1. 幼少期と背景
イグナティ・ネステロフは1983年6月20日にウズベク・ソビエト社会主義共和国(現在のウズベキスタン)のサマルカンドで生まれた。彼の出自はロシア系であり、自身も熱心な正教会の信者である。体にはキリスト教信仰を示す複数の刺青がある。また、彼はロシア語とウズベク語を話すバイリンガルである。
2. クラブキャリア
イグナティ・ネステロフは、そのプロキャリアの大部分をウズベキスタンの主要クラブで過ごし、数々の国内タイトルを獲得してきた。
2.1. 初期キャリアとパフタコール
ネステロフは2001年にFKサマルカンド・ディナモでプロデビューを果たした。翌2002年にはウズベキスタンの名門クラブであるFCパフタコール・タシュケントと契約し、2009年まで在籍した。パフタコールでは正ゴールキーパーとして活躍し、その在籍期間中にウズベク・リーグで6回(2002年、2003年、2004年、2005年、2006年、2007年)、ウズベキスタン・カップで6回(2002年、2003年、2004年、2005年、2006年、2007年)と、それぞれ連続優勝に貢献した。この活躍により、彼はウズベキスタン代表の正ゴールキーパーの地位を確立した。
2.2. ブニョドコル
2009年7月、ネステロフはFCブニョドコルへ移籍し、3年半の契約を結んだ。ブニョドコルでの活動期間中も、彼はチームの主力選手として活躍し、ウズベク・リーグで4回(2009年、2010年、2011年、2013年)、ウズベキスタン・カップで3回(2010年、2012年、2013年)の優勝に貢献した。特に、2002年から2011年までの全てのウズベク・リーグ優勝カップを彼が掲げたことになり、その連続優勝記録に大きく貢献した。また、AFCチャンピオンズリーグでは2003年、2004年、2012年に準決勝進出を経験し、国際舞台での実績も積み上げた。
2.3. ロコモティフ・タシュケント
2013年12月10日、ネステロフはPFCロコモティフ・タシュケントとの契約を発表し、2014年から2019年まで在籍した。ロコモティフでは、ウズベク・リーグで3回(2016年、2017年、2018年)優勝、ウズベキスタン・カップで2回(2014年、2016年)優勝に貢献した。また、2014年にはリーグ準優勝も経験している。2016年1月には、イランの強豪クラブであるペルセポリスFCへの移籍が報じられたが、最終的に実現しなかった。

2.4. その他のクラブ
PFCロコモティフ・タシュケントを退団後、ネステロフは2019年にサウジアラビアのオホド・クラブへ短期間移籍した。その後、2019年から2020年まで再びPFCロコモティフ・タシュケントに戻り、2020年以降はPFCキジルクム・ザラフシャンに所属している。
3. 代表キャリア
イグナティ・ネステロフは、2002年から2019年にかけてサッカーウズベキスタン代表として国際舞台で活躍し、国際Aマッチに106試合出場した。
彼はAFCアジアカップにおいて、歴代最多となる5回の大会に出場している(2004年、2007年、2011年、2015年、2019年)。特に、2011年のAFCアジアカップでは正ゴールキーパーとしてチームの躍進を支え、ウズベキスタン代表を大会4位入賞に導いた。
また、FIFAワールドカップ予選においても、2010年大会および2014年大会のアジア予選で正ゴールキーパーを務め、チームの最終予選進出に貢献した。彼の長年にわたる代表での活躍は、ウズベキスタンのサッカー史において特筆すべきものである。
4. 獲得タイトル
イグナティ・ネステロフは、そのキャリアを通じて数多くのタイトルを獲得した。
大会名 | 所属クラブ | 獲得年 | 備考 |
---|---|---|---|
ウズベク・リーグ 優勝 | FCパフタコール・タシュケント | 2002, 2003, 2004, 2005, 2006, 2007 | 6回 |
ウズベキスタン・カップ 優勝 | FCパフタコール・タシュケント | 2002, 2003, 2004, 2005, 2006, 2007 | 6回 |
CISカップ 優勝 | FCパフタコール・タシュケント | 2007 | |
AFCチャンピオンズリーグ 準決勝 | FCパフタコール・タシュケント | 2003, 2004 | |
ウズベク・リーグ 優勝 | FCブニョドコル | 2009, 2010, 2011, 2013 | 4回 |
ウズベキスタン・カップ 優勝 | FCブニョドコル | 2010, 2012, 2013 | 3回 |
AFCチャンピオンズリーグ 準決勝 | FCブニョドコル | 2012 | |
ウズベク・リーグ 優勝 | PFCロコモティフ・タシュケント | 2016, 2017, 2018 | 3回 |
ウズベク・リーグ 準優勝 | PFCロコモティフ・タシュケント | 2014 | |
ウズベキスタン・カップ 優勝 | PFCロコモティフ・タシュケント | 2014, 2016 | 2回 |
アフロアジア競技大会 金メダル | ウズベキスタンU-21代表 | 2003 |
5. 論争
イグナティ・ネステロフのキャリアにおいて、2019年に発生したドーピング違反は大きな論争となった。
2019年1月に開催されたAFCアジアカップ2019の期間中、ネステロフはドーピング検査で薬物の陽性反応を示した。この報道に対し、彼は医療スタッフの許可なく減量のために当該薬物を使用したことを認めた。この行為は、スポーツにおける公正な競争を阻害するものであり、アスリートに求められる高い倫理基準に反するものであった。
このドーピング違反の結果、彼はアジアサッカー連盟(AFC)から8ヶ月間の出場停止処分を科された。この処分は、彼のプロサッカー選手としてのキャリアに影を落とし、スポーツ界におけるドーピング防止の重要性を改めて浮き彫りにする出来事となった。ネステロフの行為は、選手個人の責任だけでなく、スポーツ組織全体としてのドーピング対策の厳格化を促す要因ともなった。