1. Early life and education
デール・T・モーテンセンの初期の人生と学術的キャリアの基盤を築いた教育的背景について詳述する。
1.1. Birth and upbringing
モーテンセンは1939年2月2日にオレゴン州エンタープライズで生まれた。
1.2. Education
彼はウィラメット大学で経済学の学士号(B.A.)を1961年に取得した。その後、カーネギーメロン大学に進学し、1967年に経済学の博士号(Ph.D.)を取得した。カーネギーメロン大学での博士課程指導教員はマイケル・C・ラヴェルであった。2011年5月には、母校であるウィラメット大学から名誉博士号を授与された。
2. Academic Career
モーテンセンの経済学者としての職業人生は、主にノースウェスタン大学での長年にわたる教職と、その他の重要な学術的役職によって特徴づけられる。
2.1. Professorial Activities
モーテンセンは1964年から1965年までカーネギーメロン大学の専任講師を務めた後、1965年からノースウェスタン大学の教員となり、1965年から1971年まで助教授、1971年から1975年まで准教授、1975年からは教授に昇進した。1980年からはケロッグ経営大学院で経営経済学および意思決定科学の教授を務めた。また、1985年から2011年まではノースウェスタン大学のアイダ・C・クック経済学教授の職にあり、2011年から2014年までは同大学の理事会教授であった。
国際的な活動としては、2006年から2010年までオーフス大学経済経営学部でニールス・ボーア客員教授を務めた。

2.2. Academic Society Activities and Positions
モーテンセンは、経済学関連の様々な学会で重要な役職を歴任した。彼は計量経済学会のフェロー(1979年)、アメリカ芸術科学アカデミーのフェロー(2000年)に選出された。また、ヘブライ大学のInstitute of Advanced Studyのフェローも務めた(1979年)。彼の博士課程の学生にはロナルド・G・エーレンバーグがいた。
学会活動としては、経済動学学会の元会長であり、『Review of Economic Dynamicsレビュー・オブ・エコノミック・ダイナミクス英語』の創刊編集者の一人でもあった。さらに、1988年から1993年まで『American Economic Reviewアメリカン・エコノミック・レビュー英語』の編集委員を務めた。1979年から1982年にはノースウェスタン大学経済学部長を務めるなど、学術行政にも貢献した。
3. Research and Academic Contributions
モーテンセンの学術的貢献は、主に労働経済学、マクロ経済学、経済理論における革新的な研究に集中している。
3.1. Main Research Areas
彼の研究は、労働経済学、マクロ経済学、経済理論といった専門分野に焦点を当てていた。特に、労働市場における摩擦と、それが失業や賃金格差に与える影響の分析に力を入れた。
3.2. Search and Matching Theory
モーテンセンは、摩擦的失業に関するサーチ理論とマッチング理論の先駆的な研究で特に有名である。この理論は、求職者と雇用者の双方が最適な相手を見つけるために時間とコストをかける必要がある「探索摩擦」が存在する市場を分析する。この摩擦があるため、たとえ求職者と求人の数が一致していても、常に一定の失業が存在し、市場が効率的に機能しないことを説明した。
3.3. DMP Model
モーテンセンは、ピーター・ダイアモンド、クリストファー・ピサリデスと共に、労働市場分析の画期的なモデルである「DMPモデル」を開発した。このモデルは、彼らの頭文字を取って名付けられたもので、求職者がより良い職場を求め、雇用者がより良い労働者を求めるために、互いに多数の相手と接触することになり、「最適のマッチングを発見すること」が非常に困難になる状況を描写する。この困難さが、大量の求職があるにもかかわらず失業者が増加する状態を生み出すとされている。DMPモデルは、失業率、求人率、賃金などのマクロ経済変数を、ミクロ経済的な個人の意思決定に基づいて分析する枠組みを提供し、労働市場の動態を理解する上で不可欠なツールとなった。また、失業保険が充実すればするほど、失業者がより良い職を求める余裕ができるため、失業期間が長期化する可能性も示唆している。
3.4. Other Research and Theories
モーテンセンは、サーチ・マッチング理論から得られた洞察を、労働移動と再配分、研究開発、さらには個人的関係といった広範な分野に拡張して研究した。彼の理論は、労働市場だけでなく、不動産市場、結婚市場、金融市場など、様々な探索摩擦が存在する市場の分析に応用されている。
2011年2月には、中国経済の見通しについて言及し、大量の安価な労働力という長所は永久に続くわけではないと指摘した。今後の発展の継続のためには、労働者の教育水準と技術水準の向上、ハイテク産業への投資に力を注ぐことが重要であると述べた。また、人手不足の解消については、政府の賃上げ抑制を批判し、補助金を支出するなどして労働力過多地域に企業移転を勧めていくべきとの考えを示した。
4. Awards and Honors
モーテンセンの学術的業績は、数々の権威ある賞と栄誉によって称えられた。
4.1. Nobel Memorial Prize in Economic Sciences
2010年、デール・T・モーテンセンは、ピーター・ダイアモンド、クリストファー・ピサリデスと共に、ノーベル経済学賞を共同受賞した。受賞理由は、「探索摩擦のある市場の分析」に関する彼らの先駆的な貢献であった。この賞は、彼らのサーチ・マッチング理論が、労働市場だけでなく、様々な市場における情報の非対称性や取引コストが経済活動に与える影響を理解する上で極めて重要であることを国際的に認めるものであった。
4.2. Other Academic Awards and Fellowships
ノーベル賞以外にも、モーテンセンは以下の主要な学術賞とフェローシップを受賞している。
- アレクサンダー・ヘンダーソン賞(1965年)
- 計量経済学会フェロー(1979年)
- アメリカ芸術科学アカデミーフェロー(2000年)
- IZA Prize in Labor Economics労働経済学におけるIZA賞英語(2005年)
- ウィラメット大学名誉博士号(2011年)
5. Personal Life
モーテンセンは、ノースウェスタン大学の教授でもあったビバリー・モーテンセンと結婚していた。
6. Death
デール・T・モーテンセンは、2014年1月9日にイリノイ州ウィルメットの自宅で、ステージ4の肺癌のため74歳で死去した。
7. Legacy and Impact
デール・T・モーテンセンの学術的貢献は、経済学分野、特に労働経済学に深い影響を与え、その遺産は後世の学者たちに引き継がれている。
7.1. Building Named in His Honor
2011年2月、オーフス大学にモーテンセンを記念して「デール・T・モーテンセン・ビルディング」が命名された。この建物は、同大学のすべての国際活動および博士課程活動の中心拠点となっており、新しい博士課程学生寮(PhD House)、デールズ・カフェ、大学の国際センター、そして国際的な博士課程学生のための新しいIC寮を収容している。これは、彼がオーフス大学で客員教授を務めたことへの敬意と、その学術的功績を称えるものである。
7.2. Impact on Academia and Society
モーテンセンのサーチ・マッチング理論は、失業の性質を理解し、その対策を講じる上で、経済学の思考に革命をもたらした。彼の研究は、単に理論的な枠組みを提供するだけでなく、現実の労働市場の機能不全を分析し、政策提言を行うための基盤となった。例えば、失業保険の設計や職業訓練プログラムの効果、労働市場の柔軟性に関する議論など、多岐にわたる政策論議に彼の理論が影響を与えている。また、彼の研究は、労働市場だけでなく、結婚市場、不動産市場、金融市場など、様々な「探索摩擦」が存在する市場の分析に応用され、経済学の幅広い分野に影響を与え続けている。彼の中国経済に関する見解も、発展途上国の経済成長戦略に対する洞察を示しており、学術的な枠を超えた社会的な影響力も持っていた。
8. Selected Publications
以下は、デール・T・モーテンセンの主要な学術論文および著書の一部である。
- D. Mortensen and E. Nagypál (2007), 'More on unemployment and vacancy fluctuations.' Review of Economic Dynamics 10 (3), pp. 327-47.
- D. Mortensen (2005), Wage Dispersion: Why Are Similar Workers Paid Differently?, MIT Press.
- K. Burdett and D. Mortensen (1998), 'Wage differentials, employer size, and unemployment.' International Economic Review 39, pp. 257-73.
- D. Mortensen and C. Pissarides (1994), 'Job creation and job destruction in the theory of unemployment.' Review of Economic Studies 61, pp. 397-415.
- D. Mortensen (1986), 'Job search and labor market analysis.' Ch. 15 of Handbook of Labor Economics, vol. 2, O. Ashenfelter and R. Layard, eds., North-Holland.
- D. Mortensen (1982), 'Property rights and efficiency of mating, racing, and related games.' American Economic Review 72 (5), pp. 968-79.
- D. Mortensen (1982), 'The matching process as a non-cooperative/bargaining game.' In The Economics of Information and Uncertainty, J. McCall, ed., NBER.
- D. Mortensen (1972), 'A theory of wage and employment dynamics.' In Microeconomic Foundations of Employment and Inflation Theory, E. Phelps et al., eds., Norton.