1. 概要
久保凛は、2008年1月20日生まれの中距離走を専門とする日本の陸上競技選手である。和歌山県東牟婁郡串本町出身。彼女は女子800メートル競走の日本記録保持者であり、その記録は1分59秒93である。この記録は、16歳という若さで日本人選手として初めて800メートルを1分台で走り、日本陸上界に新たな歴史を刻んだ画期的な成果として広く認識されている。彼女の競技キャリアは、中学校時代から高校、そして国際大会へと続く数々の輝かしい優勝と記録更新に彩られており、将来の日本陸上界を牽引する存在として大きな期待が寄せられている。
2. 生い立ちと初期のキャリア
久保凛は、和歌山県串本町で生まれ育ち、幼少期からスポーツに親しんできた。
2.1. 出生と少年時代
2008年1月20日に生まれた久保凛は、和歌山県串本町立潮岬小学校に通っていた。小学校時代には、和歌山県の環境活動の一環である「わかやまこどもエコチャレンジ」に参加した記録が県の公式資料として残されている。また、小学校の6年間はサッカーに熱中しており、和歌山県U-12トレセン(トレーニングセンター)メンバーに選出された経験を持つなど、幼少期からその運動能力の高さを示していた。
2.2. 陸上競技への転向
久保は中学校に進学後、本格的に陸上競技、特に中距離走に専念するようになった。潮岬中学校在学中には、その才能を急速に開花させた。
3. 競技キャリア
久保凛の競技キャリアは、中学校時代から始まり、数々の国内大会での優勝や日本記録の樹立、さらには国際舞台での活躍によって、その実力と将来性を証明してきた。
3.1. 中学校時代
潮岬中学校に在学していた久保は、2022年の第49回全日本中学校陸上競技選手権大会(福島県福島市・福島県営あづま陸上競技場)に出場した。女子800m決勝では、2分9秒96のタイムで1位となり、この種目における中学日本一の栄冠を手に入れた。この優勝は、彼女が陸上競技に本格的に転向してからの最初の大きな功績となった。
3.2. 高校時代
2023年に大阪府東大阪市の東大阪大学敬愛高等学校に進学した久保は、高校生アスリートとしてさらなる躍進を遂げた。
3.2.1. シニア大会での躍進と日本新記録
高校1年次には、令和5年度全国高等学校総合体育大会(インターハイ、北海道札幌市/札幌厚別公園競技場)の女子800mで2分06秒41を記録し優勝した。同年、地元和歌山で開催された第31回日・韓・中ジュニア交流競技会の女子800mでは2分06秒71で優勝し、自身にとって初の国際競技大会での優勝を飾った。
2024年、高校2年となった久保は、日本グランプリシリーズの初戦である金栗記念選抜陸上中長距離大会(熊本県熊本市・熊本県民総合運動公園陸上競技場)に出場した。女子800mでは、日本の女子中距離界の第一人者である田中希実選手(New Balance所属)と競り合い、2分05秒35を記録して優勝という殊勲を達成した。同年5月には、静岡国際陸上競技大会(静岡県袋井市・小笠山総合運動公園静岡スタジアム)の女子800mで2分03秒57を記録し優勝。このタイムは高校歴代3位かつU18日本新記録となるものであった。
2024年6月には、第108回日本陸上競技選手権大会(新潟県新潟市・新潟スタジアム)の女子800mに出場した。決勝では、田中希実、卜部蘭(積水化学)、塩見綾乃(岩谷産業)といった実力者が揃う中、先輩選手たちを大きく引き離して1着でゴールし、日本選手権初優勝を果たした。
そして、2024年7月15日、奈良県立橿原公苑陸上競技場で開催された陸上競技大会の女子800mタイムレースにおいて、佐藤美保(当時京セラ所属)が2005年の日本陸上競技選手権大会で樹立した2分00秒45の日本記録を19年ぶりに更新する1分59秒93を記録し、1着で入線した。これは日本人選手として初めて800mで1分台を突破する快挙であり、新たな日本新記録を樹立した。同年10月12日には、SAGAサンライズパーク/SAGAスタジアムで開催された国民スポーツ大会の少年女子A800メートル決勝で、2分2秒09の大会新記録を樹立し、2位以下に5秒以上の大差をつけて優勝を飾っている。
3.3. 主要国際大会
久保は国際舞台でも活躍を見せている。2024年8月には、ペルーリマで開催された2024年世界U20陸上競技選手権大会の女子800mに出場した。決勝では2分03秒31のタイムを記録し、6位入賞を果たした。これは、800mにおける日本勢の世界U20陸上競技選手権大会での過去最高順位タイの記録であり、久保が世界の舞台でも通用する実力を持つことを示した。
4. 自己記録
久保凛が現在保持している主要な自己記録は以下の通りである。
- 800m: 1分59秒93(日本記録)
- 4×800mR: 8分33秒77(日本記録)
5. 人物・親族
久保凛は、サッカー日本代表で活躍する久保建英選手のいとこ(父の兄の息子にあたる)であることが公表されている。
6. 評価と展望
久保凛は、16歳という若さで女子800m日本記録を樹立し、日本人初の1分台を達成するという歴史的な偉業を成し遂げた。この記録は、日本陸上界に大きな衝撃を与え、国内外から注目を集めている。彼女の類まれな才能と努力は、今後の日本の中距離走界を牽引していく可能性を秘めている。
彼女は、既に日本選手権での優勝や国際大会での入賞を経験しており、その競技キャリアは着実に実績を積み重ねている。また、世界U20陸上競技選手権大会での経験は、世界の強豪との差を肌で感じ、今後の成長に繋がる貴重なものとなるだろう。
久保凛の登場は、日本陸上界に新たな活力を与え、将来のオリンピックや世界陸上競技選手権大会でのメダル獲得への期待を高めている。彼女の今後の競技活動と、日本陸上界におけるさらなる活躍に、多くの関心が寄せられている。