1. 概要
宮沢正史は、山梨県甲府市出身の元プロサッカー選手であり、現在はサッカー指導者として活躍している。1997年に中央大学に進学し、同大学のサッカー部で才能を開花させ、関東大学サッカーリーグ戦で3年連続のベストイレブンに選出されるなど、大学サッカー界で注目された。2001年にJ1リーグのFC東京に入団しプロキャリアをスタート。2002年にはJリーグ優秀新人賞を受賞するなど、チームの主力として貢献した。その後、大分トリニータやベガルタ仙台(期限付き移籍)、FC岐阜でプレーし、各クラブでリーダーシップを発揮した。特に大分トリニータでは主将を務め、チームを精神的に支え、J2リーグからJ1への昇格に貢献した。2015年に現役を引退。引退後はFC東京でスカウティングスタッフやアカデミーコーチを歴任し、2021年からは母校である中央大学サッカー部の監督に就任し、若手選手の育成に尽力している。
2. 幼少期と教育
宮沢正史は、サッカー選手としての基礎を幼少期に築き、学生時代を通じてその才能を磨いた。
2.1. 幼少期とユース時代
宮沢は山梨県甲府市で生まれ、小学3年生の8歳の時にサッカーを始めた。地元の甲府市立琢美小学校、甲府市立東中学校を経て、1994年から1996年まで帝京第三高等学校でプレーした。高校時代には既にその才能が評価され、将来を嘱望される選手の一人だった。
2.2. 大学時代
1997年に中央大学に進学し、中央大学学友会サッカー部に所属した。大学時代は彼のサッカー人生において重要な期間となり、関東大学サッカーリーグ戦で1998年、1999年、2000年と3年連続でベストイレブンに選出されるという異例の活躍を見せた。また、1998年には同リーグのアシスト王にも輝いた。2000年にはデンソーカップ日韓大学定期戦のベストイレブンにも選ばれるなど、大学サッカー界を代表する選手として名を馳せた。3年時の1999年には、スペインのマヨルカ島で開催された1999年夏季ユニバーシアードにユニバーシアード日本代表として出場し、国際舞台での経験も積んだ。
3. 選手経歴
宮沢正史のプロサッカー選手としてのキャリアは、数々のクラブでその足跡を残した。
3.1. FC東京時代
中央大学卒業後、2001年にJ1リーグのFC東京に入団した。加入当初は2列目の選手として起用されたが、フィジカル面での課題もあり、トップチームでの出場機会は限られていた。しかし、翌2002年に原博実が監督に就任すると、「(キックの)フォームが誰よりも綺麗」という評価を受け、ボランチのレギュラーに抜擢された。同年にはその活躍が認められ、Jリーグ優秀新人賞を受賞した。彼の蹴るコーナーキックやフリーキックといったセットプレーはFC東京の重要な得点源となった。また、中盤の深い位置から繰り出す正確なロングパスやサイドチェンジも彼の大きな特徴であり、原監督が目指す両サイドを広く使うサッカーにおいて不可欠な存在へと成長した。しかし、2004年以降は今野泰幸や梶山陽平といった若手選手の台頭により、出場機会が減少していった。この期間、2002年と2003年にはJリーグ選手協会の支部代表を務め、2004年には同協会の支部長も務めるなど、選手としての活動と並行して選手会の運営にも関わった。
3.2. 大分トリニータとベガルタ仙台時代
出場機会を求めて、2007年に大分トリニータへ完全移籍した。移籍当初はスターティングメンバーとして出場したが、チームとの連携に苦戦し、ボランチの先発を外れることが多くなった。一時は左ウイングバックでプレーすることもあったが、シーズン途中にエジミウソンやホベルトが補強されると、ベンチ入りすら難しい状況となった。2008年には、1年間の期限付き移籍でベガルタ仙台へ移籍したが、左サイドのバックアッパーとしての加入であったため、公式戦出場はわずか3試合にとどまった。
2009年からは大分トリニータに復帰。2009年シーズンの終わりにチームがJ2に降格し、財政的な問題から多くの主力選手が退団したことにより、2010年からは再びスターティングメンバーに抜擢された。また、この2010年には日本サッカー協会公認B級コーチライセンスを取得している。2011年からはチーム最年長選手として主将に就任し、2013年まで3シーズンにわたってその重責を担った。監督の田坂和昭からは、展開力は高いが守備が弱いと指摘されていたが、その改善に努め、オフ・ザ・ボールのポジショニングも向上したと評価された。2013年は4年ぶりのJ1でのプレーとなったが、ロドリゴ・マンシャや梶山陽平の加入などにより、ボランチのポジション争いが激化し、前年に比べ出場機会は減少した。先発を外れる試合も少なくなかったが、チームの精神的支柱として、困難な状況下でも懸命にチームをまとめようと尽力した。J2降格が決定した第29節以降は再びスタメンの座を取り戻したが、同年をもって契約満了により大分を退団することとなった。
3.3. FC岐阜時代と引退
2014年、積極的な補強を進めるFC岐阜から、中盤の司令塔としての役割を期待されオファーを受け、同クラブへ移籍した。FC岐阜では中盤の底から多彩なパスを供給し、すぐに先発の座を掴んだ。2014年シーズンはレギュラーとして多くの試合に出場した。しかし、2015年シーズン中盤からは特別指定選手の青木翼らにスタメンを譲ることが多くなり、同年限りで現役を引退することを決断した。
4. 引退後の経歴
宮沢正史は現役引退後もサッカー界に留まり、指導者としての新たなキャリアを歩んでいる。
4.1. FC東京スタッフ時代
2016年、かつて所属したFC東京のスカウティングスタッフに就任し、クラブの強化に貢献した。2017年9月には、安間貴義が暫定監督に就任したことに伴い、トップチームコーチを兼任し、2018年までその役割を務めた。2019年からは、FC東京U-15深川のコーチとして、若手選手の育成に携わった。
4.2. 中央大学サッカー部監督時代
2021年1月7日、自身の母校である中央大学サッカー部の監督に就任することが発表された。現在もその職を務め、学生サッカーの指導者として、今後のサッカー界を担う人材の育成に力を注いでいる。
5. 個人成績
宮沢正史のプロサッカー選手としてのキャリアにおける公式戦出場記録と得点記録を以下に示す。
5.1. クラブでの出場記録
クラブパフォーマンス | リーグ | カップ戦 | リーグカップ | 通算 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
シーズン | クラブ | リーグ | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 |
日本 | リーグ | 天皇杯 | Jリーグカップ | 通算 | ||||||
2001 | FC東京 | J1リーグ | 1 | 0 | 1 | 0 | 3 | 0 | 5 | 0 |
2002 | FC東京 | J1 | 29 | 4 | 1 | 0 | 7 | 3 | 37 | 7 |
2003 | FC東京 | J1 | 29 | 4 | 2 | 0 | 8 | 1 | 39 | 5 |
2004 | FC東京 | J1 | 18 | 0 | 2 | 0 | 4 | 0 | 24 | 0 |
2005 | FC東京 | J1 | 15 | 2 | 1 | 0 | 5 | 0 | 21 | 2 |
2006 | FC東京 | J1 | 20 | 1 | 1 | 0 | 2 | 0 | 23 | 1 |
2007 | 大分トリニータ | J1 | 6 | 0 | 1 | 0 | 3 | 0 | 10 | 0 |
2008 | ベガルタ仙台 | J2リーグ | 2 | 0 | 1 | 0 | - | 3 | 0 | |
2009 | 大分トリニータ | J1 | 12 | 0 | 1 | 0 | 4 | 0 | 17 | 0 |
2010 | 大分トリニータ | J2 | 30 | 0 | 2 | 0 | - | 32 | 0 | |
2011 | 大分トリニータ | J2 | 38 | 0 | 1 | 0 | - | 39 | 0 | |
2012 | 大分トリニータ | J2 | 39 | 0 | 1 | 0 | - | 40 | 0 | |
2013 | 大分トリニータ | J1 | 20 | 0 | 4 | 0 | 5 | 0 | 29 | 0 |
2014 | FC岐阜 | J2 | 31 | 1 | 0 | 0 | - | 31 | 1 | |
2015 | FC岐阜 | J2 | 15 | 0 | 2 | 0 | - | 17 | 0 | |
キャリア通算 | 305 | 12 | 21 | 0 | 41 | 4 | 367 | 16 |
その他の公式戦出場として、2012年にはJ1昇格プレーオフで2試合に出場している(得点なし)。
5.2. 記録達成日
宮沢正史のプロキャリアにおける主要な記録達成日は以下の通りである。
- 2001年10月31日:Jリーグ初出場 - J1 2ndステージ第11節 vs横浜F・マリノス(東京スタジアム)
- 2002年4月6日:Jリーグ初得点 - J1 1stステージ第5節 vsジェフユナイテッド市原(国立競技場)
- 2006年5月6日:J1通算100試合出場 - J1第12節 vs大宮アルディージャ(味の素スタジアム)
- 2012年9月2日:J2通算100試合出場 - J2第32節 vsヴァンフォーレ甲府(大分銀行ドーム)
6. 個人タイトル
宮沢正史が選手時代に獲得した主な個人賞およびタイトルは以下の通りである。
- 関東大学サッカーリーグ戦 ベストイレブン (1998年、1999年、2000年)
- 関東大学サッカーリーグ戦 アシスト王 (1998年)
- デンソーカップ日韓大学定期戦ベストイレブン (2000年)
- Jリーグ優秀新人賞 (2002年)
- Jリーグ優秀選手賞 (2003年)
7. 代表経歴
宮沢正史は、国家代表チームとしての主要な経歴を持つ。
- ユニバーシアード日本代表
- 1999年夏季ユニバーシアード出場