1. 概要

アレクサンデル・オーモット・キルデは、FISアルペンスキーワールドカップにおいて個人総合優勝1回、種目別クリスタルグローブを複数回獲得した実績を持つノルウェーのトップアルペンスキー選手である。彼はワールドカップで通算21勝を挙げ、48回の表彰台に上がっている。特に2019-20シーズンにはワールドカップ個人総合優勝を果たし、アルペンスキー界におけるトップ選手の一人としての地位を確立した。また、2022年北京オリンピックでは男子複合で銀メダル、男子スーパー大回転で銅メダルを獲得し、2つのオリンピックメダルを手にした。
2. 選手経歴初期
2.1. 幼少期と背景
アレクサンデル・オーモット・キルデは1992年9月21日にノルウェーのアーケシュフース県のベールムで生まれた。彼はロムメダレンスILのスポーツクラブに所属している。彼のミドルネームである「オーモット」は母親の旧姓に由来するが、同じノルウェーのアルペンスキー選手であるシェティル・アンドレ・オーモットとは血縁関係がない。彼の身長は1.81 mである。
2.2. ジュニア時代の成功とワールドカップデビュー
キルデは2013年世界ジュニアアルペンスキー選手権でジュニア世界選手権のジャイアントスラローム種目で優勝を果たした。この大会はカナダのケベック州、モン・サンタンヌで開催された。同年にはアルペンスキー欧州カップの総合タイトルも獲得した。また、ノルウェー国内選手権のスーパー大回転では、優勝したアクセル・ルンド・スヴィンダルにわずか0.11秒差で2位に入った。
彼は2012年10月にワールドカップデビューを果たし、2014シーズン以降は継続的にワールドカップサーキットで競技に参加している。2015年12月にはヴァル・ガルデナで開催されたスーパー大回転で、初めてワールドカップの表彰台に上った。このレースではチームメイトのアクセル・ルンド・スヴィンダル、シェティル・ヤンスルードに続く3位となり、ノルウェー勢が表彰台を独占する形となった。
3. シニアキャリアの主要な成果
アレクサンデル・オーモット・キルデのシニアキャリアは、ワールドカップでの目覚ましい活躍と、オリンピックおよび世界選手権でのメダル獲得によって特徴づけられる。彼は特にスピード系種目で強みを発揮し、世界のトップ選手としての地位を確立した。
3.1. ワールドカップシーズンごとの成績
キルデは2019-20シーズンにFISアルペンスキーワールドカップの個人総合優勝を果たした。この優勝は、8年連続で総合タイトルを獲得していたマルセル・ヒルシャーが引退した後に行われたものであった。
翌2020-21シーズンは、2020年12月のヴァル・ガルデナでの2勝を含め順調なスタートを切ったが、1月にシーズンを終えるほどの怪我を負ったため、タイトルを防衛することはできなかった。
しかし、2021-22シーズンには自己最高の成績を収め、シーズン中に7勝、2位を2回記録し、合計9回の表彰台に上った。このシーズンで、彼はキャリア2度目となるスーパー大回転のクリスタルグローブを獲得し、さらに自身初となるダウンヒルのクリスタルグローブも獲得した。
2022-23シーズンも彼の好調は続き、ワールドカップ個人総合で2位に輝いた。このシーズンでは、自身2度目となるダウンヒルのクリスタルグローブを獲得し、スーパー大回転でも種目別で2位に入った。2023-24シーズンも好成績を収めていたが、シーズン途中の怪我により、残りのレースは欠場となった。
3.2. オリンピック競技記録
キルデはこれまで3回の冬季オリンピックに出場している。
- 2014年ソチオリンピック: 21歳で初出場。スーパー大回転で13位の成績を残したが、ダウンヒルと複合では完走できなかった。複合のダウンヒルパートでは4位だった。
- 2018年平昌オリンピック: 25歳で出場。スーパー大回転で13位、ダウンヒルで15位、複合で21位となった。
- 2022年北京オリンピック: 29歳で出場し、2つのメダルを獲得した。スーパー大回転で銅メダル、複合で銀メダルを獲得した。ダウンヒルでは5位に入賞した。
3.3. 世界選手権大会記録
彼はFISアルペンスキー世界選手権大会に4回出場しており、2つの銀メダルを獲得している。
- 2015年FISアルペンスキー世界選手権: 22歳で出場。スーパー大回転19位、ダウンヒル26位、複合8位。
- 2017年FISアルペンスキー世界選手権: 24歳で出場。スーパー大回転4位、ダウンヒル6位、複合4位。ジャイアントスラロームでは1本目を完走できなかった(DNF1)。
- 2019年FISアルペンスキー世界選手権: 26歳で出場。スーパー大回転24位、ダウンヒル8位、複合22位。
- 2021年FISアルペンスキー世界選手権: 28歳で、怪我のため出場しなかった。
- 2023年FISアルペンスキー世界選手権: 30歳で出場し、目覚ましい活躍を見せた。スーパー大回転で銀メダル、ダウンヒルで銀メダルを獲得した。ジャイアントスラロームでは1本目を完走できなかった(DNF1)。複合では2本目のスタートをしなかった(DNS2)。
4. 詳細な競技統計
アレクサンデル・オーモット・キルデのワールドカップにおける詳細な統計は以下の通りである。
4.1. ワールドカップシーズンタイトル
彼は以下のワールドカップシーズンタイトルを獲得している。
シーズン | 種目 |
---|---|
2016 | スーパー大回転 |
2020 | 総合 |
2022 | ダウンヒル |
スーパー大回転 | |
2023 | ダウンヒル |
4.2. ワールドカップシーズン別順位
各ワールドカップシーズンにおけるアレクサンデル・オーモット・キルデの総合および種目別順位は以下の通りである。
シーズン | 年齢 | 総合 | スラローム | ジャイアントスラローム | スーパー大回転 | ダウンヒル | 複合 | パラレル |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2014 | 21 | 80 | - | - | 29 | 55 | 39 | - |
2015 | 22 | 75 | - | - | 26 | 48 | - | - |
2016 | 23 | 7 | - | 36 | 1 | 12 | 16 | - |
2017 | 24 | 7 | 36 | 29 | 3 | 13 | 3 | - |
2018 | 25 | 15 | - | 19 | 12 | 14 | 15 | - |
2019 | 26 | 8 | - | 30 | 5 | 4 | 26 | - |
2020 | 27 | 1 | - | 8 | 3 | 4 | 2 | 13 |
2021^ | 28 | 11 | - | 17 | 5 | 8 | - | 14 |
2022 | 29 | 2 | - | 35 | 1 | 1 | - | - |
2023 | 30 | 2 | - | 25 | 2 | 1 | - | - |
2024^ | 31 | 14 | - | 23 | 16 | 7 | - | - |
2025 | 32 | (怪我のため欠場) |
^ 1月中旬に負傷し、シーズン残りは欠場。
4.3. ワールドカップ優勝記録
アレクサンデル・オーモット・キルデは、ワールドカップで通算21勝(ダウンヒル12勝、スーパー大回転9勝)を挙げている。
シーズン | 日付 | 開催地 | 種目 |
---|---|---|---|
2016 | 2016年1月30日 | ガルミッシュ=パルテンキルヒェン、ドイツ | ダウンヒル |
2016年2月27日 | ヒンターストッダー、オーストリア | スーパー大回転 | |
2019 | 2018年12月15日 | ヴァル・ガルデナ、イタリア | ダウンヒル |
2020 | 2020年2月14日 | ザールバッハ=ヒンターグレム、オーストリア | スーパー大回転 |
2021 | 2020年12月18日 | ヴァル・ガルデナ、イタリア | スーパー大回転 |
2020年12月19日 | ダウンヒル | ||
2022 | 2021年12月3日 | ビーバークリーク、アメリカ合衆国 | スーパー大回転 |
2021年12月4日 | ダウンヒル | ||
2021年12月17日 | ヴァル・ガルデナ、イタリア | スーパー大回転 | |
2021年12月29日 | ボルミオ、イタリア | スーパー大回転 | |
2022年1月14日 | ウェンゲン、スイス | ダウンヒル | |
2022年1月21日 | キッツビューエル、オーストリア | ダウンヒル | |
2022年3月6日 | クヴィートフィエル、ノルウェー | スーパー大回転 | |
2023 | 2022年11月26日 | レイク・ルイーズ、カナダ | ダウンヒル |
2022年12月3日 | ビーバークリーク、アメリカ合衆国 | ダウンヒル | |
2022年12月4日 | スーパー大回転 | ||
2022年12月17日 | ヴァル・ガルデナ、イタリア | ダウンヒル | |
2023年1月13日 | ウェンゲン、スイス | スーパー大回転 | |
2023年1月14日 | ダウンヒル | ||
2023年1月21日 | キッツビューエル、オーストリア | ダウンヒル | |
2023年3月4日 | アスペン、アメリカ合衆国 | ダウンヒル |
4.4. ワールドカップ表彰台記録
アレクサンデル・オーモット・キルデは、ワールドカップで合計48回の表彰台(ダウンヒル20回、スーパー大回転24回、ジャイアントスラローム1回、複合3回)に上っている。
シーズン | 表彰台 | |||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ダウンヒル | スーパー大回転 | ジャイアントスラローム | 複合 | 合計 | ||||||||||||||
- | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | Σ | |||
2016 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | 1 | 1 | 4 | ||||||||||
2017 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | 3 | ||||||||||||
2018 | ||||||||||||||||||
2019 | 1 | 1 | 2 | 1 | 3 | 4 | ||||||||||||
2020 | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 | 1 | 5 | 1 | 7 | |||||||||
2021 | 1 | 1 | 2 | 2 | ||||||||||||||
2022 | 3 | 1 | 4 | 1 | 7 | 2 | 9 | |||||||||||
2023 | 6 | 1 | 2 | 2 | 2 | 8 | 2 | 3 | 13 | |||||||||
2024 | 2 | 1 | 2 | 1 | 3 | 3 | 6 |
5. 個人生活
5.1. 家族関係と私生活
アレクサンデル・オーモット・キルデのミドルネーム「オーモット」は母親の旧姓に由来するが、同じノルウェーの著名なアルペンスキー選手であるシェティル・アンドレ・オーモットとは血縁関係がない。
彼は2021年初頭から、アメリカのアルペンスキー選手で、同じくワールドカップ個人総合優勝者であるミカエラ・シフリンと交際している。二人は2024年4月4日に婚約を発表した。
6. 評価と影響
アレクサンデル・オーモット・キルデは、その一貫したパフォーマンスと特にスピード系種目における強さで、現代のアルペンスキー界に大きな影響を与えている。ワールドカップ総合優勝や複数の種目別クリスタルグローブ獲得、そしてオリンピックでのメダル獲得は、彼がアルペンスキーの歴史において重要な選手の一人であることを示している。怪我からの復帰とその後の成功は、彼の卓越した精神力と才能の証である。彼はトップレベルの競技を通じて、次世代のスキー選手たちにインスピレーションを与え続けている。