1. 生い立ちと初期キャリア
ミゲル・アンヘル・ナダルは、スペインのバレアレス諸島マヨルカ島マナコルで生まれた。サッカー選手としてのキャリアは故郷で始まり、プロとしての道を歩み始めた。
1.1. 幼少期とユースキャリア
1980年、ナダルは地元のCDマナコルのユースチームに入団し、1983年までそこでサッカーの訓練を受けた。その後、1983年から1986年までCDマナコルのトップチームでプレーし、プロとしての基盤を築いた。1986年にはRCDマヨルカBチームに移籍し、1987年まで在籍した。
1.2. プロデビュー
ナダルは1987年4月19日、RCDマヨルカの選手としてカンプ・ノウで行われたFCバルセロナ戦でラ・リーガデビューを果たした。その後、チームはセグンダ・ディビシオンに降格したが、ナダルは主力選手として1989年の1部リーグ昇格に大きく貢献した。RCDマヨルカでの最初の在籍期間の最後の2シーズンでは、リーグ戦72試合に出場し12得点を記録するなど、チームの中心選手として活躍した。
2. クラブキャリア
ミゲル・アンヘル・ナダルは、プロサッカー選手としてRCDマヨルカとFCバルセロナという二つの主要なクラブで輝かしいキャリアを築いた。
2.1. RCDマジョルカ(初代)
ナダルは、故郷のクラブであるRCDマヨルカでプロキャリアをスタートさせた。1987年4月19日にFCバルセロナ戦でラ・リーガデビューを果たした後、チームは一時的にセグンダ・ディビシオンに降格するも、彼はチームの主力として1989年の1部リーグ復帰に貢献した。その後、FCバルセロナへ移籍するまでの2シーズンで、リーグ戦72試合に出場し12得点を挙げるなど、守備の要としてだけでなく、得点面でもチームに貢献した。RCDマヨルカでの最初の在籍期間には、公式戦130試合に出場し、22得点を記録している。
2.2. FCバルセロナ
1991-92シーズンにFCバルセロナへ移籍したナダルは、ヨハン・クライフ監督率いる「エル・ドリーム・チーム」の重要な一員となった。彼は中盤や両ウィングバックなど、様々な守備的なポジションをこなし、チームの黄金期を支えた。FCバルセロナでは、ラ・リーガ優勝5回(1991-92、1992-93、1993-94、1997-98、1998-99)、コパ・デル・レイ優勝2回(1996-97、1997-98)、ヨーロピアンカップ優勝1回(1991-92)、UEFAカップウィナーズカップ優勝1回(1996-97)、UEFAスーパーカップ優勝2回(1992、1997)、スーペルコパ・デ・エスパーニャ優勝4回(1991、1992、1994、1996)という数々のタイトル獲得に貢献した。クラブでの公式戦出場は通算297試合(リーグ戦208試合)に上る。しかし、ルイ・ファン・ハール監督が就任した1998-99シーズンには構想外となり、リーグ戦出場が2試合にとどまった。また、1996年と1997年にはマンチェスター・ユナイテッドFCへの移籍が取り沙汰されたが、実現には至らなかった。
2.3. RCDマジョルカ(復帰後)
1999-2000シーズンにRCDマヨルカへ復帰したナダルは、ベテラン選手としてチームを牽引した。復帰後の最初の3シーズンでは、欠場がわずか11試合にとどまるなど、引き続き中心選手として活躍。2002-03シーズンには、レクレアティーボ・ウェルバを破り、コパ・デル・レイ優勝を果たすなど、チームの後期の成功に大きく貢献した。2004-05シーズン途中のほぼ39歳で現役引退を表明し、プロキャリアを通じて合計645試合(リーグ戦では463試合)に出場した。
3. 代表キャリア
ミゲル・アンヘル・ナダルは、1990年代から2000年代初頭にかけてスペイン代表の重要な一員として活躍し、数々の国際大会に出場した。
3.1. スペイン代表での出場
ナダルは1991年11月13日、UEFA EURO '92予選のチェコスロバキア戦でスペイン代表デビューを果たした。以降、2002年までの間に通算62試合に出場し、3得点を記録した。彼はFIFAワールドカップに3回(1994 FIFAワールドカップ、1998 FIFAワールドカップ、2002 FIFAワールドカップ)、UEFA欧州選手権に1回(UEFA EURO '96)出場している。また、バレアレス諸島の地域代表としても、マルタ代表との親善試合に1度出場している。
3.2. 代表での主要な瞬間
ナダルの代表キャリアにおける記憶に残る瞬間の一つとして、UEFA EURO '96の準々決勝イングランド戦が挙げられる。この試合はウェンブリー・スタジアムで行われ、PK戦の末にスペインは敗退したが、ナダルはPKを失敗した選手の一人であった。
2002 FIFAワールドカップでは、ほぼ36歳という年齢ながら全4試合にフル出場し、チームのベスト8進出に貢献した。グループリーグ第3戦の南アフリカ代表戦では、主将のフェルナンド・イエロが休養したため、代わりにキャプテンマークを巻いて出場した。この大会を最後に、ナダルは国際舞台から引退した。
4. プレースタイル
ミゲル・アンヘル・ナダルは、その多才なプレースタイルと身体能力で知られていた。
4.1. 特徴と愛称
ナダルは、その強靭なフィジカルと激しいプレーから「ザ・ビースト」(The Beast英語)という愛称で呼ばれた。彼のプレーは、その身体的な強さを基盤としていた。
4.2. 多様性と身体的能力
彼はディフェンダーとしてもミッドフィールダーとしてもプレーできる多様性を持っていた。特に、空中戦の強さ、優れた戦術眼、そして高いフィジカル能力は彼の大きな武器であった。2007年には、イギリスの雑誌『タイムズ』が選ぶ「史上最もタフなサッカー選手50人」のリストで47位にランクインするなど、そのフィジカルの強さと粘り強さは高く評価されていた。
5. プライベート
ミゲル・アンヘル・ナダルは、世界的に有名なプロテニス選手であるラファエル・ナダルの叔父である。また、彼の兄であるトニ・ナダルは、2017年までラファエル・ナダルのコーチを務めていた。
6. 指導者キャリア
現役引退から5年後の2010年7月、ナダルはかつてFCバルセロナでチームメイトだったミカエル・ラウドルップ監督が率いるRCDマヨルカのコーチングスタッフとして復帰した。しかし、2011年9月末にラウドルップ監督がディレクターのロレンソ・セラ・フェレールとの衝突によりクラブを去ると、ナダルは暫定監督として1試合(CAオサスナとのアウェー戦で2-2の引き分け)チームを指揮した。しかし、彼もその翌週にはクラブを去ることとなった。
7. 選手経歴統計
ミゲル・アンヘル・ナダルのクラブおよび代表チームでの詳細な出場記録と得点記録を以下に示す。
7.1. クラブ別記録
ナダルはプロキャリアを通じて、合計645試合に出場し、40得点を記録した。
クラブ | 期間 | リーグ出場(得点) | その他公式戦出場(得点) | 合計出場(得点) |
---|---|---|---|---|
CDマナコル | 1983-1986 | 不明 | 不明 | 不明 |
RCDマヨルカB | 1986-1987 | 不明 | 不明 | 不明 |
RCDマヨルカ | 1987-1991 | 130 (22) | 不明 | 130 (22) |
FCバルセロナ | 1991-1999 | 208 (12) | 89 (0) | 297 (12) |
RCDマヨルカ | 1999-2005 | 149 (6) | 69 (0) | 218 (6) |
合計 | 1983-2005 | 487 (40) | 158 (0) | 645 (40) |
7.2. 代表記録
ナダルはスペイン代表として62試合に出場し、3得点を記録した。
年 | 出場 | 得点 |
---|---|---|
1991 | 1 | 0 |
1992 | 1 | 0 |
1993 | 6 | 0 |
1994 | 12 | 2 |
1995 | 8 | 0 |
1996 | 9 | 0 |
1997 | 4 | 0 |
1998 | 5 | 0 |
1999 | 1 | 0 |
2000 | 0 | 0 |
2001 | 8 | 1 |
2002 | 7 | 0 |
通算 | 62 | 3 |
No. | 日付 | 会場 | 対戦相手 | スコア | 結果 | 大会 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1994年11月16日 | サンチェス・ピスフアン, セビリア, スペイン | デンマーク | 1-0 | 3-0 | UEFA EURO '96予選 |
2 | 1994年11月30日 | ラ・ロサレーダ, マラガ, スペイン | フィンランド | 1-0 | 2-0 | 親善試合 |
3 | 2001年9月5日 | ラインパーク, ファドゥーツ, リヒテンシュタイン | リヒテンシュタイン | 2-0 | 2-0 | 2002 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選 |
8. タイトル・表彰
ミゲル・アンヘル・ナダルは、選手キャリアにおいて数多くのチームタイトルを獲得した。
8.1. チームタイトル
- FCバルセロナ
- ラ・リーガ: 1991-92、1992-93、1993-94、1997-98、1998-99
- コパ・デル・レイ: 1996-97、1997-98
- スーペルコパ・デ・エスパーニャ: 1991、1992、1994、1996
- ヨーロピアンカップ: 1991-92
- UEFAカップウィナーズカップ: 1996-97
- UEFAスーパーカップ: 1992、1997
- RCDマヨルカ
- コパ・デル・レイ: 2002-03
9. 遺産と評価
ミゲル・アンヘル・ナダルは、その多才なプレースタイルと強靭なフィジカルで、スペインサッカー界に大きな足跡を残した。特にFCバルセロナの「ドリームチーム」の一員としての貢献は、彼のキャリアのハイライトとして記憶されている。
9.1. 特筆事項
2007年には、イギリスの雑誌『タイムズ』が選定した「史上最もタフなサッカー選手50人」において、47位にランクインした。これは、彼のフィジカルの強さと、相手選手との激しい競り合いにおける粘り強さが、サッカー界全体で高く評価されていたことを示している。
10. 関係項目
- FCバルセロナの選手一覧
- ラ・リーガの選手一覧