1. Early Life and Amateur Sumo Career
御嶽海久司は、フィリピンでの出生からアマチュア相撲選手としての輝かしい経歴を経て、プロ相撲への道を歩み始める。
1.1. Birth and Childhood
御嶽海は1992年12月25日、フィリピンで一人っ子として生まれた。母はクリスマスに生まれたからという理由で、彼のミドルネームをJustinジャスティン英語と命名した。出生直後はクリスマス限定の医療費無料制度のおかげで、ささやかな親孝行ができたと語られている。4歳の時に長野県木曽郡上松町に移住し、豊かな自然の中で育った。父親と一緒に山でキノコやタラの芽を採取したり、川で泳いだり、アユやイワナ、ヤマメなどの川魚を釣って塩焼きにして食べるなど、幼少期の思い出を後に語っている。保育園時代には、生まれつき障害のある子と手を繋いだり、運動会の徒競走で1着でゴールインした後にその障害のある子に手を貸したりと、弱きを助ける心優しい面を見せた。
彼が相撲を始めるきっかけとなったのは、上松町立上松小学校1年の時、大桑村で開かれた相撲大会で自分より体の小さな相手に負けたことである。この敗北が心に火をつけ、地元の木曽少年相撲クラブに入門するきっかけとなった。小学生の頃は、父親と約束し、自宅の庭石の上で毎日400回も四股を踏むことを日課としていた。
1.2. Education and Amateur Achievements
小学校5年時には全日本小学生相撲優勝大会で2位となった。木曽町立福島中学校に進学すると3年で全国大会ベスト8を記録。木曽青峰高校在学中には国民体育大会少年の部で3位の成績を収めた。その後、東洋大学法学部企業法学科に進学。大学相撲では、監督の濱野文雄から「復活のために力を貸してほしい!」と期待され、低迷していた相撲部を立て直すための要員として勧誘された。
大学時代は力強い突き押しを武器に、個人タイトル15冠を達成する活躍を見せた。4年時の11月には学生横綱、12月にはアマチュア横綱となり、現行基準では日本大学出身の清瀬海孝行(元幕内・市原)と遠藤に続き3人目となる幕下10枚目格付け出しの資格を獲得した。
2. Professional Debut and Rapid Advancement
アマチュアで輝かしい実績を残した御嶽海は、周囲の期待を背負いプロ相撲の世界に飛び込み、異例のスピードで昇進を遂げた。
2.1. Joining the Stable
当初、御嶽海はプロ入りする意向はなく、和歌山県庁相撲部への就職が内定しており、家族を和歌山に呼び一緒に暮らすことを考えていた。しかし、大学の相撲部の濱野監督の知人から部屋を紹介され、また、出羽海部屋の11代出羽海親方(元幕内・小城ノ花昭和)から「最近10年くらい幕内力士が出ていなくて、今は名門とは言えないかもしれない。でも、きっと再興させたいと思っている。是非とも力を貸してほしい」と熱心に説得された。さらに、遠藤関が活躍する姿を見て、「(大学相撲で)自分もあの人といい勝負をしてたんだよなぁ」と思うと、プロへの思いがふつふつと湧き上がったという。公務員の内定を辞退した手前、「もし結果が出なければ、"あのとき公務員になっていればよかったのに"と後ろ指をさされる。辞退した県庁の皆さんにも申し訳が立たない。行くからには、絶対に結果を出す」という強い気持ちで、2015年2月12日に出羽海部屋へ入門した。
2014年2月に部屋を継承したばかりの11代出羽海親方にとっては初の直弟子である。入門当初は、出羽海部屋は舞の海くらいしか知らず、後に名門であり出羽海一門のトップであると改めて知ったという。また、外出時には力士にふさわしい着物や履物を身に着けるなど、他の部屋と比べて厳しいと感じた。入門時に目標の力士として元大関・武双山(現・藤島親方)の名を挙げたが、新弟子検査で彼の身長を測定したのは、奇しくもその元武双山の藤島審判副部長だった。
2.2. Rise through Lower Divisions
入門当初は本名を四股名とする力士も多いが、既に自身の本名の姓と同じ元幕内・大道がいたため、四股名には地元・上松町から望める御嶽山と出羽海部屋の「海」を合わせた「御嶽海」と名付けられた。なお、「御嶽」の読みは、山は「おんたけ」と読むのに対し、四股名は「みたけ」と読む。これは2014年の御嶽山噴火による被災者への配慮でもあり、部屋の行司である木村千鷲と話して決めた。父は嶽王(たけおう)や嶽ノ王(たけのおう)という四股名を考えていたと言い、親戚に王という苗字の人がいたため、四股名に『王』を付けることを考えていたという。

2015年3月場所で初土俵を踏んだ。2番相撲(3日目)で大翔鵬からプロ初黒星を喫したが、これがかえって緊張をほぐす契機となり、最終的に6勝1敗の好成績を収めた。5月場所は東幕下3枚目の地位で6勝1敗の成績とし、場所後の番付編成会議にて、7月場所での新十両昇進が決定した。十両昇進まで所要2場所での昇進は、史上11人目となるスピード記録である。長野県は元幕内・大鷲が1978年1月場所限りで引退して以来、全都道府県で関取不在の期間(37年間)が最も長かったが、御嶽海の十両昇進により長野県出身力士として47年ぶりの新十両となり、平成以降関取を出していない都道府県は皆無となった。御嶽海の昇進により、関取不在の期間が最も長い都道府県は1990年から関取不在の福井県になった。
関取になってからは取的に指導やアドバイスもする立場になったが、早い出世だったため、当初は関取という立場であっても兄弟子たちには話しづらく、そうしたことができるようになったのは幕内上位となった2016年になってからのことであった。2015年7月場所では、11勝4敗の成績を収め、十両優勝を果たした。長野県出身力士の十両優勝は、1949年5月場所の大昇以来66年ぶりという快挙である。10日目の常幸龍との対戦では、激しい張り手を受けて口内から激しく流血し、翌日の取り組み後に左上唇を15針縫う怪我を負った。以降の取り組みでは本来の突き押しができず、いつも以上に立合いの変化を多用した。7月17日には、写真家の篠山紀信が、松本市美術館にて展覧会の打ち合わせの際に「優勝したら御嶽海の写真を撮る」と約束していた。結果、十両優勝したため、2015年9月9日に出羽海部屋にて撮影が行われ、開催中であった『篠山紀信展 写真力』の展示が変更され、御嶽海のモノクロ写真が白鵬や朝青龍に並んで掲げられた。
2.3. Makuuchi Division Promotion
2015年9月場所14日目、御嶽海は初めて幕内で相撲を取り、勝利を収めた。また、若手のためにと懸賞金を掛け続けていたもち吉による初めての懸賞金を受け取った。この場所は西十両5枚目で12勝3敗という好成績だったことから、続く11月場所では新入幕を果たし、この場所は千秋楽に8勝7敗と勝ち越した。
2016年1月場所では途中休場により入門から丸1年で初めて負け越しを経験したが、3月場所では10勝5敗と二桁勝利を挙げた。5月場所前は食あたりと風邪に苦しんだと伝えられたが、西前頭8枚目として迎えた直後の5月場所は、場所前の不調とは裏腹に11勝を挙げ、自身初の敢闘賞を受賞した。東前頭筆頭まで大きく番付を上げて臨んだ7月場所は、7日目までの大関戦で力の差を見せつけられ1勝6敗と苦戦し、最終的には5勝10敗と自身初の皆勤負け越しとなった。初めて大銀杏を結って挑んだ9月場所は、11日目に勝ち越しを決めるなど好調を維持し、最終的に10勝5敗の二桁白星を収め、11月場所では新三役として小結に昇進した。長野県出身力士としては1932年春場所の髙登以来84年ぶり、出羽海部屋からは2005年9月場所の普天王以来11年ぶりの新三役であり、東洋大学卒業者としては初の快挙であった。御嶽海の新三役昇進を記念して中日新聞社は10月31日、特別号外を発行した。11月場所では上位陣相手に健闘するものの6勝9敗で負け越し、三役の座からは陥落した。しかし、2016年全体としては3度の二桁勝利、初の三賞、そして小結昇進を果たし、中日スポーツ主催の年間「幕内最優秀新人賞」を第53代受賞者として獲得した。
3. Ascent to San'yaku and First Championship
御嶽海は三役への昇進を重ね、数々の強豪を打ち破り、遂には栄光の幕内優勝を掴み取った。
3.1. San'yaku Debut and Early Achievements
西前頭筆頭で迎えた2017年1月場所では、初日から3横綱・4大関との対戦が続いた。しかし、2日目には横綱・日馬富士を寄り切りで破り、長野県出身力士として1955年初場所初日の大昇以来62年ぶりとなる初金星を挙げた。さらに4日目には鶴竜にも勝利し、二つの金星を含む11勝4敗の好成績で自身初の技能賞を獲得した。場所後の2月17日に佐久市中込のホテルで行われた「御嶽海関技能賞受賞祝賀会」では「応援をしていただいた皆さんの熱気を感じる。3月場所でも二桁の勝ち星を挙げ、また佐久へ戻ってきたい。期待に応えられるよう精進します」と決意を語り、会場の盛大な拍手を浴びた。
これにより3月場所は小結に復帰した。この場所は大関以上に対して自力勝利なし(5日目の白鵬戦は不戦勝)であったが、関脇以下に対しては実力を発揮し、14日目に勝ち越しを決めた。自身2場所目の三役となるこの場所は9勝6敗で初の三役での勝ち越しであったが、関脇に負け越しがいなかったため、地位は据え置きとなった。御当地の春巡業松本場所では稽古中に左手首を負傷し、ほぼぶっつけ本番で挑んだ5月場所は、初日から3連勝、その後6連敗、そして終盤に5連勝と、粘り強い相撲を見せ8勝7敗で場所を終え、初の殊勲賞を受賞した。
そして、2017年7月場所では西関脇へと昇進した。長野県出身の新関脇は髙登以来84年ぶりという歴史的な快挙である。また、出羽海部屋からは出羽の花以来1982年以来の関脇昇進となった。6月26日に愛知県犬山市内の出羽海部屋名古屋場所宿舎で記者会見に臨んだ際、御嶽海は「今は上(大関)は目指していない(意識していない)。しっかり勝ち越しを続けることが大事。課題は精神的な部分。力は通用しているから、あとは気持ち。新関脇でも8勝し、そこから二桁勝利を目指したい」と抱負を語った。県出身者として84年ぶりの関脇昇進には「上の人が歴史をつくってきたことはすごいと思う。自分も歴史に刻んでいきたい」と語った。宿舎に入る前日の25日朝に木曽郡内で震度5強を記録した地震の際は、上松町の実家に帰省中だった。彼は「大きな縦揺れで目が覚めた。(地元では)御嶽山噴火災害も思い出されるかもしれないが、不安を帳消しにできるように、自分の相撲を取りたい」と強調した。29日に境川部屋に出稽古へ行った際には豪栄道と三番稽古に挑み、1勝10敗と大関の壁を感じた。
7月場所では、初日に稀勢の里を破って自己最多となる46本の懸賞金を獲得し、「46本? 2つ(の懸賞の束)を持ったのは初めて。気分よかった。最高のスタートが切れた」と6度目の対戦で稀勢の里に初勝利した喜びを見せた。11日目には、魁皇と並ぶ歴代最多勝記録が懸かった白鵬に勝利し、記録達成を阻止した。この一番について「めっちゃうれしかったです。横綱も記録がかかっていた一番で、緊張感が伝わってきた」と振り返り、「今までで一番多く(座布団が)舞ったんじゃないですか。いやー、うれしい。今まででいちばんうれしい」と喜びを語った。同場所は9勝6敗で、2場所連続の殊勲賞を受賞。三賞選考委員25人中21人の賛同を得ての受賞であった。夏巡業では15分ほどの四股、すり足、体幹トレーニングで体を鍛えた。帰京してから8月29日に稽古を再開した。続く9月場所、11月場所共に関脇の地位で勝ち越しを果たし、2017年の年間6場所を全て勝ち越した唯一の幕内力士となった。
2018年1月場所は初日から7連勝を果たし、鶴竜との優勝争い、そして大関獲りへの足掛かりとなることが期待された。しかし、8日目に逸ノ城、9日目に栃ノ心と今場所好調の平幕力士に連敗すると調子を崩し、勝ち越しを目前にして連敗は5まで伸びた。13日目に同じく連敗中の鶴竜を下してなんとか勝ち越しを決めたものの、残りの大関戦も負けて結局8勝7敗の成績だった。なお、9日目に栃ノ心と1敗同士で対戦しているが、平幕と関脇が9日目に1敗同士で対戦するのは、1972年3月場所の長谷川と魁傑、1981年9月場所の琴風と大錦以来これが3例目となった。3月場所は12日目の豪栄道戦で不戦勝に恵まれたものの、13日目と14日目を連敗して負け越しを確定させ、千秋楽に勝ったものの7勝8敗の負け越しに終わり、連続関脇在位が5場所でストップした。4月10日の春巡業伊那場所では髙安との三番稽古では4勝5敗。一気の出足で押し出すこともあったが、つかまると力負けした。白鵬にはぶつかり稽古で5分間にわたって胸を出してもらい、何度も転がされた。スタミナ不足は御嶽海も認識しており、「体力面で失速しないように、この巡業で鍛えていきたい」と意気込んだ。御嶽海の両親にとっては伊那場所はご当地場所であり、「地元に近い会場で、友人と連れだって観戦できる」と楽しみにしていた。
3.2. First Makuuchi Championship
2018年7月名古屋場所は、稀勢の里が初日から休場し、6日目までに白鵬、鶴竜、新大関の栃ノ心といった多くの主力力士が怪我で休場する異例の場所となった。西関脇の地位で迎えた御嶽海は、初日から11連勝と好調な相撲を取り、優勝争いの先頭に立った。12日目に髙安に敗れたものの、14日目には栃煌山を寄り切りで下し、自身初の幕内最高優勝を決めた。
千秋楽こそ豊山に敗れて最終的に13勝2敗となったが、御嶽海の幕内最高優勝は、大相撲の優勝制度が制定された1909年6月場所以降、初となる長野県出身力士の優勝であり、また出羽海部屋にとっても1980年1月場所の横綱・三重ノ海以来38年ぶりにして通算50回目の幕内最高優勝という歴史的な快挙となった。千秋楽の朝、記者に対しては「優勝しても泣かない」と話したが、インタビューが始まると涙を堪え切れなかった。優勝後のインタビューでは「ただただ、すごいです。こんなに大勢の人の前で話したことがないんで、何を言ったか覚えてないと思います。最後にしっかり勝って終わりたかったけど、まだまだ強くなりたいと思います。押し出しきれなかったんで、また稽古して頑張りたいです」と語った。名古屋場所は故郷の上松町からも近く、多くの地元からの応援を受けていた。
8月8日、長野県は御嶽海にスポーツ特別栄誉賞を授与すると発表した。同日に記者会見した阿部守一県知事は「多くの県民に喜びと大きな希望をもたらした業績をたたえたい」と述べた。
大関昇進がかかる9月場所は、初日から5連勝と好調を維持するが、6日目に豪栄道に敗れて後退。しかし、7日目には貴景勝の張り手にも動じず連敗はしなかった。だが、中日に勢から初黒星を喫すると、上位対戦の連戦で5連敗を喫し、稀勢の里に敗れたところで今場所での大関昇進は消滅した。それでも13日目に妙義龍から白星を得ると、翌日には大関髙安に初めて勝利した。千秋楽も白星を得て9勝6敗とし、来場所への大関昇進の望みを繋いだ。続く11月場所は、初日いきなり黒星発進。さらに、4日目と5日目で連敗し、序盤で既に3敗を喫するが、翌日から3連勝でやや調子を取り戻した。しかし、再び3連敗と2連敗が響き、14日目に負け越しが決まり、大関取りは白紙となった。翌日の千秋楽では、勝てば優勝決定戦に進出する髙安を土俵際の掬い投げで破り、小結にとどまれる成績を残した。
4. Continued Success and Ozeki Promotion
2019年の2度目の優勝から、2022年の3度目の優勝を経て、御嶽海はついに大関の地位に昇り詰める。
4.1. Second and Third Makuuchi Championships
2019年1月場所は初日から2横綱を破るなど5連勝と好調なスタートを切った。しかし6日目の妙義龍戦で左膝付近を負傷し車椅子で運ばれ、7日目から休場を余儀なくされた。だが、11日目から再出場し、その初戦で10戦全勝としていた白鵬を破り、関脇以下の地位で横綱3人撃破という1984年3月場所の大乃国以来35年ぶりとなる記録を達成した。大関以下の力士が再出場後最初の取組で横綱と対戦し勝利するのは、1951年9月場所で備州山が千代ノ山に勝った事例以来、約67年ぶりで戦後2例目となった。勝ち越しを決めた後は思うような相撲が取れなかったものの、3横綱1大関に加え、優勝した玉鷲、優勝を最後まで争った貴景勝の両関脇にも勝っていたことが評価され、殊勲賞を受賞した。途中休場した力士が再出場して三賞を受賞するのは史上初の快挙であり、再出場によって優勝争いの流れを変えたことから藤島審判副部長(元大関・武双山)の後押しで前例のない受賞に至った。本人も受賞するとは思っていなかったという。
3月場所はぶっつけ本番で挑むこととなった。この場所は鶴竜以外の大関以上には勝てないなど上位の壁に阻まれ、13日目に負け越しを確定させるも、残りを2連勝して7勝8敗と踏みとどまった。春巡業中は怪我の影響で実戦稽古が1日数番にとどまるなど稽古不足が伝えられ、5月場所前には体重が175 kgを計測するなど稽古不足による体重過多が懸念された。しかし、14日目に勝ち越しを決めて3場所ぶりの関脇、そして15場所連続の三役を確定させた。千秋楽は既に優勝を決めた朝乃山を一方的に寄り切りで下して勝利し、「力の差を見せつけました。差が出たんじゃないですか」「伊達に三役を2年張ってきたわけじゃない」と意地を見せた。7月場所前の時津風部屋での出稽古では、昨年優勝した場所という事もありいつになく稽古を積み、特に前場所優勝した朝乃山を警戒し申し合いを重ねた。7月場所は、中日を終えて6勝2敗と好調だったが、後半2連敗するなどして失速し、結局2場所連続の9勝6敗に終わり、またもや二桁勝利には届かなかった。
2019年9月場所は、初日に朝乃山に敗れるも、2日目から7日目まで6連勝を記録した。8日目の貴景勝戦で敗れて2敗となる。10日目の玉鷲戦で勝って勝ち越しを決め、11日目の竜電戦で敗れるも、13日目の妙義龍戦で勝利し、初優勝した2018年7月場所以来の10勝を挙げた。14日目の豪栄道戦では珍しく注文相撲(変化)を見せ11勝を挙げ、3敗の貴景勝、隠岐の海と優勝争いの先頭に並んだ。ただし、この注文相撲は波紋を呼び、解説者の北の富士勝昭に、「次期大関の呼び声も高い力士が、今場所最大の見せ場に立ち合いの変化とは、こんな勝ち方をして誰が喜ぶというのか。実に情けないことだ。すっかり気分が悪くなった。もう寝よう」と酷評された。千秋楽は遠藤を寄り切りで下し、12勝3敗同士の優勝決定戦で貴景勝と対戦。その貴景勝を寄り切りで下して自身2度目の幕内最高優勝を達成した。関脇の地位で2度の優勝は、後の横綱・朝潮以来62年ぶりの快挙だった。優勝を果たした場合という条件付きで千秋楽に受賞を懸けていた殊勲賞も獲得した。

この優勝により、11月場所は大関昇進の可能性をかけることになった。また、この年の年間最多勝も懸かっており、9月場所終了時点で45勝の暫定1位で、同点で暫定1位タイの阿炎と並ぶ格好となった。しかし、その11月場所は1勝1敗で迎えた3日目の明生戦で右目の上を切り(この取り組みには寄り切りで勝利)、そこから恐々と相撲を取るようになって3連敗を喫するなど失速。14日目に負け越しを確定させて大関取りはまたしても白紙になった。更には千秋楽にも阿炎に敗れて6勝9敗となり、17場所連続で務めた三役から陥落となった。
2020年、出羽海部屋で行われた出羽海一門連合稽古では相撲を取った。西前頭2枚目で迎えた1月場所は11日目に7勝4敗としながら4連敗を喫し7勝8敗で負け越し。3月場所は初日から6連勝、7日目・8日目は両横綱に連敗するも、14日目に隆の勝に敗れるまで優勝争いに残り10勝5敗で終えた。4月27日の番付発表において西関脇となり、2場所で三役復帰を果たす。7月場所は、初日から7連勝した後2連敗したが、10日目に全勝の新大関・朝乃山を破り、12日目には一敗の白鵬を2敗に引きずり降ろし、千秋楽まで優勝争いに加わった。白鵬の休場もあり、14日目終了時点で2敗で照ノ富士を、3敗で朝乃山、正代、御嶽海が追う展開となった。千秋楽で照ノ富士戦に勝てば巴戦だったが、照ノ富士に完敗し優勝を逃し、11勝4敗で終えた。この成績により、6度目の殊勲賞を受賞。
昨年優勝した9月場所は先場所に続いて西関脇の地位での場所となり、正代と大栄翔に並んで大関取りへの足固めの場所となる。しかしこの場所は低調ぶりを八角理事長から「気力がないね。『一生懸命押すんだ』と『何となく』というかね」「もっともっと相撲に気持ちをかけなきゃ。気持ちが、どっかに行ってしまっている感じがする」と嘆かれた。北の富士からも「御嶽海のだらしのないこと甚だしい限りである。まるでやる気が見られない。これでは名門出羽海部屋もお先真っ暗であります」と切り捨てられた。結局この場所は8勝7敗で終えた。10月20日に両国国技館の相撲教習所で行われた合同稽古では白鵬と三番稽古を行い、23戦1勝22敗。稽古嫌いで知られる御嶽海が珍しく熱心に稽古していることから白鵬は「稽古しすぎると、雪が降るぞ」とからかっていた。11月場所は2019年11月場所以来となる東関脇の地位が与えられた。この場所も数字上は大関昇進の可能性が僅かにあったが、9日目から6連敗を喫するなど結果は7勝8敗で負け越した。これで3度目の大関取り白紙となった。
2021年1月3日の稽古開き以降、主に部屋の三段目を相手に1日約20番相撲を取る調整を行い1月場所に備えた。1月場所は8日目までに3大関全員に勝利した一方で関脇以下の相手には全敗するという珍現象で3勝5敗、後半は6連勝と持ち直したものの9勝6敗で終え、またしても二桁勝利に届かなかった。3月場所は千秋楽で勝ち越しを決め、8勝7敗で終えた。千秋楽後、またもや二桁勝利を逃した原因を聞かれて「それをみんなに聞きたい。これから考える。課題はないよ」とコメント。2021年4月20日の合同稽古では十両以上と合計24番相撲を取る稽古を行い「多かったですね。今日、雨降るんじゃないですか。快晴ですけど」とジョークを飛ばした。5月場所は、初日から3連勝するも4日目に照ノ富士に敗れ1敗。その後途中3連敗を喫するも、最終的には10勝5敗で場所を終え、およそ1年ぶりに三役で二桁勝利をあげることとなった。7月場所直前の7月2日、「(三役で)連続で2桁取ったことないから、こういうチャンスで2桁連続で取りたい」と意気込みを語った。8月24日に相撲教習所で行われた合同稽古では15番相撲を取って7勝8敗。陸奥親方(元大関・霧島)からかけられた「(もっと)稽古をやっていたら今ごろ(大関に)上がっていたよ。(もっと稽古を)やったら強いんだから」という言葉に「元大関の人に僕みたいなのに話し掛けてもらって、気にかけてもらっているのがうれしくて、それもあってスイッチが入って、今日は気合が入った」という。しかし7月場所は序盤は平幕相手に連勝を重ねるも後半、役力士相手に苦戦し結局8勝7敗で終わり、目標にしていた2場所連続二桁勝利は達成できず場所後の大関取りの話題などもちろん皆無だった。9月場所は序盤から好調を維持し11日目終了時点で3敗で照ノ富士を2差ながら追っていたが、12日目から照ノ富士との直接対決を含む3連敗を喫し、結局二桁勝利はまたしても叶わず、最終的に9勝6敗で終わった。11月場所直前には「横綱にはなりたくないんですけど...。目標となる一番近い大関には早くなりたいし...。もう上に3人しかいないからね。早く大関の枠に入りたいなと思いますね」と個性的な表現で抱負を語った。11月場所、初日から3連勝を果たしたが錦戸審判長(元関脇・水戸泉)から「(存在は)面白い」とされつつも「ただ、彼は期待を裏切りますから。強い御嶽海と弱い御嶽海がいるから、なんともねえ」と辛口のコメントを受けた。6日目の妙義龍戦では、立合いで左へ大きく変化し、自らの懐へ招き入れる雑な叩き込みで白星を収めた相撲のその内容から、藤島審判長から「あんな立ち合い、相撲では駄目だ」と酷評された。勝ち越しは自身2番目の速さである9日目。終盤に負けが込んだものの11勝4敗で年最後の場所を締めくくった。翌2022年1月場所は、成績次第では大関昇進が見える大関取りの場所となった。
4.2. Ozeki Promotion and Early Reign

2022年1月場所前、伊勢ヶ濱審判部長(元横綱・旭富士)は、「直近3場所で合計33勝」に達する13勝を挙げれば大関昇進を認める考えを否定し、全勝優勝を大関昇進のためのノルマとして掲げたため、場所前には昇進ムードが無かった。その1月場所では初優勝をした2018年7月場所以来となる初日から8連勝を記録し、幕内力士で一番に勝ち越した。しかし、10日目に北勝富士戦に敗れ1敗となり二桁勝利は翌日以降に持ち越したが、翌11日目に正代戦に勝ち10勝を挙げ、自身初めて三役で2場所連続の二桁勝利を達成した。その後は12日目の阿武咲戦で敗れ、2敗となったが、13日目の阿炎戦、14日目の宝富士戦と勝ち、14日目に照ノ富士が敗れたため、優勝争いでも単独首位に立った。千秋楽は照ノ富士戦が組まれ、照ノ富士戦も勝ち3度目の幕内最高優勝を決めた。また、今場所13勝を挙げ、日本相撲協会の審判部は大関昇進に向けた臨時理事会を招集したため、この時点で事実上大関昇進が確定し、場所後の1月26日の番付編成会議で正式に大関昇進となった。
長野県出身力士の大関昇進は、江戸時代の1795年の雷電爲右エ門以来、227年ぶりとなる。大関伝達式の際の口上は「大関の地位を汚さぬよう、感謝の気持ちを大切にし、自分の持ち味を生かし、相撲道に邁進して参ります」だった。また翌27日には、1歳上の一般女性(後援会の関係者)と結婚していたことを発表した。因みに東洋大学からの大関昇進は大相撲史上初である。3月場所の番付発表によって番付表に大関として四股名が掲載された。なお、大関昇進まで三役在位28場所は史上4位のスロー通過である。
新大関となった3月場所では14日目に4敗目を喫して優勝の可能性が消滅するまでの間、優勝争いに加わった。この場所は11勝4敗で終え、この星取りを「いいんじゃないですか。悪くはないと思います」としたが、大学の後輩の若隆景に優勝をさらわれたことには「大関として恥ずかしいと思います」と悔しさをにじませた。
5. Ozeki Career and Demotion
大関に昇進した御嶽海は、最高位での地位を維持するために奮闘したが、怪我や病、そして自身の不調により、その座を失うこととなった。
5.1. Challenges as Ozeki
2022年5月場所は6勝9敗の負け越しとなり、続く7月場所は自身初の角番(大関からの降格危機)を迎えることになった。6月22日の稽古後、5月場所初日に右肩を負傷したことを明かした。この時点では相撲を取る稽古ができず、基礎運動中心となっており「ぶっつけ本番でもやらないといけない」と語っていた。
7月場所は角番で迎え、6日目まで2勝4敗と黒星が先行していたが、同部屋の日本相撲協会関係者が新型コロナウイルスに感染したことが判明した。(翌日の17日に、16日の夜の御嶽海自身の新型コロナウイルス感染も発表された。)このため、御嶽海はじめ部屋所属力士全員が7日目(16日)から休場となった。仮に救済措置が取られなければ大関陥落となり、大受の5場所より短い(年6場所定着後、大関復帰者を除く)大相撲史上ワーストの短命大関となる見通しであった。しかし、8月29日に発表された9月場所の番付では大関にとどめられており、9月場所も再び角番で迎えることとなった。6日目まで2勝4敗で相撲内容も極めて悪く、仮にそのまま皆勤していれば負け越していた可能性は極めて高かったため、なんとも後味の悪い結果となり、北の富士も自身のコラムで救済措置に否定的な意見を示した。場所後の夏巡業には感染症からの回復が間に合ったため参加。8月7日の夏巡業さいたま場所が行われた際には「来場所も大関として仕事を果たしたい。10番取れるようにしたい」と二桁白星を目標に掲げた。
5.2. Demotion from Ozeki
しかし、異例の2場所連続角番で迎えたその9月場所でも復調せず、11日目に負け越しが決まり、大関在位僅か4場所で陥落することとなった。これは前述の大受より短い(年6場所定着後、大関復帰者を除く)史上ワーストの短命大関という不名誉な記録となった。大関特例復帰の懸かる11月場所は、初日の明生戦で低い立合いからの左おっつけで一気に押し出した相撲を指して、北の富士から「気迫も十分に感じられたので10勝は楽勝だろう。私が自信を持って予想するが、まず間違いないだろう」と絶賛された。しかしその後は調子を落とし、6日目から連敗して迎えた10日目の翠富士戦に寄り切りで敗れて6敗目を喫し、大関特例復帰の可能性はなくなった。この場所は大関陥落が決定した正代同様に6勝9敗に終わり、この様子に普段は大関陣に厳しい15代武蔵川も「大関は協会の看板だけれど体の調子が悪いのなら、番付を考えず、土俵に上がらないでいいんだよ。負けが込むとやっぱり落ち込むし、相撲から気持ちがどんどん離れて行ってしまう。そうすると、相撲人生の危機なんだ。本人が出場すると言っても、そこは師匠の判断で、まずは体と心のケアをきちんとさせてあげなきゃダメ」と心配を表明した。
6. Later Career and Recent Tournaments
大関から降格した後も、御嶽海は相撲道に邁進し、個人的な苦難を乗り越えながら土俵に立ち続けた。
6.1. Post-Ozeki Performance
2023年1月場所では前頭2枚目に番付を下げ、7勝8敗と負け越した。3月場所は4勝11敗と不調で、14日目の隆の勝戦は北の富士に「隆の勝と御嶽海の一番を見たが、御嶽海は全くやる気なし。こんな力士こそ、お客さんに失礼だから休場したほうがいい。元大関が泣く、みっともない」と酷評された。西前頭6枚目で迎えた5月場所は、13日目に大栄翔を破り、7場所ぶりの勝ち越しを決めた。
7月場所直前の7月5日、父が74歳で死去した。父の死去を受けて御嶽海は葬儀の喪主を務めるため、部屋の宿舎のある犬山市から実家の上松町に一時帰省した。この場所は父を喪った心労からか、9日目に負け越しを確定させるなど絶不調に陥り、最終的には3勝12敗の惨敗となった。なお、場所中にはフィリピンに住む母方の祖母も死去した。
2023年9月場所、前頭11枚目と、2016年3月場所以来の低い番付で迎えた。この番付では、通常上位力士の調整の場となる幕内最初の取組に出場することが多い。しかし、7年半ぶりに幕内最初の一番に出場し、佐田の海から8勝目を挙げ、幕内での昇進を確定させた。2024年2月12日、東京都内で結婚披露宴を開き、多くの関係者から祝福を受けた。
2024年7月場所は西前頭2枚目と、久々の上位総当たりとなった。最終的には7勝8敗で負け越すも、初日に先場所優勝者の新関脇・大の里を立合い一気の相撲で破るなど、存在感を見せた。また、大関・琴櫻を投げの打ち合いで破るなど、強豪相手に互角以上の戦いを演じた。9月場所は4勝11敗と振るわなかったが、11月場所は番付運に恵まれ4枚降下で済んだ。11月場所では5日目を終わって4勝1敗と好調だったが、6日目の琴勝峰戦では突き落としで白星を収めたものの、土俵下に落ちた際に左肩と腰を痛めて救急搬送された。その後も強行出場したが、9日目の一山本戦で4敗目を喫した際はNHK大相撲中継で解説の舞の海が「まったく相撲が取れる状態じゃないので、わたしは明日から休場するべきだと思います」と忠告していた。結局、故障の影響から7日目以降は白星が伸びず、7勝8敗と負け越した。
6.2. Personal Challenges and Resilience
2023年の7月場所前には父親、場所中にはフィリピンに住む母方の祖母を立て続けに亡くすという個人的な困難に直面した。精神的に大きな重圧を抱える中で場所に出場し、不調ながらも土俵に上がり続けた姿は、彼の強い精神力を示した。場所後には長野県に帰り、亡き父に「今場所は情けなかった」と謝りつつ、「だけどまた三役を目指すから、ちょっと力を貸してよ」と再起を誓ったという。これらの経験は、彼のキャリアに深い影響を与え、相撲に対する新たな決意を促した。
7. Fighting Style
御嶽海は、その類まれな瞬発力と力強い突き押しを武器に、柔軟な試合運びで土俵を沸かせる。
7.1. Preferred Techniques
御嶽海は基本的に突き押しを得意とするが、とっさの変化も見せる。彼の相撲は、一見ただの押し出しや寄り切りに見えても、相撲の流れを読む天才的な感覚と臨機応変な対応力を備えていると評価されている。若い頃は瞬発力に優れ、腰がよく下りていたため叩き込みを食らいづらかったが、押すべきところで辛抱できずに差す癖もあった。四つ相撲もある程度取れるが、どちらかというと右四つを得意とし、左四つで胸が合うと脆い傾向がある。中学生の時にはもろ差しになって密着する相撲を取っていたため、四つになることもあるが、部屋では「まわしがないと思って取れ」と、徹底して押し相撲に徹するように指導されている。おっつけは相撲の流れの中で多用することがあり、2017年3月場所7日目の日馬富士戦では敗れはしたが、おっつけで土俵際まで追い詰める場面も見せた。
7.2. Training Philosophy and Evolution
御嶽海はあまり稽古熱心でないことでも知られており、典型的な場所相撲(本場所で力を出すタイプ)であると評される。学生時代は「遊び稽古」という、土俵の外でいろいろな小技を試すことを好み、勝負勘や技術を養った。彼は「稽古をもっとすれば強くなる」という意見に対して、「稽古場でやったことが本場所の土俵で出るんだ、というけれど、その逆の力士だっていると思うんです。今の自分は、稽古だけじゃないと思う」と独自の相撲論を展開している。「『このままでは現役寿命が短くなるのでは』などとも言われますけど、例えば、今、幕下でガンガン稽古して、3年後に強くなるぞと言われても、その頃には膝がボロボロで関取にならなかった---では意味がない。"今この時の稽古"を自分なりにして、今、結果を出さないと。そう僕は思っています。それが、もしこの先の現役寿命を短くしてしまうことになっても、そこは変えたくない。僕は"今を生きている"んです」と語り、常に「今」を重視する哲学を持っている。
稽古嫌いとされているにもかかわらず相撲で結果を残すことから、2019年2月3日に行われた成田山新勝寺の豆まきに参加した際、控室で横綱から「稽古しないで勝つ方法、オレに教えてくれよ!」とからかわれたこともあった。2017年頃から四つ相撲が上達し、もろ差しが光るようになった一方で、まだ型がはっきりしないという声もあった。
2019年11月場所頃は、前かがみになって頭から当たる相撲が取れていない、もっと体を作るべきだ、裂傷に怯まないようにすべきだという指摘があった。2020年の新型コロナウイルス感染拡大防止のため出稽古が禁止されていた中で行われた7月場所は好調であったが、その要因として「普段から稽古熱心な力士ではないだけに、逆に幕下との稽古で疲れが残らず、場所が進むにしたがって調子が上がっていくのではないか」と分析された。突き起こして前に出て押し込む相撲が取れないまま差されると脆く、同場所9日目の霧馬山戦での黒星はその一例である。それでも、調子の良い場所では頭から当たる立合いが冴え渡り、2021年9月場所6日目の琴ノ若戦はその好例である。2021年9月場所中、花田虎上のコラムで「懐に入った相撲は本当に強い」と評された。一方で精神面の甘さが弱点の1つであると指摘されている。
2021年11月場所中、花田虎上は足がしっかりと出る立合いと、やはり得意の下からのおっつけで起こす相撲を評価した一方で、稽古場での手抜き癖を懸念していた。この場所中に北の富士は、諦め癖を指摘している。2021年には押しの決まり手で28勝(押し出し27勝、押し倒し1勝)を挙げたが、これは2021年の幕内で1位の記録で、自身が2021年に幕内で挙げた55勝の約半分を占める。御嶽海が押しにこだわるのには、取組時間を短くする、突き指などの四つ相撲を取ることによる怪我のリスクを低下させる、といった本人の狙いがある。大関時代は下位力士への取りこぼし癖が欠点であった。
8. Personal Life and Interests
土俵を離れた御嶽海の姿は、家族への深い愛情、多彩な趣味、そして飾らない人柄で多くの人々に親しまれている。
8.1. Marriage and Family
御嶽海は1歳上の一般女性と結婚している。この事実は彼が大関に昇進した2022年1月、所属する出羽海部屋の出羽海親方(元前頭・小城ノ花)によって明かされた。結婚披露宴は2024年2月12日に東京都内のホテルで執り行われ、約500人が出席した。彼は一人っ子である。
御嶽海の家族は、日本人である父の大道春男と、フィリピン人である母のマルガリータからなる。2018年名古屋場所で優勝した後に北海道巡業で北の富士に挨拶をしたところ、「おー、母ちゃんきれいだな」「母ちゃん金星だな」と言われたという。母親は応援に来てくれる人々一人ひとりに挨拶をして回り、普通は「〇〇関のお母さん」と言われるところを「マルガリータさん」と名前呼びで親しまれている。彼自身が母親のサイン入り色紙にサインを求められることもあり、そのようにファンに接してくれている母親と、表には出ないが裏でしっかりサポートしている父親に感謝の思いを述べている。
8.2. Hobbies and Preferences
御嶽海は多趣味で、その中でもボウリングは彼の趣味の1つである。その縁で2018年9月5日、日本ボウリング場協会からボール、シューズ、バッグの「ボウリング3点セット」と「ボウリング1ゲーム無料券」100枚が御嶽海に贈呈された。贈呈は名和秋と渡辺けあきが手渡しで行われた。
温泉も彼の好きなものの1つである。「硫黄のにおいが好き。地元の温泉は鉄分が強い真っ茶色なんですけど、硫黄がすごく強い。乳頭温泉も硫黄のにおいがすごくて、好きな温泉でした」と、2016年の夏巡業中に振り返っている。
好物はバナナ、寿司、焼肉、そしてプリン。好きな俳優は峰竜太である。部屋の公式ホームページによると、憧れのボクサーはマニー・パッキャオ、好きな漫画は『WORST』で、座右の銘は『実るほど首を垂れる稲穂かな』である。
理想のタイプについては、2017年3月場所前の週刊誌記事で「僕はスラッとしたクール系の女性が好きです。北川景子さんや相武紗季さん、米倉涼子さんのような。でも性格はおっとり系がいいなぁ。そういうギャップに弱くて(笑)。お互いに成長できる関係が理想です。自分より人生経験豊富な人は勉強になる部分がたくさんあるので、年上の女性に惹かれます」と語っている。2019年11月5日に福岡市内でトークショーに参加した際には、理想の結婚相手の条件として「年上」「母親似」「フィリピン料理が得意」と挙げた。女性セブン2017年6月1日号の記事では、15歳年上までが恋愛対象であると報じられた。
8.3. Relationships and Public Image
御嶽海は他の著名人との親交も深く、東洋大学OB(卒業後、御嶽海在学途中まで職員として勤務)である村田諒太のプロボクシング世界タイトル初挑戦があった際には、「ニュースで見ただけ」であり、自らの相撲に集中したと語っている。2021年4月28日に急逝した三段目力士の響龍は同学年で高校時代に対戦経験もあり、心を痛めているという。「危険なスポーツだということを改めて思いました」と話した。萩野公介とは親交があり、2021年6月に長野県で行われた合宿中に肉やフルーツなどの差し入れをした。
ファンとの交流も大切にしている。2018年7月場所での初優勝後、千秋楽の朝には記者に「優勝しても泣かない」と話したが、優勝インタビューが始まると感極まって涙を堪えきれなかった。音楽評論家で作詞家の和田靜香は、この時の御嶽海の様子を「まるで『お母さん~』とウソ泣きを通した80年代の聖子ちゃんのガッツある魂に重なるかのよう」と評している。2019年9月場所の優勝インタビューでは投げキッスを行い、元若乃花は「かわいらしい。時代が変わりました」と笑顔でコメントした。
彼の故郷である長野県上松町の公民館では、自身の初土俵以来、場所ごとにパブリックビューイングが行われており、地元との深い繋がりを保っている。また、自身の昇進が早かったため、入門当時稽古を付けてもらっていた兄弟子が今は付け人を務めるという関係性も存在する。
2018年1月場所中日、マスク姿で国技館へと場所入りした。コロナ禍以前に力士がマスク姿で場所入りすることは珍しい光景であった。2019年12月6日の冬巡業大分場所中、2019年を表す一文字に「無」を選び、「無心とか、無の心」と説明した。山川穂高(プロ野球選手)は御嶽海に似ていると評されており、山川が埼玉西武ライオンズに所属していた頃は「西武の御嶽海」と呼ばれることもあった。御嶽海は絵がとても下手であることを自認しており、日刊スポーツの企画で絵日記を書いたときに話題になった。本人は「絵は本当にダメなんです。小学生のとき、50歳くらいの先生に『今まで生きてきた中で、見たことがない(くらい下手)』と言われたことがありますからね。あれは衝撃でした」と語っている。
9. Achievements and Records
御嶽海は、その短いキャリアの中で数々の輝かしい記録を打ち立て、大相撲の歴史に名を刻んだ。
9.1. Major Career Milestones
- 幕下付出デビューから新入幕までの所要場所数**: 4場所(歴代2位タイ)
- 初土俵から初優勝までの所要場所数(幕下付け出しから)**: 21場所(歴代3位タイ)
- 通算成績**: 471勝385敗13休(59場所)
- 通算勝率**: .550
- 幕内成績**: 436勝376敗13休(55場所)
- 幕内勝率**: .537
- 大関成績**: 23勝29敗8休(4場所)
- 大関勝率**: .442(大関勝率、在位場所数共に歴代ワースト1位)
- 新大関成績**: 11勝4敗(歴代15位タイ)
- 新大関勝率**: .733
- 三役成績**: 253勝179敗3休(29場所)
- 三役勝率**: .586
- 関脇成績**: 170勝115敗(19場所)
- 関脇勝利数は歴代9位
- 関脇勝率**: .696
- 小結成績**: 83勝64敗3休(10場所)
- 小結勝率**: .565
- 前頭成績**: 160勝168敗2休(22場所)
- 前頭勝率**: .488
- 十両成績**: 23勝7敗(2場所)
- 十両勝率**: .767
- 幕下成績**: 12勝2敗(2場所)
- 幕下勝率**: .857
- 途中休場力士の三賞受賞**: 史上唯一
- 関脇以下の地位での優勝回数**: 3回(歴代1位)
- 幕内連続二桁勝利記録**: 3場所(2020年11月場所 - 2022年3月場所)
- 幕内優勝次点以上連続場所**: 2場所(2021年1月場所 - 2022年3月場所)
- 関脇出場回数**: 285回(歴代6位)
- 小結出場回数**: 146回(歴代10位)
- 大関在位**: 4場所(短命大関としては歴代ワースト1位)
- 三役連続在位**: 17場所(2017年3月場所 - 2019年11月場所・歴代2位)
9.2. Championships and Awards
- 幕内最高優勝**: 3回
- 2018年7月場所
- 2019年9月場所
- 2022年1月場所
- 年間最多優勝**: 1回(2022年、照ノ富士、若隆景、逸ノ城、玉鷲、阿炎と並んで受賞)
- 十両優勝**: 1回(2015年7月場所)
- 三賞**: 10回
- 殊勲賞**: 6回(2017年5月場所、2017年7月場所、2018年7月場所、2019年1月場所、2019年9月場所、2020年7月場所)
- 敢闘賞**: 1回(2016年5月場所)
- 技能賞**: 3回(2017年1月場所、2018年7月場所、2022年1月場所)
- 金星**: 2個
- 日馬富士: 1個(2017年1月場所)
- 鶴竜: 1個(2017年1月場所)
10. Match-up Records
主要な対戦相手との歴代の対戦成績を詳細に提示し、彼の強みと弱点を把握できるようにする。
10.1. Against Yokozuna and Ozeki
(いずれも2025年1月場所終了現在)
- 豊昇龍: 3勝10敗(うち不戦敗1)。大関同士の対戦はなし。
- 琴櫻: 3勝8敗。大関同士の対戦はなし。
- 大の里: 1勝1敗。大関同士の対戦はなし。
- 髙安: 10勝24敗。髙安の大関在位中は3勝7敗。大関同士としては対戦していない。
- 朝乃山: 6勝6敗。朝乃山の大関在位中は2勝3敗。大関同士としては対戦していない。
- 正代: 19勝15敗。正代の大関在位中は6勝3敗。
- 霧島: 7勝11敗。大関同士の対戦はなし。
- 白鵬: 4勝12敗(うち不戦勝1)。土俵上の3回はいずれも三役在位中の勝利で金星は獲得できなかった。白鵬に最後の黒星をつけた。(2020年7月場所12日目)
- 日馬富士: 2勝5敗。2017年1月場所で自身初めての金星を獲得。最後の勝利は2017年5月場所で、決まり手は寄り切り。
- 鶴竜: 6勝8敗(うち不戦勝1)。最後の勝利は2019年3月場所で、決まり手は送り出し。
- 稀勢の里: 2勝6敗。稀勢の里の横綱昇進後は2勝3敗。勝利した時は2回とも三役在位中のため金星は獲得できなかったが、殊勲賞を受賞した。
- 照ノ富士: 5勝14敗(うち不戦勝1)。照ノ富士の1度目の大関在位中は2勝5敗。照ノ富士の2度目の大関昇進後は2敗、横綱昇進後は1勝4敗。
- 琴奨菊: 11勝4敗。琴奨菊の大関在位中は2勝2敗。大関同士としては対戦していない。
- 豪栄道: 8勝9敗(うち不戦勝1)。大関同士としては対戦していない。
- 栃ノ心: 6勝8敗。栃ノ心の大関在位中は2勝3敗。大関同士としては対戦していない。
- 貴景勝: 14勝13敗(他に優勝決定戦で1勝)。貴景勝の大関在位中は5勝10敗。2019年5月場所から2020年1月場所まで貴景勝戦本割4連敗していたが、2020年3月場所で勝利し連敗を止めた。
10.2. Against Other Makuuchi Wrestlers
(いずれも2025年1月場所終了現在。カッコ内は勝数、負数の中に占める不戦勝、不戦敗の数。太字は2025年1月場所終了現在、現役力士。)
力士名 | 勝数 | 負数 | 力士名 | 勝数 | 負数 | 力士名 | 勝数 | 負数 | 力士名 | 勝数 | 負数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
碧山 | 5 | 4 | 明瀬山 | 1 | 0 | 朝乃山 | 6 | 6 | 熱海富士 | 2 | 4 |
阿炎 | 11(1) | 7 | 阿夢露 | 2 | 0 | 荒鷲 | 3 | 1 | 勢 | 6 | 1 |
逸ノ城 | 16 | 7 | 一山本 | 1 | 3 | 宇良 | 8 | 4 | 遠藤 | 18(1) | 8 |
炎鵬 | 1 | 0 | 欧勝馬 | 0 | 1 | 阿武咲 | 12 | 6 | 王鵬 | 1 | 1 |
大の里 | 1 | 1 | 隠岐の海 | 7 | 5 | 魁聖 | 1 | 7 | 臥牙丸 | 1 | 3 |
輝 | 7 | 0 | 鶴竜 | 6(1) | 8 | 稀勢の里 | 2 | 6 | 北太樹 | 2 | 0 |
旭秀鵬 | 0 | 2 | 霧島 | 7 | 11 | 金峰山 | 2 | 4 | 豪栄道 | 8(1) | 9 |
豪ノ山 | 1 | 3 | 琴恵光 | 3 | 0 | 琴櫻 | 3 | 8 | 琴奨菊 | 11 | 4 |
琴勝峰 | 2 | 6 | 琴勇輝 | 3 | 0 | 佐田の海 | 7 | 3 | 里山 | 1 | 0 |
島津海 | 0 | 1 | 志摩ノ海 | 1 | 0 | 正代 | 19 | 15 | 湘南乃海 | 4 | 1 |
松鳳山 | 5 | 4 | 蒼国来 | 1 | 4 | 大栄翔 | 16 | 14 | 大翔丸 | 2 | 1 |
貴景勝 | 14 | 13 | 貴ノ岩 | 2 | 0 | 隆の勝 | 9 | 10 | 髙安 | 10 | 24 |
宝富士 | 13 | 6 | 豪風 | 4 | 1 | 玉正鳳 | 0 | 1 | 玉鷲 | 29 | 9 |
美ノ海 | 3 | 2 | 千代鳳 | 4 | 1 | 千代翔馬 | 0 | 1 | 千代大龍 | 6 | 5 |
千代の国 | 8 | 0 | 千代丸 | 0 | 1 | 剣翔 | 1 | 3 | 照強 | 1 | 0 |
照ノ富士 | 5(1) | 14 | 東白龍 | 1 | 0 | 徳勝龍 | 2 | 2(1) | 栃煌山 | 7 | 2 |
栃ノ心 | 6 | 8 | 翔猿 | 4 | 8 | 友風 | 1 | 1 | 豊ノ島 | 1 | 0 |
豊響 | 2 | 0 | 錦木 | 9 | 3 | 錦富士 | 2 | 2 | 白鵬 | 4(1) | 12 |
日馬富士 | 2 | 5 | 英乃海 | 1 | 0 | 平戸海 | 0 | 7 | 豊昇龍 | 3 | 9(1) |
北青鵬 | 2 | 0 | 北勝富士 | 16 | 12(1) | 誉富士 | 1 | 1 | 翠富士 | 5 | 3 |
妙義龍 | 7 | 6 | 明生 | 12 | 8 | 豊山 | 3 | 1 | 嘉風 | 4 | 4 |
竜電 | 2 | 9 | 狼雅 | 2 | 1 | 若隆景 | 9 | 4 | 若元春 | 2 | 4 |
11. Career Timeline
御嶽海の相撲キャリアにおける主要な番付変動と重要な出来事を時系列でまとめる。
- 2015年3月場所 - 初土俵(幕下付け出し)
- 2015年7月場所 - 新十両
- 2015年11月場所 - 新入幕
- 2016年11月場所 - 新小結
- 2017年7月場所 - 新関脇
- 2022年3月場所 - 新大関
- 2022年11月場所 - 関脇陥落
12. Media Appearances
御嶽海が出演したテレビ番組、映画、CMなど、様々なメディア活動の履歴を羅列し、彼の世間での知名度と活動範囲を示す。
12.1. Television Programs
- NBSみんなのニュース(2015年3月30日・5月25日、長野放送)
- おぉ!信州人 ハッキヨイ御嶽海!!~木曽の星☆大道久司 春の初陣物語~(2015年4月27日、長野朝日放送)
- 知るしん 信州を知るテレビ(2015年7月31日・11月29日・2016年5月27日・7月29日・2017年3月3日・7月28日・2018年2月2日・9月7日・2019年10月4日 、NHK長野)
- チャンネル4 突き進む 御嶽海 新入幕への道(2015年10月31日、テレビ信州)
- 信州に大相撲がやって来た! ~郷土力士の松本場所~(2015年11月1日、信越放送)
- イブニング信州(2015年12月28日・2016年9月9日・11月10日・12月28日 、NHK長野)
- スタジオパークからこんにちは(2016年6月2日、NHK総合)
- SPORTS X(2016年7月8日、BS朝日)
- 平成二十八年大相撲名古屋場所前夜祭(2016年7月9日、中部日本放送)
- 中畑清 熱血!スポーツ応援団(2016年8月8日、BS11)
- SBCニュースワイド(2016年9月9日・12月28日・2018年12月26日 、信越放送)
- バース・デイ(2017年4月1日、TBS)
- 踊る!さんま御殿!!(2017年4月11日・2022年4月19日、日本テレビ)
- たけい荘Z~壮だったのか!スポーツの極意~(2017年6月18日、東海テレビ)
- 密着180日!大相撲~新時代を担う力士たち~(2018年3月9日、BS-TBS)
- ニュース シブ5時「能町みね子のシブ5時相撲部」(2018年7月23日、NHK総合)
- 土俵の高みへ ~御嶽海 初優勝への軌跡~(2018年8月5日、信越放送)
- BE-BOP SPORTS(2018年9月3日、TOKYO MX)
- 感動!大相撲がっぷり総見(2018年9月8日、BSフジ)
- 前夜祭で楽しもう!~大相撲九州場所 直前スペシャル~(2018年11月10日、NHK九州・NHK沖縄)
- 大相撲密着450日 目指せ!大関・新三役(2018年12月14日、BS-TBS)
- 報道ゲンバ Face 年末SP2018(2018年12月28日、テレビ信州)
- 壮だったのか!たけい荘ゴールデン(2019年1月11日、東海テレビ)
- ジャンクSPORTS 大相撲スペシャル(2019年2月24日、フジテレビ)
- 有吉ゼミ(2019年3月4日、日本テレビ)
- プレバト!!(2019年5月2日、毎日放送・TBS)
- 令和元年大相撲名古屋場所前夜祭 (2019年7月6日、中部日本放送)
- 24時間テレビ「愛は地球を救う」(日本テレビ)
- 24時間テレビ 愛は地球を救う42(2019年8月25日、日本テレビ)「笑点」の演芸コーナーにも出演
- 24時間テレビ 愛は地球を救う45(2022年8月27日)オープニングに登場
- 笑神様は突然に...(2019年10月30日、日本テレビ)
- ごぶごぶ(2020年2月4日・11日、毎日放送)
- ぐるぐるナインティナイン(2022年4月14日、日本テレビ)
- グルメチキンレース・ゴチになります!23