1. 幼少期と背景
アドリス・ガルシアは1993年3月2日にキューバのシエゴ・デ・アビラ州で生まれた。彼はシエゴ・デ・アビラのスポーツイニシエーションスクールであるマリーナ・サミュエル・ノーブル(陸上競技選手の養成専門学校)を卒業後、2011年から2012年シーズンにティグレス・デ・シエゴ・デ・アビラの選手として、キューバの国内リーグ「セリエ・ナシオナル・デ・ベイスボル」でプロデビューを果たした。兄のアドニス・ガルシアもプロ野球選手である。
2. プロ経歴
アドリス・ガルシアのプロ野球選手としてのキャリアは、キューバ国内での活躍から日本プロ野球を経て、最終的にメジャーリーグベースボールでの成功に至るまでの複数の段階を経て形成された。
2.1. キューバ時代
ガルシアは2011年から2016年までティグレス・デ・シエゴ・デ・アビラに所属し、セリエ・ナシオナル・デ・ベイスボルでプレーした。彼は2015年のパンアメリカン競技大会では野球キューバ代表に選出され、国際舞台でも経験を積んだ。また、2016年2月にはカリビアンシリーズにシエゴ・デ・アビラの補強選手として出場し、同年3月にはタンパベイ・レイズとの親善試合でキューバ代表としてプレーした。キューバ国内リーグでは、2015年と2016年に打点王、2014年と2015年には最多安打のタイトルを獲得している。
2.2. 日本プロ野球(NPB)時代
2016年4月21日、ガルシアはNPBの読売ジャイアンツへの派遣が発表された。同年6月に一軍デビューを果たしたが、4試合に出場して7打数無安打という成績で二軍落ちとなり、8月18日に契約解除された。その後、8月20日にキューバへ帰国する予定であったが、経由地のフランスで消息を絶ち、MLB入りを目指して亡命した可能性が高いと報じられた。同年12月2日には、正式にアメリカ合衆国のフリーエージェントとして公示された。
巨人時代を振り返り、ガルシアは「一生懸命に練習したが、適応に時間がかかってしまった。ほとんど二軍暮らしだったが、巨人での経験にとても感謝している」と語っている。また、当時同僚だった外野手の長野久義について「慣れない日本で辛い思いをしている時に、いつも助けてくれたのは長野さんだった。腕を回して慰めてくれたこともあった。長野さんとの出会いは日本での成功体験だった」と述べ、感謝の意を表明している。
2.3. メジャーリーグベースボール(MLB)時代
キューバから亡命した後、アドリス・ガルシアはMLBへと舞台を移し、セントルイス・カージナルスとテキサス・レンジャーズでキャリアを築いていった。
2.3.1. セントルイス・カージナルス時代

2017年2月24日、ガルシアはセントルイス・カージナルスとマイナー契約を結び、スプリングトレーニングに招待選手として参加した。この年、彼はAA級スプリングフィールド・カージナルスとAAA級メンフィス・レッドバーズを行き来し、両チーム合計で打率.290、15本塁打、65打点を記録した。
2018年シーズンもAAA級メンフィスで開幕を迎え、8月6日にメジャー契約を結んでアクティブ・ロースター入りした。同年8月8日のマイアミ・マーリンズ戦で「8番・中堅手」として先発出場し、メジャーデビューを果たしたが、4打数無安打に終わった。メンフィスでは112試合で打率.256、22本塁打、71打点、10盗塁を記録したが、カージナルスでは21試合に出場し、17打数で2安打(うち二塁打1本)、1打点という成績だった。2019年はMLBでの出場がなく、オフの12月18日にDFAとなった。
2.3.2. テキサス・レンジャーズ時代
2019年12月21日、ガルシアは金銭トレードでテキサス・レンジャーズへ移籍した。2020年はレンジャーズで6打席のみの出場で無安打に終わった。
3. プレースタイルと人物
アドリス・ガルシアは走攻守三拍子揃った外野手として知られている。打撃面では強打者タイプであり、重要な局面で長打を放つ能力を持つ。守備面では、特にその強肩が魅力であり、2021年には154 km/hの本塁送球を記録し、監督からも称賛された。この強肩は、2023年のゴールドグラブ賞受賞にも繋がった。
4. 主要な受賞と栄誉
アドリス・ガルシアはプロキャリアを通じて、複数の個人賞と栄誉を獲得している。
- MLB**
- ゴールドグラブ賞(外野手部門):1回(2023年)
- リーグチャンピオンシップシリーズMVP:1回(2023年)
- ベーブ・ルース賞:1回(2023年)
- MLBプレイヤー・オブ・ザ・ウィーク:1回(2021年)
- オールMLBチーム(セカンドチーム外野手):1回(2023年)
- MLBオールスターゲーム選出:2回(2021年、2023年)
- キューバ国内リーグ**
- 打点王:1回(2015年、2016年)
- 最多安打:1回(2014年、2015年)
5. 私生活
アドリス・ガルシアには、8歳年上の兄アドニス・ガルシアがおり、彼もまた元プロ野球選手である。アドリス・ガルシアは、同じくキューバ出身のメジャーリーガーであるランディ・アロサレーナの娘のゴッドファーザーである。アロサレーナはガルシアよりも1年早くキューバから亡命し、カージナルスで最初のマイナーリーグ契約を結んだ選手である。アロサレーナは2023年7月にガルシアのことを「私にとっては兄弟のような存在だ」と語っており、二人の間に強い絆があることが示されている。
6. 詳細情報
6.1. 年度別打撃成績
年度 | 試合 | 打席 | 打数 | 得点 | 安打 | 二塁打 | 三塁打 | 本塁打 | 塁打 | 打点 | 盗塁 | 盗塁死 | 犠打 | 犠飛 | 四球 | 敬遠 | 死球 | 三振 | 併殺打 | 打率 | 出塁率 | 長打率 | OPS | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2011-2012 | CAV | 27 | 38 | 37 | 3 | 8 | 1 | 0 | 1 | 12 | 3 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 9 | 1 | .216 | .216 | .324 | .541 |
2012-2013 | 29 | 14 | 13 | 10 | 3 | 0 | 0 | 0 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 4 | 0 | .231 | .286 | .231 | .516 | ||
2013-2014 | 40 | 145 | 128 | 17 | 36 | 5 | 3 | 1 | 50 | 11 | 3 | 2 | 7 | 0 | 8 | 1 | 2 | 28 | 1 | .281 | .333 | .391 | .724 | |
2014-2015 | 85 | 378 | 342 | 62 | 110 | 14 | 3 | 12 | 166 | 53 | 11 | 14 | 6 | 4 | 20 | 1 | 6 | 67 | 5 | .322 | .366 | .485 | .851 | |
2016 | 巨人 | 4 | 7 | 7 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | .000 | .000 | .000 | .000 |
2018 | STL | 21 | 17 | 17 | 3 | 2 | 1 | 0 | 0 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 7 | 0 | .118 | .118 | .176 | .294 |
2020 | TEX | 3 | 7 | 6 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 4 | 0 | .000 | .143 | .000 | .143 |
2021 | 149 | 622 | 581 | 77 | 141 | 26 | 2 | 31 | 264 | 90 | 16 | 5 | 0 | 4 | 32 | 0 | 5 | 194 | 15 | .243 | .286 | .454 | .741 | |
2022 | 156 | 657 | 605 | 88 | 151 | 34 | 5 | 27 | 276 | 101 | 25 | 6 | 0 | 6 | 40 | 2 | 6 | 183 | 9 | .250 | .300 | .456 | .756 | |
2023 | 148 | 632 | 555 | 108 | 136 | 29 | 0 | 39 | 282 | 107 | 9 | 1 | 0 | 6 | 65 | 2 | 6 | 175 | 12 | .245 | .328 | .508 | .836 | |
2024 | 154 | 637 | 580 | 68 | 130 | 27 | 0 | 25 | 232 | 85 | 11 | 5 | 0 | 6 | 45 | 2 | 6 | 177 | 12 | .224 | .284 | .400 | .684 | |
CNS:4年 | 181 | 575 | 520 | 92 | 157 | 20 | 6 | 14 | 231 | 68 | 14 | 16 | 14 | 4 | 28 | 2 | 9 | 108 | 7 | .302 | .346 | .444 | .790 | |
NPB:1年 | 4 | 7 | 7 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | .000 | .000 | .000 | .000 | |
MLB:6年 | 631 | 2572 | 2344 | 344 | 560 | 117 | 7 | 122 | 1057 | 384 | 61 | 17 | 0 | 22 | 183 | 4 | 23 | 740 | 48 | .239 | .298 | .451 | .749 |
- 2024年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最高
6.2. 年度別守備成績
年度 | 球団 | 左翼(LF) | 中堅(CF) | 右翼(RF) | |||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
試合 | 刺殺 | 補殺 | 失策 | 併殺 | 守備率 | 試合 | 刺殺 | 補殺 | 失策 | 併殺 | 守備率 | 試合 | 刺殺 | 補殺 | 失策 | 併殺 | 守備率 | ||
2018 | STL | 4 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1.000 | 1 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1.000 | 7 | 1 | 0 | 1 | 0 | .500 |
2020 | TEX | 3 | 8 | 0 | 0 | 0 | 1.000 | - | - | ||||||||||
2021 | 9 | 7 | 0 | 0 | 0 | 1.000 | 79 | 206 | 7 | 3 | 1 | .986 | 51 | 112 | 9 | 1 | 2 | .992 | |
2022 | - | 57 | 105 | 2 | 1 | 0 | .991 | 93 | 164 | 8 | 4 | 1 | .977 | ||||||
2023 | - | 8 | 15 | 0 | 1 | 0 | .938 | 135 | 283 | 11 | 5 | 1 | .983 | ||||||
2024 | - | - | 131 | 253 | 5 | 4 | 3 | .985 | |||||||||||
MLB | 16 | 16 | 0 | 0 | 0 | 1.000 | 145 | 328 | 9 | 5 | 1 | .985 | 417 | 813 | 33 | 15 | 7 | .983 |
- 2024年度シーズン終了時
- 各年度の太字年はゴールドグラブ賞受賞
6.3. 記録
- NPB**
- 初出場:2016年6月16日、対東北楽天ゴールデンイーグルス3回戦(東京ドーム)、5回裏に田原誠次の代打で出場
- 初打席:同上、福山博之から空振り三振
- 初先発出場:2016年6月18日、対千葉ロッテマリーンズ1回戦(東京ドーム)、1番・左翼手で出場
- MLB**
- MLBオールスターゲーム選出:2回(2021年、2023年)
6.4. 背番号
- 79(2016年)
- 28(2018年)
- 53(2020年 - )
7. 関連項目
- 兄弟スポーツ選手一覧
- 中南米出身の日本プロ野球外国人選手一覧
- キューバ出身のメジャーリーグベースボール選手一覧
- 読売ジャイアンツの選手一覧
- メジャーリーグベースボールの選手一覧 G
- 亡命した野球選手の一覧