1. 生い立ちとアマチュア時代
トンプソンはテキサス州ヒースのロックウォール・ヒース高校に通学した。最終学年時には、投手として12勝3敗、防御率1.90の成績を収め、打者としては打率.504、15本塁打、58打点(131打席)を記録し、高校の強打の一塁手としても注目を集めた。この活躍により、『Baseball Americaベースボール・アメリカ英語』誌から高校のファーストチーム・オールアメリカンに選出された。
彼はテキサスクリスチャン大学(TCU)でカレッジベースボールの奨学金を得てTCUホーンフロッグス野球チームでプレーすることを確約していた。しかし、2012年のMLBドラフトの2巡目(全体91位)でデトロイト・タイガースから指名され、大学への進学を取りやめ、タイガースと53.20 万 USDの契約金でプロ入りを果たした。
2. プロ経歴
ジェイコブ・トンプソンはデトロイト・タイガースのマイナーリーグでプロキャリアをスタートさせ、複数の球団を渡り歩きながら、メジャーリーグ、KBOリーグ、そしてメキシカンリーグでプレーしてきた。
2.1. デトロイト・タイガース傘下時代
2012年、トンプソンはルーキー級のガルフ・コーストリーグ・タイガースでプロデビューを飾った。デビュー戦では4回を投げて1安打6奪三振を記録した。このシーズンは7試合に先発登板し、1勝2敗、防御率1.91、28回1/3で31奪三振の成績を残した。右打者に対する被打率は.125だった。
2013年には、A級のウェストミシガン・ホワイトキャップスでプレーし、17試合(うち16試合先発)に登板して3勝3敗、防御率3.13、83回1/3で91奪三振を記録した。
2014年のシーズンは、A+級のレイクランド・フライングタイガースでスタートし、フロリダ・ステートリーグのミッドシーズンオールスターに選出された。同年7月13日には、オールスター・フューチャーズゲームに出場し、勝利投手となった。その後、ダブルA級のエリー・シーウルブズに昇格した。

2.2. テキサス・レンジャーズ傘下時代
2014年7月23日、トンプソンはホアキム・ソリアとのトレードで、コーリー・クネイブルと共にテキサス・レンジャーズへ移籍した。レンジャーズ移籍後は、ダブルA級のフリスコ・ラフライダーズに配属された。2014年シーズンは3球団合計で25試合(うち24試合先発)に登板し、10勝5敗、防御率3.12、130奪三振の成績を残した。2014年シーズン終了後、MLB.comからレンジャーズ傘下のマイナーリーグ組織で6番目に優れたプロスペクトとして評価された。2015年にはテキサスリーグのミッドシーズンオールスターに選出された。
2.3. フィラデルフィア・フィリーズ時代
2015年7月31日、トンプソンはコール・ハメルズとジェイク・ディークマンとのトレードで、ニック・ウィリアムズ、ホルヘ・アルファーロ、アレク・アッシャー、マット・ハリソン、ジェラッド・アイコフと共にフィラデルフィア・フィリーズへ移籍した。移籍後はダブルA級のレディング・ファイティン・フィルズでプレーし、2球団合計で24試合に先発登板して11勝7敗、防御率3.73、112奪三振を記録した。2015年シーズン終了後、『ベースボール・アメリカ』誌からフィリーズ傘下で3番目に優れたプロスペクトとして評価された。
2016年には、トリプルA級のリーハイバレー・アイアンピッグスでプレーし、防御率2.50でリーグトップ、11勝でリーグ最多勝タイを記録した。この功績により、インターナショナルリーグの最優秀投手に選ばれた。また、インターナショナルリーグのポストシーズンオールスター、および『ベースボール・アメリカ』誌のトリプルAオールスターにも選出された。
2.3.1. メジャーリーグ時代
2016年8月6日、トンプソンはメジャーリーグに昇格し、同日のサンディエゴ・パドレス戦で先発としてメジャーデビューを果たしたが、4回1/3を投げて6失点し、敗戦投手となった。しかし、次の登板となった8月12日のコロラド・ロッキーズ戦では、シチズンズ・バンク・パークで10対6の勝利に貢献し、メジャー初勝利を挙げた。この試合の2回には、1イニングで4奪三振を記録した。ルーキーシーズンはメジャーで10試合に先発登板し、3勝6敗、防御率5.70、32奪三振の成績を残した。
2017年シーズンはフィリーズとリーハイバレーを行き来し、11試合(うち8試合先発)に登板して3勝2敗、防御率3.88、35奪三振を記録した。
2018年4月8日、マイアミ・マーリンズ戦で、20対1と大勝した試合の終盤に3イニングを無失点に抑え、自身初のMLBセーブを記録した。しかし、この登板直後にトリプルAに降格された。同年8月10日、ジャスティン・ボーアの加入に伴い、フィリーズからDFA(譲渡リストに掲載)となった。
2.4. ミルウォーキー・ブルワーズ傘下時代
2018年8月14日、フィリーズはトンプソンを金銭トレードでミルウォーキー・ブルワーズに放出し、ブルワーズは彼をトリプルA級のコロラドスプリングス・スカイソックスに降格させた。同年8月31日にはDFAとなり、9月3日には40人枠から外され、トリプルAに再契約された。シーズン終了後の11月2日にはフリーエージェント(FA)となった。
2.5. ロッテ・ジャイアンツ時代 (KBOリーグ)
2018年12月13日、トンプソンはKBOリーグのロッテ・ジャイアンツと1年90.00 万 USDの契約を結んだ。しかし、2019年6月9日にロッテからウェーバー公示され、契約解除となった。
2.6. デトロイト・タイガース復帰
2019年7月25日、トンプソンはデトロイト・タイガースとマイナー契約を再締結した。復帰後はハイAのレイクランド・フライングタイガースとダブルAのエリー・シーウルブズで合計7試合(うち5試合先発)に登板し、5勝0敗、防御率1.99、31回2/3で34奪三振という成績を収めた。同年11月4日にFAとなった。
2.7. ロサンゼルス・エンゼルス傘下時代
2020年1月22日、トンプソンはロサンゼルス・エンゼルスとマイナー契約を結び、スプリングトレーニングに招待選手として参加することになった。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、マイナーリーグのシーズンが中止されたため、2020年には試合で登板する機会がなかった。同年11月2日にFAとなった。
2.8. メキシカンリーグ時代
トンプソンはその後、メキシカンリーグに活躍の場を移し、複数のチームでプレーしている。
2.8.1. ユカタン・ライオンズ
2021年5月25日、トンプソンはメキシカンリーグのユカタン・ライオンズと契約した。2021年シーズンは11試合に先発登板し、4勝3敗、防御率3.02、59回2/3で35奪三振を記録した。翌2022年には、17試合(うち14試合先発)に登板したが、5勝4敗、防御率6.93、61イニングで49奪三振と苦戦した。しかし、ユカタン・ライオンズは2022年にメキシカンリーグチャンピオンシップで優勝し、トンプソンもその一員として貢献した。2023年には、ユカタンで18試合に先発登板し、6勝3敗、防御率2.71、89回2/3で83奪三振という好成績を収めた。
2.8.2. カリエンテ・デ・ドゥランゴ
2023年11月22日、トンプソンはホルヘ・カリーヨとのトレードでトロス・デ・ティフアナへ移籍した。しかし、2024年4月5日にはカリエンテ・デ・ドゥランゴへレンタル移籍した。ドゥランゴでは5試合に先発登板し、1勝2敗、防御率3.24、25イニングで16奪三振を記録した。
2.8.3. トロス・デ・ティフアナ
2024年5月28日、トンプソンはレンタル移籍からトロス・デ・ティフアナに復帰した。ティフアナでは5試合に先発登板したが、防御率8.35と苦戦し、18回1/3で7奪三振に終わった。
2.8.4. ブラボス・デ・レオン
2024年7月3日、トンプソンはウェンドリン・バウティスタとのトレードでブラボス・デ・レオンに移籍した。レオンでは3試合に先発登板し、1勝1敗、防御率3.52、15回1/3で9奪三振の成績を残している。
3. 投球スタイル
トンプソンは、沈むような速球とカーブを巧みに使い分ける投球スタイルが特徴である。高校時代には投手としてだけでなく、強打の一塁手としても注目され、その打撃センスも高く評価されていた。
4. 詳細情報
4.1. 年度別投手成績
年 | 所属リーグ | 所属球団 | 登 板 | 先 発 | 完 投 | 完 封 | セ ー ブ | 勝 利 | 敗 戦 | 勝 率 | 打 者 | 投 球 回 | 被 安 打 | 被 本 塁 打 | 与 四 球 | 死 球 | 暴 投 | 奪 三 振 | 牽 制 | 故 意 四 球 | 失 点 | 自 責 点 | 防 御 率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2016 | MLB | PHI | 10 | 10 | 0 | 0 | 0 | 3 | 6 | .333 | 237 | 53.2 | 53 | 10 | 28 | 1 | 4 | 32 | 4 | 0 | 34 | 34 | 5.70 | 1.51 |
2017 | MLB | PHI | 11 | 8 | 0 | 0 | 0 | 3 | 2 | .600 | 210 | 46.1 | 50 | 9 | 22 | 0 | 5 | 35 | 1 | 0 | 27 | 20 | 3.88 | 1.55 |
2018 | MLB | PHI | 9 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1.000 | 76 | 16.1 | 14 | 1 | 11 | 2 | 0 | 14 | 1 | 0 | 10 | 9 | 4.96 | 1.53 |
2019 | KBO | ロッテ | 11 | 11 | 0 | 0 | 0 | 2 | 3 | .400 | 267 | 62.2 | 45 | 4 | 23 | 0 | 5 | 60 | 0 | 0 | 35 | 36 | 4.74 | 1.23 |
MLB:3年 | 30 | 18 | 0 | 0 | 0 | 7 | 8 | .467 | 523 | 116.1 | 117 | 20 | 61 | 3 | 9 | 81 | 6 | 0 | 71 | 63 | 4.87 | 1.53 | ||
KBO:1年 | 11 | 11 | 0 | 0 | 0 | 2 | 3 | .400 | 267 | 62.2 | 45 | 4 | 23 | 0 | 5 | 60 | 0 | 0 | 35 | 36 | 4.74 | 1.23 |
- 2020年度シーズン終了時
### 記録と受賞
- オールスター・フューチャーズゲーム選出:1回(2014年)
- インターナショナルリーグ最優秀投手賞:1回(2016年)
- インターナショナルリーグポストシーズンオールスター選出:1回(2016年)
- 『ベースボール・アメリカ』誌トリプルAオールスター選出:1回(2016年)
- メキシカンリーグチャンピオンシップ優勝:1回(2022年)
### 背番号
- 44(2016年 - 2018年)
- 50(2019年)
### 代表歴
トンプソンは、2015年にパンアメリカン競技大会に出場する野球アメリカ合衆国代表に選出された。カナダのエイジャックスで開催されたこの大会で、アメリカ合衆国代表は野球競技で銀メダルを獲得した。