.2. マネジメント
2025年1月、宮部藍梨はアミューズスポーツエージェンシーとのマネジメント契約を発表した。
8. 評価と展望
宮部藍梨は、その高い身体能力と、アウトサイドヒッターとミドルブロッカーという二つのポジションをこなせるユーティリティ性で、日本女子バレーボール界において高く評価されている。特にアメリカ留学中に培った経験は、彼女のプレースタイルに深みを与え、日本代表での活躍にも繋がっている。
一度は代表から離れながらも、6年ぶりに復帰し、重要な国際大会でチームに貢献する姿は、彼女の成長と競技への強い意欲を示している。2024年ネーションズリーグでの銀メダル獲得やパリオリンピック出場は、その努力が実を結んだ証である。
今後も、その多様なプレースタイルと経験を活かし、日本代表、そして所属チームのヴィクトリーナ姫路において、中心選手としての活躍が期待されている。