片桐はいり

1. 来歴・背景

片桐はいりの幼少期から女優としての道を歩み始めるまでの経緯、そして彼女のキャリアを形成した初期の経験について概説する。

1.1. 幼少期と教育

片桐はいりは東京都大田区に生まれ育った。大田区立山王小学校を卒業後、香蘭女学校中学校・高等学校に進学。中学時代の同級生には作家の上橋菜穂子がおり、高等科在学中の文化祭で、有志により催された上橋原作・脚本の「双子星座」が彼女にとっての初舞台となった。その後、成蹊大学文学部日本文学科を卒業。大学在学中、演劇部で歌人・作詞家の林あまりと出会い、交流を深めた。

大学卒業後、片桐はいりは映画館である銀座文化劇場で「もぎり」のアルバイトを始めた。映画が好きで、映画に関わることなら何でもやりたいと考えていた一方、女優とは選ばれた人がなるものだという思いも抱いていた。しかし、「一度くらいやってみたい」という気持ちから役者の道に進むことを決意したという。

1981年に生田萬と銀粉蝶が旗揚げした劇団「ブリキの自発団」に入団。彼女の芸名である「はいり」は、テレビアニメ『アルプスの少女ハイジの主人公の名前に由来している。1994年に「ブリキの自発団」を退団し、フリーランスの女優として活動を続けることとなる。

初期にはSEEDコンタクトレンズのCMキャラクターとして森山祐子と共に起用され、そのユニークな存在感が話題を呼んだ。また、大人計画の公演にも客演するなど、舞台での経験も積んだ。テレビドラマでは、教師、お婆さん役、こだわりのある研究者など、多種多様な役柄を演じ分け、「七変化の名脇役」として評価を確立していった。特に、小林聡美やもたいまさこといった女優たちとの共演が多いことでも知られている。

2. 主な出演歴

片桐はいりの女優としての幅広い活動を、映画、テレビドラマ、舞台、声の出演、WEBドラマ、ラジオといったメディアごとに紹介する。

2.1. 映画

片桐はいりが出演した長編映画は以下の通りである。

公開年	タイトル	役柄	備考
1986	『コミック雑誌なんかいらない!』	ホストクラブの女
1987	『刑事物語5 やまびこの詩』	人質の女性
1987	『いとしのエリー』
1987	『ハチ公物語』	女中・およし
1987	『自由な女神たち』	数年前の徳子
1988	『クレージーボーイズ』	看護婦
1988	『...これから物語 ~少年たちのブルース~』	石川先生
1988	『・ふ・た・り・ぼ・っ・ち』	船橋
1989	『文学賞殺人事件大いなる助走』	ネットワーク女子
1989	『二十世紀少年読本』	牡丹
1989	『砂の上のロビンソン』	スーパーの買い物客
1990	『のぞみ・ウィッチィズ』	古典教師
1990	『びんばりハイスクール』	明石佐智
1991	『グッバイ・ママ』	根岸政子
1991	『ふざけろ!』	九条千里
1992	『おこげ』	同僚の声優
1993	『J・MOVIE・WARS』	看護婦
2000	『ケイゾク/映画 Beautiful Dreamer』	長谷川裕子
2001	『連弾』	女弁護士
2002	『恋に唄えば♪』	催事場担当者
2003	『キューティーハニー』	ゴールド・クロー
2004	『恋の門』	登山者2
2005	『サヨナラCOLOR』	売店店員(小板橋益美)
2005	『晴れたらポップなボクの生活』	美幸
2005	『劇場版ナニワ金融道灰原勝負!起死回生のおとしまえ	』
2005	『太陽の見える場所まで』	佳代
2006	『ベロニカは死ぬことにした』
2006	『ダメジン』	タイアン
2006	『かもめ食堂』	ミドリ
2007	『図鑑に載ってない虫』	SMの女王様
2008	『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』	みどり屋のおばちゃん
2009	『相棒シリーズ鑑識・米沢守の事件簿』	高橋早苗
2009	『非女子図鑑』『男の証明』	主演
2009	『なくもんか』	みどり
2009	『片桐はいり4倍速』	本人
2010	『劇場版怪談レストラン』	用務員のおばさん / 紫ババア
2011	『大木家のたのしい旅行新婚地獄篇』	但馬
2013	『R100』	女王様
2014	『薔薇色のブー子』	占い師
2014	『小野寺の弟・小野寺の姉』	小野寺より子	主演
2015	『繕い裁つ人』	牧葵
2015	『ジヌよさらば~かむろば村へ~』	いそ子
2016	『シン・ゴジラ』	広田静子(官邸職員)
2017	『僕らのごはんは明日で待ってる』	山崎真喜子
2017	『勝手にふるえてろ』	オカリナ
2018	『体操しようよ』	みどり
2019	『蜜蜂と遠雷』
2019	『Listen to the Universe』
2020	『私をくいとめて』	澤田
2021	『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』	城子
2021	『キネマの神様』	常連の女性客
2021	『愛のまなざしを』	池田
2022	『ウェディング・ハイ』	樋口良子
2023	『PERFECT DAYS』
2023	『Ice Cream Fever』
2024	『まる』	古道具屋の店主

2.2. テレビドラマ

片桐はいりが出演したテレビドラマを放送局別にまとめる。

2.2.1. NHK

放送年	タイトル	役柄	備考
1988	『しあわせ志願』	信子
1996	『結婚はいかが?』
2008	『ママさんバレーでつかまえて』
2009 - 2011	『時々迷々』	時々迷々
2012	『ドラマチックゾーン~海外ドラマ』	喜子
2012	『黒い十人の黒木瞳。』
2013	『あまちゃん』	安部小百合
2014	『昨夜のカレー、明日のパン』	秋山朝子	NHK BSプレミアム
2016	『とと姉ちゃん』	東堂チヨ
2016	『富士ファミリー』	笑子バアサン
2016	『トットてれび』	モギリのお姉さん
2017	『富士ファミリー2017』	笑子バアサン
2017	『この声をきみに』	磯崎和代
2018	『炎上弁護人』	プア女
2019	『Eうた♪ココロの大冒険』	コンピューターおばあちゃん
2020	『不要不急の銀河』	河原千代
2022	『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ「ボッコちゃん」』
2022	『ちむどんどん』	下地響子
2022	『一橋桐子の犯罪日記』	友岡明子
2023	『大奥「8代・徳川吉宗×水野祐之進編」』	小川笙船
2023	『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』	住吉政子	BS4K・BSプレミアム
2023	『ミワさんなりすます』	一駒和枝
2024	『ユーミンストーリーズ「青春のリグレット」』	しらかばヒュッテ店員

2.2.2. 日本テレビ

放送年	タイトル	役柄
1989	『松本清張サスペンス・結婚式』
1990	『はやぶさ新八御用帳大奥の恋人』	おしゅん
2000	『永遠の仔』	向井照子
2000	『リミットもしも、わが子が...』	相沢知子
2001	『金田一少年の事件簿』	梅園薫
2001	『レッツ・ゴー!永田町』	大岩秘書
2002	『私立探偵濱マイク』
2003	『ぼくの魔法使い』
2003	『すいか』	生沢冴子
2004	『光とともに...~自閉症児を抱えて~』	郡司先生
2007	『セクシーボイスアンドロボ』	林雪江
2007	『おじいさん先生』	第4話ゲスト
2008	『栞と紙魚子の怪奇事件簿』
2008	『おせん』	桜井三千子
2011	『さよならぼくたちのようちえん』
2013	『東京バンドワゴン~下町大家族物語』	甲真奈美

2.2.3. TBS

放送年	タイトル	役柄
1985	『ふぞろいの林檎たち2』	佐竹重工のお茶汲み
1986	『親にはナイショで...』	屋久志摩子
1988	『ダウンタウン探偵組』
1994	『月曜ドラマスペシャル「バスガイド愛子2 みちのくの恋」』
1998	『ウルトラマンダイナ』第22話	綾野塔子博士
2000	『Beautiful Life ~ふたりでいた日々~』
2000	『ブラック・ジャック3』	鳩中カネ子
2005	『ママ!アイラブユー』	深井恵子
	『弁護士のくず』	豪田珠美
2006	『嫌われ松子の一生』	瀬川陽子
2007	『きらきら研修医』	前田清美
	『エジソンの母』	松平喜代美
2008	『Around40~注文の多いオンナたち~』	柳原和子
2010	『GM~踊れドクター』第5話	滝広美和子
2015	『MOZUスピンオフドラマ『大杉探偵事務所』美しき標的編』	白石百合
2018	『99.9-刑事専門弁護士- SEASON II』最終話	内川愛理
2024	『海に眠るダイヤモンド』第2話 -	大森

2.2.4. フジテレビ

放送年	タイトル	役柄	備考
1989	『裸の大将』第31話「下駄の鳴る丘」	春美	関西テレビ放送
	『世にも奇妙な物語「死にたくない」』
2002	『世にも奇妙な物語秋の特別編 (2002年)「知らなすぎた男」』	諸沢しのぶ
	『居酒屋兆治』
2000	『宝石調査員九条薫備前～倉敷・サファイア連続殺人事件』	女性客
	『のだめカンタービレ in ヨーロッパ』	ルイの母
2008	『妻たちからの三行半~夫たちの(秘)離婚回避マニュアル~』	実原みどり
2009 - 2010	『LIAR GAME Season2』	谷中モモコ
	『プロポーズ兄弟~生まれ順別男が結婚する方法~』第3夜	ペットショップの店主
	『僕とスターの99日』	沼田光代
2014	『HERO』	カルロス玉恵
2020 - 2021	『監察医朝顔』第2シリーズ第1話・18話	松本オリビア由美子

2.2.5. テレビ朝日

放送年	タイトル	役柄
	『土曜ワイド劇場高村薫サスペンス江戸川土手殺人事件』	川田徳子
	『混浴露天風呂連続殺人』
	『おかしな二人』	吉川典代
	『ハンサムマン』	権田婦長
	『竹中直人の恋のバカンス』
	『いとしの未来ちゃん』
2001	『はぐれ刑事純情派』	松井良子
2006	『時効警察』	小原和恵
2007	『モップガール』

2.2.6. テレビ東京

放送年	タイトル	役柄	備考
1989	『月影兵庫あばれ旅』	るい
2003	『水曜ミステリー9 篝警部補の事件簿』	山根久美子
2006	『怨み屋本舗』	佐知代
2010	『トラブルマン』	桂須磨子
2017	『パンセ』	南野その
2019	『よつば銀行原島浩美がモノ申す!~この女に賭けろ~』	金山さつき
2019	『びしょ濡れ探偵水野羽衣』第4話	山田直美
2020	『捨ててよ、安達さん。』第4話	時計
2021	『ひねくれ女のボッチ飯』	岡林早苗
2021	『東京放置食堂』	真野日出子	主演
2022	『孤独のグルメ (テレビドラマ) Season10』	「CABE」ママ店員

2.2.7. 関西テレビ

放送年	タイトル	役柄
2008	『DRAMATIC-J ノンノンフィクション-室家に何が起こったか-』	ナターシャ今村
2009	『YOSHIMOTO DIRECTOR'S 100 ~100人が映画撮りました~「ホトケさま」』	柴山房江
2012	『ハングリー!』	海老名睦子

2.3. 舞台

片桐はいりが参加した主な舞台公演は以下の通りである。

深沢版・狸御殿
シラノ・ド・ベルジュラック
カラマーゾフの兄弟
ヴァニティーズ
ベンチャーズの夜
マシーン日記
ドライブイン・カリフォルニア
青木さん家の奥さん
昭和歌謡大全集
キレイ~神様と待ち合わせした女~
ゴドーを待ちながら
乙女の祈り
ニンゲン御破産
轟VS港カヲル
リア(アジア6ヵ国コラボレーション)
砂利(2007年)
学おじさん
小野寺の弟・小野寺の姉(2013年)
主婦米田時江の免疫力がアップするコント6本(2024年)

2.4. 声の出演・ダビング

片桐はいりは、アニメ映画やその他のプロジェクトで声優・吹き替えとしても活動している。

『アーロと少年』(2016年) - ラムジー役

2.5. WEBドラマ

片桐はいりが出演したオンライン配信プラットフォームで制作されたドラマは以下の通りである。

『グラウエンの鳥籠』
『コートダジュールN゜10』第6話「ある物件」(2017年11月28日、Hulu) - 湊けいこ役
『季節のない街』(2023年8月9日、ディズニープラス『スター』) - くに子役
『1122 いいふうふ』(2024年6月14日配信予定、Amazon Prime Video) - 整体院の院長役

2.6. ラジオ

片桐はいりが関与したラジオドラマやその他のラジオ番組は以下の通りである。

FMシアター「座る男」(2002年11月16日、NHK-FM、NHK名古屋放送局制作)
岡田惠和今宵、ロックバーで~ドラマな人々の音楽談義~ 第219回(2016年12月24日、NHK-FM)
FMシアター「100円の新世界」(2017年6月3日、NHK-FM、NHK名古屋放送局制作)

3. その他の活動

片桐はいりの主な女優業以外の活動や関与について紹介する。

3.1. CM

片桐はいりが出演した主なテレビCMや印刷広告は以下の通りである。

シード『コンタクトレンズ』
キリンビール
ダスキン『ミスタードーナツ』
スカイパーフェクTV! 「アンテナ取付0円」キャンペーン
名古屋ワープロ学院
おやつカンパニー『ベビースター超ワイド麺』
ミツカン『おむすび山赤飯風味』「公園」篇(2008年8月 - 9月)
株式会社ポケモン『ポケモンカードゲームBW』
明治安田生命「しあわせカフェ」篇(2013年、小泉今日子と共演)

『わたしのマトカ』(幻冬舎、2006年3月)
『グアテマラの弟』(幻冬舎、2007年6月)
『もぎりよ今夜も有難う』(キネマ旬報社、2010年7月)
- この作品は『キネマ旬報』に連載されたエッセイを書籍化したもので、第82回キネマ旬報ベスト・テンの「読者賞」を受賞している。

5. 私生活

片桐はいりの個人の生活や家族背景に関する情報を提供する。

5.1. 家族・親族

片桐はいりは独身である。彼女の著書によれば、弟がグアテマラのアンティグアで日本人向けのスペイン語学校を経営している。