1. 概要
日本の小説家である馳星周(はせ せいしゅう)は、1965年2月18日生まれ。本名は坂東 齢人(ばんどう としひと)。香港の映画監督・俳優である周星馳(チャウ・シンチー)の名前を逆にしてペンネームとした。
彼の作品は主にクライムノベルやノワールのジャンルに属し、謀略や裏切りを軸としたストーリー、暗黒社会の住人や外国人マフィア、不良少年などを登場人物の中心に据えている。その一方で、閉塞感に満ちた日々を送る普通の人々や、テロリズム、戦争を題材とした作品も手がけている。
1996年に『不夜城』で小説家として本格的にデビューし、同作はベストセラーとなり、吉川英治文学新人賞を受賞した。その後も『鎮魂歌 不夜城II』で日本推理作家協会賞、『漂流街』で大藪春彦賞を受賞するなど、数々の文学賞を受賞。直木賞には7度ノミネートされ、2020年には『少年と犬』でついに同賞を受賞した。
馳星周の作品世界には、社会の不条理や人間の内面に潜む闇、経済至上主義に対する批判的な視点が色濃く反映されている。私生活では愛犬との生活を大切にし、長野県軽井沢町へ移住するなど、そのライフスタイルもまた、彼の文学活動に影響を与えている。
2. 生涯と背景
馳星周の生涯は、彼の文学的感性を形成する上で重要な背景となっている。
2.1. 生い立ちと氏名、家族
馳星周は1965年2月18日、北海道に生まれた。本名は坂東 齢人(ばんどう としひと)。ペンネームの「馳星周」は、彼がファンである香港の映画監督・俳優である周星馳(周星馳チャウ・シンチー中国語)の名前を逆にしたものである。本名の「齢人」は、両親が日本共産党員であったことから、レーニンに由来するとされる。
彼の両親は共に社会的な活動に携わっていた。父親は元浦河町議会議員、母親は元教員であった。幼少期には『しんぶん赤旗』日曜版の配達を手伝っていた経験があり、また選挙では一度も棄権したことがないという。これらの背景は、彼の作品に見られる社会批判的な視点に影響を与えている可能性がある。
2.2. 学歴と初期のキャリア
馳星周は北海道苫小牧東高等学校を卒業後、横浜市立大学文理学部に進学し、1987年に卒業した。大学時代には、内藤陳が経営する新宿ゴールデン街のバー「深夜プラス1」でバーテンダーとしてアルバイトをしていた。
大学卒業後、勁文社の官能小説レーベル「グリーンドア文庫」の編集者としてキャリアをスタートさせた。その後、フリーランスのゲームライターに転身。当時のゲーム雑誌『ポプコム』(小学館)の副編集長に誘われ、退職金で購入したNECのPC-9821RXを使ってゲーム記事を執筆した。特に、彼の愛読するシミュレーションゲーム『プリンセスメーカー』に関する連載「レーニンの子育て日記」は当時の『ポプコム』に掲載されていた。
また、本名の坂東齢人名義で『本の雑誌』などにおいて、推理小説や冒険小説を中心に文芸評論家としても活動していた。さらに、プロレス評論やゲーム評論も手掛け、古神陸(こがみ りく)、佐山アキラ(さやま アキラ)、レーニン(れいにん)といったペンネームで編集や執筆者としてゲームのノベライズも出版している。
3. 文学活動
小説家・馳星周の文学活動は、そのデビューから一貫して独自の作風とテーマを追求している。
3.1. デビューと作風の特徴
馳星周は1996年8月、『不夜城』で一般小説作家として本格的にデビューした。この作品は、日中混血の男女2人が新宿歌舞伎町に暗躍する中国人マフィアの抗争に巻き込まれるという内容で、当時のベストセラーとなり、第116回の直木賞候補となった。
彼の作品は、そのデビュー以来、ノワールやクライムノベルといったジャンルを特徴としている。ストーリーの軸は常に謀略戦や騙し合いであり、登場人物は外国人マフィアやヤクザ、不良少年といった暗黒社会の住人がメインを占める。
3.2. 文学様式とテーマ
馳星周の作品には、暗黒社会を舞台とするものだけでなく、閉塞感に満ちた日々を送る普通の人々を題材としたものや、テロリズム、戦争などをテーマとした作品も多く見られる。彼の文学様式は、社会の不条理や人間の内面に潜む「闇」を深く抉り出すことに特徴がある。特に、人間関係における裏切りや葛藤、そして登場人物が直面する絶望的な状況が緻密に描かれ、読者に強烈な印象を与える。
3.3. 影響と哲学
馳星周が尊敬する作家として挙げているのは、山田風太郎と大藪春彦である。彼の愛読書はジェイムズ・エルロイの『White Jazzホワイト・ジャズ英語』である。
幼少期の読書体験も彼の作品世界に大きな影響を与えている。NHK BS2の『BSマンガ夜話』に出演した際、『デビルマン』と『フランダースの犬』を子供の頃に影響を受けた作品として挙げている。これらの物語がハッピーエンドを期待して鑑賞したものがバッドエンドで締め括られたことに衝撃を受けたと述べており、これが彼の作品に見られる暗い結末や人間の不条理な運命の描写に繋がっていると考えられる。
彼の文学思想と哲学には、社会に対する批判的な視点も含まれている。特に、経済至上主義に偏った日本人のあり方に対しては、強い嫌悪感を抱いていると語っている。また、アルバイトを無責任に辞める若者については、甘やかされて育った結果だと見解を示している。かつて「昭和時代の要因によってひどい国になった」と発言し、昭和期の沖縄を舞台にした小説を書きたいと述べていたが、その後『弥勒世』が出版されている。
彼自身は、「ノワールを意識して書いている日本の作家は今でも自分しかいないと思う」と語っており、日本の文学界における自身の立ち位置を明確に認識している。
4. 主要作品
馳星周は多岐にわたるジャンルの作品を執筆している。
4.1. 小説
4.1.1. シリーズ・一般小説
- 『不夜城』(1996年8月 角川書店 / 1998年4月 角川文庫)
- 『鎮魂歌(レクイエム) 不夜城II』(1997年8月 角川書店 / 2000年10月 角川文庫 / 2014年6月 双葉文庫 日本推理作家協会賞受賞作全集(88))
- 『長恨歌(ちょうごんか) 不夜城完結編』(2004年12月 角川書店 / 2008年7月 角川文庫)
- 『夜光虫』(1998年8月 角川書店 / 2001年10月 角川文庫)
- 『暗手』(2017年4月 KADOKAWA / 2020年4月 角川文庫)
- 『漂流街』(1998年9月 徳間書店 / 2000年9月 徳間文庫 / 2015年2月 徳間文庫【新装版】)
- 『M』(1999年11月 文藝春秋 / 2002年12月 文春文庫)
- 『虚の王』(2000年3月 光文社 カッパ・ノベルス / 2003年9月 光文社文庫 / 2008年3月 角川文庫)
- 『古惑仔(チンピラ)』(2000年7月 徳間書店 / 2003年2月 トクマ・ノベルス / 2005年2月 徳間文庫 / 2009年7月 角川文庫)
- 『雪月夜』(2000年10月 双葉社 / 2003年5月 双葉文庫 / 2006年10月 角川文庫 / 2023年2月 双葉文庫【新装版】)
- 『ダーク・ムーン』(2001年11月 集英社 / 2004年10月 集英社文庫【上・下】)
- 『マンゴー・レイン』(2002年5月 角川書店 / 2005年3月 角川文庫)
- 『クラッシュ』(2003年8月 徳間書店 / 2007年2月 徳間文庫)
- 『生誕祭』(2003年9月 文藝春秋【上・下】 / 2006年4月 文春文庫【上・下】)
- 『復活祭』(2014年9月 文藝春秋 / 2017年6月 文春文庫)
- 『楽園の眠り』(2005年9月 徳間書店 / 2009年2月 徳間文庫)
- 『トーキョー・バビロン』(2006年4月 双葉社 / 2009年5月 双葉文庫【上・下】)
- 『ブルー・ローズ』(2006年9月 中央公論新社【上・下】 / 2009年9月 中公文庫【上・下】)
- 『約束の地で』(2007年9月 集英社 / 2010年5月 集英社文庫)
- 『弥勒世』(2008年2月 小学館【上・下】 / 2012年2月 角川文庫【上・下】)
- 『やつらを高く吊せ』(2008年5月 講談社 / 2011年5月 講談社文庫)
- 『9・11倶楽部』(2008年7月 文藝春秋 / 2011年6月 文春文庫)
- 『煉獄の使徒』(2009年5月 新潮社【上・下】 / 2011年12月 新潮文庫【上・下】 / 2022年4月 角川文庫【上・下】)
- 『沈黙の森』(2009年10月 徳間書店 / 2012年1月 徳間文庫)
- 『エウスカディ』(2010年9月 角川書店【上・下】)
- 【改題】『殉狂者』(2014年9月 角川文庫【上・下】)
- 『淡雪記』(2011年2月 集英社 / 2014年3月 集英社文庫)
- 『光あれ』(2011年8月 文藝春秋 / 2014年2月 文春文庫)
- 『暗闇で踊れ』(2011年11月 双葉社 / 2015年1月 双葉文庫)
- 『美ら海、血の海』(2013年2月 集英社文庫)
- 『ソウルメイト』(2013年6月 集英社 / 2015年9月 集英社文庫)
- 『陽だまりの天使たち ソウルメイトII』 (2015年10月 集英社 / 2018年10月 集英社文庫)
- 『ラフ・アンド・タフ』(2014年1月 講談社 / 2016年12月 講談社文庫)
- 『帰らずの海』(2014年6月 徳間書店 / 2016年8月 徳間文庫)
- 『雪炎』(2015年1月 集英社 / 2017年11月 集英社文庫)
- 『アンタッチャブル』(2015年5月 毎日新聞出版 / 2018年7月 文春文庫)
- 『殺しの許可証 アンタッチャブル2』(2019年11月 毎日新聞出版 / 2024年4月 毎日文庫)
- 『神奈備』(2016年6月 集英社 / 2019年5月 集英社文庫)
- 『比ぶ者なき』(2016年11月 中央公論新社 / 2020年3月 中公文庫)
- 『神の涙』(2017年8月 実業之日本社 / 2020年12月 実業之日本社文庫)
- 『蒼き山嶺』(2018年1月 光文社 / 2020年12月 光文社文庫)
- 『雨降る森の犬』(2018年6月 集英社 / 2020年9月 集英社文庫)
- 『パーフェクトワールド』(2018年8月 集英社文庫【上・下】)
- 『ゴールデン街コーリング』(2018年12月 KADOKAWA / 2021年12月 角川文庫)
- 『四神の旗』(2020年4月 中央公論新社 / 2023年12月 中公文庫)
- 『少年と犬』(2020年5月 文藝春秋 / 2023年4月 文春文庫)
- 『黄金旅程』(2021年12月 集英社 / 2024年9月 集英社文庫)
- 『月の王』(2022年4月 KADOKAWA)
- 『ロスト・イン・ザ・ターフ』(2023年10月 文藝春秋)
- 『北辰の門』(2024年1月 中央公論新社)
- 『フェスタ』(2024年3月 集英社)
4.1.2. 別名義小説
- 古神陸名義
- 『ブルー・アイズ・ブルー』(1991年3月 - 1992年9月 勁文社)
- 我が愛しの天使
- 戦士たちの絆
- 愚か者の墓標
- 約束の時
- 『アストラル・シティ』(1993年8月 勁文社)
- 猛き神の紋章
- 禍つ神の哄笑
- 『双竜伝』(1994年8月 小学館スーパークエスト文庫)
- VOL.1
- VOL.2
- 『アルティメット・ブレイド』(1995年9月 小学館スーパークエスト文庫)
- 『Ribbon』(1996年9月 KKベストセラーズ)- Bonbee!から発売された同名アダルトゲームのノベライズ。
- 『ブルー・アイズ・ブルー』(1991年3月 - 1992年9月 勁文社)
- 佐山アキラ名義
- 『ウィザードリィ小説アンソロジー』(1991年8月 JICC出版局)- 短編『酔いどれの墓標』を執筆。
4.2. エッセイ・その他著作
- 犬系
- 『うちの秘蔵っ子』(2001年6月 実業之日本社)
- 『マイフレンドBOOK』(2001年9月 PHP研究所)
- 『愛の記憶-Crea due』(2001年12月 文藝春秋)
- 『走ろうぜ、マージ』(2006年6月 角川書店 / 2014年7月 角川文庫)
- 『犬からの素敵な贈りもの』(2007年12月 インフォレスト)
- 『約束-最愛の犬たちへ』(2008年1月 文藝春秋)
- サッカー系
- 『欧州征服紀行』(2002年6月 角川書店)
- 『The Road to World Cup2002-ワールドカップへの道1998から2002までの軌跡』 金子達仁共著(2002年6月 角川書店)
- 『蹴球戦争(フットボール・ウォー)-馳星周的W杯観戦記』(2002年7月 文藝春秋 / 2004年7月 文春文庫)
- その他
- 『バンドーに聞け!』(1997年8月 本の雑誌社 / 2002年6月 文春文庫) - 坂東齢人名義。
- CD-ROM BOOK『電影銀盤"不夜城"』(1998年6月 角川書店)
- 『ミステリを書く!』(1998年10月 ビレッジセンター出版局)
- 『文壇バー』(2001年6月 角川書店)
- 【改題】『作家ってどうよ?』(2004年9月 角川文庫)
- 『作家の読書道2』(2007年8月 本の雑誌社) - 読書遍歴インタビュー集。
- 『リアル・シガー・ガイド』(2008年8月 集英社) - 実践的シガー論。
- 『馳星周の喰人魂』(2013年5月 中央公論新社)
4.3. 対談・インタビュー
- 『蹴球中毒(サッカー・ジャンキー)金子達仁』(1998年9月 文藝春秋 / 2001年6月 文春文庫)
- 『蘇える野獣-大藪春彦の世界』(1999年2月 徳間書店)
- 『VS.馳星周 トップアスリート対談集』(2009年10月 アスペクト)
5. 受賞・候補歴
馳星周は数々の文学賞を受賞し、また多くの主要文学賞で候補となっている。特に直木賞には複数回ノミネートされ、長年の挑戦を経て受賞を果たした。
- 1997年 - 『不夜城』で第116回直木賞候補。第18回吉川英治文学新人賞及び第15回日本冒険小説協会大賞(国内部門)受賞。
- 1998年 - 『鎮魂歌 不夜城II』で第51回日本推理作家協会賞(長編部門)受賞。
- 1999年 - 『漂流街』で第1回大藪春彦賞受賞。
- 1999年 - 『夜光虫』で第120回直木賞候補。
- 2000年 - 『M』で第122回直木賞候補。
- 2002年 - 『ダーク・ムーン』で第15回山本周五郎賞候補。
- 2004年 - 『生誕祭』で第130回直木賞候補。
- 2007年 - 『約束の地で』で第138回直木賞候補。
- 2015年 - 『アンタッチャブル』で第153回直木賞候補。
- 2020年 - 『少年と犬』で第163回直木賞受賞。
6. 映像化・ゲーム協力
馳星周の作品は映画や漫画として映像化されたり、彼自身がゲームのシナリオ監修に携わったりと、多岐にわたるメディアミックス展開が行われている。
6.1. 映画・漫画化
彼の代表作のいくつかは映画や漫画として脚色され、広く知られている。
- 映画化
- 『不夜城 SLEEPLESS TOWN』(1998年6月27日公開、配給:東映/アスミック・エース、監督:リー・チーガイ、主演:金城武)
- 『漂流街 THE HAZARD CITY』(2000年11月11日公開、配給:東宝、監督:三池崇史、主演:TEAH、主題歌:SADS『NIGHTMARE』『FINALE』)
- 『M』(2007年9月15日公開、配給:ハピネット、監督:廣木隆一、主演:美元)
- 『少年と犬』(2025年公開予定、配給:東宝、監督:瀬々敬久、主演:高橋文哉・西野七瀬)
- 漫画化
- 『不夜城』(作画:山本貴嗣、1998年6月、角川コミックス・エース)
6.2. テレビゲーム監修
馳星周はゲーム業界にも深く関わり、人気ゲームのシナリオ監修なども手掛けている。
- テレビゲーム
- 『龍が如く』(2005年 SEGA) - シナリオ監修。
- 『龍が如く2』(2006年 SEGA) - シナリオ監修。なお、これ以降の「龍が如く」シリーズ作品には関与していない。
- パソコンゲーム
- 『アルティメットブレイド ULTIMATE BLADE』(1995年 ポプコムソフト) - 原作。
7. 私生活
馳星周の私生活は、彼の作品と同様に、ある種の個性と哲学を垣間見せる。
7.1. 家族とライフスタイル
馳星周は結婚しており、結婚記念日は11月11日である。彼は「いい親にはなれない」という自覚があるため、子供はいないと語っており、「気楽に子供をつくる人が多すぎる」という見解を示している。
長年にわたりバーニーズ・マウンテン・ドッグの「マージ」を飼っていた。マージのために長野県軽井沢町に別荘を購入し、マージの死後には自身も軽井沢へ転居している。現在の近況は自身のブログで紹介されている。小説『雨降る森の犬』の主人公は彼の姪がモデルである。
7.2. 趣味・関心
馳星周は多様な趣味と関心を持つことで知られている。
彼は葉巻の愛好家であり、2005年からは『月刊プレイボーイ』誌上で「俺流シガー読本」を連載し、書籍化もされている。サッカーが好きで、特に好きな国はスペインである。写真撮影も趣味の一つで、ペンネームでウェブ上に作品を投稿することもある。パンク・ロックのファンであり、日本のロックバンドであるBLANKEY JET CITYを高く評価している。
また、競走馬ステイゴールドとその一族の大ファンとしても知られており、『小説すばる』で連載した「黄金旅程」は、ステイゴールドを題材とした作品である(黄金旅程はステイゴールドの漢字表記)。Twitterを始めたのも、妻以外とも一族の勝利の喜びを分かち合いたかったからだと述べている。
8. 公共活動・出演
馳星周はテレビ番組などにも出演し、その見識を披露している。
- BSマンガ夜話(NHK BS2) - 「ベルセルク」(1999年3月8日放送)および「デビルマン」(1999年8月30日放送)の回にゲスト出演。
- TVシンポジウム「不比等が造る国のかたち~日本書紀1300年~」(2021年4月3日、NHK Eテレ)
9. 評価
馳星周の作品と文学世界は、文壇や読者から多角的な評価を受けている。
9.1. 全体的な評価
馳星周の作品は、そのリアリティと深い人間描写によって高い評価を得ている。特に、彼の作品に一貫して流れるノワールの精神は、日本の文壇において独自の地位を確立している。馳星周自身も、「ノワールを意識して書いている日本の作家は今でも自分しかいないと思う」と語っており、自らの作品世界に対する明確な自負を持っている。
9.2. 社会的・文化的影響
馳星周の作品は、単なるエンターテインメントに留まらず、社会問題や人間の心の闇に深く切り込むことで、読者に多大な影響を与えている。彼の作品に登場する暗黒社会は、現代社会が抱える問題や、人間が陥りがちな閉塞感を象徴的に描き出している。
例えば、彼の作品に度々現れる経済至上主義への批判や、若者世代に対する見解は、現代社会の価値観を問い直す契機となっている。また、かつて「昭和時代の要因によってひどい国になった」と語り、昭和期の沖縄を舞台にした小説を書きたいという意欲を語っていたことから生まれた『弥勒世』は、歴史と社会の繋がりを描く試みとして、特定の文化現象への貢献を示している。彼の描く世界観は、多くのクリエイターにも影響を与え、映画化やゲーム監修といった形で、日本の大衆文化に貢献し続けている。
10. 外部リンク
- [http://www.hase-seisyu.com/ 馳 星周 公式サイト Sleepless City]
- [http://walterb.blog103.fc2.com/ ワルテルと天使たちと小説家] - FC2ブログ
- [https://twitter.com/KW7MBql9fYjANgE 馳 星周 (@KW7MBql9fYjANgE) - X(旧Twitter)]