1. 生い立ちとラグビー経歴
プロレスラーとして名を馳せる以前、シミ・タイトコ・ファレはラグビー選手としてキャリアを築いた。彼の人生は、大家族の中で育まれた幼少期から、ラグビーに情熱を注いだ学生時代、そしてプロレスへの転身へと続く。
1.1. 幼少期と教育
ファレは11人兄弟の8番目として、トンガ王国のラパハで生まれた。3歳からラグビーを始め、6歳の時に一家全員でニュージーランドのオークランドへ移住した。ラグビー界のレジェンドであるオールブラックスのジョン・カーワンに憧れ、ラグビーの名門であるデラサル高校に進学。1999年から2000年まで同校のファーストXV(主要チーム)のメンバーとして活躍し、各年代別のラグビーチームにも選出された。高校卒業後、徳山大学ラグビー部監督の紹介で奨学金を得て、2002年4月に同大学へ進学し、ラグビー部に入部した。徳山大学では、同じくニュージーランド出身のSila IonaやGreame Brentと共にプレーした。
1.2. ラグビー選手としての活動
大学卒業後、2006年4月に株式会社サニックスに入社し、福岡サニックスブルースの一員となった。ここでは主にロックやフランカーのポジションでプレーしたが、膝と足首の怪我により2年で退団を余儀なくされた。ラグビー選手としてのキャリアを終えた後、彼は一時的に英会話教師として働いていた。しかし、ラグビー選手時代からの友人であり、トンガ出身の元幕下力士であった南乃島勇の誘いを受け、2009年5月に新日本プロレスの入門テストを受けて合格。同年6月より練習生としてプロレスのトレーニングを開始し、新たな道を歩み始めた。
2. プロレスリング経歴
ファレのプロレスリングキャリアは、新日本プロレスでの若手時代から、BULLET CLUBの創設メンバーとしての隆盛、そして主要タイトルの獲得に至るまで、多岐にわたる。
2.1. 新日本プロレスデビューと初期活動
2010年4月4日、「キング・ファレ」のリングネームで中西学を相手に新日本プロレスでのデビューを飾った。デビューから1ヶ月あまりで京介・ミカミから初の勝利を収めた。同年、G1 TAG LEAGUEにスーパー・ストロング・マシンとのタッグで出場したが、ブロック最下位に終わった。また、ジャイアント・バーナードとカール・アンダーソンと共に2010年のJ Sports Crown Openweight 6 Man Tag Tournamentに出場し、2回戦で敗退した。その後、高橋ヒロムとの3連戦では全て勝利を収めた。
2011年2月、永田裕志率いる「青義軍」に井上亘やスーパー・ストロング・マシンと共に加入し、対抗勢力であるCHAOSと抗争を繰り広げた。2月20日のTHE NEW BEGINNINGでは、永田、井上、天山広吉と共にCHAOSに敗れた。同年4月には、東日本大震災の復興支援チャリティ興行「ALL TOGETHER」のデストロイヤー杯バトルロイヤルに出場したが、勝利には至らなかった。2011年のJ Sports Openweight 6 Man Tag Tournamentでは、井上亘、天山広吉と組んで出場したが、2回戦でG・B・H(真壁刀義&本間朋晃)&小島聡組に敗れた。同年、G1 TAG LEAGUEでは永田とタッグを組み、1勝2敗の成績で終えた。2012年の初戦では、タマ・トンガと組んでオカモトとYOSHI-HASHIのタッグに敗れた。同年2月10日のNEVER興行で永田とのシングルマッチに敗れた後、アメリカへの14ヶ月間の武者修行に出発し、NWAヒューストンでデビュー戦を飾った。
2.2. BULLET CLUB時代
ファレは2013年4月7日、INVASION ATTACKにて、プリンス・デヴィットの「用心棒(The Bouncer)」として「ジ・アンダーボス」ことバッドラック・ファレのリングネームで新日本プロレスに復帰し、ヒールターンした。デヴィットは田口隆祐を襲撃し、彼とのタッグチーム「Apollo 55」の解散を宣言した。5月3日のレスリングどんたくでは、デヴィットと組んで田口&キャプテン・ニュージャパン組に快勝。その夜、ファレとデヴィットはカール・アンダーソン、タマ・トンガと共に新ヒールユニット「BULLET CLUB」を結成した。ファレは、この結成以来、一度もグループを離れることなく活動を続けている唯一の創設メンバーである。以降、ファレは入場時にデヴィットを肩車して担ぎ上げ、試合中には随所で乱入して対戦相手に暴行を加えるなど、デヴィットの用心棒としての役割を忠実に果たした。
同年11月にはG・B・Hの本間朋晃をKO勝利で破ったが、試合後に真壁刀義との抗争が勃発。11月23日から12月7日にかけて開催された2013 WORLD TAG LEAGUEではデヴィットとタッグを組んだものの、予選落ちに終わった。しかし、最終戦の12月8日の大会では、真壁&本間組とカール・アンダーソン&ドック・ギャローズ組の試合に乱入し、真壁を場外に引きずり出して襲撃することで、BULLET CLUBの勝利をアシスト。試合後には真壁のチェーンで首を絞め上げ、失神させるなど、徹底したヒールぶりを見せた。
2.2.1. IWGPインターコンチネンタル王座
2014年1月4日のレッスルキングダム8では、真壁との因縁が続く中で、キング・オブ・デストロイヤーマッチ(ピンフォール、場外カウントなし、KO、TKO、ギブアップのみで決着する特別ルール)で対戦。序盤は真壁を圧倒し、得意技のグラネードやバッドラックフォールを繰り出すもKOには至らず、最終的に真壁のキングコングニードロップを2連発で浴びてKO負けを喫した。
同年3月、2014 NEW JAPAN CUPに初出場。3月15日の1回戦で真壁からバッドラックフォールでピンフォール勝ちを収め、レッスルキングダム8のリベンジを果たした。その後、3月22日の2回戦で内藤哲也を、23日の準決勝でシェルトン・X・ベンジャミンを破り決勝に進出したが、同日行われた決勝戦で中邑真輔に敗れ、準優勝に終わった。5月25日のBACK TO THE YOKOHAMA ARENAでは、内藤とのシングルマッチに勝利。同日のセミファイナル終了後、IWGPインターコンチネンタル王座を防衛した中邑の前に姿を現し、王座挑戦の意思を表明した。
6月21日のDOMINION6.21では、自身初のタイトルマッチに臨み、中邑の保持するIWGPインターコンチネンタル王座に挑戦。バッドラックフォールで中邑からピンフォールを奪い、第9代IWGPインターコンチネンタル王者となった。7月にはIWGPインターコンチネンタル王者として初のG1 CLIMAXに出場。6勝4敗の成績でブロック3位となり、惜しくも決勝進出は逃した。この大会の最終戦では中邑に敗れている。9月21日のDESTRUCTION in KOBEでは、初のIWGPインターコンチネンタル王座防衛戦として中邑と再戦したが、敗れて王座から陥落した。
2015年、ファレはオカダ・カズチカとの抗争を開始。1月5日のNEW YEAR DASH!!でタマ・トンガとのタッグでオカダ&矢野通組に勝利し、さらに2月1日のRoad to THE NEW BEGINNINGでもオカダから勝利を収めた。3月5日の2015 NEW JAPAN CUP1回戦では、オカダとの初のシングルマッチでバッドラックフォールを決め、勝利を収めた。しかし、3月8日の2回戦では内藤に丸め込まれて敗退。その後もオカダとの抗争は続き、4月5日のINVASION ATTACK 2015での完全決着戦では、オカダのツームストーン・パイルドライバーからのレインメーカーに敗れ、抗争は終結した。
7月の2015 G1 CLIMAXでは、優勝者の棚橋弘至から公式リーグ戦で勝利を収めたが、自身は予選敗退となった。9月27日のDESTRUCTION in KOBEでは、棚橋が保持する東京ドーム・IWGPヘビー級王座挑戦権利証を賭けたシングルマッチで対戦したが、敗れた。
2.2.2. NEVER無差別級6人タッグ王座
2016年1月4日のレッスルキングダム10では、高橋裕二郎、タマ・トンガと組んで、新設されたNEVER無差別級6人タッグ王座の初代王者決定戦に臨んだが、矢野通とブリスコ・ブラザーズ組に敗れた。しかし、2月11日のTHE NEW BEGINNING in OSAKAでは、高橋裕二郎、タマ・トンガと共に矢野&ブリスコ・ブラザーズ組を破り、第2代NEVER無差別級6人タッグ王者となった。しかし、2月14日のTHE NEW BEGINNING in NIIGATAでの初防衛戦で王座を奪還され、わずか3日間の戴冠となった。同年3月、ファレはIWGPヘビー級王座王者のオカダを破るなど健闘を見せたG1 CLIMAXへの参加を前に、棚橋弘至との抗争を開始。4月23日には、ケニー・オメガ、高橋裕二郎と共に棚橋、マイケル・エルガン、ヨシタツ組が保持するNEVER無差別級6人タッグ王座に挑戦したが、獲得には至らなかった。
2017年12月17日、タマ・トンガ、タンガ・ロアと共に、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンのBUSHI、EVIL、SANADA組を破り、NEVER無差別級6人タッグ王座を獲得した。2018年1月4日のレッスルキングダム12では、CHAOS(バレッタ、石井智宏、矢野通)との5チームガントレットマッチ形式の試合で王座を失った。しかし、翌日のNEW YEAR'S DASH!!でCHAOSから再び王座を奪還した。5月3日のレスリングどんたく2018初日では、マーティ・スカルとヤング・バックスからなるチームにNEVER無差別級6人タッグ王座を奪われた。
2.2.3. IWGPタッグ王座
2022年5月1日、レスリングどんたく2022にて、チェーズ・オーエンズとのタッグでIWGPタッグ王座選手権3WAYマッチに出場。グレート-O-カーンとジェフ・コブの組、そして毘沙門(後藤洋央紀&YOSHI-HASHI)を相手に勝利を収め、第94代IWGPタッグ王者となった。しかし、6月12日のDOMINION 6.12 in OSAKA-JO HALLで王座を失った。2024年10月14日のKing of Pro-Wrestlingイベントでは、新たにBULLET CLUBに加入したケイブマン・アッグと組んで、IWGPタッグ王者のマイキー・ニコルスとシェイン・ヘイストに挑戦したが、タイトル獲得には至らなかった。
2.2.4. G1 CLIMAXおよびNEW JAPAN CUP参加
2016年のG1 CLIMAXでは、IWGPヘビー級王座王者のオカダ、および丸藤正道を破るなど健闘を見せたが、最終的には5勝4敗で予選敗退となった。2017年3月、2017 NEW JAPAN CUPでは決勝に進出しながらも、柴田勝頼に敗れた。同年5月3日には、レスリングどんたく2017のメインイベントでオカダのIWGPヘビー級王座に挑戦したが、敗れた。同年7月のG1 CLIMAX27では、優勝者の内藤や飯伏幸太から勝利を収め、4年連続で勝ち越しを決めたが、勝ち点12で敗退。最終戦では、今大会でG1からの引退を表明していた元師匠の永田裕志との一戦で、勝利後にBULLET CLUBのポーズから敬礼で永田への恩義を示した。
2018年8月12日の『G1 CLIMAX 28』では、Aブロック予選を3勝6反則負けで敗退したが、勝敗度外視の無法ファイトを繰り広げ、出場者の中で唯一フォールを奪われずにG1を終えた。
2019年3月、2019 NEW JAPAN CUPではウィル・オスプレイに1回戦で敗退した。4月6日のG1 Supercardでは、Honor Rumbleに出場したが、勝利は得られなかった。また、チェーズ・オーエンズと共に、当時新日本プロレスに加入したばかりのマイキー・ニコルスや人気選手のジュース・ロビンソンとの抗争を開始した。この抗争中、ファレはジュースが保持するIWGP US王座に挑戦したが、タイトル獲得には至らず、最終的には自身の得意技であるグラネードでマイキーを破った。同年7月の2019 G1 CLIMAXではAブロックで8点を獲得したが、決勝進出はならなかった。同年後半にはチェーズ・オーエンズと組んでWORLD TAG LEAGUEに出場し、6勝9敗の成績で決勝進出を逃した。
2020年1月4日のレッスルキングダム14初日では、KENTA、チェーズ・オーエンズ、高橋裕二郎と組んでCHAOSの後藤洋央紀、石井智宏、矢野通、YOSHI-HASHI組に敗れた。翌日の2日目には、NEVER無差別級6人タッグ王座を巡る5チームのガントレットマッチに出場したが、チェーズ・オーエンズ、高橋裕二郎と共に石井智宏、YOSHI-HASHI、ロビー・イーグルスの組に敗れ、敗退した。
2020年12月、矢野通が保持していたKOPWトロフィーを破壊し、矢野との抗争に発展。ボディスラムまたはコーナーパッド取り外しマッチという特殊ルールで矢野のトロフィーに挑んだが、矢野の頭脳的な戦略によりボディスラムを決められ、敗れた。
2021年1月4日のレッスルキングダム15初日では、ニュージャパンランボーを突破し、暫定KOPW 2021トロフィーを争う4WAYマッチへの出場権を獲得した。しかし、2日目の4WAYマッチでは勝利を収められなかった。同年3月の2021 NEW JAPAN CUPでは、矢野通との試合でリングアウト負けを喫し、1回戦で敗退した。11月14日から12月12日まで、チェーズ・オーエンズと組んでWORLD TAG LEAGUEに出場したが、6勝4敗で決勝進出はならなかった。
2022年1月4日のレッスルキングダム16初日では、ニュージャパンランボーで敗退した。同年3月の2022 NEW JAPAN CUPでは、2回戦からのシードであったが、棚橋弘至に敗れ、敗退した。
2022年6月12日、G1 CLIMAX 32にエントリー。7月24日のG1 CLIMAX 32では、ジェフ・コブと初のシングルマッチでの「モンスター対決」を繰り広げたが、ツアー・オブ・アイランドで仕留められ、敗北を喫した。この大会では6点を獲得したが、準決勝進出はならなかった。
2.2.5. 「ザ・ローグ・ジェネラル」のペルソナと近年の活動
2018年、BULLET CLUBは「OG」と「The Elite」の2つの派閥に分裂し、ファレはタマ・トンガ、タンガ・ロア、石森太二と共にOGグループに残留した。同年10月8日のKing of Pro-Wrestlingでは、BULLET CLUB OGがThe Elite(ヤング・バックス、チェーズ・オーエンズ、ハングマン・ペイジ)に勝利した。また、この日、ジェイ・ホワイト、邪道、外道をBULLET CLUBに迎え入れた。ジェイ、邪道、外道を迎え入れて初の8人タッグマッチでオカダ達を破り、初の勝利を挙げた。その後もジェイと共に反則ファイトで勝利を重ね、12月9日には、結成当初のBULLET CLUBのような完全KO勝ちを狙うおぞましい反則攻撃を横行させ、本隊やCHAOSの選手をKO負けに追い込んだ。矢野通にグラネードを決め、バッドラックフォールを狙ったが、解説席にいた真壁刀義が怒り狂って乱入し、これを阻止した。
2019年1月28日、後楽園ホール大会の試合から、約5年8ヶ月使用された「ジ・アンダーボス」のペルソナを「ザ・ローグ・ジェネラル(The Rogue General)」に改名し、オカダ・カズチカとの短い抗争を開始した。2019年2月のTHE NEW BEGINNING in OSAKAではオカダに敗れた。この改名に伴い、戦闘コスチュームも黒色の戦闘ズボンから陸上自衛隊の制服を思わせるズボンに変わり、ミラー型のサングラスやチノ帽が追加された。入場時には、会場内が火気厳禁のため火をつけずに外国製の煙草を口にくわえることもある。入場テーマ曲も一時的にBULLET CLUBのテーマ曲に変更されたが、その後は曲冒頭の効果音をカットした「THE UNDERBOSS」に戻り、ファレが勝利した際にはこの曲が流れるようになった。
2019年のG1 CLIMAXでは、入場時に赤コーナーに控えていたオカダを襲撃し、無理やりリング内に引きずり込んだが、試合終盤でバッドラックフォールを仕掛けようとしたところをオカダに逃げられ、最終的にオカダに投げられフォール負けを喫した。7月20日にはザック・セイバーJr.と対戦。場外でザックの関節技をかけられ一時的にひるんだが、リングアウトカウント20に達する前にザックがリングに戻ったのに対し、ファレは関節技のダメージの影響でリングに戻るのが遅れ、リングアウト負けを喫した。7月27日にはウィル・オスプレイと対戦したが、パートナーのチェーズ・オーエンズがレフェリーのカウントを妨害し、場外に引きずり下ろしたことが映像で確認され、ファレはレッドシューズ海野から反則負けを宣告された。
2020年2月頃、ニュージーランドに「ファレ道場」を設立した。ファレ道場では、自身のヒールとしての顔とは対照的に、プロレスの基本から応用、必殺技に至るまで、若手選手の育成に力を入れている。
同年3月頃に発生した新型コロナウイルス感染症パンデミックにより、ファレは国境閉鎖のため2020年の大半を日本国外で過ごし、日本での活動を一時休止した。しかし、12月頃には日本でのプロレス活動を再開。チェーズ・オーエンズと組んで2020 WORLD TAG LEAGUEに出場したが、3勝6敗で決勝進出はならなかった。
2022年3月13日、NEW JAPAN CUPでEVILがタマ・トンガに勝利した後、ファレとチェーズ・オーエンズが乱入し、タマ・トンガとタンガ・ロアに決別のグラネードを浴びせ、邪道もメリケンサックで攻撃した。これにより、EVIL率いるHOUSE OF TORTUREとファレ、オーエンズのOG派閥が合流し、BULLET CLUBの再統一とゲリラズ・オブ・デスティニーの追放が宣言された。ファレは「BULLET CLUBの復活だ!」と宣言し、ジェイ・ホワイトを筆頭に新たなBULLET CLUBの一員として活動を継続している。
3. ファレ道場での活動
ファレは2017年2月、自身のプロレスリング学校である「ファレ道場」をニュージーランドのオークランドに設立した。この道場は、日本国外のレスラーが新日本プロレスで活躍するための架け橋となることを目的としている。ファレ道場では、プロレスの基礎技術から応用技、そして必殺技の習得に至るまで、若手選手の育成に注力している。
これまでにファレ道場からは、トーア・ヘナーレ、ジェイ・ホワイト、Michael Richardsといった選手たちが巣立ち、新日本プロレスのリングで活躍している。ファレ自身が指導にあたり、ニュージーランドスタイルの「ストロングスタイル」を継承している。
4. プロレスリングにおけるペルソナと試合スタイル
バッドラック・ファレのプロレスラーとしてのペルソナは、キャリアを通じて変化を遂げてきた。彼の姓「ファレ」はトンガ語で「家」を意味し、彼のリング上の動かせない力というキャラクターに適している。新日本プロレスに復帰した当初は、プリンス・デヴィットの「ジ・アンダーボス(The Underboss)」として、デヴィットを肩車して入場し、彼のBULLET CLUBにおける「用心棒」の役割を担っていた。数年後、ファレはBULLET CLUBの目立たない一員であることに飽き足らず、「ザ・ローグ・ジェネラル(The Rogue General)」という新たなギミックを導入し、自身の存在感をより強固なものとした。
ファレは新日本プロレス所属選手としては最重量級であり、その巨体を存分に活かした「パワーベース」の試合スタイルを特徴としている。彼はその強大な力を、対戦相手に必要以上の苦痛を与え、試合のペースを支配するために用いる。ヒールキャラクターであるため、試合中にレフェリーやリングアナウンサーを攻撃することでも知られている。特に、尾崎仁彦リングアナウンサーのスーツの袖を引き裂いたり、阿部誠リングアナウンサーをノックアウトしたりする場面が度々見られた。これは、尾崎アナウンサーがファレとタマ・トンガを間違えてコールしたことが原因ではないかと推測されている。
ファレは、その体格と攻撃力において、かつての巨大なレジェンドレスラーであるアンドレ・ザ・ジャイアントに匹敵するほどの強靭さを持っていると評される。ラグビー選手としての経験を活かした、体格に見合わない瞬発力も兼ね備えている。しかし、その一方で、小回りが利かず細かい動きに難があるという弱点も指摘されており、彼が敗れる際には、丸め込みやリングアウトなど、相手に隙を突かれる形が多い。また、常に安易な方法を選び、試合中に反則を用いることも、彼のヒールとしての特徴である。
5. 主要な得意技
ファレの試合スタイルは、その恵まれた体格とパワーを最大限に活かした技の数々が特徴的である。フィニッシュ・ホールドから、ヒールとしてのキャラクターを示す反則技まで、多種多様な技を使いこなす。
5.1. フィニッシュ・ホールド
- バッドラックフォール (Bad Luck Fall英語)
: 現在のファレの主要なフィニッシュ・ホールド。レイザーズ・エッジやショーン・ヘルナンデスのボーダー・トスと同型の投げ捨て式のパワーボム。相手を頭上に抱え上げた後、ハイジャック・バックブリーカーの体勢でスタミナを奪い、そのまま腰を落とさずに前方に投げ捨てる。2013年11月6日の本間朋晃戦で初公開された。公開当初はKOまたはレフェリーストップ裁定で勝利を収めることが多かったが、2014年からはピンフォールを狙うようになった。前方に放物線を描くように投げ捨てるため、受け身が取りにくい技として知られる。棚橋弘至、オカダ・カズチカ、内藤哲也、ジェイ・ホワイト、飯伏幸太、SANADA、EVILといった新日本プロレスのトップレスラーもこの技で敗北を喫している。2017年からは後述のグラネードを主なフィニッシャーとして多用し、バッドラックフォールはファレの最上位フィニッシュ・ホールドとして温存される傾向にある。しかし、相手選手がもがいて逃げ出すこともあり、失敗することもある。例えば、2018 NEW JAPAN CUPでの棚橋弘至戦では、観客席に投げようとした際に棚橋に逃げられ、場外カウント負けを喫した。
- グラネード (Grenade英語)
: チョークスラムと一本貫手の複合技。テーピングで固めた右手の親指を突き出し、大きく後ろへ振りかぶり、相手をチョークスラムの体勢で持ち上げてから、振り上げた右手の親指を相手の喉元へ突き刺しマットに叩きつける。ウマガが得意としていたサモアン・スパイクのリフトアップ式と類似している。トップコーナーから飛び込んできた相手や走り込んできた相手に対して放つカウンター式も得意とする。以前はチョークラリアットと呼ばれていたが、2017年からはバッドラックフォールを温存する形で、この技がフィニッシャーとして多用されるようになった。この技を仕掛けようとしても、相手が脱出したり、飯塚高史のように手を噛みついて抵抗することもあり、失敗することもある。
- ツームストン・パイルドライバー (Tombstone Piledriver英語)
: 2017年4月22日の後楽園ホール大会でオカダ・カズチカに対して「掟破り」の形で披露し、3カウントを奪った技。このシリーズでは主要なフィニッシュ・ホールドとして使用されたが、レスリングどんたく2017終了後は使用されなくなった。披露当初はバッドラックフォールの構えからツームストンの形に移行する動作を見せていたが、シリーズ終盤には通常の持ち上げ方で行うようになった。
- フォーリングココナッツ (Falling Coconut英語)
: ファレが使用するダイビング・ボディ・プレスの名称。2014年6月21日の中邑真輔戦で初公開され、2日後の記者会見で命名された。150 kgの巨体ながら、リング中央近くまで飛ぶ跳躍力を持つが、トップコーナーに登るまでに時間がかかるため、かわされることも多い。そのため、大一番でのみ披露されることが多い。
5.2. その他の得意技
- フライングボディソーセージ (Flying Body Sausage英語)
: 倒れた相手にジャンプして、その勢いで相手を押し潰す。
- 突進ラリアット (Rushing Lariat英語)
: 反撃をしてくる相手に対し、素早く走ってラリアットを繰り出す。試合状況によってはラリアットを使わず、両腕で勢い良く押し倒すこともある。
- スピアー (Spear英語)
: 主に走り込んでくる相手に対して放つカウンター式を使用する。
- バックフリップ (Backflip英語)
: ファイヤーマンズキャリーの体勢で相手を担ぎ上げ、後方へ倒れ込みながらマットに叩きつける投げ技で、デビュー当時から使用している。
- 串刺しボディアタック(ダンプカー、コーナースプラッシュ) (Corner Splash / Dump Truck英語)
: コーナーにもたれ掛かっている相手に向かって走り込みながら体を浴びせる。巨漢ながら猛スピードで突っ込んでいくのが特徴。真壁刀義はこれを「大きなダンプカーが追突してくる」ようだと形容し、「ダンプカー」と名付けた。解説者からは「コーナースプラッシュ」とも呼ばれている。
- T-SHOCK
: キング・ファレ時代のフィニッシャーで、変形のバックブリーカー。リバースフルネルソンの体勢からカナディアン・バックブリーカーの体勢で相手を肩口に担ぎ込み、マットに自らの膝をついて背中や腰へ衝撃を与える。
- クリフハンガー (Cliffhanger英語)
: ファレが使用するダイビングラリアットの名称で、エアリアルムーブの一つ。凱旋帰国後は見られなくなった。
- ジャンピング・ヘッドドロップ (Jumping Head Drop英語)
: ロープに跳び仰向けになった相手の肩口に頭を叩きつける。ヒールターン後は見られなくなった。
- ファレハンマー (Fale Hammer英語)
: 相手をコーナーに追い込み、首横に腕で勢い良く殴りつける。
5.3. 反則技と合体技
ファレのヒールとしてのペルソナは、しばしば反則技や仲間との連携技に現れる。
- フォール技
- ボディスラム失敗による押し潰しフォール
:: 相手選手がファレを持ち上げようとしても、ファレ自身の重い体重が相手選手に大きな負担をかけ、この重みで押し潰された相手をそのままフォールすることがある。
- 敬礼フォール
:: 相手が怯んだ状態で片足だけを乗せた状態で敬礼しながらフォールを取る。このフォールは失敗するケースが多い。
- 合体技
- タマ・トンガとの合体技
- DAWN RAID
:::: 立っている相手に向かってタマ・トンガと共に走り込み、ファレがラリアット、タマ・トンガがスピアーを同時に繰り出す。
- チェーズ・オーエンズとの合体技
- グラネードランチャー
:::: チェーズ・オーエンズが相手を抱え上げ、ファレがグラネードを見舞い、その勢いでオーエンズが相手を後ろへ反り投げる。
- ロケットランチャーエルボードロップ
:::: コーナートップからチェーズ・オーエンズがダイビングエルボードロップを見舞う際、ファレが下から投げるように勢いをつけて威力を増加させる連携技。
- 反則技
- 腹パンチ
:: 相手選手の腹部を下から目掛けて殴りつける。怯まずにカウンターで打ち返すこともある。
- 首絞め
:: ファレが対戦相手に怒りが頂点に達し暴走すると、場外近辺のマイクコードで相手の首を絞めることがある。2013年のWORLD TAG LEAGUEでは、因縁の真壁刀義を彼のチャームポイントであるチェーンで首を絞め上げ、失神させた。G1 CLIMAX 29のタッグマッチでは、棚橋弘至を海外放送席へ追い込み、マイクコードで首を絞めて世界にアピールしたこともあった。
- トンガンマッサージ
:: うつ伏せになった相手選手を足の踏み台にして背中に乗り、その重みで相手を押し潰して大きく怯ませる。
- 反則合体技
- トンガンマッサージ2人~5人バージョン
:: うつ伏せになった選手に複数人で乗り、通常のシングルでの重みの10倍ほどの重みで相手を押し潰して大きく怯ませる。
- タマ・トンガとの合体技
6. 私生活
ファレは、プロレス界に多くの親族を持つ。タマ・トンガ、タンガ・ロア、ヒクレオは彼のいとこにあたる。ファレとタマ・トンガは、幼少期をトンガのムアで過ごしていたが、その頃は互いに会うことはなかった。彼らが新日本プロレスの道場で同時にトレーニングしていた際に、ファレがSNSに投稿した写真に親戚がコメントしたことで、血縁関係にあることが判明したという。
彼はトンガ系であり、トンガ語、英語、日本語の3ヶ国語を流暢に話すことができる。右肩には「侍魂」の文字、左肩には和彫りの龍とポリネシアンタトゥーを融合した刺青を施している。
2017年には、ファレのBULLET CLUBのチームメイトである高橋裕二郎のヴァレット(マネージャー)を務める「トーキョーラティーナ」ことゴーゴーダンサーのピーターと交際していると報じられた。
7. 獲得タイトルと受賞歴
ファレは新日本プロレスでのキャリアにおいて、複数のタイトルを獲得し、個人としても評価を受けている。
- 新日本プロレス
- IWGPインターコンチネンタル王座(第9代:1回)
- IWGPタッグ王座(第94代:1回) - w / チェーズ・オーエンズ
- NEVER無差別級6人タッグ王座(第2代:1回) - w / 高橋裕二郎 & タマ・トンガ
- NEVER無差別級6人タッグ王座(第14代:2回) - w / タマ・トンガ & タンガ・ロア
- ニュージャパンランボー (2021年レッスルキングダム15)
- プロレスリング・イラストレーテッド
- PWI 500 (2017年):第71位
8. 入場テーマ曲
ファレはキャリアを通じていくつかの入場テーマ曲を使用しており、その変遷は彼のリング上のペルソナの変化を反映している。
- THE UNDERBOSS
: 凱旋帰国後の主要なテーマ曲。2019年には一時的に下記の「BULLET CLUBのテーマ」に変更されたが、G1 CLIMAXからは曲冒頭の「ジ・アンダーボス」のボイスを削除したバージョンを使用。その後、ファレが勝利した際にこの曲が流れるようになり、2019年6月29日のオーストラリア大会からは、入場時に「THE UNDERBOSS」の音声がカットされたバージョンが再び使用されるようになった。
- BULLET CLUBのテーマ
: 2019年1月から7月まで使用された。これは「ジ・アンダーボス」というリングネームを使用しなくなったことに伴う一時的な変更であった。
- Let's get crazy
: デビュー初期に主に使用されたテーマ曲。
9. メディア出演
ファレはプロレスラーとしての活動以外にも、いくつかのメディア作品に出演している。
9.1. 映画
- 『ふしぎな岬の物語』(2014年、成島出監督作品) - グレート・サモア役
9.2. テレビ
- 『YOUは何しに日本へ?』(テレビ東京、2015年2月22日、2022年12月5日放送)
10. 外部リンク
- [https://www.njpw.co.jp/profile/729 新日本プロレス 公式プロフィール]
- [https://twitter.com/TOKSFALE Rogue GeneralのX(旧Twitter)]
- [https://www.instagram.com/toksfale TOKS FALEのInstagram]