1. 初期キャリアと背景
フラヴィオは1979年12月30日にアンゴラの首都ルアンダで生まれた。幼少期からサッカーに強い関心を持ち、地元の強豪クラブであるペトロ・アトレティコのユースチームに1996年から1999年まで所属した。1999年に同クラブでプロデビューを果たし、選手としてのキャリアをスタートさせた。
2. クラブキャリア
フラヴィオは、プロサッカー選手としてのキャリアを通じて、アンゴラ、エジプト、サウジアラビア、ベルギーの主要クラブで活躍し、数々のタイトル獲得に貢献した。
2.1. アトレティコ・ペトロレオス・デ・ルアンダ
フラヴィオは1999年に故郷アンゴラのクラブ、ペトロ・アトレティコでプロデビューし、2005年までチームの主軸フォワードとして活躍した。この期間に、チームはアンゴラ1部リーグで2000年と2001年に2連覇を達成し、アンゴラカップでも2000年と2002年に優勝、さらに2002年にはアンゴラン・スーパーカップも制覇した。
個人としても目覚ましい成績を収め、2001年と2002年にはアンゴラ1部リーグの得点王に輝いた。また、2001年CAFチャンピオンズリーグでは得点王と最優秀選手賞を同時に受賞するなど、初期のキャリアでその才能をいかんなく発揮し、チームの成功に大きく貢献した。
2.2. アル・アハリ
2005年、フラヴィオはエジプトの強豪クラブであるアル・アハリへ移籍し、2009年まで在籍した。アル・アハリでのキャリアは彼の全盛期とされ、数多くのタイトルを獲得した。
移籍当初の2005-06シーズンはリーグ戦でわずか1得点に終わり、CAFチャンピオンズリーグのザマレク戦でペナルティーキックを外すなど、ファンからブーイングを受けることもあった。しかし、翌2006-07シーズンにはエジプト・プレミアリーグで17得点を挙げ、得点王に輝き、見事に復調した。彼はその後もアル・アハリの戦術において不可欠な存在となり、重要な局面で多くの決定的なゴールを挙げた。
特に、フラヴィオは卓越したヘディング能力で知られており、チームメイトであるアンゴラ代表のジルベルトからのサイドからのロングボールをヘディングで決める戦術は、アル・アハリの代名詞ともなった。この戦術は多くの試合で成功を収め、国内および大陸のタイトル獲得に貢献した。また、彼はメディアへの露出を極力控え、ほとんどインタビューに応じないなど、プロフェッショナルな姿勢を貫き、クラブの運営陣からも高く評価された。
アル・アハリ在籍中、彼は以下の主要タイトルを獲得した。
- エジプト・プレミアリーグ: 2005-06、2006-07、2007-08、2008-09シーズン(4連覇)
- エジプト・カップ: 2006、2007年(2連覇)
- エジプト・スーパーカップ: 2005、2006、2007、2008年(4連覇)
- CAFチャンピオンズリーグ: 2005、2006、2008年(3回優勝)
- CAFスーパーカップ: 2006、2007、2009年(3回優勝)
また、FIFAクラブワールドカップには2005年と2006年に出場した。特に2006年FIFAクラブワールドカップでは、12月10日のオークランド・シティFCとの開幕戦で先制点を挙げ、チームの2対0の勝利に貢献した。12月13日の準決勝では南米王者のSCインテルナシオナルと対戦し、後半にヘディングで同点ゴールを決めたが、チームは最終的に1対2で敗れた。しかし、この大会でアル・アハリは3位という好成績を収めた。
アル・アハリでの最後のシーズンとなった2008-09シーズンには、イスマイリーとのエジプト・プレミアリーグ優勝決定プレーオフで唯一のゴールを挙げ、アル・アハリに5連覇をもたらした。このシーズンで、彼は自身2度目となるエジプト・プレミアリーグ得点王のタイトルを獲得した。これは、ジョン・ウタカが2000-01シーズンに達成して以来、外国人選手としては史上3度目の快挙であった。
2.3. アル・シャバブ
アル・アハリでの成功後、フラヴィオは2009年から2011年までサウジアラビアのアル・シャバブでプレーした。この期間には、2009年のサウジ国王杯で優勝に貢献したほか、2010年AFCチャンピオンズリーグではチームのベスト4進出に貢献した。
2.4. リールセSK
2011年から2012年にかけて、フラヴィオはベルギーのリールセに短期間在籍した。ここでは公式戦7試合に出場し、1得点を記録した。
2.5. アトレティコ・ペトロレオス・デ・ルアンダ (復帰)
リールセでのプレーを終えた後、フラヴィオは2012年に古巣のペトロ・アトレティコに復帰した。2014年に現役を引退するまでの2年間、チームに貢献し、2013年にはアンゴラカップの優勝に貢献した。
3. 代表経歴
フラヴィオは、2000年から2014年までの14年間にわたりアンゴラ代表の主要選手として活躍し、数々の国際大会に出場した。
3.1. アンゴラ代表での活動
フラヴィオは2000年にアンゴラA代表に初招集された。2002年のアフリカネイションズカップ予選のブルンジ戦でA代表初ゴールを記録した。また、COSAFAカップでは2001年と2004年の2度の優勝に貢献し、特に2004年大会では3得点を挙げるなど、チームの優勝の立役者となった。
3.2. FIFAワールドカップ出場
フラヴィオは、アンゴラ代表が史上初めて本大会出場を果たした2006 FIFAワールドカップのメンバーに選出された。予選では2得点を挙げ、アンゴラ代表の歴史的快挙に大きく貢献した。
本大会では、グループリーグのイラン戦でヘディングによる先制ゴールを記録した。このゴールは、アンゴラ代表にとってワールドカップ本大会での唯一の得点であり、フラヴィオはアンゴラ史上初のワールドカップ得点者となった。彼はこの大会でわずか39分の出場時間であったにもかかわらず、歴史に名を刻んだ。
3.3. アフリカネイションズカップ出場
フラヴィオは、アフリカネイションズカップに3回(2006年エジプト大会、2008年ガーナ大会、2010年アンゴラ大会)出場している。
2006年大会では、カメルーン戦とトーゴ戦で合計3得点を挙げる活躍を見せたが、チームはグループリーグで敗退した。しかし、2008年大会と自国開催となった2010年大会では、合計4得点を記録し、チームの2大会連続となる準々決勝進出に貢献した。アフリカネイションズカップ通算では11試合に出場し、7得点を記録するなど、アンゴラ代表のエースとして爆発的な得点力を示した。
3.4. 代表記録
フラヴィオは、アンゴラ代表として通算91試合に出場し、34得点を記録した。これは、アンゴラ代表の歴代最多Aマッチ出場記録であり、得点数ではアグアに次ぐ歴代2位の記録である。2014年に代表チームから引退するまで、14年間にわたりアンゴラ代表の主要選手として活躍し、その功績はアンゴラサッカー史に深く刻まれている。
ナショナルチーム | 年 | 出場 | 得点 |
---|---|---|---|
アンゴラ | 2000 | 1 | 0 |
2001 | 10 | 2 | |
2002 | 5 | 0 | |
2003 | 7 | 2 | |
2004 | 7 | 3 | |
2005 | 8 | 3 | |
2006 | 8 | 6 | |
2007 | 7 | 5 | |
2008 | 13 | 6 | |
2009 | 8 | 2 | |
2010 | 4 | 3 | |
2011 | 2 | 1 | |
2012 | 4 | 1 | |
通算 | 91 | 34 |
No. | 日付 | 会場 | 対戦相手 | 得点 | 結果 | 大会 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2001年6月17日 | エスタジオ・ムニシパル・ド・タフェ, カビンダ, アンゴラ | ブルンジ | 2-1 | 2-1 | 2002年アフリカネイションズカップ予選 |
2 | 2001年9月30日 | ナショナル・スポーツ・スタジアム, ハラレ, ジンバブエ | ジンバブエ | 1-0 | 1-0 | 2001 COSAFAカップ |
3 | 2003年7月6日 | エスタジオ・ダ・シダデラ, ルアンダ, アンゴラ | マラウイ | 3-0 | 5-1 | 2004年アフリカネイションズカップ予選 |
4 | 2003年9月7日 | エスタジオ・ダ・シダデラ, ルアンダ, アンゴラ | ナミビア | 2-0 | 2-0 | 親善試合 |
5 | 2004年7月18日 | エスタジオ・ダ・シダデラ, ルアンダ, アンゴラ | ボツワナ | 1-1 | 1-1 (5-3 PK) | 2004 COSAFAカップ |
6 | 2004年9月19日 | エスタジオ・ダ・マチャヴァ, マプト, モザンビーク | モザンビーク | 1-0 | 1-0 | 2004 COSAFAカップ |
7 | 2004年10月10日 | エスタジオ・ダ・シダデラ, ルアンダ, アンゴラ | ジンバブエ | 1-0 | 1-0 | 2006 FIFAワールドカップ・アフリカ予選 |
8 | 2005年2月23日 | スタッド・アルフォンス・マセンバ=デバ, ブラザヴィル, コンゴ | コンゴ共和国 | 1-0 | 2-0 | 親善試合 |
9 | 2005年5月27日 | スタッド・オリンピック・ド・ラデス, ラデス, チュニジア | チュニジア | 1-3 | 1-4 | 親善試合 |
10 | 2005年6月5日 | エスタジオ・ダ・シダデラ, ルアンダ, アンゴラ | アルジェリア | 1-0 | 2-1 | 2006 FIFAワールドカップ予選 |
11 | 2006年1月21日 | カイロ・ミリタリー・アカデミー・スタジアム, カイロ, エジプト | カメルーン | 1-1 | 1-3 | 2006年アフリカネイションズカップ |
12 | 2006年1月29日 | カイロ国際スタジアム, カイロ, エジプト | トーゴ | 1-0 | 3-2 | 2006年アフリカネイションズカップ |
13 | 2-1 | |||||
14 | 2006年6月21日 | ツェントラールシュタディオン, ライプツィヒ, ドイツ | イラン | 1-0 | 1-1 | 2006 FIFAワールドカップ |
15 | 2006年10月8日 | エスタジオ・ダ・シダデラ, ルアンダ, アンゴラ | ケニア | 1-0 | 3-1 | 2008年アフリカネイションズカップ予選 |
16 | 2-0 | |||||
17 | 2007年3月25日 | エスタジオ・ダ・シダデラ, ルアンダ, アンゴラ | エリトリア | 1-0 | 6-1 | 2008年アフリカネイションズカップ予選 |
18 | 5-1 | |||||
19 | 2007年6月17日 | エスタジオ・ダ・シダデラ, ルアンダ, アンゴラ | スワジランド | 3-0 | 3-0 | 2008年アフリカネイションズカップ予選 |
20 | 2007年8月22日 | スタッド・デ・マルティール, キンシャサ, コンゴ民主共和国 | コンゴ民主共和国 | 1-1 | 1-3 | 親善試合 |
21 | 2007年11月17日 | スタッド・ド・ムラン, ムラン, フランス | コートジボワール | 2-0 | 2-1 | 親善試合 |
22 | 2008年1月13日 | コンプレクソ・デスポルティーボFCアルヴェルカ, アルヴェルカ・ド・リバテージョ, ポルトガル | エジプト | 2-2 | 3-3 | 親善試合 |
23 | 2008年1月16日 | プリンス・ムレイ・アブデラー・スタジアム, ラバト, モロッコ | モロッコ | 1-0 | 1-2 | 親善試合 |
24 | 2008年1月27日 | タマレ・スタジアム, タマレ, ガーナ | セネガル | 3-1 | 3-1 | 2008年アフリカネイションズカップ |
25 | 2008年6月1日 | エスタジオ・ドス・コケイロス, ルアンダ, アンゴラ | ベナン | 1-0 | 3-0 | 2010 FIFAワールドカップ・アフリカ予選 |
26 | 2008年6月8日 | スタッド・ジェネラル・セイニ・クンチェ, ニアメ, ニジェール | ニジェール | 1-1 | 2-1 | 2010 FIFAワールドカップ予選 |
27 | 2008年9月7日 | スタッド・ド・ラミティエ, コトヌー, ベナン | ベナン | 1-1 | 2-3 | 2010 FIFAワールドカップ予選 |
28 | 2009年8月12日 | エスタジオ・ド・レステロ, リスボン, ポルトガル | トーゴ | 1-0 | 2-0 | 親善試合 |
29 | 2009年11月14日 | エスタジオ・ダ・シダデラ, ルアンダ, アンゴラ | コンゴ共和国 | 1-0 | 1-1 | 親善試合 |
30 | 2010年1月10日 | エスタジオ・オンゼ・デ・ノヴェンブロ, ルアンダ, アンゴラ | マリ | 1-0 | 4-4 | 2010年アフリカネイションズカップ |
31 | 2-0 | |||||
32 | 2010年1月14日 | エスタジオ・オンゼ・デ・ノヴェンブロ, ルアンダ, アンゴラ | マラウイ | 1-0 | 2-0 | 2010年アフリカネイションズカップ |
33 | 2011年9月4日 | エスタジオ・ナシオナル・ド・チアジ, カビンダ, アンゴラ | ウガンダ | 2-0 | 2-0 | 2012年アフリカネイションズカップ予選 |
34 | 2012年1月14日 | エスタジオ・ナシオナル・ド・チアジ, カビンダ, アンゴラ | シエラレオネ | 3-1 | 3-1 | 親善試合 |
4. プレースタイル
フラヴィオは、その身長175 cmを生かした卓越したヘディング能力で知られていた。特にアル・アハリ在籍時には、チームメイトのジルベルトからのサイドからのロングボールを正確なヘディングでゴールに結びつける戦術が確立されており、これにより多くの重要な得点を挙げ、チームのタイトル獲得に大きく貢献した。ゴール前での決定力も高く、長年にわたり主要クラブや代表チームで得点源として活躍した。
5. 記録
フラヴィオのクラブおよび代表チームでのシーズン別、大会別の出場試合数と得点記録は以下の通りである。
5.1. クラブ
クラブ | シーズン | リーグ | リーグカップ | カップ | 大陸大会 | その他 | 合計 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ディビジョン | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | ||
ペトロ・アトレティコ | 1999 | ジラボーラ | 12 | 5 | - | 0 | 0 | - | 0 | 0 | 12 | 5 | ||
2000 | 22 | 14 | - | 0 | 0 | - | 0 | 0 | 22 | 14 | ||||
2001 | 25 | 23 | - | 0 | 0 | 7 | 0 | 0 | 0 | 32 | 23 | |||
2002 | 24 | 11 | - | 0 | 0 | 3 | 1 | 0 | 0 | 27 | 12 | |||
2003 | 20 | 10 | - | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 21 | 11 | |||
2004 | 24 | 10 | - | 4 | 4 | 3 | 0 | 0 | 0 | 31 | 14 | |||
2005 | 21 | 13 | - | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 21 | 13 | |||
2013 | 15 | 7 | - | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 15 | 7 | |||
2014 | 13 | 3 | - | 1 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 14 | 5 | |||
合計 | 176 | 96 | 0 | 0 | 6 | 7 | 13 | 1 | 0 | 0 | 195 | 104 | ||
アル・アハリ | 2005-06 | EPL | 20 | 1 | - | 1 | 0 | 9 | 3 | 0 | 0 | 30 | 4 | |
2006-07 | 24 | 17 | - | 4 | 2 | 14 | 6 | 4 | 2 | 46 | 27 | |||
2007-08 | 23 | 5 | - | 0 | 0 | 9 | 3 | 1 | 0 | 33 | 8 | |||
2008-09 | 29 | 12 | - | 2 | 0 | 13 | 7 | 4 | 3 | 48 | 22 | |||
合計 | 96 | 35 | 0 | 0 | 7 | 2 | 45 | 19 | 9 | 5 | 157 | 61 | ||
アル・シャバブ | 2009-10 | SPL | 16 | 8 | - | 3 | 2 | 7 | 5 | - | 26 | 15 | ||
リールセ | 2011-12 | BPL | 5 | 1 | - | 2 | 0 | - | - | 7 | 1 | |||
キャリア合計 | 293 | 140 | 0 | 0 | 18 | 11 | 65 | 25 | 9 | 5 | 385 | 181 |
6. 受賞歴
フラヴィオは選手キャリアを通じて、所属チームおよび個人として数々のトロフィーや栄誉ある賞を獲得した。
6.1. クラブでの受賞歴
- ペトロ・アトレティコ
- ジラボーラ: 2000、2001
- タッサ・デ・アンゴラ: 2000、2002、2013
- アンゴラン・スーパーカップ: 2002
- アル・アハリ
- エジプト・プレミアリーグ: 2005-06、2006-07、2007-08、2008-09
- エジプト・カップ: 2006、2007
- エジプト・スーパーカップ: 2005、2006、2007、2008
- CAFチャンピオンズリーグ: 2005、2006、2008
- CAFスーパーカップ: 2006、2007、2009
- FIFAクラブワールドカップ: 3位(2006)
- アル・シャバブ
- サウジ国王杯: 2009
- AFCチャンピオンズリーグ: ベスト4(2010)
- アンゴラ代表
- COSAFAカップ: 2001、2004
- 2006 FIFAワールドカップ出場(アンゴラ史上初)
6.2. 個人での受賞歴
- CAFチャンピオンズリーグ最優秀選手: 2001
- CAFチャンピオンズリーグ得点王: 2001
- ジラボーラ得点王: 2001、2002
- エジプト・プレミアリーグ得点王: 2006-07、2008-09
- IFFHS 世界最多得点者ランキング8位(2012年発表、21世紀の最多得点者)
7. 引退後
2014年に現役を引退した後、フラヴィオは選手としてのキャリアを終えた古巣のペトロ・アトレティコでアシスタントコーチを務めている。
