作曲家 映画音楽 ニュージーランド 大学出身者
グレーム・レヴェル
ニュージーランド出身の作曲家グレーム・レヴェルは、バンドSPKでの活動後、数々の映画音楽を手がける。
グレーム・レヴェルの個人的な背景、教育、初期の職業経験、そして音楽キャリアの始まりについて詳述する。
レヴェルは1955年10月23日にニュージーランド のオークランドで生まれた。彼はオークランド・グラマー・スクールで最終学年を修了し、その後、オークランド大学で経済学と政治学の学位を取得した。また、彼はクラシックの訓練を受けたピアニストであり、フレンチホルン奏者でもある。大学卒業後、彼はオーストラリア とインドネシア で地域計画担当者として働いた。1970年代後半には、オーストラリアの精神病院で看護助手(オーダリー)として勤務した経験も持つ。
精神病院での勤務中、レヴェルは音楽療法への関心を深めた。そこで出会った患者の一人であるニール・ヒルと意気投合し、彼らは後にインダストリアル・ミュージックバンドSPKを結成した。SPKでの活動を通じて、レヴェルの音楽は極端なものから美しいもの、学術的なものまで多岐にわたった。彼はまた、火炎放射器で誤って観客を炎上させてしまうなど、過激なステージパフォーマンスで悪名を馳せた。レヴェルのキャリアにおける転機は1989年に訪れた。彼が音楽を担当したオーストラリア映画『デッド・カーム/戦慄の航海』のスコアをハリウッドのエージェントであるリチャード・クラフトが聞き、彼をハリウッドへと招いた。それ以来、彼はハリウッドを拠点に活動し、85人編成のオーケストラから(『パワーレンジャー・映画版』)、トゥヴァの歌手やアルメニア の弦楽器(『クロウ/飛翔伝説』)、ブラスジャズやヒップホップのリズムループ(『F.L.E.D./フレッド』)まで、多様な音楽スタイルを手がけるようになった。
グレーム・レヴェルの音楽キャリアにおける主要な側面、すなわちバンド活動、映画音楽作曲、音楽スタイル、そして重要なコラボレーションについて掘り下げる。
グレーム・レヴェルは、インダストリアル・ロックおよびエレクトロニック・ロックグループSPKのリーダーを務めた。SPKのシングル「In Flagrante Delicto」は、彼の最初の映画音楽作品である『デッド・カーム/戦慄の航海』のスコアの基礎となった。この作品は1989年にオーストラリア映画協会賞を受賞し、彼のその後の映画音楽作曲家としてのキャリアの道を拓いた。
SPK解散後、レヴェルは主に映画音楽作曲家としてハリウッドを中心にキャリアを築いた。『デッド・カーム/戦慄の航海』での成功を皮切りに、彼は数多くの劇場映画、テレビ映画、テレビドラマ、ビデオゲームの音楽を手がけるようになった。彼の作品は、大規模なオーケストラから民族楽器、電子音楽まで、幅広い音響を駆使しているのが特徴である。
レヴェルの音楽スタイルは、主に電子音楽とコンピュータを基盤としているが、しばしばクラシック楽器やオーケストラ全体を用いたアレンジメントを取り入れている。この点は、同時代の作曲家であるハンス・ジマーやマーク・アイシャムのスタイルと類似している。彼のオーケストラ作品はキャリアを通じて変化しており、バーナード・ハーマンの影響を受けたものから、エンニオ・モリコーネにインスパイアされた作品まで幅広い。彼は「曲を書くときは常に視覚的なイメージを念頭に置いており、スタイルを劇的に変えてきた。これは長期的なロックキャリアには向かないが、映画のスコアを手がける上では良いことだ」と語っている。また、「ハリウッドに品格をもたらそうとしている。一週間で適当に合成されたひどい音楽ではなく、本物の音楽を作りたい。他の誰とも同じようなサウンドにはしたくない」とも述べており、独自の音楽的アプローチを追求する姿勢を示している。彼の音楽は、しばしば異なる映画で再利用されることもある。
レヴェルはキャリアを通じて多くの著名な映画監督やミュージシャンと共同作業を行っている。
デヴィッド・トゥーヒー監督**: 彼はデヴィッド・トゥーヒー監督と頻繁にコラボレーションしており、『ピッチブラック』(2000年)、『ビロウ』(2002年)、『リディック』(2004年)、『リディック: ギャラクシー・バトル』(2013年)といった作品の音楽を担当している。 ロジャー・メイソン**: 1997年には、ロジャー・メイソンと共に非映画音楽アルバム『Vision II - Spirit of Rumi』を制作した。このアルバムでは、13世紀のペルシャの詩人ルーミーの11の詩に音楽をつけ、ノア、ロリ・ガーソン、エスタ・ディヴァイン、そして故ヌスラト・ファテ・アリ・ハーンといったボーカリストが参加した。 エヴァネッセンス**: 2002年から2003年にかけて、ロックバンドエヴァネッセンスのデビューアルバム『フォールン』の制作を支援し、ほとんどの弦楽器アレンジメントを担当した。 その他のバンド**: また、ルードゥス、ステフィー、ビッフィ・クライロ、ザ・ウォンバッツの弦楽器アレンジメントも手がけている。 エマ・シャプラン**: 映画『レッドプラネット』のサウンドトラックでフランス人歌手エマ・シャプランの歌声が成功を収めた後、レヴェルは彼女自身のアルバム『Etterna』で全ての楽曲をプロデュースした。 ブライアン・ウィリアムズ**: サウンドデザインにおいては、ダークアンビエント音楽をラストモルトという名義で制作しているブライアン・ウィリアムズの協力を得ている。 ドキュメンタリー**: 彼は独立系ドキュメンタリー映画『Finding Kraftland』のインタビューにも応じている。 グレーム・レヴェルが手がけた広範な音楽作品を、メディアの種類別に分類してリストアップする。
年 タイトル 監督 備考 1989 『デッド・カーム/戦慄の航海』 フィリップ・ノイス 1990 『スポンティニアス・コンバッション』 トビー・フーパー 『チャイルド・プレイ2』 ジョン・ラフィア 『ゴールド・レイダース』 ジョン・シール 1991 『デッドリー』 エスベン・ストーム 『壁の中に誰かがいる』 ウェス・クレイヴン 追加のオーケストラ音楽 『夢の涯てまでも』 ヴィム・ヴェンダース 1992 『ゆりかごを揺らす手』 カーティス・ハンソン 『ラブ・クライムズ』 リジー・ボーデン 『トレース・オブ・レッド』 アンディ・ウォーク 『BODY/ボディ』 ウーリ・エーデル 1993 『ボクシング・ヘレナ』 ジェニファー・リンチ 『ヒア・ノー・イーヴル』 ロバート・グリーンウォルド 『ザ・クラッシュ』 アラン・シャピロ 『時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!』 ヴィム・ヴェンダース 『ハード・ターゲット』 ジョン・ウー ティム・シモネックと共同作曲 『ゴースト・イン・ザ・マシーン』 レイチェル・タラレイ 1994 『ノー・エスケイプ』 マーティン・キャンベル ティム・シモネックと共同作曲 『クロウ/飛翔伝説』 アレックス・プロヤス 『S.F.W.』 ジェフリー・レヴィ 『ストリートファイター』 スティーヴン・E・デ・スーザ 1995 『タンク・ガール』 レイチェル・タラレイ 『バスケットボール・ダイアリーズ』 スコット・カルヴァート 『パワーレンジャー・映画版』 ブライアン・スパイス 『キラー/ジャーナル・オブ・マーダー』 ティム・メトカーフ 『ザ・タイ・ザット・バインズ』 ウェズリー・ストリック 『ストレンジ・デイズ/1999年12月31日』 キャスリン・ビグロー 1996 『フロム・ダスク・ティル・ドーン』 ロバート・ロドリゲス 『レース・ザ・サン』 チャールズ・T・カンガニス 『ザ・クラフト』 アンドリュー・フレミング 『F.L.E.D./フレッド』 ケヴィン・フックス 『THE CROW/ザ・クロウ』 ティム・ポープ 1997 『セイント』 フィリップ・ノイス 『スポーン』 マーク・A・Z・ディッペ 『チャイニーズ・ボックス』 ウェイン・ワン 『スーサイド・キング』 ピーター・オファロン 1998 『ビッグ・ヒット』 カーク・ウォン 『フェニックス』 ダニー・キャノン 『オール・アイ・ワナ・ドゥ』 サラ・カーノチャン 『交渉人』 F・ゲイリー・グレイ 『ルル・オン・ザ・ブリッジ』 ポール・オースター 『チャイルド・プレイ チャッキーの花嫁』 ロニー・ユー 『マーシャル・ロー』 エドワード・ズウィック 1999 『アイドル・ハンズ』 ロッドマン・フレンダー 『バディ・ボーイ』 マーク・ハンロン マイケル・ブルック、ブライアン・イーノと共同作曲 『スリー・トゥ・タンゴ』 デイモン・サントステファーノ 『バット』 ルイ・モルノー 2000 『ピッチブラック』 デヴィッド・トゥーヒー 『ゴシップ』 デイヴィス・グッゲンハイム 『タイタンA.E.』 ドン・ブルース、ゲイリー・ゴールドマン 『カジェ54』 フェルナンド・トルエバ 『アトラクション』 ラッセル・デグレイザー 『レッドプラネット』 アンソニー・ホフマン 2001 『ダブル・テイク』 ジョージ・ガロ 『ブロウ』 テッド・デミ 『ヒューマンネイチュア』 ミシェル・ゴンドリー 『トゥームレイダー』 サイモン・ウェスト 2002 『コラテラル・ダメージ』 アンドリュー・デイヴィス 『ハイ・クライムズ』 カール・フランクリン 『ビロウ』 デヴィッド・トゥーヒー 2003 『デアデビル』 マーク・スティーヴン・ジョンソン 『フレディVSジェイソン』 ロニー・ユー 『タイムリミット』 カール・フランクリン 『オープン・ウォーター』 クリス・ケンティス 2004 『ワイルド・タウン/英雄伝説』 ケヴィン・ブレイ 『リディック』 デヴィッド・トゥーヒー 2005 『アサルト13 要塞警察』 ジャン=フランソワ・リシェ 『シン・シティ』 ロバート・ロドリゲス、フランク・ミラー 『シャークボーイ&マグマガール 3-D』 ロバート・ロドリゲス 『GOAL!』 ダニー・キャノン 『ハッシュ・タイム』 デヴィッド・エアー 『ザ・フォッグ』 ルパート・ウェインライト 『イーオン・フラックス』 カリン・クサマ 2006 『ボーダータウン 報道されない殺人者』 グレゴリー・ナヴァ 『マン・オブ・ザ・イヤー』 バリー・レヴィンソン 2007 『マリーゴールド』 ウィラード・キャロル 『プラネット・テラー in グラインドハウス』 ロバート・ロドリゲス 『監獄島』 スコット・ワイパー 『ダルフール・ナウ』 テッド・ブラウン 『アウェイク』 ジョビー・ハロルド 2008 『パラサイト・バイティング 食人草』 カーター・スミス 『フェイク シティ ある男のルール』 デヴィッド・エアー 『スモーキング・ハイ』 デヴィッド・ゴードン・グリーン 『デイズ・オブ・ラス』 セリア・フォックス 2010 『アンシンカブル 襲撃』 グレゴール・ジョーダン 『エクスペリメント』 ポール・T・シューリング 『カイト/KITES』 アヌラグ・バス 『カイト/KITES リミックス』 アヌラグ・バス 2011 『シャーク・ナイト』 デヴィッド・R・エリス 2013 『リディック: ギャラクシー・バトル』 デヴィッド・トゥーヒー 2016 『バッドキャット』
年 タイトル 監督 1990 『サイコ4』 ミック・ギャリス 1995 『ダウン・ケイム・ア・ブラックバード』 ジョナサン・サンガー 1998 『わんぱくデニス2』 チャールズ・T・カンガニス
年 タイトル 1988 『バンコク・ヒルトン』 2000 『デューン 砂の惑星』 2001 『アンネ・フランク』 2002-2003 『CSI:マイアミ』 2008-2009 『イレブンス・アワー』 2009-2010 『ザ・フォーゴットン』 『ダーク・ブルー』 2012 『THE RIVER 呪いの川』 2014-2015 『GOTHAM/ゴッサム』
年 タイトル 2005 『コール オブ デューティ2』 『コール オブ デューティ2 ビッグ レッド ワン』
グレーム・レヴェルの音楽活動における功績を称える、主要な賞やノミネートの記録をまとめる。 彼は2005年5月18日に開催された年次BMI映画&テレビ音楽賞において、リチャード・カーク・キャリア功労賞を受賞した。
年 結果 賞 カテゴリー 作品 1994 ノミネート サターン賞 最優秀音楽 『ハード・ターゲット』(1993年)
年 結果 賞 カテゴリー 作品 1993 受賞 ASCAP賞 トップ興行収入映画 『ゆりかごを揺らす手』(1992年)
年 結果 賞 カテゴリー 作品 2008 ノミネート IFMCA賞 ドキュメンタリー映画最優秀オリジナルスコア 『ダルフール・ナウ』(2007年)
年 結果 賞 カテゴリー 作品 2001 ノミネート ワールド・サウンドトラック・アワード アルバム未発表の年間最優秀オリジナルスコア 『ブロウ』(2001年)
年 結果 賞 カテゴリー 作品 1997 受賞 金のオゼッラ賞 最優秀音楽 『チャイニーズ・ボックス』(1997年)
年 結果 賞 カテゴリー 作品 2001 受賞 OFTAテレビジョン賞 映画またはミニシリーズ最優秀音楽 『アンネ・フランク』(2001年) 映画またはミニシリーズ最優秀新テーマソング 『デューン 砂の惑星』(2000年) ノミネート OFTAテレビジョン賞 映画またはミニシリーズ最優秀音楽 『デューン 砂の惑星』(2000年) 映画またはミニシリーズ最優秀新テーマソング 『アンネ・フランク』(2001年)
年 結果 賞 カテゴリー 作品 2003 ノミネート チェーンソー・アワード 最優秀スコア 『ビロウ』(2002年) 1997 ノミネート チェーンソー・アワード 最優秀スコア 『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(1996年) 1994 受賞 チェーンソー・アワード 最優秀サウンドトラック 『クロウ/飛翔伝説』(1994年)
年 結果 賞 カテゴリー 作品 2009 受賞 BMI映画音楽賞 『スモーキング・ハイ』(2008年)
グレーム・レヴェルは、その多様な音楽スタイルと革新的なアプローチにより、映画音楽業界において重要な地位を確立している。彼の音楽は、電子的なサウンドとクラシック楽器の融合を特徴とし、時にバーナード・ハーマンやエンニオ・モリコーネといった巨匠の影響を感じさせる一方で、彼自身の独特な個性を強く打ち出している。レヴェルは、単なる背景音楽に留まらず、「本物の音楽」を追求し、ハリウッドの映画音楽に「品格」をもたらすことを目指してきた。彼の作品は、アクション、ホラー、SF、ドラマなど幅広いジャンルをカバーし、それぞれの映画の雰囲気を深く高めることに貢献している。特に、監督デヴィッド・トゥーヒーとの長期にわたるコラボレーションや、エヴァネッセンス、エマ・シャプランといった著名なアーティストとの共同作業は、彼の音楽的才能の幅広さを示している。多くの映画音楽賞を受賞していることからも、彼の芸術的貢献と業界における高い評価が裏付けられている。
グレーム・レヴェル
生年月日: 1955年10月23日 (69歳)
出生地:
職業: 音楽家 作曲家
活動期間: 1980年 ~ 現在
活動分野: 音楽
: AACTA賞 オリジナル音楽賞
: BMI映画音楽賞 (8回)
: ヴェネツィア国際映画祭 最優秀音楽賞