1. 概要
三平 和司(みつひら かずし日本語、1988年1月13日 - )は、神奈川県秦野市出身のプロサッカー選手。Jリーグのヴァンフォーレ甲府に所属する。ポジションはフォワードおよびミッドフィールダー。
高校時代までは無名ながら、神奈川大学でその才能を開花させ、湘南ベルマーレに特別指定選手として登録後、2010年に正式にプロ入りを果たした。大分トリニータでは2度のJ1昇格に貢献し、特に2016年にはJ3リーグ優勝を経験した。また、2022年にはヴァンフォーレ甲府の一員として天皇杯を制覇し、クラブ史上初の主要タイトル獲得に貢献した。ピッチ上での得点能力だけでなく、明るい性格でチームのムードメーカーとしても知られ、その人間性も高く評価されている選手である。
2. プロ入り前
2.1. ユース・高校時代
三平は神奈川県秦野市で生まれた。幼少期は大根SCでプレーし、2000年から2002年まではヴェルディSS相模原に所属し(この期間は秦野市立大根中学校に在籍)、サッカーの基礎を築いた。2003年から2005年まで神奈川県立秦野南が丘高等学校に在籍したが、高校時代は全国的には無名の存在であった。
2.2. 大学・特別指定選手時代
高校卒業後、練習試合でのプレーが当時の神奈川大学サッカー部監督の目に留まり、神奈川大学に進学した。大学2年次の2007年には、関東大学2部リーグで18得点を記録し、チームの1部リーグ昇格の原動力となった。大学3年次の2008年には関東1部リーグで得点ランキング5位タイとなる10得点をマークし、その得点能力が注目を集めた。
同年、湘南ベルマーレに特別指定選手として登録されると、J2リーグで4試合に出場し1得点を記録した。FC東京など複数のクラブから獲得への注目を集めたが、最も早いタイミングで獲得オファーを受けた湘南ベルマーレへの加入を決め、2009年8月には翌シーズンからの湘南への正式加入が内定した。
3. クラブ経歴
3.1. 湘南ベルマーレ・大分トリニータ(第1次)
2010年に湘南ベルマーレに正式加入し、プロとしてのキャリアをスタートさせた。3月20日のJ1リーグ第3節、サンフレッチェ広島戦で後半途中からの交代出場でプロデビューを果たした。5月5日の第10節、ヴィッセル神戸戦で1点ビハインドの状況から同点となるゴールを決め、これが自身にとってのJ1初ゴールとなった。このシーズンは公式戦合計17試合に出場し3得点をマークした。
2011年には、J2リーグの大分トリニータへ期限付き移籍した。大分では監督の田坂和昭によって右ウイングバックにコンバートされると、持ち味のスピードを活かして積極的にゴール前に顔を出し、5得点を記録した。2012年も「大分でやり残したことがある」という理由から期限付き移籍を延長して大分に残留。1対1での間合いを掴んだことで課題であった守備を向上させ、攻撃面ではセットプレーで相手にマークされる中で打点の高いヘディングシュートで得点を量産し、自己最多の14得点を挙げた。森島康仁と並んでチームの得点王となり、大分のJ1昇格に大きく貢献。シーズン終了後にはファン・サポーターの投票によって決定する「J2 Exciting 22」に選出されるなど、その活躍が認められた。
3.2. 京都サンガF.C.
大分での期限付き移籍期間を満了し、2013年より京都サンガF.C.に完全移籍した。ここでは2トップの一角や3トップの右ウイングでプレーし、リーグ戦38試合に出場した。J2第3節のアビスパ福岡戦では、後半途中からの交代出場からわずか数分で決勝点を奪い、チームのシーズン初勝利に貢献。第34節のカターレ富山戦では股抜きゴールを決めるなど、印象的な活躍を見せた。この年、大分時代から数えて自身2年連続でJ1昇格プレーオフに出場したが、決勝で徳島ヴォルティスに敗れ、2年連続での所属クラブのJ1昇格は果たせなかった。2014年までの2年間でリーグ戦66試合に出場し、15得点を記録した。
3.3. 大分トリニータ(第2次)
2015年、3年ぶりに大分トリニータに完全移籍で復帰した。J3リーグに降格した翌2016年も大分に残留。故障の影響などにより総試合数の半分の15試合出場に留まったものの、第29節のYS横浜戦と最終節のガイナーレ鳥取戦の2試合連続で1試合2得点を記録するなど、チーム2位となる10得点を記録し、1年でのJ2復帰に貢献した。
2017年は再びJ2でのプレーとなり、31試合に先発出場した。このシーズンは前年の半数の5得点に留まったが、第18節の横浜FC戦で後半34分に記録したダイレクトボレーでのゴールが、海外メディア「sportkeeda」に「衝撃的なゴール」という賛辞と共に取り上げられ、その技術が世界的に評価された。
2018年は前半戦で開幕戦こそ先発出場を果たすものの、その後は6試合連続で出場機会がなく、シーズン前半の出場は12試合中先発3試合に留まった。それでも「腐らず、人のせいにするのではなく矢印を自分に向けた」と語り、コンディションを整えてチャンスを待った。第26節のFC岐阜戦で先発に復帰し得点を挙げると、以降は再び先発に定着した。10月には首位争いをしていた松本山雅FC戦での決勝点を含む3得点をマークし、チームを勢い付かせた。これらの活躍と後述する人間性も評価され、同年10月のJ2月間MVPを受賞した。シーズン合計でJ2では2012年以来となる2桁得点(10ゴール)を達成し、彼が得点を決めた試合では8戦全勝を記録するなど、大分の3度目のJ1昇格に大きく貢献した。
自身プロデビュー以来のJ1でのプレーとなった2019年は、シーズン前半こそ出場機会に恵まれなかったが、藤本憲明が移籍したシーズン後半に出場機会を増やし、公式戦24試合に出場した。J1第26節の湘南戦からJ1第28節の名古屋グランパス戦にかけて3試合連続ゴールを記録するなど、計7得点を挙げた。2020年シーズンをもって契約満了により大分を退団した。
3.4. ヴァンフォーレ甲府
2021年、ヴァンフォーレ甲府へ加入した。2022年の天皇杯では、準々決勝のJ1・アビスパ福岡戦で先制点を決め、クラブ史上初の準決勝進出に貢献した。その後、チームは準決勝も勝ち上がり、迎えた決勝のJ1・サンフレッチェ広島戦では、コーナーキックからのトリックプレーのフィニッシャーとして先制ゴールを記録した。この大会で三平は4試合出場で4得点の活躍を見せ、クラブ史上初の天皇杯優勝および国内三大タイトル獲得に大きく貢献した。彼は大会後、「ジャイアントキリング(番狂わせ)ではなく、J1に5回勝った。今日が特別ではない」と語り、甲府の真の実力を強調した。
4. 代表・選抜歴
三平はユニバーシアード日本代表として、2009年にセルビアのベオグラードで開催されたユニバーシアードに出場し、チームは銅メダルを獲得した。
また、2009年には関東選抜Aに選出され、デンソーカップサッカーに出場している。
5. プレースタイル・人物像
5.1. プレースタイル
プロ入り前は「とりあえず走ることしか考えていなかった」と自身が語るように、がむしゃらにプレーするタイプだった。しかし、京都サンガF.C.時代の監督である大木武との出会いをきっかけに、プレースタイルが大きく変化した。「動き方だったり、どこに動くのかだったり。そうやって考えてプレーするようになったのは大木さんに出会ってから」「本当に大木さんのおかげで、いまの自分がある」とインタビューで語っており、大木監督から戦術的な思考を学び、サッカー選手として大きく成長したことを示している。
大分トリニータでは、監督田坂和昭のもとで右ウイングバックにコンバートされ、持ち前のスピードを活かして積極的にゴール前に顔を出すプレーで得点を重ねた。また、課題であった1対1での守備も克服し、セットプレーでは打点の高いヘディングシュートで多くのゴールを記録するなど、攻撃と守備の両面で貢献できる選手となった。
5.2. エピソード・私生活
三平は明るい性格で、その場の雰囲気を明るくすることに長けたムードメーカーとして知られている。2018年10月のJ2月間MVP受賞理由の一つとしても、ピッチ内外でのムードメーカーとしての貢献が挙げられている。
趣味は釣り。大分トリニータに在籍していた時期(第1次)には、数人のチームメイトと共同でお金を出資し、バス釣り用のボートを購入して大分の選手寮に寄贈したことがある。
2017年9月7日に一般女性と入籍した。
ヴァンフォーレ甲府加入後、チーム練習中に監督の伊藤彰を、フィジカルコーチのウェリントンの愛称である「ウェリ」と呼び間違える一幕があった。本人曰く、視力は悪いがコンタクトレンズは着用していないとのこと。
シーズンで2桁得点を記録した年(2012年、2016年、2018年、2022年)には、所属クラブが必ず快挙を達成するという共通点がある。大分トリニータでは3度の昇格、ヴァンフォーレ甲府では天皇杯優勝という実績を残している。
6. 個人成績
クラブパフォーマンス | リーグ | カップ | リーグカップ | 合計 | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
シーズン | クラブ | リーグ | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | |||||
日本 | リーグ | 天皇杯 | Jリーグカップ | 合計 | |||||||||||
2006 | 神奈川大 | 大学 | 11 | 0 | - | - | 11 | 0 | |||||||
2008 | 湘南 | J2 | 4 | 1 | - | 0 | 0 | 4 | 1 | ||||||
2010 | J1 | 9 | 1 | 6 | 1 | 2 | 1 | 17 | 3 | ||||||
2011 | 大分 | J2 | 23 | 5 | - | 1 | 0 | 24 | 5 | ||||||
2012 | 39 | 14 | - | 0 | 0 | 39 | 14 | ||||||||
2013 | 京都 | J2 | 38 | 7 | - | 2 | 2 | 40 | 9 | ||||||
2014 | 28 | 8 | - | 1 | 0 | 29 | 8 | ||||||||
2015 | 大分 | J2 | 30 | 4 | - | 1 | 0 | 31 | 4 | ||||||
2016 | J3 | 15 | 10 | - | 0 | 0 | 15 | 10 | |||||||
2017 | J2 | 33 | 5 | - | 0 | 0 | 33 | 5 | |||||||
2018 | 30 | 10 | - | 0 | 0 | 30 | 10 | ||||||||
2019 | J1 | 17 | 4 | 4 | 1 | 3 | 2 | 24 | 7 | ||||||
2020 | 18 | 3 | 2 | 0 | - | 20 | 3 | ||||||||
2021 | 甲府 | J2 | 25 | 3 | - | 1 | 0 | 26 | 3 | ||||||
2022 | 33 | 7 | - | 4 | 4 | 37 | 11 | ||||||||
2023 | 39 | 9 | - | 2 | 0 | 41 | 9 | ||||||||
2024 | 27 | 6 | 1 | 0 | 1 | 0 | 29 | 6 | |||||||
2025 | |||||||||||||||
J1通算 | 44 | 8 | 12 | 2 | 5 | 3 | 61 | 13 | |||||||
J2通算 | 349 | 79 | 1 | 0 | 13 | 6 | 363 | 85 | |||||||
J3通算 | 15 | 10 | - | 0 | 0 | 15 | 10 | ||||||||
その他公式戦 | - | - | 1 | 0 | 1 | 0 | |||||||||
総通算 | 408 | 97 | 13 | 2 | 19 | 9 | 440 | 108 |
シーズン | クラブ | ACL | 合計 | ||
---|---|---|---|---|---|
2023-24 | 甲府 | 9 | 6 | 9 | 6 |
通算 | 9 | 6 |
7. 記録
- 2012年
- J1昇格プレーオフ 2試合0得点
- 2013年
- J1昇格プレーオフ 2試合0得点
- 2015年
- J2・J3入れ替え戦 1試合0得点
- 2023年
- スーパーカップ 1試合0得点
- Jリーグ初出場 - 2008年6月8日 J2第18節 サンフレッチェ広島戦(広島広域公園陸上競技場)
- Jリーグ初得点 - 2008年7月27日 J2第28節 ロアッソ熊本戦(平塚競技場)
8. タイトル
8.1. クラブタイトル
- 大分トリニータ
- J3リーグ: 1回(2016年)
- ヴァンフォーレ甲府
- 天皇杯: 1回(2022年)
8.2. 個人タイトル
- J2 Exciting 22: 1回(2012年)
- J2 月間MVP: 1回(2018年10月)
9. 外部リンク
- [https://data.j-league.or.jp/SFIX04/?player_id=10140 J.League選手プロフィール]
- [http://www.oita-trinita.co.jp/team/player/view/?pid=19296 大分トリニータ選手プロフィール]
- [http://j-sm.jp/kazushi-mitsuura/ 株式会社ジャパン・スポーツ・マーケティングによるプロフィール]
- [https://web.gekisaka.jp/news/detail/?50359-31478-fl ゲキサカ: 大学 高校時代無名のゴールハンター・三平がタレント軍団のエースに]
- [https://www.instagram.com/mitsuhira_kazushi/ 三平和司 (@mitsuhira_kazushi) - Instagram]