1. 概要
鳴尾 直軌(鳴尾 直軌なるお なおき日本語、1974年10月5日 - )は、岩手県下閉伊郡岩泉町出身の元サッカー選手であり、現在はサッカー指導者として活動しています。
選手としては、モンテディオ山形でキャリアをスタートさせ、ソニー仙台FC、アルビレックス新潟、ジュビロ磐田、サンフレッチェ広島、サガン鳥栖など、日本の主要なクラブでフォワードとして活躍しました。特にアルビレックス新潟時代には、エースストライカーとして多くの得点を挙げ、その才能を発揮しました。
引退後は指導者に転身し、アルビレックス新潟レディースやいわてグルージャ盛岡(旧グルージャ盛岡)、アルビレックス新潟シンガポールの監督を歴任しました。いわてグルージャ盛岡では、クラブを東北社会人サッカーリーグからJ3リーグへと昇格させる歴史的な功績を残しました。また、アルビレックス新潟シンガポールを率いた2016年には、Sリーグ(現在のシンガポールプレミアリーグ)において年間4冠という前例のない偉業を達成し、「Sリーグ年間最優秀監督賞」を受賞するなど、指導者としても目覚ましい成果を上げています。
2. 選手経歴
鳴尾直軌は、フォワードとして日本国内の複数のクラブでプレーし、その得点能力とリーダーシップでチームに貢献しました。
2.1. 幼少期・学歴
鳴尾直軌は1974年10月5日に岩手県下閉伊郡岩泉町で生まれました。岩手大学を卒業後、プロサッカー選手としてのキャリアを歩み始めました。
大学卒業後、一度入団したモンテディオ山形から戦力外通告を受けた後、アマチュア選手としてソニー仙台FCに入団します。この際、彼はソニーの社員にはならず、学生として選手登録を行うため、母校である岩手大学の大学院教育学研究科修士課程に進学しました。ソニー仙台での選手活動と、盛岡での大学院での履修という二足のわらじを履き、学業と競技活動を両立させました。アルビレックス新潟所属時の2年間は休学してサッカーに専念しましたが、ジュビロ磐田移籍後に復学し、2002年3月に修士号を取得しました。
2.2. プロ入りと初期のキャリア
鳴尾は岩手大学を卒業後、1997年に当時ジャパンフットボールリーグ(旧JFL)に所属していたモンテディオ山形に加入し、プロとしてのキャリアをスタートさせました。山形ではフォワードとして多くの試合に出場し、リーグ戦12試合で5得点を記録しました。
1998年には同じく旧JFLのソニー仙台FCに移籍。ソニー仙台ではレギュラーに定着し、リーグ戦28試合で13得点を挙げる活躍を見せました。この活躍が認められ、翌1999年には新たにJ2リーグに昇格したアルビレックス新潟への移籍が決定しました。
2.3. 主な所属クラブと活動
アルビレックス新潟では、2シーズンにわたってチームの中心選手として活躍し、エースストライカーとしての地位を確立しました。特に2000年シーズンには、浦和レッズ戦で2度のハットトリックを達成するなど、リーグ戦36試合で17得点という目覚ましい成績を残しました。
2001年にはJ1リーグの強豪クラブであるジュビロ磐田に移籍しました。しかし、当時の磐田には中山雅史、奥大介、前田遼一といった強力な主力選手が多数在籍しており、鳴尾は定位置を奪うことができず、公式戦での出場機会は得られませんでした。
2002年6月には、同じJ1クラブのサンフレッチェ広島へ期限付き移籍しました。しかし、ここでも出場機会に恵まれず、リーグ戦3試合の出場にとどまりました。広島は2002年シーズン終了後にJ2リーグへ降格しました。
2003年、鳴尾はJ2リーグのサガン鳥栖に移籍しました。鳥栖では2003年シーズンにレギュラーとしてプレーし、リーグ戦38試合で5得点を記録しました。しかし、2004年には出場機会が減少し、同年シーズン終了をもって現役を引退しました。
2.4. 個人成績
プロ選手として参加した全てのリーグ戦、カップ戦の通算記録は以下の通りです。
クラブ成績 | リーグ | カップ | リーグカップ | 合計 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
シーズン | クラブ | リーグ | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 |
日本 | リーグ | 天皇杯 | Jリーグカップ | 合計 | ||||||
1997 | 山形 | 旧JFL | 12 | 5 | 0 | 0 | - | 12 | 5 | |
1998 | ソニー | 旧JFL | 28 | 13 | 2 | 1 | - | 30 | 14 | |
1999 | 新潟 | J2 | 36 | 8 | 3 | 0 | 2 | 0 | 41 | 8 |
2000 | 36 | 17 | 1 | 0 | 2 | 0 | 39 | 17 | ||
2001 | 磐田 | J1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2002 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | ||
2002 | 広島 | J1 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 |
2003 | 鳥栖 | J2 | 38 | 5 | 1 | 0 | - | 39 | 5 | |
2004 | 10 | 0 | 0 | 0 | - | 10 | 0 | |||
キャリア通算 | 163 | 48 | 7 | 1 | 4 | 0 | 174 | 49 |
;その他の公式戦
- アジアクラブ選手権:2001年 1試合1得点
;ハットトリック
- 2000年 J2・第18節 浦和レッズ戦 (新潟市陸上競技場) - 3得点
- 2000年 J2・第36節 浦和レッズ戦 (新潟市陸上競技場) - 3得点
3. 指導者経歴
鳴尾直軌は選手引退後、その経験を活かしてサッカー指導者の道に進みました。数々のチームで指導者として活躍し、特にアルビレックス新潟シンガポールといわてグルージャ盛岡では顕著な功績を残しています。
3.1. 指導者としての歩み
現役引退後の2005年、鳴尾はアルビレックス新潟の普及部コーチに就任し、指導者としての第一歩を踏み出しました。
2006年から2007年には、アルビレックス新潟レディースの監督を務めました。
2008年にはアルビレックス新潟シンガポールのコーチに就任し、翌2009年には同クラブの監督を務めました。このシーズン、チームはSリーグで7位という成績を残しました。
2010年には再びアルビレックス新潟に戻り、育成普及コーチを担当しました。
2011年からはいわてグルージャ盛岡(当時の名称はグルージャ盛岡)のトップチームコーチに就任し、地元岩手での指導に従事しました。この年、鳴尾はJFA公認S級コーチの資格を取得しました。
2012年にはグルージャ盛岡の監督に昇格し、2015年まで指揮を執りました。
2016年、鳴尾は再びアルビレックス新潟シンガポールの監督に復帰し、奥山達之の後任となりました。この復帰シーズンは、彼にとって指導者キャリアのハイライトとなりました。
2017年には、アルビレックス新潟U-18の監督に就任しました。
その後、2018年にはナショナルトレセンコーチとして北信越地域を担当。
2019年から2021年まで岩手県サッカー協会の専任ユースダイレクターを務めました。
2022年からは富士大学サッカー部の副部長兼コーチとして活動しています。
3.2. 主要な指導実績と功績
鳴尾直軌の指導者としての功績は多岐にわたります。
- アルビレックス新潟レディース (2006年)**:なでしこリーグ2部で優勝を果たしました。
- いわてグルージャ盛岡 (2012年-2015年)**:
- 2013年、東北社会人サッカーリーグ1部で優勝を達成。
- 同年に開催された第37回全国地域サッカーリーグ決勝大会でも優勝に導き、クラブのJ3リーグ参入に大きく貢献しました。これにより、グルージャ盛岡はセミプロの地域リーグからプロリーグへと昇格するという、クラブの歴史における重要な節目を迎えました。
- その他の大会でも好成績を収めており、2012年の第67回国民体育大会サッカー競技(成年男子)では準優勝、2013年の第68回国民体育大会サッカー競技(成年男子)では3位、第49回全国社会人サッカー選手権大会では準優勝となりました。
- アルビレックス新潟シンガポール (2016年)**:
- Sリーグ(シンガポールプレミアリーグ)において、Sリーグ王者、シンガポール・リーグカップ、シンガポール・カップ、シンガポール・チャリティーシールドの主要4タイトル全てを制覇するという、前例のない年間4冠を達成しました。これはSリーグ史上初の快挙であり、その功績が認められ、鳴尾は2016年の「Sリーグ年間最優秀監督賞」を受賞しました。
- 4冠達成から2日後には、契約満了に伴いアルビレックス新潟シンガポールを退任することを発表しました。
3.3. 指導者ライセンス
鳴尾直軌は、日本サッカー協会(JFA)公認の指導者ライセンスを段階的に取得しており、その指導力の基盤を築いています。
- 2006年:日本サッカー協会公認B級ライセンス修得
- 2008年:日本サッカー協会公認A級ライセンス修得
- 2011年:日本サッカー協会公認S級ライセンス修得(いわてグルージャ盛岡コーチ在籍中に取得)
3.4. 監督成績
指導者として率いたチームのリーグ戦およびカップ戦の通算成績は以下の通りです。
年度 | 所属 | クラブ | リーグ戦 | カップ戦 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
順位 | 勝点 | 試合 | 勝 | 分 | 敗 | リーグ杯 | オープン杯 | |||
2006 | なでしこ2部 | 新潟L | 優勝 | 51 | 21 | 16 | 3 | 2 | - | 1回戦 |
2007 | なでしこ1部 | 6位 | 12 | 21 | 3 | 3 | 15 | 予選リーグ | ベスト8 | |
2009 | Sリーグ | 新潟S | 7位 | 38 | 30 | 11 | 5 | 14 | 予選敗退 | 4位 |
2012 | 東北1部 | G盛岡 | 2位 | 30 | 12 | 10 | 0 | 2 | - | 1回戦 |
2013 | 優勝 | 49 | 18 | 16 | 1 | 1 | - | 1回戦 | ||
2014 | J3 | 5位 | 45 | 33 | 12 | 9 | 12 | - | 1回戦 | |
2015 | 11位 | 35 | 36 | 8 | 11 | 17 | - | 1回戦 | ||
2016 | Sリーグ | 新潟S | 優勝 | 50 | 24 | 16 | 2 | 6 | 優勝 | 優勝 |
通算 | 日本 | J3 | - | - | 69 | 20 | 20 | 29 | - | - |
日本 | 東北1部 | - | - | 30 | 26 | 1 | 3 | - | - | |
日本 | なでしこ1部 | - | - | 21 | 3 | 3 | 15 | - | - | |
日本 | なでしこ2部 | - | - | 21 | 16 | 3 | 2 | - | - | |
シンガポール | Sリーグ | - | - | 54 | 27 | 7 | 20 | - | - | |
総通算 | 195 | 92 | 34 | 69 | - | - |
;その他
- 第67回国民体育大会サッカー競技 準優勝 (2012年)
- 第68回国民体育大会サッカー競技 3位 (2013年)
- 第49回全国社会人サッカー選手権大会 準優勝 (2013年)
- 第37回全国地域サッカーリーグ決勝大会 優勝 (2013年)
- 第9回シンガポール・チャリティーシールド 優勝 (2016年)
4. 受賞歴・評価
鳴尾直軌は、その指導者としての功績が広く認められ、特に2016年には「Sリーグ年間最優秀監督賞」を受賞しました。これは、アルビレックス新潟シンガポールをSリーグ史上初の年間4冠へと導いた手腕が高く評価された結果です。
選手としては、アルビレックス新潟でエースストライカーとして活躍し、特に2000年シーズンには2度のハットトリックを達成するなど、その得点能力は高く評価されていました。引退後もサッカー界に貢献し続け、アマチュアからプロへとクラブを昇格させた手腕や、海外リーグで歴史的な成功を収めた実績は、日本のサッカー指導者としての模範的なキャリアパスを示しています。
5. 関連人物・項目
- 岩手県
- 下閉伊郡
- 岩泉町
- 岩手大学
- モンテディオ山形
- ソニー仙台FC
- アルビレックス新潟
- ジュビロ磐田
- サンフレッチェ広島
- サガン鳥栖
- アルビレックス新潟レディース
- アルビレックス新潟シンガポール
- いわてグルージャ盛岡
- Jリーグ
- JFA公認S級コーチライセンス
- Sリーグ
- 東北社会人サッカーリーグ
- 全国地域サッカーリーグ決勝大会
- シンガポール・リーグカップ
- シンガポール・カップ
- シンガポール・チャリティーシールド
- 中山雅史
- 奥大介
- 前田遼一
- 浦和レッドダイヤモンズ
- 国民体育大会サッカー競技
- 全国社会人サッカー選手権大会
6. 外部リンク
- [https://data.j-league.or.jp/SFIX04/?player_id=5237 J.League Data Site (選手プロフィール)]
- [https://data.j-league.or.jp/SFIX07/?staff_id=5237 J.League Data Site (監督プロフィール)]
- [http://www.iwate2016.jp/supporters/naruo 第71回国民体育大会 (国民体育大会)]
- [https://web.archive.org/web/20090627063601/http://www.j-league.or.jp:80/csc/column/column_naruo.html Jリーグキャリアサポートセンター OBリレーコラム第25回 (Wayback Machineによるアーカイブ)]