1. 経歴
野田昇吾は、アマチュア野球での実績を経てプロ野球の世界に進み、その後、競艇選手へと転身するという稀有なキャリアを築いた。
1.1. アマチュア野球時代
プロ入り前、野田昇吾は幼少期から学生、社会人と野球に打ち込み、その才能を開花させた。
1.1.1. 幼少期と学業
野田昇吾は、5歳の時に雷山スポーツ少年団野球部で野球を始めた。糸島市立前原中学校時代には、硬式の伊都ベースボールクラブに所属していた。彼の父親は、野球で有利になるという理由から、右利きだった野田を3歳の頃から左利きに矯正したという逸話がある。
1.1.2. 高校・社会人野球時代
鹿児島実業高等学校に進学すると、2年生で第92回全国高等学校野球選手権大会に出場し、救援投手として2試合に登板、計7回を投げ、防御率3.86を記録した。同年11月には第41回明治神宮野球大会で3試合に先発し、25回1/3を投げて防御率2.13の成績を残した。3年生の第83回選抜高等学校野球大会では、3試合に先発登板し、計27回を投げ防御率2.00を記録している。夏の第93回全国高等学校野球選手権大会鹿児島大会では準決勝で敗退したものの、その後第9回AAAアジア野球選手権大会の日本代表に選出され、対台湾戦で2番手として5回を無失点に抑える好投を見せた。この大会では、オールスターメンバーにも選出されている。
高校卒業後、野田は西濃運輸に入社し、社会人野球に進んだ。1年目の第38回社会人野球日本選手権大会では1回戦に登板。4年目には第86回都市対抗野球大会の2回戦で登板した。2015年のドラフト後に行われた第41回社会人野球日本選手権大会では2回戦で先発を務めた。
1.2. プロ野球選手時代
2015年10月12日に行われたプロ野球ドラフト会議において、埼玉西武ライオンズから3巡目で指名を受け、契約金6000.00 万 JPY、年俸1200.00 万 JPY(推定)で仮契約を結んだ。背番号は「23」に決定。入団時、身長167 cmは、当時のプロ野球投手の中では谷元圭介、石川雅規と並んで最低身長であった。
1.2.1. ドラフト指名とプロ入り初期
2016年6月27日に一軍出場選手登録され、翌28日に行われた対北海道日本ハムファイターズ戦の8回裏に3番手としてプロ初登板を果たし、1回を投げ3奪三振無失点という内容だった。同年7月3日の対東北楽天ゴールデンイーグルス戦では、同点の5回無死の場面で登板し、2/3回を投げ無失点でプロ初ホールドを記録した。この2016年シーズンは22試合に登板し、4ホールド、防御率3.93の成績を残した。オフには本田圭佑、駒月仁人と共に、オーストラリアン・ベースボールリーグのメルボルン・エイシズに参加し、オーストラリアのウィンターリーグを経験した。
1.2.2. 主要な活動と活躍
2017年には開幕を一軍で迎え、5月2日の対福岡ソフトバンクホークス戦で登板した際、中村晃への死球が危険球と見なされ、退場処分となる一幕もあった。同年9月5日の対千葉ロッテマリーンズ戦では、1点リードの7回表二死二塁の場面で2番手として登板し、同点打を許したが、直後の攻撃でチームが勝ち越したため、プロ初勝利を挙げた。同年10月28日、負傷辞退した山岡泰輔の代替選手として第1回アジア プロ野球チャンピオンシップの日本代表に選出された。
2018年は、左打者キラーとして自己最多となる58試合に登板。1勝1敗1セーブ19ホールドを記録し、チームのリーグ優勝に大きく貢献した。契約更改では、推定年俸が75%以上アップの3000.00 万 JPYを提示されるほどの高評価を得たが、野田自身は「個人としては苦しい時の方が多かった」「50試合投げたが、『投げさせてもらった』という感覚」と厳しく自己評価し、翌年以降のさらなる活躍を誓っていた。
1.2.3. 不調と引退
2019年シーズンは、同じ左投手の小川龍也の台頭と自身の不調が重なり、登板数が23試合に減少。防御率3.66で2ホールドにとどまった。
2020年1月1日には、声優の佳村はるかとの結婚を発表し、「家族ができ、より一層責任感を持ち、今年は一軍で活躍する姿を見せ、僕が支えていきたいと思います」とコメントした。しかし、この年の一軍登板は自己最少の3試合にとどまり、二軍でも30試合の登板で1勝1敗1セーブ、防御率5.00と低調な成績に終わった。シーズン後、みやざきフェニックス・リーグに参加したが、開催3日目にして離脱。同年11月13日には、球団から戦力外通告を受けた。一軍での登板が少なかったため、この年から始めたドナルド・マクドナルド・ハウスへの寄付額が僅かになってしまったことを悔やみ、翌年の登板数を増やして寄付額を増やすことを目標に掲げていた矢先の通告であった。現役続行を目指し、同年12月7日の12球団合同トライアウトに参加した。このトライアウトには新庄剛志も参加しており、これが縁で激励の言葉をもらうこともあった。シートバッティング形式で3人の打者に対して被安打1、最高球速は138km/hという内容で、「緊張感ある中で、自分の投球はできたと思います。あとは連絡を待つだけです」と語ったが、手を挙げる球団はなく、同年12月14日に現役引退を表明した。
1.3. 競艇選手への転身
プロ野球引退後、野田昇吾は新たな挑戦として競艇選手への転身を決意した。
1.3.1. 転身の背景と訓練
プロ野球引退後、野田は千葉県市川市のスーパーマーケット「私のわくわくスーパー鬼高店」で青果販売のアルバイトをしながら、131期ボートレーサー試験に挑んだ。彼は国内トップクラスの実績を持つアスリート経験者を対象とする特別推薦枠を利用し、一次試験が免除となった。約30倍という難関を乗り越え、2021年7月12日に合格したことを報告。同年10月にボートレーサー養成所への入所が決定した。プロ野球選手から競艇選手への転身は、1947年の早瀬薫平(元阪急ブレーブス)以来、74年ぶり2人目となる極めて異例の事例である。これは、ボートレーサー養成所の受験資格に「男子は身長175 cm以下、体重47 kg以上57 kg以下」という厳しい身体条件があるため、転身が極めて困難である。実際に、プロ野球選手としては小柄であった野田でさえ、養成所受験のために20 kg以上の減量を行ったほどであった。さらに、養成所に入所できても途中で競艇選手としての適性がないと判断されれば強制退所させられる厳しい側面も持つ。一方で、元プロ野球選手から競輪選手に転向する例は複数存在するが、こちらは身長や体重に関する制限が一切ない。野田の競艇選手としての登録時の身長は166 cm、体重は55 kgであった。また、同じ日に妻の佳村はるかが第1子を出産したことも公表された。
2021年10月5日、柳川市にあるボートレーサー養成所に第131期選手養成員として入所。在所中に競艇選手資格検定にも合格し、2022年9月22日に養成所を卒業した。その後、埼玉支部所属の競艇選手として登録され(登録番号5259)、師匠は同じ支部の須藤博倫(登録番号3983)となり、級別はB1級である。
1.3.2. 競艇選手としてのデビューと活動
2022年11月3日、戸田競艇場第1競走で競艇選手としてのデビュー戦を迎え、4着に入った。2023年6月9日には、かつて所属した埼玉西武ライオンズの公式戦で始球式を務め、ノーバウンド投球を披露している。同年7月8日、戸田第1競走で競艇選手として初勝利を挙げ、101走目での待望の勝利となった。
2. 野球選手としての特徴
野田昇吾は左腕投手で、直球の最速は148 km/hを記録した。変化球としては、スライダーやシュートなどを投げていた。
彼はサウスポーであるが、本来は右利きであった。プロ野球選手を目指させるという父親の意向により、3歳の頃から左利きに矯正されたという経緯を持つ。
3. 人物と私生活
野田昇吾は、家族との関係を大切にし、自身の経験に基づいた社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。
3.1. 家族関係
野田昇吾は2020年1月1日に声優の佳村はるかと結婚したことを発表した。そして、競艇選手への転身を報告した2021年7月12日には、妻の佳村はるかが第1子を出産したことも公表している。彼の血液型はA型である。
3.2. 社会貢献活動
野田は生後7か月の時に川崎病を発症したが、早期の適切な治療により後遺症はなかった。この経験から、西武ライオンズ時代のチームメイトである増田達至と中村剛也が2019年から行っていた埼玉県立小児医療センター内の家族宿泊施設「さいたまハウス」への寄付活動に、野田も2020年から参加した。彼は一軍公式戦1登板ごとに5000 JPYを寄付することになっていた。競艇選手転向後もこの寄付活動を継続しているかは不明であるが、競艇界には関連団体として日本財団が存在する。
3.3. 人柄と価値観
野田は5年間所属した埼玉西武ライオンズに対し、強い愛着を示していた。2020年に戦力外通告を受けた際、自身のTwitterを更新し、「ずっと西武ライオンズで野球がしたいと思っていましたが、その夢は叶わず」「やっぱり西武ライオンズが好きなんだよなー!素晴らしい監督、コーチ、裏方さんに大好きな先輩後輩。そして大好きなファン。もう一緒に野球できないのが辛いんだよなー。これが人生か...」と綴っており、チームやファンへの深い愛情と、夢が叶わなかったことへの率直な感情を表している。
4. 獲得タイトルと栄誉
野田昇吾がキャリアを通じて獲得した主なタイトル、表彰、および日本代表としての参加歴は以下の通りである。
- 2017 アジア プロ野球チャンピオンシップ:金メダル(日本代表)
- 第9回AAAアジア野球選手権大会:オールスターメンバー選出
- 2011 AAAアジア野球選手権大会日本代表
- 2017 アジア プロ野球チャンピオンシップ 日本代表
5. 詳細情報と記録
野田昇吾のプロ野球選手としての詳細な成績と、キャリアにおける特筆すべき記録を以下に示す。
5.1. 年度別投手成績
年 度 | 球 団 | 試 合 | 投 球 回 | 打 者 成績 | 勝利 敗戦 ホールド セーブ | ||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
登 板 | 先 発 | 完 投 | 完 封 | 無 四 球 | 勝 利 | 敗 戦 | セ 丨 ブ | ホ 丨 ル ド | 勝 率 | 打 者 | 投 球 回 | 被 安 打 | 被 本 塁 打 | 奪 三 振 | 与 四 球 | 与 死 球 | 暴 投 | ボ 丨 ク | 失 点 | 自 責 点 | 防 御 率 | W H I P | |||
2016 | 西武 | 22 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | .000 | 80 | 18.1 | 21 | 1 | 5 | 0 | 1 | 15 | 0 | 0 | 8 | 8 | 3.93 | 1.42 |
2017 | 38 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 1.000 | 143 | 36.1 | 21 | 1 | 15 | 0 | 1 | 26 | 2 | 2 | 8 | 8 | 1.98 | 0.99 | |
2018 | 58 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 1 | 19 | .500 | 181 | 41.0 | 36 | 7 | 24 | 0 | 4 | 40 | 2 | 0 | 17 | 16 | 3.51 | 1.46 | |
2019 | 23 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 2 | 1.000 | 84 | 19.2 | 14 | 1 | 9 | 0 | 3 | 10 | 0 | 0 | 8 | 8 | 3.66 | 1.17 | |
2020 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 6 | 1.0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.00 | 3.00 | |
通算:5年 | 144 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 1 | 1 | 26 | .800 | 494 | 116.1 | 94 | 10 | 54 | 0 | 9 | 92 | 4 | 2 | 41 | 40 | 3.09 | 1.27 |
5.2. 年度別守備成績
年 度 | 球 団 | 投手 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
試 合 | 刺 殺 | 補 殺 | 失 策 | 併 殺 | 守 備 率 | ||
2016 | 西武 | 22 | 0 | 2 | 0 | 1 | 1.000 |
2017 | 38 | 3 | 10 | 0 | 2 | 1.000 | |
2018 | 58 | 2 | 6 | 1 | 1 | .889 | |
2019 | 23 | 1 | 5 | 0 | 0 | 1.000 | |
2020 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | --- | |
通算 | 144 | 6 | 23 | 1 | 4 | .967 |
5.3. 初記録
- 初登板:2016年6月28日、対北海道日本ハムファイターズ13回戦(札幌ドーム)、8回裏に3番手で救援登板、1回無失点
- 初奪三振:同上、8回裏に田中賢介から空振り三振
- 初ホールド:2016年7月3日、対東北楽天ゴールデンイーグルス14回戦(楽天koboスタジアム宮城)、5回裏に2番手で救援登板、2/3回無失点
- 初勝利:2017年9月5日、対千葉ロッテマリーンズ20回戦(メットライフドーム)、7回表に2番手で救援登板、1/3回無失点
- 初セーブ:2018年7発8日、対東北楽天ゴールデンイーグルス14回戦(楽天生命パーク宮城)、11回裏に4番手で救援登板、1/3回無失点
5.4. 背番号
- 23(2016年 - 2020年)
6. 関連項目
- 福岡県出身の人物一覧
- 埼玉西武ライオンズの選手一覧
- メルボルン・エイシズの選手一覧
- 競艇選手一覧
7. 外部リンク
- [http://www.boatrace.jp/ BOAT RACE オフィシャルWEB]
- [http://www.boatrace.jp/owpc/pc/data/racersearch/season?toban=5259 選手のプロフィール]
- [https://twitter.com/n_shogo23 野田昇吾 Twitter]
- [https://twitter.com/wakuwakusuper1 私のわくわくスーパー 千葉県市川市鬼高店(青果担当) Twitter] - 野球選手を引退してから競艇選手になるまで勤めていたアルバイト先。当時は、主に野田がツイートを行っていた。
- [https://www.instagram.com/shogonoda shogo noda / 野田昇吾 Instagram]