1. Overview
アハメド・サラ(Ahmed Salah英語、またはاحمد صلاحアハメド・アブデル・ナイームアラビア語)は、エジプトの男子バレーボール選手である。1984年8月19日に生まれ、オポジットのポジションで活躍した。ユースおよびジュニア代表を経て、2003年にシニアナショナルチームに選出されて以来、エジプト代表の主力選手として長年にわたり国際舞台で貢献し、2008年北京オリンピックと2016年リオデジャネイロオリンピックに出場した。彼のキャリアは、エジプト国内リーグで12回、エジプトカップで12回優勝したアル・アハリSCでの複数の在籍期間に象徴され、アフリカクラブ選手権やアラブクラブ選手権でも数々のタイトルを獲得している。ナショナルチームでは、アフリカ選手権で7度の優勝を達成し、2005年地中海競技大会でも金メダルを獲得するなど、エジプトバレーボール界に輝かしい実績をもたらした。特に、金銭的に有利な条件が提示されたにもかかわらず国籍変更の誘いを断った愛国心は高く評価されており、選手としての能力だけでなく、その倫理的な姿勢も特筆すべき特徴である。彼は2023年に7度目のアフリカ選手権優勝を果たした後、国際大会から引退した。
2. 生い立ちとキャリアの始まり
アハメド・サラは1984年8月19日にエジプトで生まれた。本名はAhmed Abdelhey Salah El din英語といい、チーム内では「サラ」の愛称で親しまれた。彼は左利きで、身長は1.97 m、体重は87 kg。最高到達点はスパイクで342 cm、ブロックで316 cmを誇る。
バレーボール選手としての初期キャリアにおいて、アハメドはまずユース代表として2001年のU-19世界選手権に出場した。続いて2003年にはジュニア代表としてU-21世界選手権に出場し、その才能を国際舞台で発揮した。同年、彼はシニアナショナルチームに選出され、10月にナイジェリアで開催されたオールアフリカゲームズで国際大会デビューを飾った。この大会で優勝を経験した後、彼はチーム最年少となる19歳で2003年バレーボールワールドカップに出場し、シニア国際大会でのキャリアを本格的にスタートさせた。
3. クラブキャリア
アハメド・サラはプロバレーボール選手として、エジプト国内外の複数のクラブチームに所属し、それぞれのチームで重要な役割を担ってきた。彼のクラブキャリアは、所属期間と主な貢献によって特徴づけられる。
- アル・アハリSC(エジプト)
- 2001年から2009年、2010年から2012年、そして2018年から現在まで、複数の期間にわたって所属している。これは彼のキャリアの大部分を占め、チームの主力選手として数多くの国内タイトルやアフリカクラブ選手権、アラブクラブ選手権の栄誉獲得に貢献した。
- VCディナモ・ヤンター(VC Dynamo-Yantar Kaliningrad英語、ロシア)
- 2010年から2011年まで、ロシアのクラブに短期間在籍した。
- ハルクバンク・アンカラ(Halkbank Ankara英語、トルコ)
- 2012年から2013年まで所属。この期間にチームはCEVカップで優勝し、アハメド・サラ自身もベストプレイヤー、ベストスパイカーに選出されるなど、彼の国際的な実力を示す重要な時期となった。
- ガラタサライSK(Galatasaray S.K. (men's volleyball)英語、トルコ)
- 2013年から2014年まで在籍。
- タラエア・エル・ガイシュSC(Tala'ea El Gaish SC英語、エジプト)
- 2014年から2018年まで在籍。この期間にも国内リーグやカップ戦で優勝を経験し、アフリカクラブ選手権でもタイトルを獲得するなど、エジプト国内での存在感を示し続けた。
4. ナショナルチームキャリア
アハメド・サラは2003年のシニア代表選出以降、長きにわたりエジプト男子バレーボールナショナルチームの中心選手として活躍した。左利きのオポジットとして、その強力な攻撃力はチームの重要な得点源となった。
彼は以下の主要な国際大会に出場し、エジプト代表の成績に貢献した。
- オリンピック
- 2008年北京オリンピック(11位)
- 2016年リオデジャネイロオリンピック
- 世界選手権
- 2006年大会(21位)
- 2010年大会
- 2014年大会
- ワールドカップ
- 2003年大会(12位)
- 2007年大会(10位)
- 2011年大会
- 2015年大会
- ワールドリーグ
- 2007年大会
- 2008年大会(13位)
- ワールドグランドチャンピオンズカップ
- 2005年大会(5位)
- 2009年大会(6位)
- アフリカ選手権
- 2005年、2007年、2009年、2011年、2013年、2015年、2023年(優勝)
特にアフリカ選手権では、2005年以降複数回優勝を経験し、2009年の大会では最優秀選手賞を獲得するなど、アフリカにおけるエジプトバレーボールの優位確立に大きく貢献した。彼はアフリカ王者として、2大会連続でワールドグランドチャンピオンズカップに出場を果たした。
5. 主要な実績と栄誉
アハメド・サラは、クラブおよびナショナルチームで数多くのタイトル獲得に貢献し、個人としても多くの賞を受賞してきた。
5.1. クラブでの栄誉
アハメド・サラが所属したクラブチームで獲得した主要なタイトルは以下の通りである。
- アル・アハリSC(エジプト)
- エジプトリーグ優勝: 12回(2001/02、2002/03、2003/04、2005/06、2006/07、2008/09、2009/10、2010/11、2018/19、2019/20、2020/21、2023/24)
- エジプトカップ優勝: 12回(2001/02、2002/03、2003/04、2004/05、2005/06、2006/07、2007/08、2009/10、2010/11、2018/19、2019/20、2023/24)
- アフリカクラブ選手権優勝: 8回(2003、2004、2006、2010、2011、2019、2022、2024)
- アラブクラブ選手権優勝: 6回(2002、2005、2006、2010、2020、2023)
- エジプトバレーボールスーパーカップ優勝: 2回(2023、2024)
- ハルクバンク・アンカラ(トルコ)
- CEVカップ優勝: 1回(2012/13)
- トルコカップ優勝: 1回(2013/14)
- タラエア・エル・ガイシュSC(エジプト)
- エジプトリーグ優勝: 2回(2015/16、2016/17)
- エジプトカップ優勝: 2回(2014/15、2016/17)
- アフリカクラブ選手権優勝: 1回(2016)
- アル・ヒラルFC(サウジアラビア)
- アラブクラブ選手権優勝: 1回(2011)
5.2. 国際大会での栄誉
ナショナルチームの一員として獲得した主要な国際大会でのメダルや優勝記録は以下の通りである。
- アフリカ選手権優勝: 7回(2005、2007、2009、2011、2013、2015、2023)
- 地中海競技大会優勝: 1回(2005 アルメリア大会)
- アフリカ競技大会優勝: 2回(2003、2007)
- アラブ競技大会優勝: 3回(2006、2014、2016)
5.3. 個人賞
アハメド・サラが獲得した個人賞は以下の通りである。
- ワールドカップ
- ベストスパイカー: 2011年
- トップスコアラー: 2015年
- アフリカ選手権
- 最優秀選手(MVP): 2005年、2009年、2011年
- ベストサーバー: 2007年、2011年
- ベストスパイカー: 2007年
- オリンピック大陸予選(アフリカ)
- 最優秀選手(MVP): 2008年
- ベストスパイカー: 2008年
- アフリカクラブ選手権
- 最優秀選手(MVP): 2009年、2010年
- ベストスパイカー: 2015年
- アラブクラブ選手権
- 最優秀選手(MVP): 2006年、2011年
- ベストサーバー: 2005年、2010年
- ベストスパイカー: 2006年
- エジプトリーグ
- 最優秀選手(MVP): 2007年
- ベストサーバー: 2001年
- ベストスパイカー: 2001年、2002年、2004年、2005年、2007年
- アフリカユースカップ: ベストプレイヤー&ベストアタッカー(2002年)
- 第8回ラシード国際バレーボールトーナメント: ベストサーバー(2004年)
6. プレースタイルと特筆すべき特徴
アハメド・サラは、身長1.97 m、左利きのオポジットとして、その強力なスパイクと高いブロック能力が特筆される選手である。スパイクの最高到達点は342 cm、ブロックの最高到達点は316 cmに達し、これらの身体能力を活かしてチームの主要な得点源として機能した。特に、トルコのハルクバンク・アンカラに所属していた2012-2013シーズンには、チームのCEVカップ優勝に貢献し、自身もベストプレイヤーおよびベストスパイカーに選出されるなど、国際舞台での高い技術力と決定力を証明した。
彼の選手としての特徴は、技術的な側面に留まらない。アハメド・サラは強い愛国心を持つことで知られており、財政的に有利な条件が提示されたにもかかわらず、自身の国籍を変更する誘いを何度も断っている。この姿勢は、彼が単なるアスリートとしてだけでなく、国家への忠誠心と倫理的な価値観を重んじる人物であることを示している。このような人間性は、彼がエジプトのバレーボール界における象徴的な存在として広く尊敬される理由の一つとなっている。

7. 国際大会からの引退
アハメド・サラは、エジプト代表として国際大会から2023年に引退した。彼の国際キャリアの終焉は、その最後の主要な功績によって飾られた。彼はこの年、カイロで開催されたアフリカ選手権でチームを優勝に導き、自身にとって7度目となるこの大会での金メダルを獲得した。
彼の引退は、エジプトバレーボール界の長きにわたる主要な柱の一つが国際舞台を去ることを意味した。アハメド・サラは、その卓越したプレースタイルと揺るぎない愛国心で、エジプト男子バレーボールの国際的な地位向上に多大な貢献をしてきた。彼の引退後の具体的な活動については、ソースには明記されていないが、そのキャリアがバレーボール界に残した影響は大きく、彼の功績は今後も語り継がれるだろう。