1. 概要
入江茂弘は、そのキャリアを通じて日本の主要団体のみならず、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツなどの海外プロモーションでも数々のタイトルを獲得し、国際的な活動を積極的に展開しているプロレスラーである。特にDDTプロレスリングではKO-D無差別級王座を3度戴冠し、最多防衛記録を樹立した実績を持つ。パワーファイターとしてのスタイルと、多彩な得意技を駆使し、常に観客を魅了する。
2. 来歴
入江茂弘は、プロレスラーとしての道のりを中学時代からの訓練を経て歩み始め、日本国内の主要団体で活躍した後、海外へと活動の場を広げ、数々のタイトルを獲得してきた。
2.1. デビュー以前
2002年、中学2年生の時に大阪プロレスのプロレス学校に入門し、初期のプロレス訓練を受けた。この時の同期には、後に大阪プロレスで活躍する小峠篤司や三原一晃がおり、高井憲吾、ビリーケンキッド、スペル・デメキンらがコーチを務めていた。高校生になると、プロレスの訓練と並行して石倉正徳のもとで総合格闘技の練習も積み、アマチュアパンクラス大会にも出場するなど、多様な格闘技経験を積んだ。2007年にはでら名古屋プロレスに入門し、プロレスラーとしての本格的なキャリアをスタートさせる。
2.2. でら名古屋プロレス
2008年4月30日、新木場1stRINGで開催された興行「若武者」で、高西翔太を相手にプロレスラーとして正式にデビューを果たした。同年6月7日に行われたでら名古屋プロレスの旗揚げ戦では、高木三四郎とタッグを組み、真霜拳號と滝澤大志組とメインイベントで対戦した。2009年4月、でら名古屋プロレスが代表者の不祥事により活動を休止した後も、入江は「チームでら」所属としてプロレス活動を継続した。
2.3. DDTプロレスリング (2010-2018)
2008年5月より、入江はDDTプロレスリング(DDT)に散発的に参戦し始め、主に他の若手選手と共にベテラン選手と対戦する機会を得ていた。2010年3月からは「留学」という形でDDTに本格的に参加し、DDTを主戦場としながらも、名古屋での興行にも定期的に参戦を続けた。同年8月には特別なワンデートーナメントで高尾蒼馬を破り優勝し、その活躍を見たDDT社長の高木三四郎が入江のファンとなり、より定期的なDDTでの出場をオファーした。12月からは、ユニオンプロレスに移籍した高木三四郎がプロデュースするTKG48のメンバーとして、ユニオンプロレスにもレギュラー参戦するようになった。
2011年5月8日、「愛プロレス博2011」では、三原一晃をパートナーに迎えたタッグマッチで、かつての師匠である高井憲吾に勝利し、師匠越えを果たした。同5月、DDTのKO-D無差別級挑戦権トーナメントに参戦し、5月21日にはDDTのベテランである飯伏幸太を破るという大金星を挙げた。この活躍が評価され、翌月の6月にはTKG48のメンバーである澤宗紀をパートナーに迎えてKO-Dタッグ王座に挑戦し、王者組のGENTARO、ヤス・ウラノを破り、自身初のタイトルを獲得した。しかし、わずか数日後にはケニー・オメガとマイケル・ナカザワにタイトルを奪われた。10月10日には石井慧介と組んで再度KO-Dタッグ王座を獲得し、大石真翔と男色ディーノ組を破った。しかし、この王座も12月31日にウラノと火野裕士に奪われ、2月11日の再戦でも奪還には至らなかった。
2012年4月1日、後楽園ホール大会で全日本プロレス所属のケニー・オメガが保持する世界ジュニアヘビー級王座に初挑戦。入江はファイヤーバードスプラッシュを披露するなど肉薄したが、最後はオメガの片翼の天使で敗れた。同年5月4日にはユニオンプロレスの興行で、石川修司とのタッグチーム「BIG"G"BANG」を結成し、佐々木義人と忍組が保持するBJW認定タッグ王座に挑戦し、奪取に成功した。しかし、このタイトルも7月15日に忍と岡林裕二に奪われた。
2012年秋、入江は石井慧介、高尾蒼馬の3人でユニット「チーム・ドリーム・フューチャーズ」を結成した。2013年よりDDTの正式所属選手となり、チーム・ドリーム・フューチャーズの3人でKO-D6人タッグ王座の初代王者となったが、1月27日にモンスター・アーミー(火野裕士、アントーニオ本多、佐々木大輔)に奪われた。3月20日にはケニー・オメガが保持するKO-D無差別級王座に初挑戦し、王座奪取に成功した。その後、8度の防衛に成功し、KO-D無差別級の最多防衛記録を樹立した。しかし、8月18日の両国国技館大会「両国ピーターパン2013」でのHARASHIMAとの防衛戦に敗れて王座から陥落した。2014年1月26日にはHARASHIMAに再戦を挑んだが、王座奪還はならなかった。2014年2月、チーム・ドリーム・フューチャーズはアジャ・コング、男色ディーノ、大石真翔組を破り、再度KO-D6人タッグ王座を獲得したが、4月には飯伏、オメガ、佐々木組に奪われた。同年8月には再びDDT両国国技館大会「両国ピーターパン2014」で大槻ケンヂのメイクを施し登場。チーム・ドリーム・フューチャーズは酒呑童子(坂口征夫、マサ高梨、KUDO)を破り、KO-D6人タッグ王座を再度獲得したが、9月28日にはT2Hii(高木三四郎、大鷲透、平田一喜)に奪われた。
2015年3月1日、チーム・ドリーム・フューチャーズは再び酒呑童子を破りKO-D6人タッグ王者となったが、初防衛戦で酒呑童子に奪い返された。4月11日にはチーム・ドリーム・フューチャーズが酒呑童子を破り、再びタイトルを奪還し、9月にはOhkaTeikoku(大石真翔、男色ディーノ、スーパー・ササダンゴ・マシン)に敗れるまで防衛した。同年、11月23日より開幕した全日本プロレスの「世界最強タッグ決定リーグ戦」に吉江豊とのタッグで出場した。2016年5月25日、全日本プロレス社長の秋山準の要請により「AJレンジャー」のグリーンとして活動した。同年5月、チーム・ドリーム・フューチャーズは樋口和貞、岩崎孝樹、勝俣瞬馬組を破り、KO-D6人タッグ王座を再度獲得した。
2016年7月17日より無期限のアメリカ遠征に入り、WCWO、IWA Mid-South、AAW、プロレスリング・ブリッツ、GALLIルチャリブレ、フリーランス・レスリング、レジスタンス・プロレスリング、MIAW、UPW、AIW、グローバルフォース・レスリング、AWS、チャンピオンシップ・レスリング・フロム・ハリウッドなど、多数のインディー団体に出場した。同年9月6日にはミルウォーキーでのMIAW大会でサイラス・ヤングをピンフォールで破り、同団体のヘビー級ベルトを獲得し、自身初の海外でのタイトル獲得となった。10月5日にはインディアナポリスでのWCWO大会で、中西部エリアのトップ12プロスペクトが参加するワンデートーナメント(決勝は3WAY)を制し優勝を果たした。同年9月6日、IWA Mid-Southでの試合(クリス・ヒーロー、コンゴ・コングとのトリプルスレッドマッチで敗北)を最後に日本に一時帰国した。
2016年11月6日のDDTフェスで一時帰国した後、2017年1月8日には再度アメリカへ遠征し、1月10日から21日までカナダのCWE(カナディアン・レスリング・エリート)の冬季ツアー12大会にフル参戦し、ジェイコブ・クリードを破った。同年1月28日、ウィスコンシン州でのMIAWサウスミルウォーキー大会では、25人参加の時間差バトルロイヤルを制して空位となっていたヘビー級ベルトを獲得し、メインイベントではラフ・クロシングを相手に初防衛に成功した。
2017年8月23日、DDT事務所にて入江の海外遠征が発表された。9月19日の名古屋大会を最後に海外遠征を開始し、遅くとも年末には帰国する予定とされた。25日、新宿FACEで行われた興行では樋口和貞と対戦し、11分58秒でフォール勝ちを収めた。入江が放ったコーナー最上段からのキャノンドロップなど、大肉弾戦と呼ぶべき試合であった。この試合は、自身に何の相談もなく遠征が発表されたことや、「日本にいても上は目指せる」と納得できない点があったことなどから、男色ディーノに「闘ってわかり合いましょう」と言われて決定したものであった。
2018年3月25日、両国国技館大会の全試合終了後、自身の持つKO-D無差別級の最多防衛記録を更新した竹下幸之介の前に現れ、王座挑戦を表明。同年4月29日、竹下を破り、再度KO-D無差別級王座を戴冠した。同年8月1日、海外でのKO-D無差別級3WAYマッチでサミ・キャラハン(もう一人はトレイ・ミゲル)に敗れベルトを失ったが、8月8日にはキャラハンとのシングルマッチで勝利し、ベルトを取り返した。しかし、8月14日、新木場1stRINGのDDTLIVE!マジ卍内にて、試合終了直後に「いつでもどこでも挑戦権」を行使した男色ディーノに敗れ、王座から陥落した。同年9月末、DDTを退団し、海外団体を中心に活動していくことを発表した。
2.4. フリー転向後 (2018-現在)
DDT退団後、入江はフリーランスのプロレスラーとして国際的な活動を本格化させた。2018年10月30日から11月21日まで、カナダのプロレス団体CWEの秋ツアーで23大会に出場した。このツアーには、入江の他にDDTのレッカと吉村直巳も参加していた。
同年12月8日、イギリスデビュー戦となるProgressのシェフィールド大会で、ウォルターのProgress世界ヘビー級王座に挑戦した。9度目の防衛戦となるウォルターが自ら「最強の挑戦者」を公募し、世界中の挑戦表明者の中から入江が選ばれた。
2019年3月3日、イギリスのSouthside Wrestlingのセントネオツ大会で、ロブ・リンチから同団体認定のSWE世界ヘビー級王座を奪取。これにより、日本とアメリカに続き、自身3か国目のヘビー級王者となった。同年3月9日、ドイツのwXwがオーバーハウゼン市内にて主催した3カウント無しの8人参加トーナメント「Ambition 10」において、1回戦でローレンス・ローマン、準決勝でクリス・リッジウェイ、決勝でリコ・ブシドーを下し、初参加にして初優勝を成し遂げた。この大会の過去の優勝者には、ダニエル・ブライアン(2010年)、ザック・セイバーJr.(2013年)、マット・リドル(2017年)らが名を連ねる。
2018年12月から2019年3月の期間に、入江はPCW UK、Revolution Pro(ブリティッシュ・ヘビー級王座戦でザック・セイバーJr.に挑戦)、Frontline Pro、Fight Club Pro、Kamikaze Pro、All Star、Attack(以上イングランド)、ICW(スコットランド、ICW世界ヘビー級王座戦でライオンハートに挑戦)、OTT(アイルランド)、Bodyslam(デンマーク)、EWP(ドイツ)など、イギリスとドイツの多くの主要団体に参戦した。ICWとEWPでは初参戦にしてメインイベントでのタイトルマッチが組まれた。
2019年4月4日から6日のマニアウィーク期間中のニューヨーク界隈において、日本人選手最多となる5大会に出場した。また、入江は日系ではないプロモーションにおいてメインイベント出場(4月4日wXw興行)を果たした唯一の日本人となった。2019年夏にもイギリスでのマッチメイクが発表されており、7か月ぶりの日本での試合が5月26日のDDT大阪大会となることも発表された。
2019年6月20日には、STRONGHEARTSのメンバーとして活動することが発表された。現在では、フリーの立場で全日本プロレスを主戦場として活動している。
2023年には、wXwの「16 Carat Goldトーナメント」で優勝し、アクセル・ティッシャーを破ってwXw世界統一王座を獲得した。
3. レスリングスタイルと得意技
入江茂弘は、いわゆるパワーファイターでありながら、相手に対して全くスキを見せつけない力勝りの根性あるファイトが最大の武器である。
- ビーストボンバー
現在の入江の主なフィニッシャー。ラリアット。
- ビーストスプラッシュ
元は「フライングソーセージ」の名称で使用していたが、2015年頃より現在の名称に。入江のフィニッシュホールドとして使用される事も多い。ボディ・プレス。
- タズミッション
2017年頃より使用し始め、現在では主要な得意技の1つとなっている。裸絞。
- シゲヒロファイナルインパクト
相手の両腕を巻き込んで抱えてのパイルドライバー。
- パッケージパイルドライバー
入江のここ一番での奥の手。
- ブラックホールスラム
旋回式スクラップバスター。
- ファイヤーサンダー
- キャノンボール
コーナーに尻餅をつかせた相手に浴びせる変形のローリングセントーン。土井成樹の「大暴走」と同型である。
- キャノンボールドロップ
コーナー最上段にリングを向いて立ち、そこから身体を横方向に180°捻って落ちる変形のセントーン。
- 交通事故タックル
主にタッグマッチ等で、味方に向かって走り込んでくる相手に真横から食らわせるタックル。
- テディベア
ヒップドロップ。
- デスバレーボム
主に繋ぎ技として使用する。2018年4月の竹下幸之介とのKO-D無差別級王者戦においては、様々な形での入り方と落とし方で3連発を見舞った。
- キャリスプラッシュ
ロープ前に寝かせた相手への、トップロープに勢いよく寄り掛かった反動を利用したボディプレス。サミ・キャラハンより継承。
- 飯伏殺し
グラウンドでのゼロ距離エルボー。名称は飯伏幸太をKOしたことから。
- 自分が垂直落下式バックフリップ
自身が垂直に突き刺さるようにかける技。以前は入江の代名詞としてフィニッシャーとして使用されていたが、現在は使用自体が減っている。
- リバース・カミカゼ・アッサムボム
大一番でのみ使用する奥の手。
- ヘッドバット
- エルボースマッシュ
- ゴア
- 変形ゴリラクラッチ
- ばってんボンバー
- アイダホ!ミネソタ!ミシシッピ!エルボー
上記2つは、入江と親交の深いばってん多摩川の技である。
4. 人物・エピソード
入江茂弘の公開されている個人的な側面や興味深いエピソードを以下に示す。
- 好きな食べ物:お肉
- 好きな音楽:筋肉少女帯
- 好きなキャラクター:野獣、くまのプーさん
- 好きな有名人:星美りか、大島優子、森カノン
- 特技:動物のうんちく
5. 入場曲
入江茂弘の試合入場時には、日本のロックバンド「筋肉少女帯」の楽曲が使用されている。
- 「タチムカウ -狂い咲く人間の証明-」
デビュー当時より使用されている。当初は正式な許可を得ずに使用していたが、2013年8月18日に両国国技館で開催された「DDT万博」に筋肉少女帯が来場し、この曲を生演奏で披露した。
- 「T 2 (タチムカウver.2)」
筋肉少女帯のアルバム「Future!」に収録されている楽曲。入江のために作られた曲であり、2017年8月20日両国大会から使用されている。
6. 獲得タイトルと業績
入江茂弘がプロレスキャリアを通じて獲得したチャンピオンシップタイトルと、その他の主要な実績や受賞歴を団体別に整理して記述する。

- Active Advance Pro Wrestling
- 2AW無差別級王座(第5代、1回)
- 2AWタッグ王座(第5代、1回) - パートナーはTHE アンドリュー"キング"拓真
- 全日本プロレス
- GAORA TV王座(第20代、1回)
- アジアタッグ王座(第94代、1回) - パートナーは石井慧介
- 50thスペシャル カーベルpresents 6人タッグトーナメント優勝(2022年) - パートナーはT-Hawk、鬼塚一聖
- 大日本プロレス
- BJW認定タッグ王座(第36代、1回) - パートナーは石川修司
- 大日本最侠タッグリーグ戦優勝(2019年) - パートナーは岡林裕二
- DDTプロレスリング
- KO-D無差別級王座(第45代、第62代、第64代、3回)
- KO-Dタッグ王座(第35代、第40代、第61代、3回) - パートナーは澤宗紀、石井慧介、樋口和貞
- KO-D6人タッグ王座(初代、第8代、第13代、第17代、第19代、第25代、6回) - パートナーは石井慧介、高尾蒼馬
- アイアンマンヘビーメタル級王座(第878代、2回)
- ハードコアミックスドタッグワンデートーナメント優勝(2022年) - パートナーは青木いつ希
- GLEAT
- 暫定G-Infinity王座(1回) - パートナーはT-Hawk
- ガンバレ☆プロレス
- スピリット・オブ・ガンバレ世界タッグ王座(第3代、1回、現保持者) - パートナーは渡瀬瑞基
- Midwest Independent Association of Wrestling
- MIAWヘビー級王座(2回)
- みちのくプロレス
- PWLL王座(第8代、1回、現保持者)
- 大阪プロレス
- 大阪タッグ王座(1回、現保持者) - パートナーはクワイエット・ストーム
- Oriental Wrestling Entertainment
- OWE無差別級王座(1回)
- PUZZLE
- Top Of PUZZLE王座(1回、現保持者)
- Pro Wrestling Illustrated
- PWI 500でシングルレスラー上位500人中200位(2024年)
- Ryukyu Dragon Pro Wrestling
- 総竜王タッグ王座(1回、現保持者) - パートナーは三原一晃
- Sportiva Entertainment
- Sportivaタッグリーグ優勝(2010年) - パートナーはマンモス半田
- Southside Wrestling Entertainment
- SWE世界ヘビー級王座(1回)
- 天龍プロジェクト
- WAR世界6人タッグ王座(1回) - パートナーは岩崎孝樹、岩本煌史
- VKF Pro Wrestling
- VKF King Of Wrestle Naniwa王座(1回)
- WRESTLE-1
- WRESTLE-1 TAG LEAGUE優勝(2019年) - パートナーはT-Hawk
- Wild Championship Wrestling Outlaws
- WCWOヤングガンズトーナメント優勝(2016年)
- World Series Wrestling
- WSWオーストラリア王座(1回、現保持者)
- wXw
- wXw世界統一王座(1回)
- 16 Carat Goldトーナメント優勝(2023年)
- Ambition 10優勝(2019年)