1. 生涯
菊池保則の生涯は、幼少期からの野球への情熱と、プロ野球選手としての挑戦、そして引退後の新たなキャリアへと続く物語である。
1.1. プロ入り前
菊池は1989年9月18日に茨城県久慈郡大子町で生まれた。小学生の時には大子町立矢田小学校で野球だけでなくドッジボールにも打ち込み、全国大会に出場する経験も持っている。大子町立大子中学校を卒業後、常磐大学高等学校に進学し、1年時から野球部のベンチ入りを果たした。2006年の秋季茨城県大会ではチームを準優勝に導き、関東大会にも出場した。関東大会の初戦では、後にプロ入りする唐川侑己がエースを務める成田高校と対戦。菊池は成田高校打線を6安打に抑える好投を見せたものの、味方打線の援護がなく敗戦し、センバツ出場を逃した。3年生時にはエース兼4番打者としてチームを牽引。夏の茨城県大会では準決勝で東洋大牛久高校を相手に16奪三振で完封勝利を収めるなど、圧倒的な投球を見せた。しかし、決勝戦では清原大貴を擁する常総学院に敗れ、甲子園出場は叶わなかった。
2007年10月3日、高校生ドラフトにおいて東北楽天ゴールデンイーグルスから4巡目指名を受け、プロ入りが決定した。
1.2. プロ経歴
菊池は東北楽天ゴールデンイーグルスでプロとしてのキャリアをスタートさせ、主に先発として経験を積んだ。その後、トレードで広島東洋カープに移籍し、中継ぎとして才能を開花させた。
1.2.1. 東北楽天ゴールデンイーグルス時代
楽天でのプロ入り後、2008年には1軍登板の機会はなかったものの、高卒の新人投手3名の中で唯一1軍登録された。2009年には2軍で主に中継ぎとして登板し、フレッシュオールスターまでに13試合を投げた。チームメイトの石田隆司がフレッシュオールスターを辞退した際には、その代理として出場。試合では途中から登板し、ウエスタン・リーグの主軸打者から2三振を奪うなど、1イニングを無失点に抑える好投を見せた。
2010年9月23日の埼玉西武ライオンズ戦でプロ初登板初先発を果たし、5回2安打2失点の好投でプロ初勝利を挙げた。
2012年シーズン終盤には1軍に昇格し、4試合に先発登板して1勝1敗を記録。2軍では7勝2敗、勝率.778でイースタン・リーグ最高勝率を記録し、優秀選手にも選出された。秋季キャンプでは当時の監督である星野仙一により若手投手の指定強化選手5人の一人に選ばれ、キャンプ最終日のスタッフ投票で翌年のオープン戦開幕投手の権利を獲得した。
2013年はオープン戦での好投が評価され、開幕1軍入りを果たした。4月には先発ローテーションに加わったが、4試合連続で打ち込まれる結果となった。特に4戦目では一死も取れずに降板するなど結果を残せず、二軍降格は免れたものの、中継ぎ待機を余儀なくされた。しかし、ローテーションの谷間となった6月2日の中日ドラゴンズ戦(Kスタ宮城)で先発登板し、6回途中を無失点に抑えてシーズン初勝利と本拠地での初勝利を挙げた。
2014年は開幕1軍入りを逃し、その後も1軍と2軍を行き来する日々が続き、リリーフでの起用が主だった。しかし、8月17日の千葉ロッテマリーンズ戦(コボスタ宮城)でシーズン初先発を務め、6回を3安打無四球無失点に抑え、前年の中日戦以来約1年2か月ぶりとなるシーズン初勝利を手にした。この登板以降、シーズン終了まで先発ローテーションを守り、自己最多となる4勝を挙げた。
2015年は4月30日のオリックス・バファローズ戦でシーズン初登板初先発を迎え、6回無失点の好投を見せ、ここから先発ローテーション入りを果たした。2試合目の登板となった北海道日本ハムファイターズ戦では7回途中8奪三振2失点の好投でシーズン初勝利を挙げた。この年は前年に続いて4勝に終わったものの、自身初めてシーズン100イニングを投げた。この年はホームゲームでの勝利はなかった。

2016年は前年9月から発症していた右肩痛のリハビリのため2軍での調整が続き、8月23日にようやく1軍初登板となった。続く8月30日の登板で6回2失点の内容でシーズン初勝利を挙げたが、この1勝に留まり、防御率も5.16に終わった。この年5月には同郷の女性と結婚したことも発表された。
2018年は3試合の登板に留まった。
1.2.2. 広島東洋カープ時代
2018年11月29日、福井優也とのトレードで広島東洋カープに移籍することが発表された。広島球団には同じ苗字の選手である菊池涼介が在籍しているため、報道上およびスコアボード上の表記は「菊池保」となった。
2019年はシーズンを通して中継ぎとして1軍に帯同し、シーズン終盤にはセットアッパーとしても起用された。チームで2番目に多い58試合に登板し、防御率2.80、15ホールドという好成績を残した。
2021年9月26日の横浜DeNAベイスターズ戦では8回2死の場面で登板。Tyler Austinタイラー・オースティン英語を初球でフライに抑え、直後の9回に味方が鈴木誠也の適時打などで逆転。その裏を栗林良吏が抑えたことで、同年9月9日に塹江敦哉が記録して以来シーズン2人目となる「1球勝利」を記録した。
2022年は8試合の登板に留まり、同年10月22日に戦力外通告を受けた。11月8日に行われた12球団合同トライアウトにも参加したが、他球団からのオファーはなく、11月24日に現役引退と広島の打撃投手への就任が発表された。
1.3. 引退および引退後の活動
2022年10月22日に広島東洋カープから戦力外通告を受けた菊池は、同年11月8日に開催された12球団合同トライアウトに参加し、現役続行への強い意欲を示した。しかし、残念ながら他球団からの獲得オファーは得られず、同年11月24日に現役引退を発表。同時に、長年在籍した広島東洋カープに打撃投手として残留することが決定し、新たな形でチームに貢献することとなった。
2. 選手としての特徴と評価
菊池保則は、最速149 km/hのストレートと高速スライダーのコンビネーションを最大の武器とした。特にストレートについては、元投手コーチの佐藤義則が「指にかかった時の球の強さは田中将大以上のものがある」と評するほど、球威があった。投球イニングに迫る奪三振数を記録するなど、その球の威力は際立っていた。
一方で、コントロールに課題を抱えており、制球が定まらない日には四死球を連発して自滅してしまうこともあった。また、メンタル面での弱さを指摘されることもあったが、これは時に彼の投球に影響を与える要因ともなった。
広島東洋カープへの移籍後からは、新たにツーシームを投げるようになった。これによりストライクゾーンを広く使えるようになり、元来の持ち味であるストレートをより効果的に生かせるようになった。
愛称は「キク」「キクヤス」「タモツ」など。楽天時代は「キク」と呼ばれていたが、広島移籍後は同姓で同じ愛称の菊池涼介がいたため、登録名の「菊池保」から連想される「タモツ」と呼ばれることが多くなった。
3. 詳細情報
3.1. 出身学校
- 常磐大学高等学校
3.2. 選手経歴
- 東北楽天ゴールデンイーグルス(2008年 - 2018年)
- 広島東洋カープ(2019年 - 2022年)
3.3. 主要記録
菊池保則がプロ野球選手として達成した主要な個人記録を以下に示す。
3.3.1. 投手記録
- 初登板・初先発登板・初勝利・初先発勝利:2010年9月23日、対埼玉西武ライオンズ22回戦(西武ドーム)、5回2失点
- 初奪三振:同上、1回裏に栗山巧から空振り三振
- 初ホールド:2017年8月9日、対北海道日本ハムファイターズ14回戦(Koboパーク宮城)、7回表に3番手で救援登板、1/3回1失点
- 初セーブ:2020年7月8日、対横浜DeNAベイスターズ4回戦(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)、9回表に3番手で救援登板・完了、1回無失点
3.3.2. 打撃記録
- 初打席:2015年5月28日、対阪神タイガース3回戦(阪神甲子園球場)、2回表にMario Santiagoマリオ・サンティアゴスペイン語から投前犠打
- 初安打:同上、4回表にMario Santiagoマリオ・サンティアゴスペイン語から中前安打
3.3.3. その他記録
- 1球勝利:2021年9月26日、対横浜DeNAベイスターズ21回戦(横浜スタジアム)、8回裏2死に6番手で救援登板、1/3回無失点 ※史上44人目(45度目)
3.4. 背番号
- 59(2008年 - 2019年)
- 39(2020年 - 2022年)
- 100 (2023年 - 、打撃投手)
3.5. 登場曲
- 「もう君がいない」FUNKY MONKEY BABYS(2009年)
- 「湾岸 highway」湘南乃風(2010年 - )
- 「何かひとつ feat. JAY'ED & 若旦那」JAMOSA(2011年)
- 「ムカイカゼ」HOME MADE 家族(2012年)
- 「REASON」ゆず(2014年)
- 「光り」BUZZ THE BEARS(2019年)
- 「High & High」フジファブリック(2019年)
3.6. 年度別成績
3.6.1. 投手成績
年度 | 所属 | 登板 | 先発 | 完投 | 完封 | 無四球 | 勝利 | 敗戦 | セーブ | ホールド | 勝率 | 打者 | イニング | 被安打 | 被本塁打 | 与四球 | 故意四球 | 与死球 | 奪三振 | 暴投 | ボーク | 失点 | 自責点 | 防御率 | WHIP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2010 | 楽天 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | .500 | 46 | 11.0 | 7 | 3 | 5 | 0 | 2 | 10 | 0 | 0 | 5 | 5 | 4.09 | 1.09 |
2011 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | .000 | 25 | 3.1 | 5 | 1 | 8 | 0 | 1 | 3 | 0 | 0 | 6 | 5 | 13.50 | 3.90 | |
2012 | 4 | 4 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | .500 | 110 | 25.0 | 30 | 2 | 5 | 0 | 1 | 24 | 3 | 0 | 9 | 8 | 2.88 | 1.40 | |
2013 | 14 | 5 | 0 | 0 | 0 | 1 | 5 | 0 | 0 | .167 | 158 | 33.1 | 38 | 3 | 23 | 0 | 1 | 22 | 4 | 0 | 28 | 24 | 6.48 | 1.83 | |
2014 | 12 | 8 | 0 | 0 | 0 | 4 | 1 | 0 | 0 | .800 | 211 | 51.1 | 40 | 5 | 18 | 0 | 3 | 36 | 8 | 0 | 23 | 23 | 4.03 | 1.13 | |
2015 | 18 | 17 | 0 | 0 | 0 | 4 | 5 | 0 | 0 | .444 | 448 | 103.0 | 96 | 5 | 42 | 0 | 5 | 71 | 5 | 0 | 47 | 43 | 3.76 | 1.34 | |
2016 | 7 | 4 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | .500 | 111 | 22.2 | 33 | 4 | 13 | 0 | 1 | 14 | 2 | 0 | 16 | 13 | 5.16 | 2.03 | |
2017 | 7 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | .--- | 35 | 7.1 | 8 | 0 | 4 | 0 | 0 | 9 | 1 | 0 | 7 | 4 | 4.91 | 1.64 | |
2018 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | .--- | 55 | 13.0 | 11 | 1 | 4 | 0 | 1 | 15 | 0 | 0 | 2 | 2 | 1.38 | 1.15 | |
2019 | 広島 | 58 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 | 0 | 15 | .250 | 240 | 61.0 | 39 | 4 | 23 | 2 | 0 | 43 | 4 | 0 | 21 | 19 | 2.80 | 1.02 |
2020 | 44 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 4 | 1.000 | 189 | 42.0 | 41 | 6 | 19 | 0 | 3 | 53 | 3 | 0 | 24 | 21 | 4.50 | 1.43 | |
2021 | 33 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 3 | .667 | 140 | 31.2 | 31 | 3 | 13 | 2 | 3 | 25 | 0 | 0 | 7 | 6 | 1.71 | 1.39 | |
2022 | 8 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | ---- | 39 | 8.0 | 10 | 2 | 4 | 1 | 1 | 6 | 0 | 0 | 5 | 5 | 5.63 | 1.75 | |
通算:13年 | 212 | 42 | 0 | 0 | 0 | 16 | 19 | 1 | 25 | .457 | 1807 | 412.2 | 389 | 39 | 181 | 5 | 22 | 331 | 30 | 0 | 200 | 178 | 3.88 | 1.38 |
3.6.2. 守備成績
年度 | 球団 | 投手 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
試合 | 刺殺 | 補殺 | 失策 | 併殺 | 守備率 | ||
2010 | 楽天 | 2 | 1 | 2 | 0 | 0 | 1.000 |
2011 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | |
2012 | 4 | 1 | 7 | 0 | 0 | 1.000 | |
2013 | 14 | 0 | 8 | 0 | 0 | 1.000 | |
2014 | 12 | 4 | 9 | 0 | 0 | 1.000 | |
2015 | 18 | 1 | 14 | 1 | 0 | .938 | |
2016 | 7 | 2 | 1 | 1 | 0 | .750 | |
2017 | 7 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | |
2018 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | |
2019 | 広島 | 58 | 6 | 12 | 0 | 1 | 1.000 |
2020 | 44 | 0 | 4 | 2 | 0 | .667 | |
2021 | 33 | 3 | 3 | 0 | 0 | 1.000 | |
2022 | 8 | 0 | 0 | 0 | 0 | ---- | |
通算 | 212 | 18 | 60 | 4 | 1 | .951 |