1. 生い立ちと家族
ジェイソン・パトリックは、俳優としてのキャリアを築く前に、著名な芸能一家の一員として育った。
1.1. 生誕と家族関係
ジェイソン・パトリックは1966年6月17日、ニューヨーク市のクイーンズ区で、ジョン・アンソニー・ミラー3世として生まれた。彼はアカデミー賞ノミネート俳優でピューリッツァー賞受賞劇作家のジェイソン・ミラー(本名:ジョン・アンソニー・ミラー・ジュニア)と、女優のリンダ・ミラー(本名:リンダ・メイ・グリーソン)の長男であり、中間子である。母方の祖父は著名な俳優兼コメディアンのジャッキー・グリーソンである。
彼には姉のジェニファー(Jennifer英語)と、2024年1月10日に亡くなった弟のジョーダン(Jordan英語)がいた。また、異母兄弟には俳優のジョシュア・ジョン・ミラー(Joshua John Miller英語)がいる。彼の祖先は主にアイルランド系だが、一部にドイツ系の血も引いている。
1.2. 学齢期と教育
パトリックはニュージャージー州アッパーサドルリバーで育ち、カヴァリーニ・ミドルスクール(Cavallini Middle School英語)や、男子カトリック校であるドン・ボスコ・プレパラトリー高校(Don Bosco Preparatory High School英語)に通った。その後、カリフォルニア州サンタモニカにあるセント・モニカ・カトリック高校(Saint Monica Catholic High School英語)でも学んだ。
2. キャリア
ジェイソン・パトリックは、1980年代半ばにキャリアをスタートさせて以来、映画、テレビ、舞台と幅広い分野で活躍してきた。
2.1. 初期キャリアとブレイク
高校卒業後、パトリックはテレビドラマ『Toughlove英語』(1985年)でブルース・ダーン(Bruce Dern英語)と共演し、俳優としてのキャリアをスタートさせた。翌年には『太陽の7人』(1986年)に出演。その数年後には、『ロストボーイ』(1987年)や『アフター・ダーク』(1990年)で『太陽の7人』で共演したジェイミー・ガーツ(Jami Gertz英語)と再共演を果たした。また、『レッド・アフガン』(1988年)ではジョージ・ズンツァ(George Dzundza英語)やスティーヴン・ボールドウィン(Stephen Baldwin英語)と共演している。
1987年、ジョエル・シューマッカー監督の映画『ロストボーイ』でティーンエイジャーの吸血鬼マイケル・エマーソン役を演じ、ブレイクを果たした。この映画は批評的にも商業的にも成功を収め、パトリックの劇中の容姿はザ・ドアーズのリードボーカリストであるジム・モリソンと比較されるほどであった。彼はその後、オリバー・ストーン監督による1991年の伝記映画『ドアーズ』でジム・モリソン役を演じることも検討されたが、最終的にはヴァル・キルマーがその役を務めた。
2.2. 主な映画出演
パトリックは、様々なジャンルの映画で印象的な役柄を演じ、高い評価を得てきた。
1993年には、ジーン・ハックマンやロバート・デュヴァルと共演した映画『ジェロニモ』でチャールズ・B・ゲイトウッド(Charles B. Gatewood英語)中尉を演じた。彼は1993年の映画『ザ・ファーム』の主役を断っており、その役はトム・クルーズが演じることになった。また、1998年の映画『シン・レッド・ライン』では出演シーンが公開前にカットされた。
彼は潜入捜査官を演じた『RUSH/ラッシュ』(1991年)と『NARC ナーク』(2002年)での演技で高い評価を得た。1996年の映画『スリーパーズ』では、ロレンツォ・カルカテラ(Lorenzo Carcaterra英語)の役を演じ、その演技は批評家から称賛された。1997年には大作『スピード2』でサンドラ・ブロックと共演し、アレックス・ショー(Alex Shaw英語)巡査役を演じた。その他の主要な出演作には、『僕らのセックス、隣の愛人』(1998年)、『アラモ』(2004年)でのジェームズ・ボウイ(James Bowie英語)大佐役、『私の中のあなた』(2009年)、『ルーザーズ』(2010年)などがある。
2012年には南北戦争を題材とした映画『Copperhead』の撮影を開始したが、数週間後に監督のロナルド・F・マックスウェル(Ronald F. Maxwell英語)から「指示に従わない」という理由で降板させられ、代わりにビリー・キャンベル(Billy Campbell英語)が起用された。
2.3. 舞台・テレビ活動
映画以外にも、パトリックは舞台やテレビでも積極的に活動している。
2005年にはブロードウェイでテネシー・ウィリアムズの戯曲『熱いトタン屋根の猫』の再演に出演し、アシュレイ・ジャッド(Ashley Judd英語)、ネッド・ビーティ(Ned Beatty英語)、マーゴ・マーティンデイル(Margo Martindale英語)と共演した。
2011年には、ブロードウェイで父親のジェイソン・ミラーの戯曲『That Championship Season』の再演に出演した。この舞台は2011年2月9日にプレビュー公演が始まり、同年5月29日に閉幕した。父親のジェイソン・ミラーが執筆したこの戯曲は1972年に初演され、ピューリッツァー賞やトニー賞などを受賞している。この舞台では、ブライアン・コックス、クリス・ノース、キーファー・サザーランド、ジム・ガフィガン(Jim Gaffigan英語)といった俳優たちと共演した。
テレビでは、『サタデー・ナイト・ライブ』(1994年)でホストを務め、『アントラージュ★オレたちのハリウッド』(2008年)では本人役で出演した。2016年にはテレビドラマ『ウェイワード・パインズ 出口のない街』のシーズン2でメインキャストのテオ・イェドリン医師役を演じた。
2.4. フィルモグラフィー
公開年 | 邦題 原題 | 役名 | 備考 |
---|---|---|---|
1986 | 太陽の7人 Solarbabies | ジェイソン | |
1987 | ロストボーイ The Lost Boys | マイケル・エマーソン | |
1988 | レッド・アフガン The Beast | コンスタンティン・コヴェルチェンコ | 日本劇場未公開 |
1990 | 愛に渇いて Denial | マイケル | 日本劇場未公開 |
アフター・ダーク After Dark, My Sweet | ケヴィン・コリンズ(キッド) | ||
フランケンシュタイン/禁断の時空 Frankenstein Unbound | ジョージ・ゴードン・バイロン | 日本劇場未公開 | |
1991 | RUSH/ラッシュ Rush | ジム・レイナー刑事 | 日本劇場未公開 |
1993 | ジェロニモ Geronimo: An American Legend | チャールズ・B・ゲイトウッド中尉 | |
1995 | The Journey of August King | オーガスト・キング | |
1996 | スリーパーズ Sleepers | ロレンツォ・"シェイクス"・カルカテラ | |
1997 | スピード2 Speed 2: Cruise Control | アレックス・ショー巡査 | |
迷宮のレンブラント Incognito | ハリー・ドノヴァン | ||
1998 | 僕らのセックス、隣の愛人 Your Friends & Neighbors | ケイリー | 兼製作、日本劇場未公開 |
2002 | NARC ナーク Narc | ニック・テリス刑事 | |
Rain レイン Three Days of Rain | エキストラ | クレジットなし、日本劇場未公開 | |
2004 | アラモ The Alamo | ジム・ボウイ大佐 | |
2006 | Walker Payne | ウォーカー・ペイン | |
2007 | Expired | ジェイ・キャズウェル | |
Shortcut to Happiness | レイ | クレジットなし | |
告発のとき In the Valley of Elah | カークランダー警部補 | ||
2008 | Downloading Nancy | ルイ・ファーリー | |
2009 | 私の中のあなた My Sister's Keeper | ブライアン・フィッツジェラルド | |
2010 | ルーザーズ The Losers | マックス | 日本劇場未公開 |
Quality Time | ファーザー | 短編映画 | |
2011 | Keyhole | ユリシーズ・ピック | |
2013 | 傭兵奪還 The Outsider | マイケル・クライン刑事 | |
Cavemen | ジャック・バートレット | ||
2014 | Rise of the Lonestar Ranger | キップ・デュアン | |
コードネーム: プリンス The Prince | ポール | ||
2016 | The Abandoned | デニス・クーパー/ミスター・ストリーク | |
セキュリティコール Home Invasion | マイク | 日本劇場未公開 | |
Lost & Found | トレント・ウォルトン | ||
2017 | The Yellow Birds | アンダーソン大尉 | |
Gangster Land | リード刑事 | ||
2018 | Big Kill | ザ・プリーチャー | |
2020 | The Vanished | ベイカー保安官 | |
Runt | ウィルクス・コーチ | ||
Becoming | ケビン・リー | ||
2021 | Burning at Both Ends | アンドレ・エーリカネン | |
2022 | Nightshade | ランディ・ベル | |
MK Ultra | ガルヴィン・モーガン | ||
2023 | Shrapnel | ショーン・ベックウィズ | |
2024 | Terrifier 3 | マイケル・ショー | |
Armor | ジェームズ・ブロディ |
2.5. テレビフィルモグラフィー
放映年 | 邦題 原題 | 役名 | 備考 |
---|---|---|---|
1985 | Toughlove | ゲイリー・チャーターズ | テレビ映画 |
1990 | Teach 109 | ティーチ109 | 短編映画 |
1994 | サタデー・ナイト・ライブ Saturday Night Live | ホスト | エピソード「Jason Patric/Blind Melon」 |
2005 | Night Live: The Best of David Spade | ケヴィン | テレビ特番 |
2008 | アントラージュ★オレたちのハリウッド Entourage | 本人役 | エピソード「パイ」 |
2011 | Tilda | アンドリュー・ブラウン | 未放送パイロット版 |
2016 | ウェイワード・パインズ 出口のない街 Wayward Pines | テオ・イェドリン医師 | メインキャスト(シーズン2) |
2018 | バスタブで死んだ私 The Girl in the Bathtub | A. チャールズ・ペルート・ジュニア | テレビ映画 |
3. 受賞歴
年 | 賞 / 映画祭 | 部門 | 作品 | 結果 |
---|---|---|---|---|
1994 | ウエスタン・ヘリテージ・アワード | 最優秀劇場公開映画ラングラー賞 | 『ジェロニモ』(キャスト・スタッフと共同受賞) | 受賞 |
1998 | ゴールデンラズベリー賞 | 最低スクリーンカップル賞 | 『スピード2』 (サンドラ・ブロックと共同受賞) | ノミネート |
ラスベガス映画批評家協会賞 | 最優秀助演男優賞 | 『僕らのセックス、隣の愛人』 | ノミネート | |
1999 | オンライン映画批評家協会賞 | 最優秀助演男優賞 | ノミネート | |
サテライト賞 | ドラマ映画部門助演男優賞 | ノミネート | ||
2003 | プリズム賞 | 劇場公開映画部門最優秀演技賞 | 『NARC ナーク』 | ノミネート |
2007 | ストックホルム国際映画祭 | 最優秀男優賞 | Expired | 受賞 |
4. 私生活
ジェイソン・パトリックの私生活は、特に恋愛関係や親権を巡る法廷闘争でメディアの注目を集めた。
4.1. 交友関係と法廷闘争
1991年6月、ジェイソン・パトリックは、彼の『ロストボーイ』での共演者であり親友であったキーファー・サザーランドとの結婚をキャンセルした数日後に、女優のジュリア・ロバーツと交際を始めた。パトリックは当初、ロバーツとサザーランドの結婚式に招待されていたが、結婚式の日が近づくにつれてサザーランドから招待を取り消された。ロバーツによれば、結婚式はマスコミが報じた「結婚式の数日前」よりもずっと前にキャンセルされており、それは双方の合意による決定だったという。1991年6月14日、ロバーツとサザーランドの結婚式が予定されていた日、サザーランドはロバーツのハリウッドヒルズの家を出ていき、ロバーツはパトリックと共にアイルランドへ旅立った。1991年7月、パトリックは当初サザーランドが演じる予定だった西部劇映画『Renegades』でロバーツと共演する役を断ったが、ロバーツとサザーランドの結婚キャンセルを受けてこの企画は頓挫した。パトリックとロバーツは1992年に破局した。
パトリックはその後、1993年から1994年にかけて女優のジェニファー・ジェイソン・リーと、1994年から2000年にかけてモデルのクリスティー・ターリントンと交際していた。
ジュリア・ロバーツとの破局後、パトリックとサザーランドは10年以上口を利かなかったが、2000年代半ばに和解し、2011年にはブロードウェイで父親のジェイソン・ミラーの戯曲『That Championship Season』の再演で共演した。それ以来、二人は親しい友人関係を築いている。
パトリックはその後、ダニエル・シュライバー(Danielle Schreiber英語)と約10年間、断続的に交際した。この関係中に、二人は体外受精を通じて息子をもうけた。二人は2012年5月に別居した。シュライバーの弁護士は、パトリックは単なる精子提供者であり、シュライバーとパトリックが結婚しておらず、子供が人工的な手段で妊娠したため、パトリックには親権がないと主張した。パトリックは子供に対する親権を求めて提訴したが、第一審では敗訴した。
第一審での敗訴後、パトリックは精子提供者にも親権を与えるようカリフォルニア州議会に働きかけた。しかし、カリフォルニア州控訴裁判所は、カリフォルニア州家族法が、出生後の行動に基づいてパトリックが推定上の親であることを立証することを妨げるものではないと判決を下した。2014年後半、彼は法的に息子の父親として認められた。この決定は控訴審でも支持された。
5. 評価
ジェイソン・パトリックは、その演技キャリアを通じて、特に批評家から高い評価を受けている。彼は、1991年の『RUSH/ラッシュ』と2002年の『NARC ナーク』で演じた潜入捜査官役で「素晴らしい評価を得た」と評されている。また、2007年のストックホルム国際映画祭では、映画Expiredで最優秀男優賞を受賞するなど、国際的な映画祭でもその演技力が認められている。