1. Overview
浦井佳奈子(Kanako Urai英語、うらいかなこ日本語、1981年9月26日 - )は、日本のプロレスラーであり、現在はWWEに所属し、Rawブランドで「アスカ」(Asuka英語、アスカ日本語または明日華)のリングネームで活動している。彼女は「明日の女帝(The Empress of Tomorrow英語)」の異名を持ち、女子プロレス界において数々の歴史的功績を打ち立ててきた。

2004年に日本のプロモーションであるメジャー女子プロレスAtoZでデビューした後、慢性腎炎による一時的な引退を経て、「華名」として日本の様々なインディー団体で活躍した。特に、2010年には「華名のマニフェスト」を発表し、女子プロレス界に一石を投じたことで知られる。
2015年にWWEと契約してアメリカに拠点を移すと、NXT時代から驚異的な無敗記録を樹立し、WWE史上最長の510日間(WWE公式認定では523日間)にわたるNXT女子王座保持記録を達成した。2018年には史上初の女子ロイヤルランブルで優勝し、メインロースター昇格後も無敗記録を914日間継続した。その後、WWEスマックダウン女子王座を獲得し、日本人女子レスラーとしてはブル中野以来24年ぶりとなるWWEのメインロースター王座戴冠という快挙を成し遂げた。
さらに、カイリ・セインとのタッグチーム「カブキ・ウォリアーズ」としてWWE女子タッグ王座を獲得。2020年にはマネー・イン・ザ・バンクで優勝し、その直後にWWEロウ女子王座を戴冠したことで、WWE女子グランドスラムおよびWWE女子トリプルクラウンを史上2人目、3人目として達成するという偉業を成し遂げた。2023年には女性として唯一、ロイヤルランブル、マネー・イン・ザ・バンク、エリミネーションチェンバーの三大試合全てで勝利した選手となった。
アスカは、WWEが女子部門の地位向上を推進する「女子革命(Women's Revolution英語)」の重要な担い手として、ステレオタイプな「ディーヴァ」のイメージを打ち破り、女子レスラーがアスリートとして認識されるための変革に大きく貢献した。その圧倒的な実力とユニークなペルソナは、プロレス界全体に多大な影響を与えている。
2. 初期キャリアと活動の開始
浦井佳奈子は、プロレス活動以前からグラフィックデザイナーとして、任天堂DSや様々なモバイルアプリケーションのグラフィックデザイン、さらにファミ通Xbox360でゲーム記事を執筆するライターとしても活動していた。彼女はもともと武藤敬司、佐山聡、藤原喜明、アントニオ猪木、前田日明、高田延彦、船木誠勝、ヴォルク・ハン、鈴木みのるといったプロレスラーのファンであり、自身もプロレスラーとなることを決意した。
2.1. 背景と初期キャリア
浦井は大阪国際滝井高等学校、大阪芸術大学短期大学部を卒業している。石川雄規の指導のもと、2004年6月16日に女子プロレス団体メジャー女子プロレスAtoZで、レオナ(現在のLeon)戦で「華名」としてデビューを果たした。AtoZでは中心選手として活躍し、2004年12月26日には全日本女子プロレスの「ザ・ベストタッグトーナメント」で堀田祐美子と組み準優勝を飾るが、同日の試合で左手首を骨折する。その後もジャガー横田、ダンプ松本、豊田真奈美らと激戦を繰り広げた。2005年10月10日の格闘美では、タッグマッチで初来日のダーク・エンジェルにフォールを奪われている。
2006年3月19日、慢性腎炎による体調不良のため、一時的にプロレス界を引退した。引退後は、以前の仕事であるデザイン業を再開し、自身のデザインオフィス「デザインオフィス華名」を立ち上げたほか、横浜でヘアサロン「アナザーヘブン」を経営するなど、実業家としても活動した。
2007年8月4日、再びプロレスラーとして復帰する意向を発表。同年9月22日にプロレスリングSUNで高橋奈苗とのシングルマッチで復帰を果たした。
2.2. インディーサーキットでの活動
復帰後、華名は日本の様々なインディープロモーションでフリーランスとして活動した。
2.2.1. NEO女子プロレスでの活動
2008年、レギュラー参戦していたNEO女子プロレスで、高橋奈苗、夏樹☆たいよう、Ray、堀田祐美子と共にユニット「パッション・レッド」を結成。2009年10月10日には高橋奈苗と組んでNEO認定タッグ王座を獲得し、自身初のプロレスタイトルを手に入れた。しかし、2010年1月23日、高橋奈苗との見解の相違から「パッション・レッド」からの離脱を表明した。
2.2.2. SMASHでの台頭とマニフェスト
2010年6月25日にはTAJIRIが立ち上げた新団体SMASHにデビューし、朱里に敗れるも、その後ヒール(悪役)として「世界の華名」を自称し、朱里との抗争を展開した。同年8月4日、『週刊プロレス』で「華名のマニフェスト」を発表し、女子プロレス界全体を批判する内容で大きな反響を呼んだ。この記事は当時としては異例の女子レスラーによる雑誌表紙を飾るものであり、同年8月30日にはSMASH.7でJWP女子プロレスの選手たちと対峙した。その後はTAJIRIとの抗争にも発展し、12月24日にはシングルマッチでTAJIRIに敗れた。
2011年1月29日、華名は紫雷美央と紫雷イオの姉妹と共にユニット「トリプルテイルズ」のリーダーとして再登場した。彼女たちはTAJIRIや船木とも対戦した。同年4月には、セリーナが華名を「才能あるアマチュア」と呼んだことからセリーナとの抗争が勃発。4月30日のSMASH.16での6人タッグマッチでトリプルテイルズはセリーナ組に敗れ、5月3日のSMASH.17でのシングルマッチでもセリーナに敗れた。同年9月8日には、SMASHディーバ王座決定トーナメントの決勝でセリーナを破り、自身初のシングル王座となる初代SMASHディーバ王座を獲得した。2011年11月24日に中川ともかに王座を奪われるが、2012年1月19日の「We Are Smash」で中川を破り王座を奪還した。しかし、同年2月19日には朱里に敗れて再び王座を失い、長年のライバルであった両者は試合後に抱擁を交わし、和解した。SMASHの最終興行である3月14日の「Smash.Final」では、ウルティモ・ドラゴンと組んでメンタロと朱里のタッグと対戦し勝利した。
2.2.3. プロレスリングWAVEでの活躍
華名は2008年からプロレスリングWAVEに時折参戦していたが、NEO女子プロレスの活動停止に伴い、2010年末からWAVEでのレギュラー参戦を開始した。2011年7月24日、WAVEのシングルリーグ戦「Catch the WAVE 2011」の決勝で大畠美咲を破り初優勝を果たした。同年10月30日には栗原あゆみと組んで「Dual Shock Wave 2011」トーナメントで優勝し、初代WAVE認定タッグ王座を獲得した。2012年2月5日には植松寿絵とRan Yu-Yu組にタッグ王座を失った。
同年2月1日、紫雷美央、飯田美花、渋谷シュウがトリプルテイルズの正式メンバーとなり、4日後には華名と栗原あゆみはWAVE認定タッグ王座を失った。3月6日にはユニット名をWAVEのトップヒールユニットであるブラックダリアにちなんで「ホワイトテイルズ」に変更した。2012年11月27日、桜花由美に勝利した後、「WAVEのエース」を宣言した。2013年2月17日、Catch the Wave 2011優勝者としてWAVEシングル王座トーナメントに参戦し、準決勝で紫雷美央を破ったが、3月17日の決勝では桜花由美に敗れた。同年4月21日、紫雷美央と組んで大畠美咲と藤本つかさ組から再びWAVE認定タッグ王座を獲得し、トリプルテイルズ.Sに初のタイトルをもたらした。7月7日には藤本つかさと救世桜ヒロタ組を相手に防衛に成功。7月12日、ホワイトテイルズは解散興行を行い、華名は引退を控える栗原あゆみと対戦し、10分時間切れ引き分けに終わった。その3日後、華名と紫雷美央は志田光と桜花由美の「しだれ桜」組にタイトルを奪われた。
同年9月1日から10月6日にかけて、華名は桜花由美と組んで「Dual Shock Wave 2013」トーナメントに参加したが、決勝で浜田文子と山縣優の「Las Aventurerasスペイン語」に敗れた。2015年7月には「Catch the Wave 2015」トーナメントの準決勝に進出したが、最終的な優勝者である桜花由美に敗れた。
2.2.4. 各地インディー団体での活動
2010年4月29日、初の自主興行「カナプロ」を主催し、メインイベントで里村明衣子と対戦し敗れた。2011年1月10日には2度目の自主興行「カナプロ2」を開催し、メインで石川雄規と組んでカルロス天野、藤原喜明組と対戦し敗れている。同年9月24日には3度目の自主興行「カナプロ3」を京都で開催し、メインで真霜拳號に敗れた。10月29日、華名は過去1年間試合を行っていたインディー団体666の8代目社長に就任した。11月5日には格闘探偵団バトラーツの最終興行に参戦し、雫有希に勝利した。
2012年3月11日にはDDTプロレスリングに初参戦し、アイアンマンヘビーメタル級王座を獲得。同タイトルを計5度獲得している。同年4月25日にはアイスリボンに約3年ぶりに参戦し、雫有希と組んでエイプリル・デイヴィスと志田光組と対戦。4月30日、プロレスリングWAVEのイベントでCatch the WAVE 2012トーナメントの開幕戦で栗原あゆみにアイアンマンヘビーメタル級王座を奪われた。5月5日のアイスリボン「ゴールデンリボン2012」では志田光にシングルマッチで勝利した。5月12日にはメキシコで闘龍門メキシコのイベント「DragonMania VII英語」に参戦し、朱里に勝利した。7月上旬には紫雷美央とフランスのジャパン・エキスポ2012に参加した。10月20日、華名はアイスリボンに復帰し、紫雷美央と組んで成宮真希と藤本つかさ組に勝利した。
2012年12月にWNCを退団して以降、華名はアイスリボンやJWP女子プロレスでの出場機会を増やした。2013年2月24日には紫雷美央と共に9ヶ月ぶりとなる自主興行を開催し、メインイベントで中島安里紗と浜田文子と対戦した。同年5月5日、JWPに再び登場し、タッグマッチでJWP認定無差別級王座保持者の中島安里紗から勝利を奪った。試合後、華名と中島は激しく衝突し、中島は女子プロレス全体を華名から守ると宣言した。
2013年8月18日、JWPで中島安里紗を破り、第22代JWP認定無差別級王座を獲得した。ヒールとして描かれた華名は、試合後に中島の顔に化粧を塗りつけ、プラム麻里子の追悼興行中にJWPの最高タイトルを獲得したことを高らかに宣言した。その後、勝愛実とLeonの挑戦を退け、同年12月15日に中島安里紗にタイトルを奪還されるまで、3度の防衛に成功した。同年12月27日には、華名と紫雷美央はトリプルテイルズ.Sの解散を発表し、2014年初めに最後の自主興行を行った。
2014年2月25日には、後楽園ホールで自身の自主興行「カナプロマニア」を開催し、メインイベントで里村明衣子を破った。同年4月16日には、プロレスリング・ノアの女子試合に参戦し、ラビット美兎に勝利。同年5月15日、華名と紫雷美央はトリプルテイルズ.Sの最後の自主興行を行い、メインイベントでは華名と中島安里紗が紫雷美央と春山香代子に勝利した。6月16日の「カナプロ」イベントでは、華名と丸藤正道が里村明衣子と鈴木みのるとの男女混合タッグマッチで敗れた。
同年10月5日には全日本プロレスにも特別参戦し、飯田美花と組んで渋谷シュウと桜花由美に敗れた。10月7日、後楽園ホールで開催された「カナプロマニア:パーティー」のメインイベントで、華名は鈴木みのると組んで藤原喜明と朱里のタッグに敗れた。
2.2.5. REINA女子プロレスでのGM就任
2014年8月30日、華名はREINA女子プロレスにストーリー上のコンサルタントとして関与を開始。アリアと真琴からREINA世界タッグ王座を剥奪した後、11月20日には中島安里紗と組んで、リン・バイロンと朱里とのトーナメント決勝で勝利し、新王者となった。この試合では、華名に買収されたリン・バイロンが朱里を裏切った。同年12月26日、華名は朱里を破りREINA世界女子王座を獲得。この勝利後、華名はREINAの新たな「ゼネラルプロデューサー」に就任した。
2015年初頭には自身のユニット「華名軍」(後にピエロ軍と改名)を結成し、メンバーは日本人レスラーの真琴と山下りな、外国人レスラーのアレックス・リー、キャット・パワー、ラ・コマンダンテ、そして男性レスラーのセンガ、宮本裕向が含まれた。同年1月12日、華名と中島はゴヤ・コングとムニェカ・デ・プラタを相手にREINA世界タッグ王座の初防衛に成功した。しかし、2月25日の「カナプロマニア:アドバンス」では、志田光と朱里のタッグに敗れてREINA世界タッグ王座を失った。3月25日には、志田光、越中詩郎、ゼウスの6人タッグマッチで、自身のユニットであるキャット・パワー、宮本裕向と共に敗れた後、REINAのゼネラルプロデューサーの地位を志田光に奪われた。
同年5月には、来日中のメキシコ人レスラーを相手にREINA世界女子王座の防衛に成功。5月17日にはギタナを、5月29日にはレイナ・イシスを破った。6月13日には藤ヶ崎矢子を相手に3度目の防衛に成功した。同年8月31日、プロモーションからの離脱を控える中で、華名はREINA世界女子王座を返上した。彼女のREINAでの最後の試合は9月4日に行われ、朱里と組んで小波と真琴のタッグに勝利した。この試合を最後に、プロレス活動の無期限休止を発表した。
2.2.6. アメリカインディーサーキットでの活動
2011年8月、華名はアメリカの女子プロレス団体SHIMMERとチカラに参戦することを発表した。SHIMMERデビューとなった10月1日の「Volume 41」では、序盤のセグメントでサラ・デル・レイやチアリーダー・メリッサからの歓迎を無視し、ヒールとして登場。その後、ミア・イムに勝利した。同日の「Volume 42」ではサラ・デル・レイにサブミッションで勝利。翌日の「Volume 43」ではチアリーダー・メリッサに敗れたが、「Volume 44」ではルフィストに勝利し、試合後に握手を交わした。
2012年3月17日の「Volume 45」では、ベビーフェイス(善玉)としてルフィストと組んでタッグマッチに出場。同日の「Volume 46」ではメルセデス・マルティネスにシングルマッチで敗れた。翌日の「Volume 47」ではルフィストと組んでクリスティーナ・フォン・エリーとミスチフに勝利し、「Volume 48」ではケリー・スケーターに勝利した。
同年10月27日、SHIMMERに復帰した際、「Volume 49」でルフィストと組んでカナディアンNINJAsのニコール・マシューズとポーシャ・ペレスのタッグのSHIMMERタッグ王座に挑戦したが失敗した。同日夜の「Volume 50」では、浜田文子にシングルマッチで敗れた。翌日夜の「Volume 51」ではアテナにシングルマッチで勝利。その後、ルフィストと組んで「Volume 52」でメイド・イン・シン(アリシン・ケイとテイラー・メイド)に勝利した。
2013年には、マルチカラーのピエロのようなメイクを施したビジュアルを導入し、数年間の彼女のペルソナの定番となった。同年4月6日の「Volume 53」のインターネットペイ・パー・ビューでは、ルフィストと組んでカナディアンNINJAsのSHIMMERタッグ王座に再び挑戦するも失敗。1週間後の4月13日、「Volume 54」の収録でシングル戦に復帰し、ジェシー・マッケイに勝利。同日夜の「Volume 55」ではマディソン・イーグルスにシングルマッチで敗れた。翌日、「Volume 56」で浜田文子、メルセデス・マルティネス、山縣優とのフェイタルフォーウェイマッチに勝利。その後、「Volume 57」でカミカゼに勝利し、週末の試合を終えた。同年10月19日にはSHIMMERに復帰した際、「Volume 58」でルフィストと組んでSHIMMERタッグ王座に挑戦したが、防衛王者であるグローバル・グリーン・ギャングスターズに敗れた。2014年10月18日、SHIMMERでの最後の試合となった「Volume 67」でチアリーダー・メリッサのSHIMMER王座に挑戦したが、敗れた。
2.2.7. Wrestling New Classic (WNC)でのトラブル
2012年4月5日、TAJIRIは華名をSMASHの後継団体であるWNCのロースターの一員として発表した。華名は2006年にAtoZに所属して以来初めてWNCを自身の所属団体とする契約を結び、フリーランスとしての活動を終えたが、この契約はプロレスリングWAVEでの活動や自主興行の継続を認めるものであった。
4月26日のWNC初のイベント「Before the Dawn」では、華名と紫雷美央がタッグマッチで真琴と朱里に勝利し、華名が真琴からピンフォールを奪った。試合後、華名が真琴を罵倒したため、紫雷美央が真琴に味方し、華名を裏切った。5月24日のWNC第2弾イベント「Starting Over」では、華名は朱里と組んで、真琴と負傷した紫雷美央の代役である里歩のタッグに対し、真琴からサブミッションで勝利した。2日後の「Go! Go! West: Osaka」では、華名は真琴をシングルマッチで再びサブミッションで破った。6月17日、華名はWNCとの共同で初の「カナプロ」イベントを開催し、山本喧一と組んで池田大輔と朱里のタッグに敗れた。
華名と真琴の抗争は6月22日のWNCのイベントでも続き、真琴はタッグマッチで華名からピンフォールを奪い、連敗をストップした。7月15日、華名は紫雷美央にシングルマッチで勝利。試合後、手首を骨折してリングサイドにいた真琴と再び激しい口論となった。同イベントの後半、華名と朱里の不安定な同盟関係は終わりを迎えた。朱里は浜田文子に敗れた後、華名を裏切り、AKIRAとスターバックが結成した新たなヒールユニットに加入した。
華名と朱里の対戦は8月2日のWNCイベントで実現し、朱里、AKIRA、スターバックは華名、大原はじめ、TAJIRI組に勝利した。8月30日、華名、マイキー・ウィップレック、TAJIRIは有刺鉄線ボードデスマッチで朱里、AKIRA、スターバックに敗れた。翌日大阪での再戦でも敗れたが、9月1日には豊橋での再々戦で勝利し、ヒールトリオの連勝を止めた。9月17日のWNCイベントのメインイベントでは、華名はTAJIRIと組んで朱里とAKIRAのタッグと対戦し、朱里からサブミッションで勝利した。
翌日の記者会見で、華名と真琴は11月9日に新宿FACEで合同自主興行「まこかなプロ」を開催することを発表した。9月20日、華名は後楽園ホールでAKIRAとの男女混合マッチで敗れた。11月9日、華名と真琴は初の「まこかなプロ」イベントを開催。序盤では、華名と真琴がアイスリボンの星ハム子と志田光のタッグに勝利した。メインイベントでは、華名とセンダイガールズプロレスリングの花月が朱里とJWPの中島安里紗と対戦し、30分時間切れ引き分けに終わった。この試合は、華名と中島がAtoZ時代にキャリアをスタートさせて以来初の対戦として宣伝された。
11月26日、華名はWNC女子王座トーナメントに参戦し、1回戦で真琴に勝利した。しかし、2日後には準決勝で野崎渚に敗れた。この試合では、野崎の株式会社DQNの仲間である黒潮イケメン二郎が介入した。試合後、華名はWNCを退団し、再びフリーランスとなった。彼女は数ヶ月間給料が支払われず、プロモーションの社長である高島勉と連絡が取れなかったと主張した。WNCは12月4日に華名との契約を正式に解除した。
3. WWEキャリア
華名がWWEと契約したことは、2015年9月8日に東京で開かれた記者会見で正式に発表された。これにより彼女は、ブル中野以来20年以上ぶりにWWEと契約した日本人女子レスラーとなった。
3.1. NXT女子王座時代

WWEの育成ブランドであるNXTに加入した彼女は、「アスカ」というリングネームを名乗るようになった。2015年9月23日にNXTでデビューし、デイナ・ブルックとエマとの対立で幕を開けた。10月7日に行われたNXTテイクオーバー:リスペクトでのデビュー戦でデイナ・ブルックに勝利。その後も連勝を重ね、メインロースターのキャメロンを含む様々なレスラーに勝利し、デイナ・ブルックとエマとの抗争を続けた。NXTテイクオーバー:ロンドンではエマに勝利し、そのパフォーマンスはデイブ・メルツァーら批評家から「素晴らしい」と高く評価された。
2016年1月13日のNXTでは、NXT女子王座の次期挑戦者を決めるバトルロイヤルに出場するが、エヴァ・マリーに最後に失格させられた。しかし、2月10日の放送では、ベイリーを襲撃するエヴァ・マリーとナイア・ジャックスを救出。その後、ベイリーと対峙し、王座への挑戦を宣言した。同年4月1日、NXTテイクオーバー:ダラスでベイリーにテクニカルサブミッションで勝利し、NXT女子王座を獲得。さらに、6月8日のNXTテイクオーバー:ジ・エンドではナイア・ジャックスを相手に防衛に成功した。2016年夏、ビンス・マクマホンは2016年のWWEドラフトでアスカをメインロースターに昇格させることを検討したが、NXTの責任者であるトリプルHはアスカを「NXTが失うことのできない唯一の選手であり、ブランドの「錨(アンカー)」である」と述べ、彼を思いとどまらせた。
その後もNXTに留まり、ベイリーとの抗争を再燃させ、8月20日のNXTテイクオーバー:ブルックリンIIで再びベイリーに勝利した。11月19日のNXTテイクオーバー:トロントでは復帰したミッキー・ジェームスを相手に防衛に成功したが、試合後に対戦相手との握手を拒否し、ヒール(悪役)としての振る舞いを見せ始めた。2017年1月11日のNXTでは、ジ・アイコニック・デュオ(ビリー・ケイとペイトン・ロイス)に圧倒された際、ニッキー・クロスが助けに入るも、アスカ自身もクロスに襲われた。アスカは3人全員を相手に防衛戦を要求し、1月28日のNXTテイクオーバー:サンアントニオで行われたフェイタルフォーウェイマッチで勝利した。同年2月上旬、アスカはNXT史上最長のシングル王座保持記録を達成した。同年3月には、負傷したナオミの代役として、マディソン・スクエア・ガーデンでの3月12日のショーを含むWWEのメインロースターのハウスショーで複数回試合を行った。この頃からWWEはアスカのNXT入団以来の「無敗記録」を大々的に宣伝し始めた。彼女はサブミッションやピンフォールで敗れたことは一度もなかったが、2016年1月のバトルロイヤルや、同年3月と5月のNXTハウスショーでのタッグマッチおよびフェイタルフォーウェイマッチでは、他のレスラーがピンフォールされたことでチームが敗れることがあった。
4月1日のNXTテイクオーバー:オーランドでエンバー・ムーンを相手に防衛に成功した際、審判をムーンに押し付けてフィニッシュムーブであるイクリプスを避けるなど、再びヒールらしい態度を見せた。その後、アスカはエンバー・ムーン、ニッキー・クロス、ルビー・ライオットを攻撃し、正式にヒールとしての地位を確立した。その結果、6月20日のNXTテイクオーバー:シカゴではニッキー・クロスとルビー・ライオットとのトリプルスレットマッチでタイトルを防衛した。同年6月には、ニッキー・クロスを相手にラストウーマン・スタンディングマッチで勝利し、NXT女子王座を保持した。この間、彼女はゴールドバーグの連勝記録(173連勝)やロッキン・ロビンの502日間のWWF女子王座保持記録を上回った。
8月19日、NXTテイクオーバー:ブルックリンIIIで復帰したエンバー・ムーンに勝利し、タイトルを防衛した。しかし、この試合中に右鎖骨を骨折し、6~8週間の欠場を余儀なくされた。このため、アスカは8月24日のNXT収録(9月6日放送)でNXT女子王座を返上し、510日間の王座保持期間に終止符を打った(WWE公式認定では523日間)。彼女の壮行式典では、NXTゼネラルマネージャーのウィリアム・リーガルが彼女を「WWE史上最高のチャンピオンの一人」と称し、WWEのメインロースターへの昇格交渉についても言及した。
3.2. メインロースターデビューと無敗記録
NXT卒業後、複数の告知映像が流れた後、2017年9月11日のRawでアスカがRawブランドに配属されることが発表された。約1ヶ月後の10月22日、TLC: Tables, Ladders & Chairsにて、エマを相手にメインロースターでのデビュー戦を飾り、勝利を収めた。

11月19日のサバイバー・シリーズでは、Rawチームの代表としてサバイバー・シリーズ・マッチに出場し、タミーナとナタリヤを最後に排除し、唯一の生き残り(sole survivor英語)となった。その後数ヶ月間、アスカはデイナ・ブルック(女子シングルマッチでWWE史上最速の5秒でのサブミッション勝利記録を樹立)、アリシア・フォックス、Raw女子王者アレクサ・ブリス(ノンタイトルマッチ)といった選手を破り、連勝記録を継続した。
2018年1月28日、ロイヤルランブルで、史上初の女子ロイヤルランブル・マッチに出場し、25番目に入場。かつてのライバルであるエンバー・ムーンを排除し、最後にニッキー・ベラを排除することで優勝を果たし、レッスルマニア34での女子王座戦の権利を獲得した。1月から2月にかけてはナイア・ジャックスと抗争を開始。ナイアはアスカの試合中や試合前に彼女を襲撃し、レッスルマニアでのタイトル挑戦権を要求した。2月25日のエリミネーション・チェンバーでナイア・ジャックスに勝利し、3月5日のRawでも再び勝利した。
並行して、彼女はチャリティ団体「Rescue Dogs Rock英語」を支援する目的で、ザ・ミズをパートナーにミックスド・マッチ・チャレンジトーナメントに参加。カーメラ&ビッグ・E、サシャ・バンクス&フィン・ベイラー、アレクサ・ブリス&ブラウン・ストローマン、そして決勝でシャーロット・フレアー&ボビー・ルードに勝利し、トーナメントを制覇した。
レッスルマニア34でシャーロット・フレアーのSmackDown女子王座に挑戦することを選択したアスカは、4月8日の同イベントでシャーロットにサブミッションで敗北。これにより、NXT時代から続いたWWEでの無敗記録は914日で途絶えた。これは約2年半にわたる大記録であった。
3.3. スマックダウン女子王座獲得
2018年4月17日、2018年WWEスーパースター・シェイクアップの一環として、アスカはスマックダウンブランドに移籍。ビリー・ケイとペイトン・ロイスによるジ・アイコニックスの襲撃からシャーロット・フレアーとベッキー・リンチを救出し、SmackDownデビューを果たした。

5月15日のSmackDownでは、SmackDownゼネラルマネージャーのペイジが、アスカがカーメラのSmackDown女子王座にマネー・イン・ザ・バンクで挑戦することを発表した。しかし、6月17日の同イベントで、復帰したジェームス・エルスワースの介入によりカーメラに敗れ、WWEでの初の公式なピンフォール負けを喫した。ペイジは7月15日のエクストリーム・ルールズでアスカに再戦の機会を与えたが、またしてもエルスワースの妨害により敗北した。
9月には、ペイトン・ロイスに勝利した後にジ・アイコニックスに襲撃されたナオミを助けることで、両者のタッグが結成された。10月6日のWWEスーパー・ショーダウンでは、アスカとナオミのタッグはジ・アイコニックスに敗れた。この頃、アスカとザ・ミズが「ミックスド・マッチ・チャレンジシーズン2」に参加することが発表されたが、彼らは準決勝でR-トゥルースとカーメラのタッグに敗れた。11月18日、アスカはサバイバー・シリーズにSmackDownチームの一員として参加したが、チームSmackDownから最後に排除された女子選手となった。
11月末、アスカはバトルロイヤルに勝利し、ベッキー・リンチとシャーロット・フレアーを相手に、史上初の女子TLCマッチでSmackDown女子王座に挑戦することとなった。12月16日のTLCイベントにおいて、ロンダ・ラウジーが介入し、リンチとフレアーの両者を梯子から突き落としたことで、アスカは自身初のSmackDown女子王座を獲得した。これは、両ブランド合同のイベントで女子王座戦がメインイベントとなった史上初の快挙でもあった。
王座在位中、アスカはTLC直後のSmackDownでナオミ、ロイヤルランブルでベッキー・リンチ、ファストレーンでマンディ・ローズといった様々な挑戦者を退けた。しかし、3月26日のSmackDownで、急遽組まれたシャーロット・フレアーとの試合で王座を失い、100日間の保持期間に終止符を打った。当初レッスルマニア35では、カーメラ、マンディ・ローズ、ナオミ、ソーニャ・デヴィルによるフェイタルフォーウェイマッチの勝者を相手にSmackDown女子王座を防衛する予定であったが、直前で中止されたとされている。
3.4. カブキ・ウォリアーズの結成

2019年4月16日のSmackDownでは、ペイジがアスカとカイリ・セイン(当時NXTから昇格)からなる新設女子タッグチームのマネージャーを務めることを発表した。後に「カブキ・ウォリアーズ(The Kabuki Warriors英語)」と名付けられたこのタッグチームは、WWE女子タッグ王座を保持するジ・アイコニックスとの抗争にすぐに突入した。数週間にわたり対戦を避けていたジ・アイコニックスに対し、カブキ・ウォリアーズはWWEの東京ツアーで勝利を収め、タイトルマッチの権利を獲得した。7月16日のSmackDownで行われたタイトルマッチでは、ジ・アイコニックスがカウントアウトで王座を防衛した。同年8月には、カブキ・ウォリアーズはアレクサ・ブリスとニッキー・クロスから王座を奪うことに失敗した。
短い休止期間の後、カブキ・ウォリアーズは9月に復帰し、ファイアー・アンド・デザイア(マンディ・ローズとソーニャ・デヴィル)に勝利した。そして10月6日のヘル・イン・ア・セルのペイ・パー・ビューで、アスカがニッキー・クロスにグリーンミストを使用したことで、ついにアレクサ・ブリスとニッキー・クロスから女子タッグ王座を奪取した。翌日のRawでは、カブキ・ウォリアーズはベッキー・リンチとシャーロット・フレアーに対しても挑発的なプロモを行い、ノンタイトルマッチで勝利し、ヒール(悪役)への転向を完全に決定づけた。この試合でも再びグリーンミストが勝利の決め手となった。
10月中旬に行われた2019年ドラフトにより、アスカとカイリ・セインはともにRawブランドにドラフトされた。さらに、アスカがマネージャーのペイジにグリーンミストを噴射したことで、ペイジとの関係も終了し、ヒールとしての立場を強固なものとした。彼女はベッキー・リンチとのライバル関係を再燃させ、Raw女子王座戦に挑戦する機会を得るが、2020年のロイヤルランブルでタイトルを獲得することはできなかった。2月3日のRawではアスカが王座再戦を要求し、リンチがこれを受諾したが、翌週のRawでも再びタイトル獲得に失敗した。
レッスルマニア36の初日、カブキ・ウォリアーズはアレクサ・ブリスとニッキー・クロスにWWE女子タッグ王座を奪われ、181日間の保持期間に終止符を打った。これは当時の同王座の最長記録であった。4月13日のRawでは、アスカがルビー・ライオットに勝利し、マネー・イン・ザ・バンク・ラダーマッチへの出場権を獲得した。そして、同名のイベントで女子マネー・イン・ザ・バンク・ラダーマッチで勝利した。
3.5. グランドスラム達成と subsequent タイトル獲得
マネー・イン・ザ・バンク直後のRawで、ベッキー・リンチが妊娠によりRaw女子王座を返上することを発表した。そして、マネー・イン・ザ・バンク・ラダーマッチは、王座戦契約ではなく、空位となったRaw女子王座そのものを争うものであったと明かし、アスカが新たな王者となった。これにより、アスカは女子グランドスラム王者としてはベイリーに次ぐ2人目、女子トリプルクラウン王者としてはベイリーとアレクサ・ブリスに次ぐ3人目となり、WWEでの偉業を達成した。彼女は発表後、ベッキー・リンチを抱擁し、その過程でベビーフェイス(善玉)へと転向した。
翌週のRawで、カブキ・ウォリアーズは正式にベビーフェイスとなり、復帰したナイア・ジャックスとの抗争を開始した。バックラッシュではナイア・ジャックスに対し両者カウントアウトにより防衛に成功した。翌日のRawで組まれた再戦でも、アスカはタイトルを防衛した。
ザ・ホラー・ショー・アット・エクストリーム・ルールズでは、サシャ・バンクスとのRaw女子王座戦で、アスカがグリーンミストでレフェリーを間接的に目くらましさせ、ベイリーがレフェリーのシャツを奪って自身がピンフォールを数えるという非公式な形で王座を失ったかに見えた。しかし、翌日のRawでステファニー・マクマホンが試合結果をノーコンテストとし、アスカが王座を保持していると裁定した。翌週の再戦では、ピンフォール、サブミッション、カウントアウト、失格、介入のいずれでも王座移動となる特別ルールが設定された。試合中、ベイリーがカイリ・セインを襲撃した際、アスカはタイトルとカイリのどちらかを選択することを迫られ、カイリの救出を選択し、カウントアウト負けにより王座を失った。この試合はカイリ・セインのWWEでの最後の登場となり、彼女は新婚の夫と共に日本へ帰国するため退団し、カブキ・ウォリアーズは解散した。
サマースラム2020では、アスカはSmackDown女子王座を保持するベイリーと、Raw女子王座を保持するサシャ・バンクスに同日挑戦。ベイリーには敗れたものの、サシャ・バンクスに勝利しRaw女子王座を奪還。これにより、アスカはWWEのタイトルを複数回獲得した初の女子選手となった。クラッシュ・オブ・チャンピオンズではゼリーナ・ベガに勝利しRaw女子王座を防衛。同日夜にはベイリーのSmackDown女子王座に対するオープンチャレンジを受け、失格(disqualification英語)により勝利した。翌日のRawでは、ゼリーナ・ベガとのRaw女子王座戦で再び防衛に成功。同年10月5日のRawでは、デイナ・ブルック、マンディ・ローズと組んで、ゼリーナ・ベガ、ナタリヤ、ラナ組に勝利した。10月19日のRawでは、ラナを相手にタイトルを防衛した。
サバイバー・シリーズ2020ではサシャ・バンクスに敗れた。TLC: Tables, Ladders & Chairsでは、復帰したシャーロット・フレアーと組んでナイア・ジャックスとシェイナ・バズラーを破り、WWE女子タッグ王座を獲得。これによりアスカは二冠王者となった。しかし、ロイヤルランブル2021でナイア・ジャックスとシェイナ・バズラーにタイトルを奪われた。
レッスルマニア37の2日目には、リア・リプリーにRaw女子王座を奪われ、231日間の2度目の王座保持期間に終止符を打った。レッスルマニア直後のRawでは、リプリーとの再戦が組まれたが、シャーロット・フレアーが両者を襲撃したため、ノーコンテストに終わった。5月3日のRawでは、レッスルマニア・バックラッシュでリア・リプリーとのRaw女子王座戦が組まれ、その後WWEの役員であるソーニャ・デヴィルがフレアーを王座戦に追加し、トリプルスレットマッチとなった。このイベントでは、アスカはタイトルを獲得できず、リプリーにピンフォールを奪われた。
6月21日のRawでは、エヴァ・マリーとドゥードロップのタッグを破り、女子マネー・イン・ザ・バンク・ラダーマッチへの出場権を獲得したが、マネー・イン・ザ・バンク2021では勝利できなかった。これが2021年の彼女にとって最後の試合となり、負傷により活動を休止した。2021年のWWEドラフトではドラフトされず、フリーエージェントと宣言された。
3.6. ダメージ・コントロールへの加入
9ヶ月間の負傷休養の後、2022年4月25日のRawでアスカは復帰し、ベッキー・リンチと対峙した。5月9日のRawでは、WWEの役員であるアダム・ピアースがRaw女子王者ビアンカ・ベレアとの王座挑戦者決定戦をアスカに与えた。リンチはこれに不満を抱き、後に両者の試合中に両者を襲撃した。翌週、アスカはグリーンミストを使ってリンチに勝利し、ヘル・イン・ア・セルでのRaw女子王座戦の権利を獲得した。しかし、翌週のRawでの再戦でリンチがアスカに勝利し、リンチが王座戦に追加され、トリプルスレットマッチとなった。このイベントでは、ビアンカ・ベレアが王座を防衛した。6月20日のRawでは、アスカがリンチに勝利し、女子マネー・イン・ザ・バンク・ラダーマッチへの出場権を獲得したが、マネー・イン・ザ・バンク2022では勝利できなかった。
10月31日のRawでは、アレクサ・ブリスと組んでWWE女子タッグ王座保持者のダコタ・カイとイヨ・スカイのタッグを破り、タッグ王座を獲得した。しかし、クラウン・ジュエルでの再戦では、ニッキー・クロスの介入により、再びカイとスカイにタイトルを奪われた。サバイバー・シリーズ:ウォーゲームズでは、アスカ、ビアンカ・ベレア、アレクサ・ブリス、ベッキー・リンチ、ミア・イムのチームが、ダメージ・コントロール(ベイリー、ダコタ・カイ、イヨ・スカイ)、ニッキー・クロス、リア・リプリーのチームをウォーゲームズ・マッチで破った。
2023年1月、短い休養の後、アスカは2023年女子ロイヤルランブルマッチに、日本のインディー時代「華名」を彷彿とさせる新たなルックで復帰した。彼女は3位に終わり、優勝者であるリア・リプリーに排除された。翌月のエリミネーション・チェンバーでは、カーメラ、リヴ・モーガン、ナタリヤ、ニッキー・クロス、ラケル・ロドリゲスを破り、エリミネーション・チェンバー・マッチで勝利し、レッスルマニア39でのRaw女子王座戦(対ビアンカ・ベレア)の権利を獲得した。これにより、彼女はロイヤルランブル、マネー・イン・ザ・バンク、エリミネーション・チェンバーの三大主要試合全てで勝利した初の女性選手となった。レッスルマニア39の2日目、アスカはビアンカ・ベレアからタイトルを獲得することはできなかった。
2023年のWWEドラフトにより、アスカはSmackDownブランドにドラフトされた。5月12日のSmackDownでは、グリーンミストを使ってビアンカ・ベレアを襲撃した。両者の抗争はナイト・オブ・チャンピオンズでの王座再戦へと発展し、アスカはビアンカ・ベレアを破り、3度目のRaw女子王座を獲得した。これにより、ビアンカ・ベレアの420日間にわたる最長王座保持期間に終止符が打たれた。6月9日のSmackDownでは、このタイトルがWWE女子王座に改称され、アスカには新しいデザインのチャンピオンシップベルトが贈呈されたが、シャーロット・フレアーに割り込まれ、王座戦を挑まれた。アスカはこれを受諾し、ビアンカ・ベレアの介入による失格勝利となった。サマースラム2023では、シャーロット・フレアーも加わったトリプルスレットマッチでビアンカ・ベレアに王座を奪われ、70日間の3度目の王座保持期間に終止符を打った。その後、ファストレーン2023でイヨ・スカイとフレアーを相手に行われたトリプルスレットマッチで王座奪還に失敗した。

2023年11月10日のSmackDownでの6人タッグマッチ(アスカ、ビアンカ・ベレア、シャーロット・フレアー対ダメージ・コントロールのベイリー、イヨ・スカイ、そしてクラウン・ジュエルで復帰しその夜に加入したカイリ・セイン)の最中に、アスカは自身のチームメイトを裏切り、カイリ・セインと再合流すると同時にダメージ・コントロールに加入した。サバイバー・シリーズ:ウォーゲームズでは、ダメージ・コントロールのチームは、ビアンカ・ベレア、シャーロット・フレアー、ベッキー・リンチ、ショットジのチームにウォーゲームズ・マッチで敗れた。
2024年1月26日のSmackDownで、アスカとカイリ・セインは再びカブキ・ウォリアーズとして出場し、カタナ・チャンスとケイデン・カーターを破り、WWE女子タッグ王座を2度目(アスカ個人としては史上最多となる4度目)獲得した。カブキ・ウォリアーズは2月5日のRawでチャンスとカーターを相手に、エリミネーション・チェンバー:パースのキックオフショーでキャンディス・レラエとインディ・ハートウェルを相手に、そして3月5日のNXTロードブロックでテイタム・パクリーとNXT女子王者ライラ・ヴァルキュリアを相手に、それぞれ防衛に成功した。
レッスルマニアXLのナイト1では、ダメージ・コントロール(アスカ、カイリ・セイン、ダコタ・カイ)は、ビアンカ・ベレア、ナオミ、ジェイド・カーギルの3人タッグに敗れた。2024年WWEドラフトにより、アスカはダメージ・コントロールの一員としてRawブランドにドラフトされた。5月4日のバックラッシュ・フランスでは、アスカとカイリ・セインはビアンカ・ベレアとジェイド・カーギルにタッグ王座を奪われ、99日間の2度目の保持期間に終止符を打った。その2日後のRawで、アスカは数ヶ月前から膝の怪我に苦しんでおり、手術が成功したことを明らかにした。
4. レスリングスタイルとペルソナ
アスカのリング上でのスタイルは、打撃、サブミッション、テクニカルなレスリングが見事に融合しており、その多才さで知られている。彼女は、相手を翻弄するコミカルな動きから一転して、容赦ない攻撃を繰り出すことで、観客を魅了する。
4.1. インリングスタイル
彼女のインリングスタイルは、日本のシュートプロレスの影響を強く受けており、特に打撃技の鋭さとサブミッションの多様性が特徴である。グラウンドでの関節技や締め技、そして強力な蹴り技や膝蹴りなどを駆使して、相手を追い詰める。また、日本のプロレスでは一般的な受身の技術も高く、危険な技を受けながらも試合を成立させる能力に長けている。
4.2. シグニチャー・ムーブとフィニッシャー
アスカの象徴的な技の数々は、彼女の試合に不可欠な要素となっている。
- アスカロック(旧称:カナロック)
- グランドチキンウィング胴締めスリーパー。背後から相手の片腕をチキンウィングで捕らえ、そのままグラウンドに移行し、胴締め式で締め上げる変形スリーパーホールド。日本では「カナロック」、WWE所属後に「アスカロック」に改名された。絶対的フィニッシャーとしてWWE女子戦線で猛威を振るい、ダブル・チキンウイングから開脚式シットダウンで臀部を打ちつけてから移行するタイプなど、バリエーションも豊富である。
アスカロック - スピンキック
- 回し蹴りは、NXTにおいてフィニッシャーとして使用された。
- ジャンピング・ヒップアタック
- かつては「ビリケン」という名称であった。
- 各種打撃技
- 鋭いエルボー、バックハンド・チョップ、張り手、バックハンドブロー、ロシアンフック(バックハンドブローとのコンビネーションで使用)、ドロップキック(低空式も含む)、延髄斬り、バズソーキック(仰向けになった相手の上半身を起こして相手の左側頭部を強烈な右ミドルキックを打ち込み振り抜いた右足の甲で相手の頭部を蹴り飛ばす技)、ポップアップ・ニー・ストライク(走り込んできた相手に対し、アームドラッグの体勢で左脇下に右手を差し込んで軽く宙に担ぎ上げ、同時に左膝を振り上げ、相手の顔面をカチ上げる打撃技)、そして様々な蹴り技(ローキック、ミドルキック、ハイキック、ローリング・ソバット)。
- 各種関節技、締め技
- 腕固め、腋固め、クロス・アームバー(膝十字固めと複合させる場合もある)、ニーバー、アンクルロック、クロスヒールホールド、オモプラッタ、スリーパーホールド(通常と胴締め式)、三角絞め、ノゲイラチョーク。インディー時代には、足をクラッチした状態でのキャメルクラッチである「変形ゾンビ固め」や、グラウンドでのドラゴンスリーパー「カナブン」も使用していた。
- 各種投げ技
- スープレックス(高速ブレーンバスター、雪崩式ブレーンバスター)、ダブルアーム・スープレックス、DDT(リバースDDT)、ジャーマンスープレックス。
- 反則技
- グリーンミスト:毒霧はヒールターン後に使用頻度が増し、試合の決定打となることも多い。
4.3. ペルソナとキャッチフレーズ
アスカの個性的なペルソナは、彼女の多岐にわたる活動から生まれている。WWEでは「明日の女帝(The Empress of Tomorrow英語)」というキャラクターが確立されており、目の下に緑のピエロ風のメイクを施し、コミカルなダンスで相手をからかうことがある。マイクアピールでは独特の大阪弁を使い、観客を惹きつける。彼女の最も有名なキャッチフレーズは「No One Is Ready for ASUKA!英語(誰もアスカを倒す準備はできていない!)」であり、これは彼女の無敗記録を象徴する言葉として広く知られている。
5. 功績と影響
アスカはプロレス界全体、特に女子プロレスに多大な功績と影響を与えてきた。
5.1. 主な功績と受賞歴
彼女はキャリアを通じて数多くのタイトルを獲得し、個人賞を受賞している。
- WWE**
- WWE女子王座(3回)
- WWEスマックダウン女子王座(1回)
- NXT女子王座(1回)
- WWE女子タッグ王座(4回)- カイリ・セイン(2回)、シャーロット・フレアー(1回)、アレクサ・ブリス(1回)と獲得
- マネー・イン・ザ・バンク優勝(2020年)
- ロイヤルランブル優勝(2018年)
- トリプルクラウン王者(3人目)
- グランドスラム王者(2人目)
- ミックスド・マッチ・チャレンジ優勝(シーズン1、ザ・ミズと組んで)
- NXT年間表彰「年間最優秀女子選手」(2016年、2017年)、「年間総合最優秀選手」(2017年)
- WWE年間表彰「年間最優秀女子タッグチーム」(2019年、カイリ・セインと組んで)
- 2020年にはWWEの全スーパースターの中で最多試合数に出場した。
- 2021年にはWWE公式が選定する「WWE史上最も偉大な女子スーパースター50人」において5位に選出された。
- 日本団体**
- DDTプロレスリング:アイアンマンヘビーメタル級王座(5回)
- JWP女子プロレス:JWP認定無差別級王座(1回)
- NEO女子プロレス:NEO認定タッグ王座(1回、高橋奈苗と組んで)
- プロレスリングWAVE:WAVE認定タッグ王座(2回、栗原あゆみと紫雷美央とそれぞれ1回ずつ)
- プロレスリングWAVE:Catch the WAVE優勝(2011年)、Dual Shock Wave優勝(2011年、栗原あゆみと組んで)
- REINA女子プロレス:REINA世界女子王座(1回)、REINA世界タッグ王座(1回、中島安里紗と組んで)
- SMASH:SMASHディーバ王座(2回)
- 大阪女子プロレス:ワンデイタッグトーナメント優勝(2011年、紫雷美央と組んで)
- Kuzu Pro:Kuzu Pro ディーバ王座(1回)
- プロレスリング・イラストレイテッド (PWI)**
- 2017年の「PWI Female 50」で女子シングルレスラーの1位にランクインした。
- 2020年の「PWI Tag Team 50」でタッグチーム9位にランクイン(カイリ・セインと組んで)。
- 「年間最優秀女子選手」(2017年)。
- CBSスポーツ**
- 「WWE年間最優秀試合」(2018年、TLC 2018でのベッキー・リンチとシャーロット・フレアーとの試合)。
- ローリング・ストーン**
- 「年間最恐入場」(2017年)。
- スポーツ・イラストレイテッド**
- 2018年の「女子レスラー トップ10」で5位にランクイン。
5.2. 女子レスリングへの影響
アスカは、WWEにおける女子レスリングの認識を大きく変革した選手の一人として高く評価されている。彼女の登場は、それまでの「ディーヴァ」という言葉が持つ、セックスアピールを強調したエンターテイメント志向の強い女子レスラー像を打ち破り、男子レスラーと同等、あるいはそれ以上のアスリートとしての実力と存在感を確立する上で極めて重要な役割を果たした。
WWEが「女子革命」と銘打って女子部門の強化に本格的に着手し始めた時期に、アスカはシャーロット・フレアー、ベッキー・リンチ、ベイリーといった「フォー・ホースウィメン」と共に、女子レスリングをメインイベントレベルにまで引き上げる原動力となった。彼女の圧倒的な試合巧者ぶり、説得力のあるパフォーマンス、そして独特のキャラクターは、女子レスラーの地位向上に大きく貢献し、WWEにおける女子プロレスの新たな黄金時代を築く礎となったと言える。
6. その他の活動とプライベート
アスカはプロレスラーとしての活動以外にも、多岐にわたる分野で才能を発揮している。彼女の身長は1.61 m、体重は62 kgである。
6.1. メディア活動とビジネス
彼女はグラビアDVDを3作リリースしている。
- 『マニュフェスト』(2011年12月23日)
- 『マニュフェストII』(2012年12月28日)
- 『マニュフェスト Final』(2015年)
また、紫雷美央と共同でグラビアDVD『Sadistic Tails』(2012年)もリリースしている。
2019年9月には、自身のYouTubeチャンネル「KanaChanTV」を開設。ゲーム実況やライフスタイルコンテンツを日本語と英語のバイリンガルで配信しており、人気を博している。過去にはグラフィックデザイナーやゲームライターとして活動していた経験もあり、Microsoftのスポンサーを受け、Xbox 360のロゴをコスチュームに着用していたこともある。
2023年7月からは、自身のアーケードゲームを日本で製作していることを明かしており、500枚以上のゲーム基板を所有しているという。2025年に閉店する京都の有名ゲームセンター「a-cho」から約10枚の基板を購入したことも公表しており、その中には怒首領蜂最大往生のALL-陰が記録された基板も含まれている。これらは今後、横浜のゲームセンターに貸し出して稼働させる予定である。
6.2. 私生活
アスカは母親である。これは、ベッキー・リンチやナオミが公に言及している。
2021年のET Canadaのインタビューでは、自身が経験した人種差別について語り、COVID-19パンデミック中におけるアジア系住民への反感の高まりに対する見解を表明している。彼女は「憎悪を抱くのは時間の無駄」だと語った。
7. 入場テーマ曲
アスカがキャリアで使用した主な入場テーマ曲は以下の通り。
- You Can't Hide英語 - 現在使用中
- Warriors英語
- The Future英語
- 華ノ路 - オリジナル楽曲(トリプル・テイルズ.S『Sadism』に収録)。
- 太陽は昇る - ゲームミュージック『大神』より。
- 情熱浪漫乙女 - オリジナル楽曲。復帰後のテーマ曲として使用。
- 檄!帝国華撃団 - ゲームミュージック『サクラ大戦』より。
8. 獲得タイトルと受賞歴
アスカがプロレスキャリア中に獲得した全てのタイトルと受賞歴を以下に示す。
団体/受賞団体 | タイトル/受賞歴 | 獲得回数 | 獲得日/受賞年 |
---|---|---|---|
WWE | |||
WWE | WWE女子王座 | 3回 | 2020年5月10日、2020年8月23日、2023年5月27日 |
WWE | WWEスマックダウン女子王座 | 1回 | 2018年12月16日 |
WWE | NXT女子王座 | 1回 | 2016年4月1日 |
WWE | WWE女子タッグ王座 | 4回 | 2019年10月6日 (w/ カイリ・セイン), 2020年12月20日 (w/ シャーロット・フレアー), 2022年10月31日 (w/ アレクサ・ブリス), 2024年1月26日 (w/ カイリ・セイン) |
WWE | Ms.マネー・イン・ザ・バンク | 1回 | 2020年 |
WWE | ロイヤルランブル優勝 | 1回 | 2018年 |
WWE | 女子トリプルクラウン王者 | (3人目) | 2020年5月10日 |
WWE | 女子グランドスラム王者 | (2人目) | 2020年5月10日 |
WWE | ミックスド・マッチ・チャレンジ優勝 | 1回 | 2018年 (w/ ザ・ミズ) |
WWE | NXT年間表彰「年間最優秀女子選手」 | 2回 | 2016年、2017年 |
WWE | NXT年間表彰「年間総合最優秀選手」 | 1回 | 2017年 |
WWE | WWE年間表彰「年間最優秀女子タッグチーム」 | 1回 | 2019年 (w/ カイリ・セイン) |
WWE | 最多試合数出場 | 1回 | 2020年 (全スーパースター中) |
WWE | 「WWE史上最も偉大な女子スーパースター50人」 | 5位 | 2021年 |
CBSスポーツ | WWE年間最優秀試合 | 1回 | 2018年 (vs. ベッキー・リンチ & シャーロット・フレアー) |
日本インディー団体 | |||
DDTプロレスリング | アイアンマンヘビーメタル級王座 | 5回 | 2012年3月11日、2012年4月8日(4回)、2012年4月30日 |
JWP女子プロレス | JWP認定無差別級王座 | 1回 | 2013年8月18日 |
JWP女子プロレス | JWP年間最優秀試合 | 1回 | 2013年 (vs. 中島安里紗) |
JWP女子プロレス | JWPエネミー賞 | 1回 | 2013年 |
Kuzu Pro | Kuzu Pro ディーバ王座 | 1回 | 2012年9月2日 |
NEO女子プロレス | NEO認定タッグ王座 | 1回 | 2009年10月10日 (w/ 高橋奈苗) |
大阪女子プロレス | ワンデイタッグトーナメント優勝 | 1回 | 2011年 (w/ 紫雷美央) |
プロレスリングWAVE | WAVE認定タッグ王座 | 2回 | 2011年10月30日 (w/ 栗原あゆみ), 2013年4月21日 (w/ 紫雷美央) |
プロレスリングWAVE | Catch the WAVE優勝 | 1回 | 2011年 |
プロレスリングWAVE | Dual Shock Wave優勝 | 1回 | 2011年 (w/ 栗原あゆみ) |
REINA女子プロレス | REINA世界女子王座 | 1回 | 2014年12月26日 |
REINA女子プロレス | REINA世界タッグ王座 | 1回 | 2014年11月20日 (w/ 中島安里紗) |
REINA女子プロレス | REINA世界タッグ王座トーナメント優勝 | 1回 | 2014年 (w/ 中島安里紗) |
SMASH | SMASHディーバ王座 | 2回 | 2011年9月8日、2012年1月19日 |
SMASH | SMASHディーバ王座トーナメント優勝 | 1回 | 2011年 |
主要メディア/雑誌 | |||
プロレスリング・イラストレイテッド | PWI Female 50 1位 | 1回 | 2017年 |
プロレスリング・イラストレイテッド | PWI Tag Team 50 9位 | 1回 | 2020年 (w/ カイリ・セイン) |
プロレスリング・イラストレイテッド | 年間最優秀女子選手 | 1回 | 2017年 |
ローリング・ストーン | 年間最恐入場 | 1回 | 2017年 |
スポーツ・イラストレイテッド | 年間女子レスラー トップ10(5位) | 1回 | 2018年 |