1. 概要
畠世周は、広島県呉市出身のプロ野球選手であり、主に投手として活躍している。右投げ左打ち。近畿大学を卒業後、2016年のドラフト会議で読売ジャイアンツから2位指名を受け入団。巨人時代には、危険球退場の記録を2度経験しつつも、プロ初完封勝利を達成するなど先発やリリーフとして貢献した。2024年シーズン終了後、現役ドラフトにより阪神タイガースへ移籍。独特の投球フォームと多様な球種を武器とし、そのキャリアを通じて背番号の変更を経験している。
2. 生涯とアマチュア時代
プロ野球選手としてのキャリアを始める前の畠世周の個人的な背景と、学生時代の野球経歴について記述する。
2.1. 幼少期から高校時代
畠世周は1994年5月31日に広島県呉市で生まれた。呉市立川尻中学校では軟式野球部に所属。その後、近大福山高等学校に進学し、硬式野球を続けた。高校入学当初の球速は133 km/hであったが、3年時には142 km/hを計測するまでに成長。チームのエースとして活躍し、3年次には広島県大会でベスト16の成績を残した。この大会の4回戦では広島新庄高等学校と対戦し、当時2年生だった後に巨人でのチームメイトとなる田口麗斗と投げ合った。田口が先発で7回1安打無失点と好投したのに対し、畠はリリーフ登板で2回7失点と苦戦し、チームは0-12で敗退した。
2.2. 大学時代とドラフト
高校卒業後、近畿大学に進学。大学野球では通算46試合に登板し、13勝13敗、防御率2.03、216奪三振を記録した。2016年10月20日に行われたプロ野球ドラフト会議では、読売ジャイアンツから2位指名を受けた。同年11月15日には、契約金7000.00 万 JPY、推定年俸1200.00 万 JPYで仮契約を結んだ。この時、背番号は28に決定した。ドラフト指名後には、右肘の遊離軟骨除去手術を受けている。担当スカウトは益田明典であった。
3. プロ経歴
畠世周がプロ野球選手として経験してきた主要な活動と、それによって達成された成果を年代順に追って記述する。
3.1. 読売ジャイアンツ時代 (2017年 - 2024年)
畠世周は読売ジャイアンツに在籍した2017年から2024年までの期間、怪我による離脱と復帰を繰り返しながら、先発投手やリリーフ投手としてチームに貢献した。危険球退場事件やプロ初完封勝利、そして複数回の背番号変更など、様々な経験を積んだ。
3.1.1. 2017年シーズン
プロ入り初年度となる2017年は、ドラフト後の右肘手術の影響でキャンプを三軍で迎えた。4月30日に二軍で実戦初登板を果たし、5回無失点と好投。7月6日の広島東洋カープ戦で一軍初登板を果たすも、4回4失点とほろ苦いデビューとなった。しかし、その後の7月19日の中日ドラゴンズ戦では7回1/3を7安打2失点に抑え、プロ初勝利を挙げた。この勝利以降も先発ローテーションに定着し、勝ち星を重ねた。
一方で、9月30日の阪神タイガース戦では、初回に2番打者の上本博紀の頭部に死球を当ててしまい、当時のNPB一軍公式戦史上最速となる「試合開始から4球目での危険球退場処分」という記録を残した。また、対戦打者数においても風張蓮と並ぶ最速タイの「打者2人目での退場」となった(この記録は2021年に佐々木健によって更新された)。翌10月1日の阪神戦では、前日の退場にもかかわらず5回から2番手として登板。最初の打者を打ち取ったものの、前日に危険球を与えた上本、そして続く糸井嘉男に2者連続でソロ本塁打を打たれた。その後は無失点に抑え、7回まで投げ3回2失点で降板したが、チームはこの試合に敗れ、11年ぶりにBクラスが確定した。シーズン全体では13試合に登板し、6勝4敗、防御率2.99と安定した成績を残した。オフには、1200.00 万 JPY増となる推定年俸2400.00 万 JPYで契約を更改した。
3.1.2. 2018年シーズン
2018年は、2月のキャンプ中に腰を痛め、三軍での調整が続いた。治療と調整に時間を要し、三軍での実戦復帰は8月11日、二軍合流は9月4日と大きく出遅れた。9月11日に一軍にシーズン初昇格。この年は手薄なリリーフ陣を補うため、先発登板はなく、中継ぎに専念した。9月23日の阪神タイガース戦で5番手として登板し、チームの逆転勝利によりシーズン初勝利を挙げた。10月9日の阪神タイガース戦でも2番手として登板し、勝利投手となった。
クライマックスシリーズファーストステージのヤクルト戦では7回に登板し、1イニングを無失点に抑えた。しかし、クライマックスシリーズファイナルステージの広島戦第2戦では7回から登板するも、2イニング目の8回に二死走者なしから打ち込まれ、1回2/3を4失点と失点を重ね、チームは逆転負けを喫した。オフには、480.00 万 JPY減となる推定年俸1920.00 万 JPYで契約を更改。背番号が31に変更されることも発表された。
3.1.3. 2019年シーズン
2019年は開幕から先発ローテーションに入ったものの、2試合続けて5回を持たずに5失点以上を喫し、4月15日に二軍降格となった。4月30日には中継ぎとして一軍に復帰したが、5月6日には再び二軍で再調整を命じられた。7月18日には、3年前と同様に右肘の遊離軟骨除去手術を受けたため、このシーズン中に一軍に昇格することは叶わなかった。オフには、290.00 万 JPY減となる推定年俸1630.00 万 JPYで契約を更改した。
3.1.4. 2020年シーズン
2020年は、春季キャンプ中の2月29日に右肩の肉離れで一軍から離脱することが発表された。7月31日の広島戦でシーズン初登板・初先発を果たしたが、1点リードで迎えた5回に會澤翼に頭部死球を与え、プロで2度目の危険球退場となった。8月には3試合に先発するも3連敗を喫し、8月23日に登録を抹消された。9月20日に再登録されると、以降はローテーションを守る活躍を見せた。11月1日のヤクルト戦ではプロ入り後初の完封勝利を記録した。最終的には、すべて先発登板で12試合に登板し、4勝4敗、防御率2.88の成績を残した。
2020年の日本シリーズでは11月25日のソフトバンクとの第4戦に先発登板したが、柳田悠岐と甲斐拓也にそれぞれ2ランを打たれ、2回途中で降板した。オフには、570.00 万 JPY増となる推定年俸2200.00 万 JPYで契約を更改。背番号が45に変更されることも発表された。
3.1.5. 2021年シーズン
2021年は、4月14日の中日ドラゴンズ戦でシーズン初勝利を挙げた。6月からは本格的にリリーフに転向し、自己最多となる52試合に登板した。また、このシーズンを通して横浜DeNAベイスターズとの相性が非常に良いことを見せた。オフには、1430.00 万 JPY増となる推定年俸3630.00 万 JPYで契約を更改した。
3.1.6. 2022年シーズン
2022年は27試合に登板し、3勝0敗1セーブ、防御率3.14を記録した。11月25日、330.00 万 JPY減となる推定年俸3300.00 万 JPYで契約を更改した。
3.1.7. 2023年シーズン
2023年3月23日、右肘関節鏡視下クリーニング手術を受けたため、この年は一軍登板なしに終わった。11月29日、800.00 万 JPY減となる推定年俸2500.00 万 JPYで契約を更改した。
3.1.8. 2024年シーズン
2024年はわずか1試合の登板にとどまった。このシーズン終了後の現役ドラフトの対象選手となった。
3.2. 阪神タイガース時代 (2025年 - 現在)
2024年12月9日に行われた現役ドラフトにおいて、阪神タイガースへの移籍が決定した。
4. 選手としての特徴
畠世周の投球スタイルと、得意な球種について説明する。
4.1. 投球スタイル
畠世周の投球フォームは、グラブを頭上に掲げ、これを下ろす反動で右腕を高く跳ね上げる、独特の縦振りが特徴である。プロ2年目の2018年には、三軍での調整中に自己最速となる156 km/hの速球を記録している。
4.2. 持ち球
畠世周が主に投げる球種は、直球の他、スライダー、カットボール、カーブ、フォーク、チェンジアップなど多岐にわたる。これらの変化球を巧みに駆使して打者を打ち取る。
5. 人物・エピソード
畠世周の個人的な側面、家族関係、趣味、そして社会的な活動について紹介する。
5.1. 人物
畠世周の「世周」という名前には、「世の中が自分にとってプラスに回るように」という願いが込められている。また、巨人時代のチームメイトであった田口麗斗とは遠い親戚関係にある。
彼は元々左利きであったが、小学生の時に両親からの提案により、ポジションの選択肢を増やすために右投げに矯正した経緯がある。
趣味としては、BanG Dream!(バンドリ!)の熱心なファン、通称「バンドリーマー」として知られている。特に好きなバンドはRoseliaで、試合登板時の登場曲にもRoseliaの楽曲を使用するほどである。2021年には、劇場版「BanG Dream! Episode of Roselia I:約束」の公開時期に合わせて、登場曲をRoseliaの「約束」に変更した。
さらに、涼宮ハルヒシリーズのファンでもあり、小説「涼宮ハルヒの直観」が発売された際には、応援コメントを寄せるなど、作品への深い愛着を示している。
5.2. 対外活動
畠世周は、2017年から自身の出身地である広島県呉市の「くれ観光特使」を務めており、故郷の広報活動にも貢献している。
6. 記録・表彰
プロ野球選手として畠世周が達成した主要な個人記録と統計情報を提供する。
6.1. 初記録
畠世周がプロ野球の試合で初めて達成した記録を、投手記録と打撃記録に分けて列挙する。
6.1.1. 投手記録
- 初登板・初先発登板:2017年7月6日、対広島東洋カープ14回戦(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)、4回4失点で勝敗つかず
- 初奪三振:同上、1回裏に菊池涼介から空振り三振
- 初勝利・初先発勝利:2017年7月19日、対中日ドラゴンズ15回戦(ナゴヤドーム)、7回1/3を2失点
- 初ホールド:2018年9月12日、対東京ヤクルトスワローズ22回戦(東京ドーム)、8回表に2番手で救援登板、1回無失点
- 初完投・完封勝利:2020年11月1日、対東京ヤクルトスワローズ22回戦(東京ドーム)、9回7奪三振無失点
- 初セーブ:2021年9月12日、対広島東洋カープ18回戦(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)、9回裏に3番手で救援登板・完了、1回無失点
6.1.2. 打撃記録
- 初打席:2017年7月6日、対広島東洋カープ14回戦(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)、2回表にクリス・ジョンソンから三塁ゴロ
- 初安打・初打点:2017年9月17日、対横浜DeNAベイスターズ最終戦(東京ドーム)、5回裏に加賀繁から中前適時打
6.2. 年度別成績
畠世周のプロキャリアにおける年度別の投手成績および守備成績を、以下の表にまとめる。
6.2.1. 投手成績
年 度 | 球 団 | 登 板 | 先 発 | 完 投 | 完 封 | 無 四 球 | 勝 利 | 敗 戦 | セ ー ブ | ホ ー ル ド | 勝 率 | 打 者 | 投 球 回 | 被 安 打 | 被 本 塁 打 | 与 死 球 | 与 四 球 | 奪 三 振 | 暴 投 | ボ ー ク | 失 点 | 自 責 点 | 防 御 率 | WHIP | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2017 | 巨人 | 13 | 12 | 0 | 0 | 0 | 6 | 4 | 0 | 0 | .600 | 288 | 72.1 | 53 | 9 | 23 | 0 | 2 | 72 | 1 | 0 | 27 | 24 | 2.99 | 1.05 |
2018 | 9 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 3 | 1.000 | 41 | 9.2 | 10 | 0 | 2 | 0 | 0 | 10 | 1 | 0 | 3 | 3 | 2.79 | 1.24 | |
2019 | 5 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | .000 | 76 | 15.2 | 26 | 2 | 5 | 0 | 1 | 14 | 0 | 0 | 14 | 12 | 6.89 | 2.07 | |
2020 | 12 | 12 | 1 | 1 | 0 | 4 | 4 | 0 | 0 | .500 | 265 | 65.2 | 47 | 5 | 23 | 0 | 4 | 49 | 1 | 0 | 22 | 21 | 2.88 | 1.07 | |
2021 | 52 | 9 | 0 | 0 | 0 | 4 | 3 | 1 | 11 | .571 | 390 | 96.2 | 83 | 13 | 25 | 1 | 4 | 97 | 2 | 1 | 37 | 33 | 3.07 | 1.12 | |
2022 | 27 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 1 | 5 | 1.000 | 122 | 28.2 | 22 | 3 | 14 | 2 | 0 | 22 | 1 | 0 | 11 | 10 | 3.14 | 1.26 | |
2024 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | 10 | 3.0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 1 | 1 | 3.00 | 0.33 | |
通算:7年 | 119 | 36 | 1 | 1 | 0 | 19 | 12 | 2 | 19 | .613 | 1192 | 291.2 | 242 | 33 | 92 | 3 | 11 | 267 | 6 | 1 | 115 | 104 | 3.21 | 1.15 |
- 2024年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最高
6.2.2. 守備成績
年 度 | 球 団 | 投手 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
試 合 | 刺 殺 | 補 殺 | 失 策 | 併 殺 | 守 備 率 | ||
2017 | 巨人 | 13 | 0 | 8 | 1 | 1 | .889 |
2018 | 9 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1.000 | |
2019 | 5 | 0 | 4 | 1 | 0 | .800 | |
2020 | 12 | 1 | 10 | 0 | 1 | 1.000 | |
2021 | 52 | 3 | 15 | 0 | 0 | 1.000 | |
2022 | 27 | 2 | 6 | 0 | 0 | 1.000 | |
2024 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | |
通算 | 119 | 6 | 45 | 2 | 2 | .962 |
- 2024年度シーズン終了時
7. 背番号
畠世周がキャリアを通じて使用してきた背番号の変遷を以下に列挙する。
- 28(2017年 - 2018年)
- 31(2019年 - 2020年)
- 45(2021年 - 2024年)
- 36(2025年 - )
8. 登場曲
畠世周が試合登板時に使用した登場曲のリストを年度別に紹介する。
- 「Zenzenzense (English ver.)」RADWIMPS(2017年)
- 「brave heart」宮崎歩(2017年9月 - 同年終了)
- 「Butter-Fly」和田光司(2018年)
- 「六兆年と一夜物語」Roselia(2019年)※登板時
- 「シュガーソングとビターステップ」UNISON SQUARE GARDEN(2019年 - 2020年)※打席時
- 「oath sign」LiSA(2020年9月 - 2021年)
- 「約束」Roselia(2021年4月 - 2023年)
- 「めざせポケモンマスター」松本梨香(2021年4月 - 2023年)
- 「This game」鈴木このみ(2022年 - 2023年)
- 「Summers Still Burning」川口レイジ(2024年 - )